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小猫と親鳥  作者: かすみづき
EXTRA 婚約から始まる話
51/59

1441-1470

1441『はじめて見た君の瞳』

「でもほら、すぐバレる嘘は吐かないのが色々と長続きする秘訣だってどこかではきっと言ってるだろうし」

「ものすごくあやふやな意見を一切こっちを見ないままで言われたら、いっそ嘘を言ってよって気分になるんだけど」

「僕、マオに嘘は吐きたくないんだ」

「それは嬉しいけど、そのセリフ二度目よ?」




1442『基本なんでもお見通し』

「あんまり何度も言われると、逆に疑わしいわよ」

「嘘吐いてないよ!?」

「分かってるけど、嘘をつきたくないなんて何度も言われたら、言いたくないけど言ってるのねって解釈が成立するでしょ」

「吐いてないってば」

「だから、分かってるわよ。ランは嘘は言わないけど、すべてを語らないタイプだって」




1443『戒め』

「全てを語ろうと思ったら、これまでの人生と同じだけの時間が必要だよ?」

「そうね、そうやって話を逸らす方が多かったわね」

「逸らしてないよ?」

「目を見て言わなきゃ説得力ないわよ。あとね、別に怒ってるわけじゃないの。ランはちゃんとヒントも出してくれるから。あからさまに目を逸らすとかね」




1444『溶けてしまいたい』

「あとはそうね、突然敬語になったり、言ってることと見てるものが違ったり、他にも」

「分かったからもう勘弁してください」

「あ、そうだ。敬語はそっちもあったわね。何かやめて欲しいことがあるけど、あたしの意見を尊重したいときにも、よく敬語が出てるわよね」

「お願いだから改めて分析しないで」




1445『蛍火』

「ランだって、あたしに伝わってることは分かってたわよね?」

「そうだけど、改めて指摘されると、何かこう、さあ」

「ふぅん?」

「……よく分かりませんって態度だけど、マオだって心当たりある筈だよ」

「え?」

「マオが僕のことどう思ってるか、言葉にして欲しいなーって言ったらどうする?」

「えっ」




1446『誘ってなんかいないってば』

「僕はマオがとても好きだけど、マオはどう思ってるのかなーって」

「そ、れはっ」

「僕はマオに、生涯誰よりも僕の傍近くに居て欲しいと思ってるけど、マオはどうなのかなーって」

「うっ」

「僕はマオの事、誰よりも」

「分かった、分かったからもう勘弁してっ!」

「言ってくれるの?」

「ちょっと待って」




1447『基本なんでもお見通し』

「……分かったわ」

「何がかな?」

「伝わってるだろうことでも、改めて言葉にするのは恥ずかしいってことよ」

「ん、伝わって良かった」

「ねえ、話を終わらせようとしてない?」

「え、まだ続くの? もう終わりで良いんじゃない?」

「……ふーん」

「マオ?」

「言えって言ったのランなのに、いいんだ?」




1448『風の音』

「言ってくれると嬉しいなってだけで、別に言えって命令するつもりは無いよ。そもそも僕に、マオに命令できる権利とか無いしね」

「あたしに命令できるヒトなんてそう居ないわよ」

「少しは居るの?」

「仕事関係なら、まあ」

「それはそっか」

「……ね、ラン」

「ん?」

「あのね」

「うん」

「  」

「え?」




1449『子供みたい』

「っ、そう何回も言わないわよ!」

「まだ何も言ってないけど」

「言われる前に反論しておくの!」

「してない発言に反論されても、僕としては戸惑うしか」

「それはごめんなさいね!」

「分かった」

「何がよ!」

「聞こえなかったけど、マオの反応から何を伝えようとしてくれたかは分かったよ。ありがとう」




1450『女郎小屋』

「マオ? 倒れそうなくらい赤くなってるけど、大丈夫?」

「大丈夫じゃないわよいきなり理解を示さないでよリアクションに困るじゃないの」

「えーと、ご免?」

「悩むなら謝らないでよ」

「ご免」

「改めて謝れって言ったわけじゃないわよ……ごめんちょっと待って。理不尽なこと言ってる自覚はあるから」




