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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
40/59

1111-1140

1111『刃交わる』

「そろそろ刃傷沙汰に発展しそうだから、そうなる前に止めてあげて」

「娘御は止めんのか?」

「弱いものイジメになるじゃない」

「誰がだ」

「もちろんランと自称ユノちゃんよ。あたしまだランに勝てたことないんだから」

「セイランは娘御に手は上げんだろうて」

「あたしが避けそこねる可能性は高いのよ」




1112『誓いを君に』

「まぁ良い。では当方は不肖の弟子を止める事に注力する故、残りは任せる」

「残りって、ランは煽られなきゃ止まるわよ……って、行っちゃった」

「マオ!」

「早っ!?」

「僕はマオを傷付けたりしないよ?」

「知ってる。どうしたのラン?」

「とにかく、僕はマオに怪我させたりしないからね」

「う、うん」




1113『君を忘れる夢を見た』

「じゃあ、自称ユノちゃんはユンちゃんが師匠としておしおきしてくれるらしいから、ランは自分で反省してね」

「僕も?」

「そう。喧嘩両成敗っていうでしょ?」

「僕の育った文化には無いなあ」

「あたしの育った文化にはあるのよ」

「ふーん。ところで妙に静かだけど、シオンは?」

「兄さんなら、あれ?」




1114『この視線に気づいて』

「あ、居た。兄さ、」

「静かに」

「……どうかしたの?」

「精霊狩りが帰ってきたらしい」

「とりあえず、寝る準備してくるわ」

「シャオ?」

「今ここはあたしとランが貸し切ってるでしょ。相応の代金も支払ってるから、もし探しに来られたら寝てたところを起こされて不機嫌って事で追い返せるかと思って」




1115『癒してくれる』

「眠るにはまだ早くないかい?」

「明日は早朝から動く予定だったって事にすれば良いのよ。あたしやランがヒト捜ししてるのは広まってるでしょうし、大丈夫じゃない?」

「しかし」

「ほら、兄さんはお姉さまと奥に引っ込んでて。ついでにラン呼んできて」

「分かった。けれどどうか無理はしないでおくれ」




1116『見送ることさえ出来ないよ』

「マオ」

「ラン、どう思う?」

「武装解除まではやめておいた方が良いと思う」

「分かってる。一応バレないように気を付けるつもりだけど、想定としては野宿と同レベルの警戒しておくつもり」

「そうだね。今のところはこっちに向かって来てる気配もないから、このまま朝までやり過ごせたら良いんだけど」




1117『お人好し』

「朝まで?」

「精霊狩りは夜しか活動しないんだ」

「夜だけ? 明るい方が都合良さそうなのに。いえ、明るかろうが暗かろうがヒトが精霊に勝てるわけないんだけど」

「そこは僕も理解できそうにない。まあ、長い歴史で色々あったとだけ言っとくよ」

「歴史は苦手なんだけど……今度、暇なときに教えてね」




1118『影踏み』

