1471-1500
1471『「君は僕の太陽だ」「まともに見ると目が潰れるってか?」』
「不寝番しなくても良いならそれでも良いけど」
「結界?」
「手段は色々あるよ?」
「……悩むわね」
「あれ、珍しいね? 便利過ぎるのは駄目って言われると思ったけど」
「一人で生きていけなくなったら困ると思って遠慮してたけど、ランと離れないならわざわざランに不便を強いるのもどうなのかなって」
1472『レテの川の向こうに』
「ラン、どうしたの?」
「……まって」
「え、うん」
「っはー、お待たせ」
「大丈夫?」
「あんまり大丈夫じゃない。この世ならざる川を渡るかと思った」
「なんで唐突に死にかけてるの!?」
「マオが可愛すぎる事言うから」
「そんなに面白いこと言ったかしら」
「僕と一生離れない宣言してくれたじゃない」
1473『トリック』
「え?」
「あれ、違うの?」
「違わない、けど」
「けど?」
「いえ、だってその、ランはあたしと、その」
「結婚を前提にお付き合いの関係だと思ってます」
「それ!」
「照れるのはまだ残ってるんだね」
「そうそう完全に開き直れたら苦労はないわ」
「それはそうだね」
「えぇっと、なんの話だったかしら?」
1474『さぁ、行こう!』
「僕のお嫁さんが可愛い」
「違う!」
「僕の未来のお嫁さんが可愛い」
「ちが……え、さっきとなにか違うの?」
「未来の、って言葉が増えた」
「どっちにしろ違います!」
「えっ」
「え、なに!?」
「マオは僕のお嫁さんになってくれないの?」
「っそれは今は関係ないでしょ!? 話が混線するから後で!」
1475『未来永劫愛してる』
「分かった」
「そう、良かったわ。ところで、何の話をしてたかしら」
「マオがベッドで寝るって話でしょ」
「嘘を言わない。ランがベッドで休むって話だったわね」
「マオが抱き枕やってくれるんだったよね」
「それあたしは却下したわよ」
「じゃあ次の議題に」
「移りません。そもそも解決してないでしょ」
1476『蜘蛛の糸』
「でもこれはどこまで行っても平行線の問題だよ」
「そこまで難しい問題ではないと思うわ」
「だってお互いの意見は、相手にベッドで寝てほしい、だよ? 逆なら適当に勝負して決めるけど」
「それよ」
「無理だよ。勝った方がベッドで寝るか、それともベッドを譲るかで揉めると思う」
「否定できないわね」
1477『ピンクの』
「仕方ないわね、最後の手段に出ましょう」
「え、暴力反対」
「違うわよ、もう一部屋取りましょう。確かツインの部屋が余ってるって今朝聞いたじゃない」
「でもその部屋、マオが苦手なタイプの内装だったと思うんだけど」
「だから言ったじゃない、仕方ないって。今晩だけだし、ランが休めれば良いのよ」
1478『ぬくもり』
「それはさすがに、部屋代が勿体無さすぎない?」
「だから言ったじゃない、仕方ないって」
「うーん、よしこうしよう」
「諦めてベッドで寝る気になった?」
「マオの部屋から寝具一式こっちに持ってこよう。それで解決」
「マットとかどうするのよ」
「じゃあ、ベッドごと持ってこよう」
「無茶言うわね?」
1479『チーズとワインとバケットと』
「大丈夫大丈夫。ここは角部屋だから、マオの隣室だけ気を配れば大丈夫」
「三回も言われるといっそ不安だわ」
「なんか適当に差し入れしようか、部屋に居るならだけど」
「それも大事だけど、宿のヒトに許可も取らなくちゃだし」
「翌日ちゃんと戻しておきますって言えば大丈夫」
「ずいぶんゴリ押すわね」
1480『幸せですか?』
「だって早く決めないと。マオが変な事を口走り出したら、話し合いとかもう無理だし」
「待って何それ!?」
「あれ、自覚無し? って、そっか。眠すぎて記憶もあやふやなのか」
「待って一人で納得しないで。あたし何を口走ってるの!?」
「大丈夫大丈夫、可愛いだけだから」
