1321-1350
1321『首に咲く花』
「やらしい」
「分かった、マオが話が分からなくてつまんないのは分かったから、その言い回しはお願いだからやめてください」
「……そんなにイヤなの?」
「やだ」
「ふふっ」
「マオ」
「あ、ごめんなさい。違うの、ランの口から『やだ』なんて言葉がでてきたのが意外で」
「そう?」
「うん、なんか可愛い」
1322『君がそこにいた』
「あ、ランはキレイって言われるのイヤだったわよね。じゃあ可愛いもダメかしら」
「あー、いや綺麗よりは大丈夫」
「ホントに?」
「うん」
「じゃあ、可愛いなら言ってもいい?」
「綺麗とか花が似合うとかよりは良いかな」
「そう」
「うん」
「お二方、ここに第三者が居るのをお忘れでしょう」
「あ」
「あ」
1323『立てば芍薬坐れば牡丹、歩く姿は』
「仲の良い恋人達を見ると、我が妻に会いたくなって困りますね」
「こっ!?」
「婚約者です」
「おや、それは失礼。しかし白百合の君にもついに伴侶ですか、郷里で泣く者が続出しそうですね」
「しらゆり?」
「何で知ってるんですかっ!」
「ラン、心当たりあるの?」
「いや知らない」
「でも今」
「忘れて」
1324『物好き』
「アルゴスでは有名みたいだけど?」
「マオは、僕の二つ名知ってるよね?」
「うん」
「あれと同じく忘れ去りたいやつだから、できればマオは話題に乗らないでいてくれると僕が泣いて喜びます」
「分かったわ」
「本当に?」
「ランが本気で嫌がってることくらい、分かるもの」
「マオ大好き!」
「はいはい」
1325『風の音』
「恋人という言葉には大変動揺していたのに、面と向かって告白されるのは平気なんですね?」
「こくはく?」
「今、大好きって言われましたよね、お嬢さん」
「ラン、いまのこくはく?」
「改めて言おうか?」
「いい!」
「それはどうぞって事かなあ」
「違うもん!」
「僕の気持ちは要らない?」
「……いる」
1326『納涼』
「初々しいですねえ」
「そりゃあ昨日告白したばかりですから」
「おや、恋人期間ゼロですか」
「マオが結婚も恋人も無理だと言うので」
「ああ、成程。ですけど、婚約者もなかなかの言葉だと思いますけど」
「彼女が慣れてくれるまで結婚を待つ、という意味での婚約者ですから。言ってしまえば、予約です」
1327『星月夜』
「予約されている、という状況もなかなかに強いと思いますけど」
「正直に言ってしまえば、マオが平気ならそれはアリなんですよ、どんなパワーワードであってもね」
「それもそうですね。ところで大丈夫ですか?」
「何がでしょう?」
「さっきからお嬢さんが小刻みに震えていますけど」
「ランのばかぁ!」
1328『暦を辿る』
「なんでそういうこと言っちゃうのせっかくちょっとコツが掴めてきてる気がしてたのにもうそれどころじゃなくなったわよばかっ」
「あー、ご免なさい。ついうっかり」
「……口先だけの謝罪する男は信用するなって、母さんが」
「本当にまじでご免なさい見捨てないでください」
「見捨てるって何よバカ!」
1329『解けない帯』
「あたし気付いたのよ」
「いきなりトーンが戻ったね。何に?」
「怒ってると、わりと普通に話せるなって」
「言われてみればそうだね。でも怒るのってエネルギー要るから、ずっと怒ってる訳にはいかないと思うよ」
「そうなのよね。ていうかそもそも、それじゃあコミュニケーション取れなさそうじゃない」
1330『折り鶴に込める』
「今とれてたよ?」
「ランとじゃなくて、それ以外のヒトとの話よ。そもそもランはあたしが慣れなくても困らないって言ってくれたじゃない」
「ああ、うん。だって可愛いし」
「かわっ……そうじゃなくて、そもそも宿とったりギルド行ったりするのに不便だってところが発端の筈なのよ。お荷物はイヤなの」
