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小猫と親鳥  作者: かすみづき
EXTRA 婚約から始まる話
45/59

1261-1290

1261『新月』

「観賞用」

「そう。見てるだけなら、ぼくのいとしいいもうとうんぬんかんぬん言ってても関係無いらしくて」

「ランは一時期兄さんと組んで仕事したって言ってたわよね?」

「そう。だからシオンの語りをBGMに、さわさわしてる女性陣の気配をよく察知してたよ」

「それ、多分兄さんだけじゃないと思う」




1262『肩越しに見えた景色』

「あとね、ラン」

「うん。何かな、マオ」

「言おうかどうしようか悩んだんだけどね」

「うん」

「すごく落ち着かないから言うけどね」

「うん」

「ランの背後の窓にね、張り付いたヒトのシルエットがずっとあるの」

「うん。そんな気はしてた。なんかべたっ、みたいな音したし、声のくぐもり方が変わったし」




1263『基本なんでもお見通し』

「あのヒト……ヒト、よね?」

「二本足で言葉を喋っているからね」

「ここ二階よね」

「空中歩けるタイプなんだろうね。あと先に言っておくと、僕は歩くのは無理だからね」

「そうなの!?」

「飛んだり滑空したりならともかく、歩行は無理だよ」

「空中移動は可能なのね」

「どうしてちょっと残念そうなの」




1264『悠かな道』

「ついにランにもできないことを見つけたかと思ったのに」

「そんなの普通にいくらでもあるよ」

「手段を問わずに結果だけ見たら、大抵のことができるじゃない」

「……そうだっけ?」

「そうよ」

「そんな事は無いと思うんだけどなあ」

「あ」

「ん?」

「やっぱり見つけたかも、ランができないこと」

「何?」




1265『納涼』

「できないっていうより、ランにはどうしようもないことね」

「マオに好かれるとか?」

「なんでよ!」

「だってマオの気持ちだから、僕にはどうしようもない」

「違うしそれはできてるわよ! どうしようもないのは変なヒトに好かれる所よ!」

「どうしよう、前半は凄く嬉しいのに後半のせいで喜び損ねた」




1266『どうかその手を離さないで』

「うちの兄さんと仲良いし、自称ユノちゃんにもやたらと絡まれてたし。それにほら、今まさに現在進行形で、変なヒトが窓の外で粘ってるわけだし」

「その理屈だと、マオも変人の仲間入りしちゃうけど」

「なんでよ」

「だって、僕の事好きでいてくれてるんでしょ?」

「え、あっ、わわわるい!?」

「全然」




1267『君が護ってくれた』

「それは正直否定しないよ」

「えっ、認めちゃうの?」

「マオから言い出したのに、なんで意外そうなの」

「ランのことだから、断固として認めないかと」

「幼少期は苦労したよ、鳳凰種って変人の巣窟だから」

「なんかそう聞くと、めっちゃ可愛がられてた末っ子のイメージだわ」

「あぁ、今思うとそうかも」




1268『茜色』

「鳳凰種って子供が少ないからね。小さな同種が珍しいのか、里に居るととにかく誰かしらが構ってくれるんだよ」

「どうして子供が少ないの?」

「結婚や子育てをする気になるヒトが少ないんじゃないかな」

「個人主義ってことかしら」

「そうかもしれないけど、自分の世界に没頭するのが好きなんだと思う」




1269『舟に揺られながら』

「子育てしてたら、自分の世界に没頭はとても無理だろうし」

「そうなの?」

「そうだよ。寝食は忘れる、声をかけられても気付かない。そんな状態が一、二ヶ月くらい続くのなんてよくあるよ」

「それ、死なない?」

「死なないんだよ、不思議と」

「不思議で済ませちゃダメなんじゃないの、それ」

「そう?」




1270『鏡に映る姿』

「死人が出てからじゃ遅いわよ?」

「でも言って聞くなら、そもそも鳳凰種は問題児扱いされてないだろうし」

「問題児扱いされてるの?」

「今まさにマオにされてる」

「あたしは良いのよ」

