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小猫と親鳥  作者: かすみづき
EXTRA 婚約から始まる話
43/59

1195-1230

1195『貴方はどこにいますか』

「待って。落ち着くから待って」

「待つよ、いくらでも」

「そういうこと言わないで落ち着けないから!」

「ん、ご免」

「えーと。蒟蒻の話だっけ?」

「婚約」

「……コニャック?」

「婚約」

「こっ」

「婚約」

「こここっ、ここここここっ」

「こけこっこー」

「こーん!」

「マオご免、冗談だから。帰って来て」




1196『来るか分からない明日じゃなくて、今すぐ君に触れさせて』

「ちょっとうろたえすぎたわ……」

「お疲れ」

「誰のせいよ」

「僕かなぁ」

「何でよ、あたしのせいに決まってるじゃない」

「んん?」

「あたしがもっと冷静になれれば、ランがこんな手間暇かける必要なんてなかったもの」

「マオ待って、ちょっと待って」

「何よ。言っとくけど、これ以上甘やかさないでよ」




1197『花の町の傍ら』

「じゃあ次の町に行こうか」

「なんだか唐突ね?」

「町に入って宿を取ろう。それでしっかりご飯を食べて、ちゃんとしたベッドでぐっすり眠ろう。そうしたら、少しは落ち着くよ」

「……甘やかさないでって言ったのに」

「甘やかしじゃなくて。このままだと僕が丸め込んだみたいだから、後々困るかなって」




1198『莫迦にしてる』

「なにそれ」

「マオ?」

「ランはあたしが丸め込まれたと思ってるの。あたしはあたしの意思で、ランと一緒に居たいと思ってるのに。それなのに、一番信じて欲しいあなたが信じてくれないの?」

「……マオ」

「いいわよ、こっちにだって考えがあるわ。セイラン」

「はい」

「結婚しましょう」

「……はい?」




1199『はじめて見た君の瞳』

「今のハイは了承のハイで良いのかしら」

「良くな、いや良いけどちょっと待ってマオ」

「待ちません」

「待ってお願い」

「そう。やっぱりあたしと結婚とか早まったなー、とか思っちゃったのね」

「何でそうなった!? マオさん今まで見た事ないレベルで目が座ってるから、ホントちょっと落ち着こう!?」




1200『立てば芍薬坐れば牡丹、歩く姿は』

「やだ、ランったら」

「マオ?」

「目が座るわけないじゃない」

「そうだねっていうかよく聞き分けたね!?」

「ランの言葉を、あたしが聞き流すわけないじゃない」

「嬉しい言葉の筈なんだけどなぁ」

「何よ、あたしがあなたを好きじゃいけないの」

「……マオが」

「なによ」

「マオが素直に好きって言った」




1201『この視線に気づいて』

「すき……?」

「え、なんでそこできょとんとするの」

「あたし、そんな事言った?」

「言ったよ!? 今思いっきり言いましたよ!」

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「どうして敬語なの?」

「そこなの? もっと気にするところは無いの?」

「……ぃ」

「マオ?」

「……とか言ってないもん!」

「マオ、真っ赤」




1202『君がくれた居場所』

「じゃあ、どう思ってるの?」

「え?」

「マオは僕の事、どう思ってるの?」

「それは、」

「好きじゃないんだよね?」

「ちがっ」

「じゃあ、どう思ってるの? マオの口から聞きたいな」

「なんか、今日のラン、いじわるね」

「必死なだけだよ」

「必死?」

「マオの一番近くに居たくて、必死で足掻いてるの」




1203『この手をどけて』

「ランも、あたしの側に居たいって思ってるの?」

「そりゃあ……僕『も』?」

「も?」

「いやそれは僕が訊きたい事だから。『も』って何、僕以外にマオの側に居たいとか言ってきたやつ居るのいつの間に!?」

「ラン、肩が痛い」

「あ、ご免」

「そうじゃなくて、あたしと同じねって言いたかったんだけど」




1204『血を辿って』

「マオと同じ?」

「ランったら珍しく鈍いわね。あたしもランの一番近くに居たいと思ってるの。さっきも言ったわよ?」

「……うん。そうだったね」

「そうよ。ところでそろそろ進まないと野宿になっちゃうわよ」

「ねえ、マオ」

「何、ラン」

「アルゴスに行かない?」

「初めて聞くわ、どこ?」

「僕の故郷」




1205『私じゃなくてもいいんでしょう』

「僕らの拠点の町がもうすぐ雨期に入るって話は覚えてる?」

「そういえばそんな問題があったわね」

「アルゴスへ寄り道すると拠点への帰還は雨期の終盤になるから、その頃には雷も鳴り終わってると」

「行きましょう!」

「……自分で言った事だけど、この誘導で速決されるとビミョーな気持ちになるなあ」




1206『亡霊』

「どうして急に故郷に帰る気になったの?」

「……墓参りしようかな、とか」