1331『君がくれた居場所』
「マオはいつもそう言うよね」
「当たり前じゃない」
「マオなら何にもできなくても、歓迎するんだけどなあ」
「負担が片寄る関係は長続きしないって」
「マオのお母さんが?」
「父さんも言ってたわ。負担が片寄っちゃいけないから、お互いに丸投げ合戦してたって」
「それは良いの?」
「良いんじゃない?」
1332『髪飾り』
「相手が自分を頼ってくれると確信してないと、丸投げなんてできないじゃない」
「あ、そういう発想なんだ。お互いに丸投げするけど、頼られたら動くって事?」
「そう。相手が何も言ってないのに手を貸したら負け」
「負け?」
「そう。負けたら勝者の指定した格好で暫く過ごすって罰ゲームが発生するの」
1333『物好き』
「なんか、不思議な罰ゲームだね?」
「これで結婚式の衣装を決めたんですって」
「揉めたの?」
「そうらしいわ、具体的な話は知らないけど。出席者は痴話喧嘩としか教えてくれないし」
「本人に訊けば良いんじゃない?」
「訊こうとしたら何かしら起こってそれどころじゃなくなるから、そのうち諦めたの」
1334『ねぇ、あんたは誰のもの?』
「お父さん?」
「母さんもわりとトラブル吸引率高いから、何とも言えないわ」
「え、吉祥さんもなの?」
「災い転じて、を素でやるのよ」
「成程」
「お嬢さんは吉祥と軍師のお子さんでしたか」
「知ってるの?」
「二つ名持ちを知らない方が珍しいでしょう、あ、呼ばれたので失礼しますね。縁があればまた」
1335『たまには抱き締めて欲しいの』
「唐突に去っていったね」
「話しかけてきた時も唐突だったわよ。そういえば簪を知らないかって訊かれたんだけど、結局教えてないわ。ユンちゃんのお父さまなら、教えるべきだったかしら」
「良いんじゃない? また今度って事で。ところでマオ」
「何?」
「腕を組むのと肩を抱かれるの、どっちが良い?」
1336『彼方からの呼び声』
「なっ」
「なんで急にって、お祭り見るついでに恋人っぽい事もしたいなぁって」
「こっ」
「恋人で駄目なら婚約者でも未来の伴侶でも何でも良いよ」
「どっ」
「動機としては、とにかく何でも良いからマオとくっついていたい」
「全部先読みしないでよ!」
「やった全問正解」
「遊ばれた!」
「人聞きの悪い」
1337『蜜色の唇』
「始めから遊ぶつもりだったのね!?」
「すっごい人聞きが悪いよ!?」
「だってあたしの言うこと全部先回りするから……!」
「そりゃあ、状況とマオの性格を鑑みれば大体予想できるし」
「予想ダービー」
「マオさん何言ってるのしっかりして!?」
「しっかりしてるもん!」
「うん、平常心ゼロだね!?」
1338『例えどこにいたって』
「平常心だもん! 全力で閉場神だもん!」
「待って今なんか変な神様居た!」
「居ないもん!」
「えーとマオ、とりあえず落ち着こう、とりあえず」
「やだ」
「えぇー」
「お祭り見るの!」
「はいはい」
「ラン」
「ん?」
「手」
「え?」
「つなぐの!」
「成程、それはセーフなんだ」
「……イヤ?」
「まさか」
1339『折紙』
「マオ、紙製の小物入れだって」
「星箱ね」
「成程、言われてみると星だね」
「あたしも折れるわよ。これよりもっと簡単なやつだけど」
「折れる?」
「あれ、ランはやったことない?」
「僕の故郷には無かったなあ」
「じゃあ、今度教えてあげる。まずは鶴ね」
「最初から難易度高いよ」
「あら、鶴は基本よ」
1340『さよならから始めよう』
「紙芝居なんて久しぶりに見たよ」
「でもあの紙芝居、恋人にさよならって告げられるところから始まる恋愛モノだったわ。紙芝居の対象って子供でしょ?」
「吟遊詩人の詩曲が起源だからね」
「どういうこと?」
「昔から吟遊詩人が吟うのは英雄伝や悲恋が多かったから、残る話もそういうのが多いんだって」