「何ひとつ安心できない!」
1481『ストロベリージャム』
「本当にそんなおかしな事は言ってないから」
「ホントね? ランを信じていいのね?」
「うん。ちょっと睡魔に負けて理解力が落ちて、言葉の誤変換が激しくなってるだけだから」
「誤変換?」
「そう」
「例えば?」
「うーん、そうだなあ……ストロボリーチ、とか」
「ストロボリーチって何!?」
「さあ?」
1482『細かい事なんざ気にすんな』
「誤変換なのよね?」
「うん」
「間違いとはいえ、何をどう変換したらストロボリーチなんていう謎の単語になるの?」
「誤変換とは別に、何やら微妙に違う謎の言葉を眠いマオはしばしば生み出します」
「そもそも、ストロボリーチって本来は何なの?」
「ストロベリージャム」
「そっか、朝食ね?」
「正解」
1483『白いチューリップ(失われた愛)』
「最近だと、日頃の行いをジゴロの占いとか」
「うちの父さんかしら」
「あ、それ」
「どれ?」
「その時も、マオのご両親の話になったよ。確か、御尊父が薬草採取に行って討伐対象を単騎駆けで追ってる御母堂と出会って、その日の内に将来を誓い合ったって聞いた」
「当たってる」
「マオから聞いたからね」
1484『輝く太陽』
「ちなみに、さっきの僕の発言では直してあるけど、マオは四つの誤変換を紛れ込ませて話してくれました」
「え、そんな余地あった!?」
「あったよ、ありまくりだよ」
「ランはよく分かったわね?」
「そりゃあ、マオの言葉だもの」
「ちょっ」
「ていうのが半分、単純に微妙なニュアンスの違いが半分かな」
1485『自己犠牲』
「父さんも誤変換も今はいいのよ。要はランがベッドで休んでくれればいいの!」
「そうだった、そんな話だった。じゃあ寝具一式とベッドごとと、どっちが良い?」
「ベッドの移動は、扉を通すのがムリじゃない?」
「入ってるなら出ると思う」
「それなら新しく簡易式のベッドを借りた方が早いわ」
「成程」
1486『睡眠不足』
「待って」
「マオ?」
「宿のヒトになんて言ってベッドを借りればいいの? 二部屋借りておいて昨日は一部屋しか使ってない時点で何だよお前らって思われてるかも知れないのに、今度はわざわざ同じ部屋で別のベッドで休みたいから簡易式ベッド貸してくださいとか、マジで何だよお前らって思われない?」
1487『私の中の不可解な感情』
「うーん、借りた部屋を使わないのは、ちゃんと料金を払っていれば何も言われないと思うよ。混雑期で部屋が足りない場合はどうなるか分からないけど」
「待って」
「マオ?」
「ここ、お祭りの真っ最中じゃなかった?」
「ああ。でも全室満員で部屋が足りないって状況じゃないみたいだし、平気じゃない?」
1488『腕時計』
「そもそも、部屋をひとつ使ってないのも、まだ気づいてない可能性もあるし」
「そうなの?」
「掃除もベッドメイクも最初に断ってるからね」
「明日はどうするの?」
「祭りも見たし、出発する?」
「せっかく知り合ったんだから、タガラさんに一言かけて行かない?」
「じゃあ、朝食後にのんびり出ようか」
1489『休日引きこもり』
「タガラさん、夜行性とかじゃないといいんだけど」
「ありえるけど、多分日中は起きてると思うよ」
「なんで?」
「子供が入り込んでるって言ってたでしょ?」
「言ってたわね」
「子供が外で遊べる時間に寝てるなら、そんな事は知らないと思うんだ。騒がしくて目が覚める、みたいな事も言ってなかったし」
1490『好きなモノは好き』
「案外、ランと同じだったりして」
「僕?」
「確かランって、種族特性が目に出てるのよね?」
「ああ、うん。そうだね。夜目が利かないなら、宵っ張りの生活は不便しか生まないだろうね」
「でもランは結構遅くまで起きてたりするわよね?」
「文明の利器も術もあるし、夜の空気は落ち着くから好きなんだ」
