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報復? 嫌だなぁお茶を買っただけですよ

 昼休憩になった。

 いつもなら緑茶を飲んでぷは~っと一息しているところだが、今日の私にはやることがある。

 珍しく4時間目の現国終了と同時にダッシュで教室を飛び出す。


 先生に礼を終えたばかりの杏奈を始め、クラス中が驚いた顔をしていたが、そんなもの気にしている暇もなかった。

 猛スピードで廊下を走り、渡り廊下を突っ切って第三校舎まで突っ走る。そのまま階段を駆け下り職員玄関を抜けて左に折れた。

 食堂に辿り着いた頃には汗かいてたけど気にも留めない。


 唖然としている生徒たちを掻き分けて自販機の前に立つと、財布から一万円札を抜き取り迷わず挿入。ポケットから透明なポリ袋を取りだし、準備完了。

 パック製のお茶を選択して、連打連打連打。


 落ちてきたお茶パックをポリ袋に仕舞い込み、繰り返すことしばらく、売り切れの赤文字が点灯。

 おつりレバーを倒して財布におつりのを仕舞い込む。

 ポリ袋を肩に乗せて意気揚々と食堂を後にする。

 教室まで辿り着くと、呆然としたままの杏奈の前を素通りして席に戻る。マイ湯呑に緑茶を注いで、ようやく一息。


「ほえ~」


 ああ、暖かさが骨の髄まで染み渡りますなぁ。


「ち、ちょっと小影、アンタそれどうしたんだよ?」


 杏奈がようやく我に返る。


「ぽえぽえ~」


「いや、無視すんなよ」


 呆れたような杏奈にまったり和み中の顔を向ける。


「……」


「ぽえ~」


「……わかった。わかったからその顔で私を見るな……」


 どっと疲れたように杏奈が脱力して自分の席にもたれこんだ。

 同時に、バンッと音を立てて半開きのドアが全開される。

 音に驚いて皆と同じようにそちらを見ると、あのお下げの女生徒が息を切らせて立っていた。

 恨みがましく私を睨みつけ、予想通りに脇に置かれていたポリ袋に気付く。


「や、やっぱり……」


 恐れていた事態に直面したような悔しそうな表情をしたかと思うと、すぐに私に殺意すら篭った視線を向けてきた。

 ズンズンと肩を怒らせ私の元に歩み寄る。

 そして掌を差し出して来て底冷えする声で言った。


「返せクサレ外道」


 私は気にせず緑茶を一口。


「ぽえ~」


 花が咲いたような笑顔を振り撒いてやる。


「私のお茶を……」


 底冷えするほどに冷たい声で威嚇してくる。

 それでも私は笑みを絶やさなかった。


「返しなさいッ! 今すぐッ!」


 バンっと机を思いっきり叩きつけて彼女はいきり立つ。


「これは私が買ったものですよ。貴女のものではないですよ~」


 始めは優しく、そう、相手がこちらを小物と見るくらいに下手にでる。

 私の異変に逸早く気付いた杏奈が慌てて教室から退避した。

 それに気付いた級友たちも全員教室から避難する。


「ふざけるなッ! こんな嫌がらせをしておいてッ!」


 クスクスと笑いを浮かべ、私は湯呑を邪魔にならない床に置く。


「ふざけるな? 嫌がらせ? 私はただ自販機から私が飲もうと思ったパックのお茶を買っただけですよお嬢さん」


「どこがただよッ! 売り切れるまで買っておいてッ! 一つで十分でしょうがッ!」


「別に今日だけの分とは限らないでしょう? まとめて買っただけですよ」


 絶やさぬ笑みはより深く。

 グッと悔しそうに顔を歪める女に心の底でニヤ付いた。


「……また、買えばいいのでしょう? 百二十円で……」


「百二十円? 馬鹿言っちゃいけませんやお嬢さん。全部で百二十万円ですよ」


「全部ッ!?」


「単品売りはしてませんぜお嬢さん、こいつぁ全部一括りで百二十万円でさぁ」


「ず、頭に乗るなッ! なんで私がアンタなんかに百二十万円も出さなきゃいけないのよッ!」


「そりゃ当然でしょう? このパック代に、私のお茶を楽しむ時間削減代に、お茶を買った苦労代に、後頭部に蹴りくれた慰謝料代、融解の間に閉じ込めてくれた監禁罪の黙秘代などなど、ついでにその間の授業料エトセトラエトセトラ」


 何か言おうと口を開きかけたのを見計らい、表情を一変させる。

 目だけが笑っていない笑顔で睨みつける。


「きっちり耳揃えて払ってもらいましょうかっ! アァッ? こっちは警察にタレこんでもいいんですよお嬢さんッ!」


 半ば怒鳴るように声を張り上げる。

 女はあまりの豹変に驚いたようだったが、それだけだった。


「そう……貴女もそっち系だったのね……」


 殺意を秘めた目元に更なる怒りが灯った。

 次の瞬間、女生徒が突然私の頭に向って蹴りを放つ。

 椅子を後ろに引きながら蹴りを避け、慌てて立ち上がった。


「か、か弱い女の子に何するんですかぁッ!?」


 瞳をうるりと涙を滲ませてみるけれど、大した効果はなかった。

 すぐさま放たれた上段蹴りをしゃがんでかわす。


「実力で奪うわ。私たちの得意分野でしょ?」


 ニヤリと笑うお下げの女。こいつ……まさか同業者!?

登場人物


 ひじり 小影こかげ

  現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。

  基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。

  特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。

  座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。

  聖戦士になったようです。

  メルトに寄生されている。ルストが見つかるまでは共生するようだ。


 メルト

  原初の柱の一つであり地球外生命体の細菌。

  時空石と呼ばれる黄金に光る石の内部に存在していて地球へと降って来たらしい。ルストと共に地球へ飛来したが、長い年月を経てルストは行方不明となった。

  以来ルストを探しているのだが、空気感染型のルストとは違い飛沫接触感染型のメルトは自身を運べる存在がいなければ移動できない。

  人間をルストと共に造り出した神らしいが、生物に触れると相手を融解させてしまう特性を持つ細菌。生き物を媒介にする場合は特定の容器である必要がある。


 結城ゆいしろ 杏奈あんな

  現在16歳、彼氏無し。

  小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。

  不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。

  姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。


 増川健治

  渋いサングラスをかけた丸刈りの厳ついおじさん。闇金融をしている人。

  声がでかいので普通に話しかけると子供が泣き叫ぶ。

  金ラメや龍柄のシャツを好んで着ている。

  子供好きで野花を愛する性格だが、厳つい容姿のせいでよく通報される。


 ハニエル・ルーマヤーナ

  神の愛と称される大天使の一人。

  全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。

 ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。


 ファニキエル・シュイタット

  ハニエルにより見出された落ち零れの天使。

  前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。

  未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。


 牛頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。


 馬頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。

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