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ハイキック女? 売りましたけど何か?

「得意分野って……わッ!? とッ? 意味が分からないよ~」


 女生徒の蹴りを避けながら反論する。彼女は蹴りを止めるどころかさらに激しく攻撃してきた。


「嘘を付かないでッ! さっきの顔と声の変化は私たちの得意分野よ!」


 なんてこったいプルートゥ!? こいつヤバイ系の娘ですよッ!?

 モメるの面倒だからやだな~。

 でも、乗りかかった船だし、私の信条である以上取り立てさせていただくしかないね。


 よし、決めた。

 やるなら徹底的にやっちまいましょう。

 報復? 上等だよコンニャロメ。


 襲い掛かってくる蹴りを避けるため、杏奈の机の上を転がって反対側に着地する。

 杏奈の横の机に手を突っ込み、新沼君の消しゴムを手に入れる。

 すまん。緊急事態なのでこれをもらうぜぃ!


「消しゴムなんてどうする気? そんなものじゃ蹴りを止めるなんてできないわッ!」


「第一印象はあんま話さない根暗だと思ってたけど、良く喋るねぇ」


 足場が悪いために、少し威力の削がれた蹴りが襲い掛かる。

 私はそれを避けることなくこめかみに迎え入れた。

 ぐわんと脳ミソが揺れるような衝撃にたたらを踏むが、このくらいなら先生の踵落としの方が数倍痛い。


「なに? 余裕?」


 自分の蹴りが当たったことに驚く女生徒。対する私は不敵に哂って見せた。


「正当防衛成立……だね」


 消しゴムを千切り右の人差し指と親指の間にセット。


「馬鹿じゃない?」


 吐き捨てるようにして蹴りを繰りだした瞬間、私は消しゴムを弾き飛ばす。

 何かを飛ばされたことには気付いた女生徒。

 でも蹴りのモーションに入ってしまっているので止まることができない。

 そうして、私の狙い通り。彼女の目蓋に消しゴムがヒットした。


「うくッ」


 瞬時に目を瞑ってしまう女生徒。

 私は一瞬できた彼女の隙を生かして彼女の足を受け止める。

 ふっ。楽勝。


「しまッ……」


 手にした足を思いっきり真上に持ち上げた。

 さすがに対抗できずに女生徒は倒れ、私の机の角に頭をぶつけた。

 火花が散ったかな?


 下手をすれば脳内出血で即死の危険すらあるこの奥義、故意に使えば学生だろうと確実ブタ箱行きだ。

 さすがの女生徒も気絶したようだ。

 彼女の後頭部を触って内出血の有無と危険度を確認して、致命傷にはならないことを知る。

 まぁ、致命傷になったらなったで事故死にするのが一番だよね。下手に埋めるとあとあと面倒だし。

「ではでは~この金貸し小影ちゃんの逆鱗に触れたむくいってものを教えてあげますか」


 ニヤリと微笑む私の顔に、その時悪魔が潜んでいたのはきっと、教室のドアから震えながら覗き見していた杏奈の見間違いだろう。




 そして……


「ぽえりゃ~~~」


 一仕事終えた私は緑茶を啜りながら一息。

 目の前で化け物を見るような目で私を見ている杏奈に笑みを向けた。

 何か用かね杏奈君?


「一つ聞きたいんだけど……どうしたのあの娘」


 どうした? どうしたって?

 そんなもん決まってるじゃないですか。


「売った」


「…………」


「…………」


「待て、今何て……」


 あれ? 聞こえてなかった?