1341『狐の嫁入り』
「その二択なら英雄伝にすれば良いのに」
「明日は英雄伝かも知れないよ」
「毎日違うお話ってことね、それなら分かるわ」
「もしくは一日で何本かやってるとか……ああでも、今日はさすがに店仕舞いかな」
「あら、雨。そうね、紙芝居だもの、濡れたらダメになっちゃうわ」
「すぐ止みそうではあるけどね」
1342『耳』
「いたっ」
「マオ?」
「なんか当たった」
「見せて。んー、これかな? ビスが髪に絡まってる。ちょっとじっとして……ん、取れた。だけどビスなんて、屋台骨が不安になる落下物だよね」
「鳥が巣に持ち帰る途中だったなら平和なんだけど」
「それはそれで不安だよ。骨組みからパーツ抜かれたりしてたら」
1343『空中散歩』
「すいませーん、それ私のビスです」
「え?」
「あ、上です上」
「ラン……まさか」
「いや、宿のは男だったから別人だよ」
「そう。なら、って女の子がスカートで上空にいるもんじゃないわよ!?」
「だーいじょうぶですよぅ。空用ペチコートで完全防御! してますから。でも、ありがとうございますね!」
1344『血を辿って』
「ここは宙を歩くのが普通なの? 大地を歩いてるあたし達が少数派なの?」
「そんなことないですよぅ、お二人の周りに歩いてるヒトたーくさん居るでしょう?」
「でも空を歩くヒトあなたで二人目よ、そんなホイホイ歩けるもの!?」
「あ、弟に会ったんですね!」
「え?」
「今回は我が家のターンなので」
1345『唇を舐めた』
「……ラン、空を歩く種族って居たっけ?」
「いや、水底を歩くのなら心当たりがなくもないけど、空中は知らない」
「なにそれ気になる」
「私も気になります!」
「ただの変人幻種だよ」
「ますます気になりますよぅ、この靴作ったのも変人鳳凰さんですもん」
「もしかして、自称大発明家?」
「知り合い?」
1346『この地平線の向こうへ』
「鳳凰種の中でも突出し過ぎた変人は、流石に噂になるんだよ」
「つまり、知り合いではないけど知ってる?」
「どうかなあ」
「自称はよく知りませんけど『これ大発明じゃね?』が口癖みたいですよぅ」
「多分当たりだ」
「意外とそこら辺にホイホイ居るのね、鳳凰種って」
「いやこの頻度は珍しいからね?」
1347『誓いを君に』
「マオの周りには幻種が多いよね」
「たまたまよ」
「それと同じだよ」
「そう言われると反論できないわ」
「たまたまだからね」
「でも空飛ぶ靴を作っちゃうようなヒト、噂になりそうなのに聞いたことないわよ」
「ああ、それは」
「この靴、じゅーりょーせいげんがあって、こどもしかはけません!」
「ね?」
1348『首に咲く花』
「待って。じゃあランってば、子供相手に大人げなく閉め出したの?」
「いや、僕が見た相手は成人してたような」
「そもそもあの子もあたしと同い年くらいに見えるわよ」
「それはですねー、この靴のオプション機能なのです!」
「大人に見える機能?」
「子供が一人でうろうろはダメだって言ってました!」
1349『夜這い』
「うん?」
「ちなみにあの靴、装着者の年齢プラス十年っていう加算方式だから」
「つまり?」
「履いたヒトは唐突に老ける」
「ヒトによっては悪魔のアイテムね」
「僕はマオがおばさんになっても愛せる自信があります」
「待って突然はやめて夜這いするわよ!?」
「マオは混乱している」
「楽しまないで!」
1350『この着物、覚えてる?』
「だってマオが十年年とっても、僕には関係無いし」
「え」
「あ、ご免。言葉が悪かった。僕は気にしないって言いたかったんだけど」
「でも、十年よ?」
「マオは十年後いくつになってる?」
「二十五」
「僕は今二十三だから、年の差が縮まるね。後は、幼妻が姉女房に変わるくらいじゃない?」
「如意棒?」




