王都招集
ようやく投稿できました。
仕事が忙しくなりなかなか投稿できないかもしれませんがそれでもよければこれからもよろしくお願いします。
「流石に交通網が発達している。こういう所は見習わないとな………」
馬車に揺られながら参考になりそうなものを拾っていく。
「シンク様、あまり身を乗り出さないで下さい」
向かいに座るリンドから注意されたのでやむなく席に戻る。
リンドの隣にはリーフが座っている。
今シンク達は護衛の兵に守られながら王都に向けて移動している最中であった。
ディーン王国との戦でゼールギスを捕縛したシンクの話はすぐにリキア王国全土へと広がっていた 。
この話は貴族社会を大きく揺るがせる。
ヘイゲル・グラードがスレイヤード乗っ取りに動いていたという話は彼らの間のみならず、貴族社会に関わりのある商人ですら知っている話であった。
下手に関わってヘイゲルに目をつけられたくない。
そう考えていた彼らにとった晴天の霹靂とも言えるスレイヤードの勝報。
さらにその軍を率いたのは未だ7歳のシンク・スレイヤード。
貴族達の興味が尽きることはなかった。
貴族達が話の真偽に悩む中で、それ以上に頭を悩ませていたのがスレイヤード乗っ取りに関わっていた者達である。
当事者であるグラード家とそれを助ける形となった王族はもう一つの事実を知っているのだ。
グラード当主ヘイゲルの死。
今広まっている噂を利用して厳重な情報封鎖を行うことで何とか漏らさずに済んでいた。
しかしそれも時間の問題である。
グラード家はスレイヤード乗っ取りを目論んだ事実を隠す為に手を打った。
ヘイゲルがスレイヤードの抵抗を封じるために講じた時に『王族の使者』を使って、逆にスレイヤードの非を追求する手筈を整えた。
グラードの影響力を示すことでヘイゲルの死によってグラード家が受ける損害を最小限に止めようとしたのである。
一方の王家はグラード家に協力的ではない。
長年ヘイゲルは王族を圧迫し、事実上国王デルウッドはヘイゲルの言うことには逆らうことができなかった。
そのヘイゲルが死に、誰よりも喜んだのはデルウッドであった。
王家の復権。
それを願うデルウッドにとってはグラード家は邪魔でしかなかった。
その王家が何故グラード家に協力するのか。
それはデルウッドにとってシンク・スレイヤードが得体の知れない存在だったからに他ならない。
長年自身を苦しめたヘイゲルの死。
デルウッドは間違いなくヘイゲルはシンク・スレイヤードに謀殺されたと考えた。
長年自身を苦しめたヘイゲルをいとも簡単に殺めたシンク・スレイヤードが第2のヘイゲルとして台頭してくることを危険視した。
長年の苦渋が晴れ、暗雲を払ったデルウッドにとって不安要素は可能な限り消しておきたかった。
ヘイゲルの死に混乱するグラード。
得体の知れないスレイヤード。
どちらが御し易いか考えるまでもなかったのである。
そのような思惑など知らず、シンクの考えは別にあった。
「リンド、領内の統治ってどうやるんだ?」
「………私は平民ですよ。知っている訳ないじゃないですか」
「俺だって戦いのことしか教えられてないんだ」
先程からこのやり取りは続いている。
戦いにおいては迷いのなかったシンクだが、元々、それは望まれた役割であった。
内政についてはロンクーからも教えを受けておらず、そもそもロンクーも内政なんてわからなかっただろう。
そういう役目は兄バースに期待されていたのだ。
「………お父上の代に仕えていた方達に手伝って貰いながら覚えていくしかないでしょう」
「………今回の騒動で去った者も多い。率直に手が足りない」
なんとも言えない空気が広がる 。
(くそぅ、新しく雇うにもツテがない)
シンクはため息をつく。
かつての知識にも領地を治める知識などない。
ゲームの知識で将来の出来事や人間関係を理解することはできる。
外交ならば多少は応用が効くかもしれないが、内政に関しては全く役に立たなかった。
そもそもゲームの主人公は勇者であるが平民。
領地経営など関わりがあるはずもなかった。
「誰か、誰かいないか〜」
思わず口から溢れる程の強い思い。
だがその姿はあまりにも情けなかった。
「………戻ったら旧臣の方々に戻って来るように声をかけましょう」
「………そうしてくれ」
不毛な会話が終わった。
リンドの隣ではリーフが?マークを浮かべながら話を聞いていた。
リンドと違い、剣しかロンクーに習ってこなかった彼女にとって難しい話は理解できない。
しかしシンクの色々な面を見ることができて驚きながらも退屈することはなかった。
かつての貴族の子息らしい振る舞い方も好きだったが、今の話しやすいシンクも好ましかった。
見た目で判断せず、一人の人間として判断してくれるシンクに変わりはなかったからだ。
リズの失踪には心を痛めたが、シンクは妹を許してくれた。
何処かで元気に生きてくれていればそれでいい。
リーフも自分の人生を生きようと前に進んでいた。