「どうしたの? マオが自分から歴史を教えてほしいだなんて」

「失礼ね。あたしだって色々考えてはいるのよ。決定打はお姉さまだけど」

「レディ?」

「身内の危険は把握しておきたいじゃない」

「マオにとって、レディは身内なんだ?」

「兄さんの相棒だもの。あたし変なこと言ってる?」

「言ってないね」




1119『足の皮が擦り切れるまで走るから』

「誰も来なかったら、あたし達と精霊を繋げて考えてはいないってことよね?」

「まあね。そう思わせて油断を狙ってる可能性も無くはないけど」

「そこまでされたら、あたし達イコール精霊、ぐらいの図式が相手にはあると見るべきよね」

「その場合話し合いの余地は無いから、速やかに逃げよう」

「そうね」




1120『手毬唄』

「ひとつ鄙びた肘鉄を、ふたつ双子の蜜蜂に」

「待ってもの凄く待って」

「ラン、どうしたの?」

「なにそれ」

「母さん特製の子守唄。みっつミントの夜泣き越え、よっつ酔ってる猩々が」

「いやそれ展開が気になりすぎて眠気とかどっかいくやつ」

「そう? ちなみに最後はね」

「待ってオチだけ言わないで」




1121『花の町の傍ら』

「やっつ八ツ手の花小路から」

「五六七どこいったの」

「ここでとうとう、誰か来た」

「オチがない」

「違うわよ、ホントに誰かこっち来てるの」

「あ、ほんとだ」

「珍しいわね、ランがあたしより気付くの遅れるなんて」

「手鞠唄に気を取られすぎたかな」

「子守唄よ」

「色々気になりすぎて眠れないと思う」




1122『白河夜船』

「ちょっと見てくる」

「あたしも行きたい」

「マオは寝てる設定なんでしょ。それに一旦引っ込む口実があった方が良いから、二人で出るのは避けたい」

「でも」

「マオ、さては」

「なによ」

「眠いんだね?」

「わるい?」

「悪くは無いけど、尚更待ってて」

「ねぼけるわよ」

「リアリティあって良いじゃない」




1123『月に翳す』

「じゃあ、五分後にヒトの気配で起きたフリして様子見に来るわね」

「いや、それは」

「あたしは譲歩したわ。ランはしてくれないの?」

「分かったよ、でも十分後にして」

「えー」

「譲歩してくれるんでしょ?」

「分かったわよ。あたしが言うまでもないでしょうけど。気を付けてね、ラン」

「ん、ありがと」




1124『あなたでよかった』

「おや、ボクの愛しい妹はなんだかご機嫌ななめだね」

「誰か向かって来てるからってランに追い返された」

「然らば当方が代わりに様子を窺いに」

「ダメ」

「即答か。其の心は?」

「お姉さまを探してるヒト達かも知れないから。ユンちゃんはお姉さまと一緒に居るところを見られてるかも知れないでしょ?」




1125『嘘の色』

「恐らく当方の姿は見られておらんと思うが」

「おそらくだったら可能性はあるじゃない。あたし達が精霊と関わりがあるって確定されたら厄介でしょ。暇なら自称ユノちゃんでも抑えといて。あのヒトも見られてるかも知れないんだから、ランに絡むノリで今から来るヒトに絡まれたら困るわ」

