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小猫と親鳥  作者: かすみづき
EXTRA 婚約から始まる話
48/59

1351-1380

1351『迷路の中にいるみたい』

「姉女房」

「姉の坊」

「甥っ子かな?」

「ラン、甥っ子いるの?」

「いや、そもそも兄弟姉妹が居ないから」

「一人っ子?」

「そう」

「ふーん」

「マオ?」

「じゃあ、あたしがランを独り占めできちゃうわね」

「その理屈だと、僕がマオを独り占めする為にはシオンをどうこうすれば良いって事かな」

「物騒ね」




1352『来るか分からない明日じゃなくて、今すぐ君に触れさせて』

「ぬ?」

『シオン、どうかしたの』

「今、僕の愛しい妹を奪わんとする挑戦を受けたような」

『アラアラ。それでシオンはどうするの?』

「無論、受けて立つ」

『可愛い子に景品扱いするなって叱られるわよ?』

「大丈夫だ。たとえボクに勝っても、それはシャオに挑戦する権利を得たにすぎない」

『アラアラ』




1353『さよならから始めよう』

「お祭りも一通り見てまわったし、そろそろ宿に戻ろうか」

「そうね。窓の外はまだ居るかしら」

「流石にもう居ないんじゃない?」

「もしも、まだ居たら?」

「うーん、その根性と若さに免じて、流石に話を聞こうかな」

「そうね、さっきの子の弟なら、一桁前半の歳だもの」

「そう聞くと罪悪感が湧くなぁ」




1354『狐の嫁入り』

「あら」

「降ってきたね。どうする?」

「もう宿まで走りましょ。ここまできたら、雨宿りするよりその方が早いわ」

「ん、そうだね」

「でも、これでさすがにいないでしょうね」

「そうだね。風邪をひかないと良いんだけど」

「この分ならすぐ止むでしょうし、量も大したことないから大丈夫だとは思うけど」




1355『この視線に気づいて』

「あ、マオ」

「何、ラン」

「後で僕の部屋に来てくれる?」

「良いけど、どうかしたの?」

「居るんだよ」

「何……ってまさか!?」

「そう。とりあえず流石に部屋に入れておくけど、子供の相手をする自信が無いので助けに来てください」

「すぐ行くわよ」

「いや、着替えてきて」

「でも」

「マオ、透けてる」




1356『唇を舐めた』

「すけ?」

「服」

「っ着替えてくる!」

「そうして」

「ラン」

「何?」

「一応、気を付けて。子供じゃないかも知れないし」

「とっくに帰ってて、別人が居るかもって事?」

「そうかも知れないし、確認してない以上初めから勘違いしてるかも知れないわ」

「何を?」

「開発者は当然持ってるわよね、空飛ぶ靴」




1357『私はここにいる』

「ラン、入っていい?」

「どうぞ、開いてるよ」

「おじゃましまーす、ってアラ。そのタオルまみれのお兄さんがあの子の弟?」

「いや、マオが大当たりだった」

「つまり、空飛ぶ靴の作者さん?」

「らしいよ」

「ランの知ってるヒトだった?」

「多分ね」

「鳳凰種って、空を飛べたわよね?」

「鳥族だからね」




1358『この身が壊れても』

「自力で飛べるのに、どうして空飛ぶアイテムを作ろうと思ったのかしら」

「自力で飛べない者を飛ばせることに意味がある。鳥が空を飛んだところで誰も驚かん。そういうことだ」

「つまり君は、魚に空を飛ばせたいって事かな」

「中々に的確な例えだな」

「ラン、分かったの?」

「変わり者だって事だけね」




1359『はじめて見た君の瞳』

「成程。汝はセイランか」

「僕と君とは初対面の筈だけど?」

「汝が我を知っておったのと同じ事だ」

「セイランって名前は有名なの?」