「ランのご両親は健在よね。おじーちゃんおばーちゃんは?」

「元気です」

「アルゴスに居るの?」

「鳳凰種らしくあちこち放浪してます」

「ラン」

「はい」

「正直に言いなさい」

「伴侶を見付けたら一度は訪れろというしきたりで」




1207『告げずに散りゆくこともまた』

「……それ、そのうち分かることよね?」

「え、あ、うん」

「どうして黙っておこうとしたのか、は訊かないわ。話が進まないと思ったんでしょ?」

「半分はね」

「あら、もう半分は?」

「伴侶なんて言ったら、マオがパニック起こすかと思って」

「……つまり、全部じゃない?」

「マオの負担になるかなって」




1208『莫迦にしてる』

「なんでよ。そこは怒ってよ、いちいち狼狽えるないい加減にしろって」

「怒る必要も無いのに怒れないよ」

「鬱陶しいでしょ、すぐわたわたしてたら」

「僕はマオがわたわたパニックになってるの、嫌いじゃないけどな。僕を意識してる証拠だと思えば、可愛くてしようがない」

「ランはあたしに甘すぎるわ」




1209『この視線に気づいて』

「そうかなあ」

「そうよ」

「じゃあ、少し厳しくしてみようか。ねえ、マオ。僕はマオが好きだよ」

「……っ」

「はい、マオの番」

「あたしの?」

「そう。僕はマオに告白したんだから、返事を頂戴」

「へんじ」

「マオが僕をどう思ってるのか、マオの口から聞かせてよ」

「……ラン」

「ん?」

「目が笑ってる」




1210『黄昏時に掴んだもの』

「マオが可愛いくて、つい」

「……分かったわよ」

「マオ?」

「今日は野宿なの?」

「いや、せっかく近くに村があるから、今晩はそこで泊まって、本格的な移動は翌朝からでどうかな?」

「野宿じゃないのね」

「野宿したいの?」

「そうじゃないけど」

「マオ?」

「あのね、ラン」

「ん?」

「……あたしもよ」




1211『勿忘草の花言葉』

「何が?」

「うっわ」

「え、ちょっとマオ?」

「わざとなの? いえ、わざとでも天然でもどっちでもいいわ。ねえ、ラン?」

「な、何かなマオさん」

「一発殴られてくれないかしら」

「嫌ですよ!?」

「そう。じゃあ、あたしと友情を誓い合うのと一発殴られるの、どっちが良い?」

「何その突然の理不尽!」




1212『女郎小屋』

「だってランがヒドイ」

「いやひどいのはマオでしょ!? なんでいきなり殴ろうとするの!」

「……ばか」

「マオ?」

「ランなんか、ランなんかうっかりアヤシイ小屋に迷い込んでそこのおねーさんと間違われて、その怒りのままに小屋を大破させて修理代ぼったくられれば良いのよ!」

「具体的かつ突飛!」




1213『くるくる、廻る』

「発想がちょっと面白かったけど、ひとつ訂正すると」

「何よ、ランなんてただの美女で通るわよ」

「なんかもう接続詞もおかしいけど、それはもう良いや。あのね、マオ」

「……なによ」

「果てしなく譲って誤解された腹いせに小屋を大破させたとしても、僕は修理代なんて断固払わないから」

「そこなの?」




1214『湯上り、誘ってるってことでいいよね』

「間違える方が悪いんだよ」

「でもランが迷い込んだのなら、間違えた相手が一方的に悪いとは言えないんじゃないかしら」

「いや、相手が一方的に悪いね!」

「そこまでムキになるほどのこと?」

「事だよ。僕の男としてのアイデンティがかかってる」

「……あの、ラン」

「何、マオ」

「今の、例え話よね?」




1215『虹の麓』

「……そうだっけ?」

「そうよ!? どうしたのラン、なんかいきなりポンコツになってるわよ?」

「うーん、よし宿に行こう」

「ええ、そうね……?」

「多分、疲れてるんじゃないかな。自覚は無いんだけどね。だから、今日はもうさっさと休んで色々と回復に専念しよう」

「そう……そうね。それが良いわ」




1216『アヤトリ』

「良かったね、部屋が取れて」

「そうね」

「まさか立ち寄ったその日が祭りの前夜祭とはね」

「そうね」

「明日だと宿が取れなかったかも知れないんだから、相対的には幸運かな」

「そうね」

「マオ?」

「なに?」

「どうしたの、何だか元気がないね」

「そう?」

「うん」

「ランと同じで、疲れたんじゃない?」




1217『薔薇の下』

「疲れてるだけ?」

「他に何かあるの?」

「うーん」

「お互いもう休みましょ」

「そ、うだね」

「それじゃあ、お休みなさい」

「お休、あ、ちょっと待ってマオ」

「……何?」

「明日の朝、日が昇る前に起きられる?」

「何かあるの?」

「あるっていうか、ここの庭園の見頃?」

「疲れてるんじゃなかったの?」




1218『曼珠沙華の中』

「ランがそんなに植物好きとは知らなかったわ」

「確かに嫌いではないけど、重要なのはそこじゃなくて」

「植物以外が目当てってこと?」

「いや……うーん、ある意味そうかな?」