「真面目に答えると、対策はそれなりにされてるかな。例の連絡網が割と強制なのはここら辺が原因の一端ではあるし」




1271『爪先』

「つまり、没頭してるヒトを引き戻すのも機能のうちってこと?」

「そう。ほら、夫婦喧嘩を連絡網でしてた夫婦が居たの、覚えてるかな」

「言ってたわね」

「ああいうしょうもない内容が垂れ流されてるって事は、今までその機能が必要だと認められてたからだと思うんだよね。改良したがりの暇人も多いし」




1272『手毬唄』

「無用の用ね」

「そうかも」

「で、ラン」

「うん……どうしよっか?」

「窓を壊されるのが一番困るかしら」

「それは平気。既に境界構築済みだから」

「いつのまに」

「マオと話しながらだね」

「境界構築って、結界とはまた違うの?」

「効果は同じだと思ってもらって大丈夫だけど、境界の方がより強力かな」




1273『君を忘れる夢を見た』

「今、窓を隔てて向こうとこちらは別世界になってるみたいな状態かな」

「世界の壁を壊すつもりでかからないとダメなのね」

「そうなるね。で、結界は遮断するものを術式に書き込むんだけどね、境界は通すものを書き込む方式なんだ。だから、全遮断なら境界の方が楽だったりする」

「へぇ、色々あるのね」




1274『狐の嫁入り』

「結界ができないってヒトは、多分その条件付けが下手なんだと思うよ」

「自分も弾いちゃうとか?」

「それは一度やったら学べる失敗だね。次は自分を組み込まなければ良いから」

「弾くものを書き込むのよね? 敵、とかじゃダメってこと?」

「まさにそれ」

「え?」

「その敵って、一体『何』なのかな?」




1275『傍にいること』

「つまり種族名なり固有名詞なり、その『敵』を表すものが必要なんだ」

「敵と味方に同種が居たら、種族名は使えないってことね」

「そうでもないよ。『猫族のシャオマオ』は一人でしょ?」

「重ねることで限定するのね」

「そう。ちなみに僕とユンは、目で見て随時判断する全手動型」

「大変じゃないの?」




1276『桜舞う、桜散る、降り注ぐ』

「結構便利だよ。内・外・放置の三つに分けるだけだし」

「放置?」

「結界内に入れないし、弾きもしないって事」

「よく分かんない」

「雨が降っている中で結界を張ったとしよう」

「うん」

「雨を弾くのが外、内部に溜め込むのが内、結界を素通りして天から地へと染み込むのが放置」

「何となく分かった!」




1277『折紙』

「今使ってるのは境界なのよね。何を許可してるの?」

「許可してるの前提なんだ?」

「だって、要は壁を作るってことだから、光も風も通さないはずでしょ」

「マオはどうして術が苦手なのかな」

「ほっといてよ」

「いや、それだけ理解できるなら使えそうだけどなって」

「紙がなければ折紙は折れないのよ」




1278『お人好し』

「マオって魔力適性無いんだっけ?」

「ないわね。補強適性がわりと強いから何とかなってるけど」

「聴力だけじゃないんだ?」

「身体補強指数が同種の同年代の中ならトップクラスだって言われたわ」

「ああ、そうだね。ガーディやディアンと追いかけっこできるくらいだもんね」

「手を抜かれてるけどね!」




1279『戒め』

「動物の猫にできる事は大体できるし、ヒトにできる事も当然できるから、結果としてとんでもなく俊敏なんだよね、マオは」

「でもランはその俊敏を楽々見切るじゃない」

「そりゃあ、種族特性イコール魔力補整とすら言われる鳳凰種ですから」

「ああ、だからやたらと万能っぽいのね。鳥の要素はないの?」




1280『基本なんでもお見通し』

「それはヒトによりけりかな」

「ランのモノクルは暗視の魔法具だったわよね、さっぱり夜目が利かないからって」

「そう。よく覚えてたね」

「ランのことだもの」

「そ、そう」

「どうかした?」

「なんでもないデス」

「そう? なんでもなくない気がするけど」

「大丈夫デス」

「何でちょっとカタコトなの?」




1281『この地平線の向こうへ』

