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live  作者: 皐月 悠
14/31

恋煩いと歌『6』


自宅にたどりつき、自分の部屋に行くと上着をハンガーにかける。窓際に置いてある写真に視線を向ける。写真に写っている私と優香は、楽しそうに笑っていた。


私が優香と付き合っていたのは、今から一年前の大学一年生の頃だった。

出会ったのは、あの露店ではなくて、手作りの作品が一度に集まるお祭りのようなイベント会場での事だった。

人がたくさんいる事が苦手だけど、その時の友人がこういうイベントもあるのだと連れて行ってくれた事がきっかけだった。一周見て回った後、それぞれ気になっている部分に戻るというながれだった。

一人で向かったのは、折り畳み式の長机一つ分が、一サークル分のスペースで、その中でも一つのスペースを借りて優香が作品を出展していた。

「どうぞ、手に取って見てください」

材料費分くらいの値段のアクセサリーは、半分がすでに買われてしまったらしく空白のスペースができていた。

「……これ、ください」

「ありがとうございます」

「あの、名刺もらってもいいですか?」

「どうぞ」

「ありがとうございます」

優香の優しい笑顔と雰囲気に、たぶん、私は一目惚れをしてしまったのだと思う。

そして、頭の中で警告音が聞こえた。こういう雰囲気の人に、私は弱い。たぶん、相手にとってもタイプなのではないだろうか、と。

名刺には、個人のサイト名と連絡先が書かれていた。失くさないように、私は名刺を財布の中にしまった。

イベントに一緒に行っていた友人に話すと、「考え過ぎだ」と笑いとばされた。感覚で生きているようなところがあるので、上手く言葉にする事ができないが、根拠なくそう感じたわけでもない。恋愛ではなかったにしろ、過去に似たような経験をしているからだ。

その警告音を私は無視をして、気が付けば連絡をしていた。

ビーズアクセサリーと作曲が趣味なんて、共通の話題なんてないように思えた。けれど、実際に話をしてみると、好きな小説とかドラマとか飲み物や映画の好みが似ていて、今まで知らなかったような作品の話題をふられても、趣味があわないなと感じる事はなかった。

読んでみる事で、「あ、こういう作品が好きなのか…こういう事を感じていたのかな」と思えて、優香の事を一つ知れた気がして嬉しく感じる。たぶん、お互い同じことを思っていたのだと思う。

大学近くが会いやすい中間地点だという事を知ってからは、よく最寄り駅近くで会うようになっていた。

そんな2月のイベントがある日、夜の公園で…。

「あの、これ…受け取ってください」

「ありがとう」

優香からバレンタインデーに、本命のチョコを受け取り、彼女にキスをした。


その後、付き合っていた時間は充実していた。

充たされている感覚というものは、こういうものなのかと実感する事ができた。

この頃、大学を卒業した後の進路について、今以上に見えていなくて、不安定になっていたのもある。この先の未来の事について、考える事ができていなかったと今なら思える。

だから、「距離を置こう」と言われた事に何も言う事ができずに、そのままになってしまった。

指輪を作った事を知ったのは、その後の事だった。パートナーができたら、指輪を作ってプレゼントするつもりなのだという話はすでに聞いていた。

その指輪を露店で売っていたという事は……もう、恋人でいた事も忘れたいという事なのかもしれない。幸来があの指輪をつけていた事に驚いてしまった。


「何やっているのだろう、私…」


意識してなかったとはいえ、イベントの日に、しかも、他の人には聴かせたくなくて気楽だからといつもの調子だったとはいえ、二人でカラオケって……まずい、よね。

ため息を吐き出すと、ポケットに入れたままだったスマートフォンを取り出す。

二つ連絡が届いていた。

一つは、ルカからで夏美に伝えたのと、可能な日の確認。

もう一つは、優香からで今日は作品を聴けて嬉しかったというお礼の連絡だった。

優香からの連絡にだけ返信すると、そのままスマートフォンを机の上にある充電器にさしこんだ。


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