1451『基本なんでもお見通し』

「……」

「…………」

「………………」

「ねえ、ラン」

「もう良いの?」

「うん。まだ混乱は治まってないけど黙ってもらってても落ち着かないだけだって分かったから黙らなくていいわ。ありがと」

「どう致しまして、って問題が解決してないけど言っても良いものかな?」

「いいわよ」

「そっか」

「そうよ」




1452『君のための命』

「そろそろ休もうか」

「あたしどうしよう」

「せっかく取った部屋だし、一度くらい使わないと勿体無いよ?」

「でも、昨日の宿のヒト? だったかしら。結局解決してないんだけど、いいの?」

「あー、その問題があったか」

「もしかして、忘れてたの?」

「そういうわけじゃ……うん、忘れてた」

「素直ね」




1453『お人好し』

「覚えてたら、それとなく従業員チェックくらいはしてたよ」

「でしょうね。まあ大丈夫じゃない? あたしも忘れてたから、どうこう言える立場じゃないけど」

「うーん。従業員が本物でも偽物でも、結局昨夜の訪問者は何だったんだって疑問が残るんだよね」

「じゃあ、あたしこっちの部屋の床で寝るわね」




1454『湖の底』

「それは駄目」

「なんでよ」

「マオを床でなんて寝かせられない」

「ここはランの部屋よ。今日こそランがベッドで寝るべきよ」

「マオが床で寝てる状況でしっかり休むなんて出来ないから無理」

「あたしだって、ランが座って一晩越えちゃってるのに不満なんだから、今日こそあたしの主張を聞いてもらうわ」




1455『俺のお前を傷つけるのは例えお前でも許さない』

「ここが僕の部屋なら、家主の意見が優先されるべきだと思う」

「宿の部屋なんだから疲れを取るために活用するべきよ。あと家主は宿屋のご主人でしょ」

「でも」

「あたしが床で寝るか、あたしと一緒にベッドで寝るか、どっち?」

「えぇえええ」

「……予想通りだけど、そこまで戸惑われると腹が立つわね」



1456『癒してくれる』

「違うんだ、マオと一緒が嫌なんじゃなくて」

「知ってるわよ」

「へ?」

「そんなことより、どっち?」

「えぇー」

「野良猫がベッドに入りこんだとでも思って、やりすごせないの?」

「無理だよマオだよ!?」

「自分で言うけど毛並みふわふわよ?」

「それは髪の毛でしょ」

「毛並みは毛並みよ」

「大分違う」




1457『足の皮が擦り切れるまで走るから』

「早く決めてくれないと、夜が明けちゃうわよ」

「三番で」

「分かった、力尽くね」

「それアリなの?」

「別にランもやっても良いわよ。あたしも全力で抵抗するけど」

「僕がマオにそんな事できないと分かってて言ってるね?」

「じゃあ諦めてね」

「……分かった、夜が明けるまで逃げ切るね!」

「寝てよ!」




1458『白無垢』

「分かった、ベッドで寝る」

「ホント!?」

「その代わり、マオも僕のお願いを一つ聞いてくれる?」

「あたしにできることだったら、いいわよ」

「じゃあ、抱き枕になって」

「へ?」

「マオの要望通りベッドで休むから、その間マオが僕の抱き枕をやってくれるならベッドで休む」

「だきまくら?」

「抱き枕」




1459『これもひとつの愛し方』

「ハードル高すぎない?」

「マオの要求は、僕にとってそれくらい困難だという事」

「ちゃんとベッドで休んでって言ってるだけじゃない」

「マオこそ、僕と一緒のベッドは平気なのに、抱き枕はハードルが高いってどういう事かな」

「だって」

「ん?」

「……ラン、分かってて言ってるわね」

「そうだね」




1460『女郎小屋』

「僕の葛藤を分かってもらうには、マオにも同レベルの困難に遭遇してもらう事が一番手っ取り早いと思って」

「だって、だって」

「ぐ」

「ラン?」

「ご免ねマオ。無理言った僕が悪かったから泣かないで」

「ないてない!」

「泣きそうだよ?」

「泣きそうってことはまだ泣いてないってことよ!」

「そうだね」




1461『今でも好き』