「ほんとに気にしなくて良いから。で、僕のモノクルがどうかしたの?」

「あ、うん。モノクルじゃなくて、夜目が利かないことの方なんだけど」

「ん?」

「ランって鳥目なの?」

「そうだよ?」

「何を今更、みたいなノリで認めたわね」

「言ってなかったっけ。まぁ、視力以外にもヒトには色々器官があるし」




1282『背中合わせ』

「夜中に奇襲かけても成功しないのは、やっぱり鳥目克服の特訓とかしたから?」

「いや、これは克服できる類いのものじゃないよ、だからこその暗視の魔法具だし。それと、鳥族イコール夜目が利かないと思わない方が良い」

「そうなの?」

「夜闇に紛れて狩りをする鳥だっているでしょ?」

「それもそうね」




1283『文使い』

「……ねえ、ラン」

「何かな、マオ」

「いいかげん観念するべきだと思うの」

「うん、そうだね。でも関わると面倒くさいよって、僕の勘が言ってるんだ」

「それはあたしも否定できないわ。でもこのしつこさだと、明日まで粘られそうじゃない? そしたら出発できないわ」

「よし。妥協点で筆談してみよう」




1284『君がくれた居場所』

「普通に会話するんじゃダメなの?」

「ん、どうして?」

「だって、筆談ってことはつまり外に紙を出して、相手が書いたらまた持ち込んでってするわけでしょ? 結界だって出入りが多いと穴が開きやすくなるっていうじゃない」

「ああ、それなら平気。こっちからは筆談で、あっちはそのまま声を通すから」




1285『昼寝』

「えっと、つまり?」

「内側から貼り紙して向こうに勝手に読んでもらって反応を窺おうって事かな」

「素直に話した方が早いんじゃないの?」

「会話したくない。面倒な話だった時に、貼り紙なら昼寝してて聞こえなかったとかなんとか言えるし」

「紙を貼ってるんだから、起きてるって分かるんじゃない?」




1286『陽だまり』

「えーとじゃあ、貼り紙してから徐々に光を透過させていって、いつの間に? みたいな演出をする」

「それ、ほんとにやる気?」

「言ってみただけ」

「そうよね。そもそも今も光は通してるわよね?」

「ああ、それは内側から見た場合だけだよ。外から見たら、この部屋は謎の磨りガラス効果に守られてます」




1287『鏡に映る姿』

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「今ふと思ったんだけどね」

「うん」

「境界って、窓だけなの?」

「窓のある壁一面だね」

「一面、だけ?」

「そうとも言うね」

「……つまり、窓の外のヒトがちゃんと宿の中を通って訪ねてきたら」

「とりあえず、話を聞きはしたかもね」

「……礼儀って、大事よね」

「そうだね」




1288『君の為なら』

「そもそもね、しつこく窓に張り付いてるけど、何者なのかしら。あたしは見覚えないんだけど、ランは?」

「覚えは無いし、そもそも最低限のマナーも無いヒトとは関わりたくないけど、マオに会話させるくらいなら頑張るよ」

「あたしに用があったらどうするの?」

「僕が全力を以て万難を排する所存です」




1289『涙の痕』

「オブラートを取っ払うと?」

「マオに近付く変な輩は排除します」

「ちょっと過保護じゃない?」

「婚約者を守って何が悪いの?」

「こにゃっ」

「婚約者」

「こんにゃく」

「分かった分かった。僕が悪かったから、落ち着いて」

「うー」

「マオ」

「な、なによ」

「忘れてたでしょ?」

「なにを?」

「婚約の話」




1290『終わりの始まり』

「マオ、無理して慣れようとしなくて良いよ」

「なれる、ちゃんと慣れるもん!」

「責めてる訳じゃないよ」

「なれるもん」

「マオ、落ち着いて」

「うー」

「さっきまで普通に話せてたのは、つまり意識しなければ大丈夫って事だから、無理に今日中に慣れないとって思い詰めなくても良いんじゃないかなって」

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