 もう。ちゃんと聞いてよね激おこぷんぷん丸だゾ。

 ちゃんと聞いておいてよねー。全く。


「売った」


「いや、だから……何を?」


「いや、ちょうどあるサイトに情報流したら百二十万で買うっていうからさ。メガネで太めなお兄さんに……おっとこれ以上は企業秘密ですよ」


「い、いやいやいやっ。それ、冗談だよね? さすがにあんたでもそこまでしないよね?」


「ぽえ~~~~~」


 杏奈の質問を無視して緑茶を楽しむ私の膝元にはなぜか百二十万円の札束があった。

 聞くのが怖くなったのだろう。杏奈は無言で引き下がっていった。

 しばらくお茶を飲んでまったりとしていると……先生がやってきて午後の授業が始まった。


 うん。脅威を排除したおかげかお茶が旨い。

 これはもう、本日清々しく過ごせるね。

 先生イビリまくりながら午後も楽しく過ごすとしよう。


 にしても、数万つぎ込んだお茶パック、どうしよっか?

 あの子の実家調べて送っといてあげよう。ちゃんと百二十万円で買い取ってくれたしね。

 くすくす。親御さんになんて説明するか、楽しみですな。


「あ、せんせぇ~。その物理方程式を嵌めこむとぉ、せんせぇの胸の垂れ角度は何度になりますかぁ」


 杏奈曰く授業テロは本日も私の独壇場だったとか。

 いや、だって暇なんだもん。

 物理の授業も公式覚えちゃえば後は当てはめるだけでしょ?

 物理の先生が泣きそうになってたって言われても、私にはわからないなぁ。

 あの先生いっつも怯えた感じじゃないですか。

 初めから泣きそうな顔だからわからないって。

登場人物


 ひじり 小影こかげ

  現在16歳、彼氏いない歴イコール年齢の少女。

  基本金かお茶にしか興味がないので、金貸しの回収を行う以外は緑茶をすすってぽけっとしている。

  特技に瞬間記憶を持ち、金貸し業の関係で覚えた指弾とデビルスマイルを得意とする。

  座右の銘はお前の物は俺のモノ。貸したら返せ命を掛けて。

  聖戦士になったようです。

  メルトに寄生されている。ルストが見つかるまでは共生するようだ。


 メルト

  原初の柱の一つであり地球外生命体の細菌。

  時空石と呼ばれる黄金に光る石の内部に存在していて地球へと降って来たらしい。ルストと共に地球へ飛来したが、長い年月を経てルストは行方不明となった。

  以来ルストを探しているのだが、空気感染型のルストとは違い飛沫接触感染型のメルトは自身を運べる存在がいなければ移動できない。

  人間をルストと共に造り出した神らしいが、生物に触れると相手を融解させてしまう特性を持つ細菌。生き物を媒介にする場合は特定の容器である必要がある。


 結城ゆいしろ 杏奈あんな

  現在16歳、彼氏無し。

  小影曰く、紫色に染めたけど、髪が伸びたせいで半分より下だけが紫色になっちゃったとっても可哀想な人らしい。

  不良生徒になりかけていたが、小影に打ちのめされて以降小影のツッコミ役にされる。

  姐御肌らしく悪態付きながらも手伝ったりする様が密かにクラスメイトから人気を集めている。


 増川健治

  渋いサングラスをかけた丸刈りの厳ついおじさん。闇金融をしている人。

  声がでかいので普通に話しかけると子供が泣き叫ぶ。

  金ラメや龍柄のシャツを好んで着ている。

  子供好きで野花を愛する性格だが、厳つい容姿のせいでよく通報される。


 ハニエル・ルーマヤーナ

  神の愛と称される大天使の一人。

  全ての愛される要素を内在し、顔は清楚に、身体は妖艶に。でも思考は限りなく幼児に近いある意味残念な存在。

 ただし内包する知恵と頭の回転は凄まじく、先見の明を持つため落ち零れとされる天使から大天使候補の原石を発見するのが上手い。


 ファニキエル・シュイタット

  ハニエルにより見出された落ち零れの天使。

  前回の天使試験で見習いのまま消失の危機を迎えていたが、ハニエルにより見出され付き人のような役割についている。

  未だハニエルが見出した実力は開花しておらず、実力は限りなく弱い。


 牛頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。


 馬頭鬼

  黒い靄から発生した悪魔。

  黒い靄で移動し、人間あるいは天使を見付けると出現し、戦闘を行う。

  夜間の校舎内を見回る様に動いている。

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