「ふむ、成程」




1126『くるくる、廻る』

「セイラン一人に任せてしまうのかい?」

「十分経ったら目が覚めたフリして様子見に行ってくる」

「十分以内に来訪者を連れて移動するって事は」

「大丈夫よ。約束破ったらどうなるか、ランなら分かってる筈だもの」

「何をする気なのかな?」

「兄さんなら分かるんじゃない?」

「セイランの気持ちならね」




1127『魂の帰る場所』

「シャオ、お願いだから無意味に危険な事はしないでおくれ」

「意味があったら良いの?」

「やめてくれるなら止めるけれど」

「状況によるわね」

「うん。だからボクはせめてボクの愛しい妹が危険に突っ込まねばならないような状況を出来得る限り廃除するくらいは頑張るよ」

「せめてって範囲じゃないわよ」




1128『手毬唄』

「ねえ兄さん、母さんの子守唄覚えてる?」

「覚えているけれど、急にどうしたんだい?」

「ランが子守唄とは認めたくないみたいで」

「その言い分も分からなくはないね」

「そうなの!? あたしはあれ聞くとよく眠れたけど」

「小さかったからね。歌詞よりも母さんの声に安心を覚えていたんじゃないかな」




1129『信じる』

「そうかしら」

「不服かい?」

「だって、あの母さんよ? 父さんならともかく」

「幼な子にとって母親とは特別なものなんだよ。例え何かやらかしそうでとても心臓に悪い母だとしても」

「父さんの心臓に悪いのよね」

「そうだったね」

「親御の話で何故そこまで暗くなれるのか、当方地味に気になるのだが」




1130『薔薇の下』

「別にキライじゃないの、むしろ好きなのよ」

「そうだね、ボクも両親の事は好ましく思っているけれど。その、周囲を気にしなさすぎると言おうか」

「背景にバラの花とか咲き乱れてそうな二人の世界に、誰が居ようがおかまいなしで入り込んじゃうのよね」

「周囲は針の筵ならぬ花の棘に苛まれる感じだね」




1131『虫の報せ』

「ふむ、朧気ながら理解した」

「えっ?」

「本当に?」

「何故にそこもとらが意外そうな反応をする」

「我ながら、今ので話が通じるヒトが居るとは思わなくて」

「娘御にはちと話した事があったと記憶しておるのだが。当方の二親も、其の様な感じだ」

「えっ!?」

「花ではなく瓦礫を生み出す傍迷惑さだが」




1132『神頼み』

「ヒトの常識に疎い父にすら諌められる性格をした我が母だったが、存外天晴なヒトでな。元が元故浮きまくっとった父が近隣のヒトの集いに受け入れられておったのは、我が母の功績だったと言えよう」

「へえ」

「何事も母がやらかした可能性があるからと先ず解決するという父の手癖が有り難がられてなあ」




1133『薔薇の下』

「お母様の嫌な可能性の広さと、それを全部解決してたっぽいお父様の能力の高さと、そんなお父様の凄さを手癖の一言で切って捨てたユンちゃん。どれに突っ込めば良いのかしら」

「愛はあるんだよね?」

「無論だ。先程も言うたがそこもとらの親御殿で言う薔薇の代わりに瓦礫が飛び交うのが、我が二親だ」




1134『傍にいること』

「ケンカするほど仲が良い、みたいな?」

「否。言い方に難があったか。瓦礫が舞い散るのは、あれだ。子供がはしゃぎすぎて散らかすようなあの乗りだな」

「すっごい傍迷惑じゃないそれ?」

「うむ。しかしこう言うては何だが、近隣の住まいには鳳凰種しか居らんかったからな」

「あ、すっごい大丈夫そう」




1135『折り鶴に込める』

「それじゃあユンちゃんのお父様は、鳳凰種が厄介だって認定するレベルの厄介事を処理してたの?」

「どちらかと言えば、心血注いで頑張れば何とかなるだろうが面倒なのでつい放っておいた案件が気づけば処理されとった事への歓びだろうな」

「鳳凰種って……待って、そんな集団の中でも浮いちゃうの?」




1136『君のことは全部知りたい』

「これは、当方も家を出て各地をふらついた末に気付いた事なのだがな。我が父は集落の者達に馴染まん方が、色々と正しかったのではなかろうかと思うのだ」

「何でまた」

「『いやーお前マトモなやつだと思ってたけど非常識で安心したわー』という言葉をどう思う?」

「失礼だと思う」

「打ち解けた結果だ」




1137『目元をなぞる』

「非常識だと安心するってどうなの」

「おお、そうだ。娘御よ、ひとつ知恵をやろう」

「いきなりどうしたのユンちゃん」

「目元に金の化粧けわいを施しとる男には注意しろ」

「何者?」

「我が父だ」

「は!?」

「ほれ、当方の目尻にもある此の色だ」

「わ、ホントだ。前髪と肌の白さで全然知らなかった」




1138『この視線に気づいて』

「ユンちゃんもお化粧とかするのね」

「厳密には化粧ではなく柄だが」

「がら?」

「猫にもあろう、三毛だの虎だの」

「ああ、その柄……待ってそれ猫、ヒトは柄とかないわよ」

「我が父の元来の成り立ちの名残のようなものだ」

「よく分かんないけど分かったとして、何でユンちゃんのお父様が要注意なの?」




1139『終わりの始まり』

「我が父はやたらと擬態が得意でな、判じの基準としてくれ」

「たまたま似たようなメイクしてる他人も居るんじゃない?」

「まず居らんと思うが……不安ならセイランに確認させると良い。あやつは判別可能だ」

「あとね、そもそもユンちゃんのお父様を見分ける必要性が分からないんだけど」

「その内解る」




1140『簪』

「そろそろ十分かしら、ランのとこ行ってくるわ」

「娘御よ、これを持って行け」

「今、どこから出したの?」

「細かい事は気にするな」

「気になるわよ。ユンちゃん簪なんて着けてなかったわよね? こんな繊細な造りのものを懐に入れてたとも思えないんだけど」

「細かい事は気にするな」

「気になるわよ」

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