「マオの心理状態はとても理解できているつもりだけど、その顔は僕に対して攻撃力が過剰すぎて辛いので頬の赤みか涙かせめてどっちかにしてください」

「え、と?」

「タイム」

「え、あの」

「ちょっと頭冷やさせて」

「あたし何かした?」

「マオは何も悪くないけど僕が理性を取り戻すまでちょっと待って」




1462『メシマズ』

「あ、あたしはいない方がいい? 夜食でももらいに……ってもう終わってるわよね。厨房借りてなにか作ってくるね」

「待った」

「ラン?」

「大丈夫、何か突然大丈夫になったから!」

「それならいいけど……ねぇラン」

「何、マオ?」

「そんなに、あたしに料理させたくない?」

「そういう訳じゃないけど」




1463『だから、そばに居れば良いの!』

「じゃあなんで止めたの」

「別行動して問題無いなら、二部屋取ってるのにわざわざ同じ部屋で寝る必要無いでしょ」

「その通りだけど。ねぇ、ラン」

「何、マオ?」

「もう一度、今度はあたしの目を見て言える?」

「同じ話を何度もしなくても良いんじゃないかな」

「目を逸らしたままじゃあ説得力ないわよ」




1464『袋小路』

「本当に、マオにご飯を作らせたくない訳じゃないんだよ」

「じゃあ何を作らせたくないの?」

「甘味かな」

「なんでよ、ランはよく作ってくれるじゃない」

「だからだよ。マオが食べる分は僕が作りたいの。だからマオは作っちゃ駄目」

「じゃあランが食べる分だったら、あたしが作っても問題ないわよね?」




1465『他には何もいらないから』

「僕あんまり甘いものは食べないんだけど」

「食べないのに作ってたの?」

「マオが美味しそうに食べてくれるから」

「あたしと会う前からお菓子作りしてたわよね?」

「作れるかなってやってみたら、なんか楽しくなっちゃって」

「できないことを探してたって、アレ?」

「ちょっと聞こえが悪いけど、それ」




1466『(女)王様はご機嫌斜め』

「じゃあそのノリでちゃんとベッドで寝てね!」

「じゃあマオは僕の抱き枕を務めてね?」

「無理言わないでよ!」

「それは僕の科白だよ!?」

「あたしはただ、ランの部屋でランにベッドでちゃんと休んでって言ってるだけじゃない」

「僕はただ、マオの言ってる事がどれだけ無理難題かを示してるだけだよ」




1467『「ふざけてんのか?」「いたって真面目だが?」』

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「あたしが床で寝るのも一緒にベッドで寝るのも嫌なのよね?」

「嫌って言われるとちょっと違うけど」

「あたしと一緒に寝ることはできないんでしょ?」

「うん」

「なのに抱き枕としてなら大丈夫ってなんなのよ矛盾してない!?」

「マオにもほぼそのまま当てはまるからね!?」




1468『スパイス』

「なにがよ!?」

「僕と一緒のベッドで寝ても平気なのに、僕の抱き枕にはなれないって主張の事だよ!」

「だって恥ずかしすぎるじゃない!? ランに抱きしめられたまま寝るとか、できるわけないわよね!?」

「一緒のベッドは恥ずかしくないのはどんな理屈?」

「野営だと思えばいけるかなって」

「野営」




1469『投げ棄てたもの』

「待った。野営でも一緒に寝てはいないよね?」

「あなた、まさか今まで寝てなかったの? それは由々しき問題よ?」

「いや寝てるよ、ちゃんと寝てる。でも交代で火の番してるから、一緒に寝てるとは言えないでしょ」

「本当ね? 信じるわよ? 嘘だったら次からランを絞め落としてでも休ませるわよ?」




1470『うなじ』

「それは困るなあ、火の番が交代できなくなる」

「あのね、ラン」

「ん、何?」

「自分で言っといて何なんだけど、もっと根本的なところで拒否しなさいよ!」

「根本的な所?」

「なんで絞め落とされた場合の心配してるの、そもそも落とされないようにしなさいよ! しかもそれ結局あたしの心配でしょ!?」

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