「未成熟の同胞が二つ名を与えられるのは珍しいからな」

「その件は話題にしないでくれるかな」

「分かった」

「随分あっさりね?」

「不本意な評価ほど不要なものは無い」




1360『護るということは』

「ところで、一つ訊きたいんだけど」

「何だ」

「ここの窓の外に居た理由と、昼前までそこに居たヒトとの関連性」

「ランそれふたつ」

「マオ、気にするところはそこ?」

「あ、そうね。つまり窓に張り付いてたのはこのヒトじゃないってことだものね」

「幼子が雨に濡れては大事になりかねん。故に帰らせた」




1361『手毬唄』

「何で靴を履いたヒトの見た目年齢を上げようと思ったの?」

「幼子が単身出歩くのは拙いのだろう」

「そこで保護者と行動させるって発想からズレたのはどうしてかと思って」

「平生は単身出歩いておるのに祭りというだけで制限される。乳児でもあるまいに過保護だろう」

「分かるような分からないような」




1362『空に手を伸ばした』

「祭りの最中はヒトの出入りが激しくなるからだと思うよ」

「そうね、人拐いがいないとも限らないもの」

「それはヒトの大小に関わらず伴う危険だろう」

「子供の方が拐いやすいと思われるんだよ、対人経験値とサイズ的に」

「難解な」

「まあ、結果だけ見れば見た目を変化させるのは良かったんじゃない?」




1363『立てば芍薬坐れば牡丹、歩く姿は』

「どうして?」

「靴を奪って売ってしまおうと考える輩が出たとしても、靴さえ脱げばその子は狙われないだろう?」

「確かに、架空の人物を探すようなものだものね。子供の安全が守られるのは良いことだわ」

「発案者にその意図は無かったみたいだけどね」

「保護者に叱られないように、って感じだものね」




1364『この地平線の向こうへ』

「我はそのような事はいちいち考えておらん」

「それじゃあ、どうして外見を変えるような仕組みを作ったの?」

「試験運用を頼んだ子等が単身出歩けぬと言うのでな。その問題点を解消したまでの事」

「つまり、特にこれといった考えがあったんじゃないのね」

「その解釈は心外だ」

「でもそういうことよね」




1365『これもひとつの愛し方』

「どうして子供に試験運用を頼んだの?」

「積載重量の上限がある」

「大人も履けるのを作って大人に頼むのは?」

「将来はその計画だ。その為の過程として軽量での試験運用を試みた」

「町の子供達とはなかよしなの?」

「我の敷地ではよく見るぞ」

「……その子達は何か言ってる?」

「度胸試しだそうだが」




1366『神頼み』

「あなたの家、おばけ屋敷なの?」

「心霊の類いの実存の可否は未検証だ。我は見た事は無い」

「うーん……例えば、蔦がびっしり外壁にはりついてるとか、昼でも薄暗いとか、めちゃくちゃ古いとか」

「外観は興味が無い。暗闇での作業は危険ゆえ照明は欠かさん。築五百年は越えているらしい」

「五百!?」




1367『君がくれた居場所』

「建物って五百年も持つものなの!?」

「破壊されなければ千年持つ建造物も有ると聞く」

「せんねん!?」

「そこまで驚く事だろうか」

「あー、成程」

「ラン?」

「単純に種族の差だね。鳳凰種の里だと建って百年未満は新築扱いされる程度には、古い建物ばっかりなんだ」

「他里は違うのか」

「みたいだよ」




1368『君がそこにいた』

「百年以上前の建物なんてそう見ない、わよね?」

「マオ、なんでちょっと自信なさそうなの?」

「集落の常識とか知らないもの」

「あー、そっか。そうだね、大体築五十年越えたら修繕しないと住めないし、百年越えたら正確な築年数を知らないヒトが多くなるから、あんまり知られてないんじゃないかな?」