1491『ベッドの中』
「さて。じゃあ僕は簡易式ベッドを借りられないか訊いてくるね。駄目ならマオの部屋から寝具を取ってくるから、マオは先に寝てて良いよ」
「分かったわ、とあたしが言うとでも思ってるの?」
「だよね。ちょっと待ってて」
「あたしが行くわよ」
「マオだと引き摺るでしょ」
「さりげなくチビ扱いしたわね」
1492『私のテロワール』
「チビ扱いしたつもりはないよ」
「分かってるの」
「ん?」
「ランにあたしをバカにする気はないし、あたしが小さいのもランが大きいのも単に本当のことだと分かってはいるの。でもチビって言われたら謝るまで泣かすってスタンスでやってきたから、つい条件反射でつっかかっちゃうのよね。ごめんなさい」
1493『オベンキョウチュウ』
「いいんじゃない?」
「呆れてない?」
「何で?」
「子どもっぽいなって」
「僕が二つ名を嫌がってるの、知ってるよね?」
「うん」
「呆れた?」
「かわいい」
「え」
「大人げないランは貴重だし、ちょっとかわいくて好き」
「そ、れは、どうも」
「それがどうかしたの?」
「あ、ああ。それと同じだよって話」
1494『甘い香りに』
「マオは基本的にしっかりしてるけど、変なところで抜けてるよね」
「そう?」
「そうだよ。でも、抜けてるマオも僕は好きだよって事」
「しっかりしてるあたしは?」
「相棒として安心して頼れて良いよね」
「頼れてる!?」
「え、うん」
「ホントね? ウソじゃないのよね?」
「マオに嘘なんて言わないよ」
1495『懺悔』
「ふふっ」
「いきなりご機嫌だね?」
「だって、ランの役に立ってるんでしょ?」
「ん?」
「足手まといじゃなくて良かったなって」
「マオが足手まといだと感じるような何かがあった?」
「そういうわけじゃないんだけど。野営のときに結界嫌がってたりとか、ランにとってはめんどくさいやつだろうなって」
1496『天然だな』
「最初の頃ね、マオが僕と対当であろうとしてくれたのは、凄く嬉しかったんだ」
「そうなの?」
「うん。出来るんだからやってくれれば良いじゃん、みたいな奴はゴロゴロ居るから」
「なにその失礼なヤツ。そんなの見捨てちゃえばいいのよ」
「うん」
「なんだかご機嫌ね?」
「マオと出会えて嬉しいんだよ」
1497『八方美人は嫌われる』
「……ちょっと耐性ついてきた」
「顔赤いし目が泳いでるけど」
「そのうち治すもん」
「うん。ゆっくりで良いからね」
「急かされても困るけど、ランはちょっと甘すぎない?」
「マオにだけだから良いんだよ」
「……今ね、ランが他のヒトにも甘い顔してたらイヤだなって思っちゃったわ。心が狭くてダメね」
1498『口づけを』
「……マオ、手」
「手? 出せばいいの?」
「ん、ありがと」
「ぴっ!?」
「変な声」
「だだだれのせいよっ!?」
「僕かな。じゃあちょっと行ってくる」
「ぴゃ」
「うろたえすぎじゃない? 掌だよ?」
「どこだってキスはキスよ!」
「マオ」
「ななななに!?」
「暫く部屋から出ないでね、可愛すぎるから」
1499『かまってよ』
「簡易ベッドは品切れかあ」
「こんばんは」
「マオになんて言ったらベッドで休んでくれるかなあ」
「あのー」
「戻ったら睡魔に負けてたら手っ取り早いんだけど」
「独り言で無視しないでください」
「僕と彼女は同室なので、何かしようとしても無駄ですよって牽制です」
「誰にです?」
「貴方に決まってる」
1500『揺れるカーテン』
「あのお嬢さんには何もしませんよ」
「貴方の伴侶が一人の時に声をかけてきた人物が、貴方が一人になった途端に伴侶には何もしないと言ってきたと考えてみてください、コノリさん」
「他意はありませんよ」
「用件は」
「お嬢さん、やはり簪を持っていませんか」
「……廊下では何なので、こちらの部屋へ」