「分かったわ、とりあえず休みましょ。それで明日の朝落ち合って、話はその時。そうしたら、ランももう少し頭が回るでしょ」




1219『貴方の隣をください』

「そんなに支離滅裂になってる?」

「そうじゃないけど……」

「けど?」

「伴侶としてアルゴスに一緒に行くって、本気?」

「……はい?」

「ランは、本当にあたしで良いの?」

「マオは僕じゃダメって事?」

「あたしはランが良いわよ、でもランはあたしじゃイヤかなって」

「ちょっと寝る前に話し合おうか」




1220『誘ってなんかいないってば』

「……やっぱりナシにしようって話?」

「断じてそんな事は望んでないけど……マオはやめたいの?」

「なんでそうなるのよ」

「マオが言ってるのはそういう事だよ。そもそも僕から言い出した事なんだけど」

「そう。ランから言い出したから、やっぱりやめようって言えなくて、うやむやにしたいのかなって」




1221『そんなに煽ってどうするの』

「あのさ、マオ」

「何よ、ラン」

「ひとつ訊きたいんだけど、答えてくれる?」

「答えられることなら答えるわ」

「マオは僕が、そんな簡単にコロコロ意見を変えるような男だと思ってたの?」

「そういうわけじゃないけど」

「けど?」

「あたしに、その、プロポーズしたのはその場の流れだって言ってたから」




1222『溶けてしまいたい』

「いやっ、あれはいつかやろうと思ってたし話の流れがそんな感じだったから良い機会かなとか思ったというか、ほら、僕だって緊張するわけだから、言えそうな時に言ってしまえみたいな勢い勝負な気持ちがなくはなくてだね?」

「ふふっ」

「マオ?」

「ランでも焦ったりするのね」

「……そりゃあ、するよ」




1223『天の羽衣』

「ねえ、マオ」

「なぁに、ラン」

「マオの傍に居ても良い?」

「え?」

「僕の傍に居てくれなんて言わないから、僕がマオの傍に居ても良い?」

「そうねえ、ひとつだけ条件があるわ」

「何?」

「あたしがランの一番近くにいても好いなら、良いわ」

「それって」

「どうする?」

「喜んで呑みます」

「ありがと」




1224『髪飾り』

「それじゃあ雨期を避ける為にも、明日からアルゴスを目指すってことで」

「あの、マオさん。あんまりそれ言われると色々と自信がなくなるので、暗黙でお願いします」

「良いけど、なんで敬語なの?」

「なんとなく」

「ふーん?」

「そういえばですね」

「何?」

「あれまだ持ってるんじゃない? ユンの簪」




1225『神頼み』

「あっ、そうよ。すごく繊細な造りだったから、壊さないようにと思って、慎重に保管してそのまますっかり忘れてたわ。どうしよう、ラン」

「元々ユンが持っとけって言って渡してきたんだし、どこかで会ったら返す、くらいのつもりで良いと思うけど」

「そうじゃなくて、うっかり壊したらどうしようって」




1226『魂の帰る場所』

「慎重に保管したんでしょ?」

「そうだけど、もしもってあるじゃない」

「最悪アルゴスに置いてくる?」

「ユンちゃんもアルゴス出身なの?」

「というか、大抵の鳳凰種はアルゴスで生まれてるから」

「皆ふらふらしてるんじゃなかった?」

「だからこそ、同種に会える場を設ける必要があったんじゃない?」




1227『影踏み』

「じゃあ、アルゴス以外に鳳凰種が住んでるところって無いの?」

「個人的にならちらほらあるだろうけど、集団となるとアルゴスくらいじゃないかなぁ」

「それなら住んでたことはあるわね」

「あれ、断定?」

「ユンちゃんが言ってたのよ、近所に鳳凰種しか住んでなかったって」

「へえ、ちなみに何の話?」




1228『長い階段』

「何だったかしら……確か宿でランに追い返されて、十分経つのを待ってた時に話してたんだけど」

「ああ、あの時か」

「確か、ユンちゃんのお母さまがフリーダムすぎたのがきっかけで、お父さまが周囲に馴染んだとかなんとか」

「ユンのお母さんって鳳凰種だよね?」

「でもお母さまの方が破天荒らしいわ」




1229『障子紙に映る影』

「それで、問題が起きたら全部解決してたら、非常識仲間だと認められたんですって」

「非常識仲間」

「そう。鳳凰種って、自分が非常識だって自覚あるヒトも居るのね」

「大体の鳳凰種は常識を知ってるよ」

「ほら、自覚がない」

「いや、本当にあるんだって。従う必要性を感じないだけで」

「ああ、そっち」




1230『夜の帳』

「窮屈な思いをしてまで周りに合わせる必要なんて無いって考えが大半じゃないかな」

「じゃあ、お祭りは?」

「ん?」

「はっちゃけすぎて出禁になったりもするお祭りは、どう考えてるの?」

「あれは酔っ払いみたいなものかな」

「あの集落、大丈夫かしら」

「精霊狩りどころじゃなくなっていたら良いよね」

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