1369『紫陽花の木で雨宿り』

「つまり、築百年を越えてる家は少ないの、よくあるの?」

「材料と立地によるかな。極端な例だけど山肌の洞窟や大樹のうろなんかだと、千年くらい残りそうでしょ?」

「なるほど。じゃあ、アルゴスは?」

「壁があって屋根もあるタイプの家が並んでるよ」

「汝等はアルゴスへ行くのか」

「その予定だけど」




1370『君は僕の華』

「子が産まれるのか」

「こっ」

「まだだよ」

「そうか。祝儀はまだ早いか」

「ここっ」

「かなり早いね。僕ら婚約したばかりだから」

「そうか」

「こここっ」

「時に汝の妻は鶏なのか」

「あー、いや」

「にわとりじゃないし妻でもないわよ!」

「しかし」

「まだ違うの! これ以上は触れないで!」

「分かった」




1371『魂の帰る場所』

「あっさりね」

「ちなみに、何が分かったのか訊いても良いかな」

「汝等が子作りの為にアルゴスへ行く」

「っ!?」

「うん、酷い勘違いだね」

「しかし子も居らぬのに向かう夫婦者というのは大抵そうだと聞くが」

「……ラン?」

「違うから。言葉だけで倒れそうなマオに何かする気なんてある訳ないでしょ」




1372『戒め』

「なにもしないってやたらいうオトコはしんじるなって」

「僕そんな胡散臭いこと頻繁に言ってるかな!?」

「……言ってない」

「だよね!? ていうかマオの嫌がる事とかしないから! 安心してくれて良いから!」

「あたし、魅力ない?」

「待って。どうしてそうなったの……いや待って、何も言わないで」




1373『紅の色』

「マオは雨季を避けたいんだよね!」

「それはついででしょ」

「ついでなんだ」

「まさかラン、本気でそんな理由だと思ってたの?」

「あー、まあ半分くらいは」

「ひどいわ! 雷が怖いからって結婚に頷くような女だと思ってたのね!」

「マオ、お母さん迷言コレクションは良いから」

「なんで分かったの?」




1374『杯を交わす』

「明らかにマオの語彙じゃないでしょ」

「そう?」

「そうだよ」

「母さんみたいな女性はダメ?」

「マオのお母さんよりマオが好いな」

「そ、そう」

「ん」

「っふ」

「ん?」

「くははははははっ」

「わっ」

「唐突に笑いだされるとびっくりするんだけど」

「すまん。汝等の遣り取りの愉快さに堪えきれんかった」




1375『信じる』

「何て言ったかしら」

「マオ?」

「ねえ、ラン。前に似たような体験をしたことがある気がするのって、何て言うんだったかしら」

「デジャヴの事?」

「それかしら。あと、実際に似たようなことあったわよね?」

「ん?」

「ランと話してたらそこに居たヒトに爆笑されたことが、前にもあったような」

「あー」




1376『暦を辿る』

「言われてみればあったような気もするけど……誰だっけ」

「ユンちゃんとか」

「ガーディかも」

「それならおっさんの方な可能性もあるわよ」

「あるね。ていうかマオ、まだあの二人は名前で呼んであげないんだ?」

「本人が反省して謝るかあたしの気がすめば止めるわよ」

「つまりまだまだ止めないんだね」




1377『紅の色』

「名前といえば、発明家さんのお名前は?」

「そういえば、まだ聞いてなかった」

「汝等の名を我も知らんぞ」

「じゃあ、ちょっと遅いけど自己紹介しましょうか。とりあえず、言い出しっぺってことであたしからね。猫族のシャオマオよ」

「なら次は僕かな、鳳凰種のセイラン」

「同じく鳳凰種タガラという」




1378『暴いて、全部、壊すくらいに』

「タガラさんはどうしてここに?」

「試験運用の協力者との約定を守る為だ」

「約定?」

「日没前には家に帰すと」

「協力者ってつまり保護者か」

「然り」

「じゃあ、ここの窓に貼り付いてた子がどうして貼り付いてたか、聞いてない?」

「既に船を漕いでおったので速やかに帰還させた。特に話はしておらん」




1379『神頼み』

「えーと、それじゃあタガラさんはどうしてここに?」

「汝の連れに引き込まれたからだ」

「僕が人浚いみたいな言い方はしないで欲しいんだけど」

「ランはどうしてタガラさんを引っ張り込んだの?」

「マオ、言い方。土砂降りの雨でずぶ濡れになってるヒトが部屋の前に居たら、雨宿りくらいさせるでしょ」




1380『これもひとつの愛し方』

「それにしてはタオルがちっとも濡れてないのは何でなの?」

「最初は普通にタオルを一枚渡そうとしたんだよ。そしたら体表と水滴を解離すれば良いとか言ってそこら辺に水分を弾こうとしたから、頭使えよ馬鹿じゃないならって言葉と部屋のストックのタオルを投げてた」

「それでタオルまみれだったのね」

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