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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
39/59

1081-1110

1081『 大切だった人 』

「ああもうどこを向いてもヒトが居る」

「そう苛つくな、契約者」

「その呼び方は」

「止めてやるのも吝かでは無いが、今のは態とだ。そこもとが苛つけば、その原因が世界から排除されかねん。自重してくれ」

「してます。直ぐにでもシャオに会いたいけれど全員撒くまで堪えてます!」

「そうか」

「はい!」




1082『 この記憶、どこから 』

「ああシャオ、ボクの愛しい妹よ。兄は今すぐシャオに会いに行きたいのだけれど、こんな有象無象を愛しい妹に会わせるなんて勿体無いから撒いてから会いに行く所存なのだけれどこれが中々どうして撒けそうで撒けなくて兄はジリジリしているのだけれど、この感覚にボクは覚えがあるような」

『シオン!』




1083『 好きな人はいるの? 』

「わ、どうしたんだいチェズ」

『……イイエ』

「精霊よ、甘やかすのも度が過ぎれば対象を殺しかねんぞ」

『分かっているわ』

「否、何一つ分かっとらん」

「何だい、二人とも一瞬にして殺伐としたね」

『そのままで居てね、シオン』

「あの妹にしてこの兄ありだな」

「ありがとう?」

「そうだな、褒め言葉だ」




1084『 「起きて、朝だよ」 』

「で、ボクは今どの辺りが甘やかされていたのかな」

『気にしないで。古株は古いから耄碌したのよ』

「吃驚する程投げ遣りで辛辣だな」

『そっちが失礼なのがいけないわ』

「しかしだな、毎度素知らぬ振りをする気か?」

『それは』

「そういう打ち合わせって、ボクに聞こえない方が良いものではないのかな」




1085『 これが噂の壁ドンとやらで 』

「打ち合わせてはおらん」

『打ち合わせてはいないわ』

「なるほど、打ち合わせナシでも息ピッタリだね」

「契約者殿」

「その呼び名はやめてくれないかな」

「いや、今はそれで正解だ。契約者が己の精霊に、他者との息が合うているなどと言ってやるものではない。絶望させたいという悪趣味でもなければな」




1086『 どうかわらって 』

「ふむ、いまいち理解しとらん顔だな。ならば想像してくれ。妹御が、たまたま隣り合わせた娘と会話している兄御を見て、仲の良い兄妹みたいだと告げてきたら、どう思う」

「チェズ! 申し訳ない、そんなつもりは無かったとは白々しい言葉だけれど、できればまだボクの相棒で居てくれはしないだろうか」




1087『 怖いもの 』

『シオン』

「何だい、チェズ」

『まだワタシを、相棒と呼んでくれるのね』

「当たり前だろう! チェズがボクに嫌気が差しでもしない限り、ボクはキミを相棒と呼ぶよ」

『ふふ。それじゃあ、ワタシとシオンはずっと相棒ね』

「ああ!」

「仲良き事は善き事だが、少々騒ぎ過ぎたな。移動するぞ」

「分かった」




1088『 俺の記憶が消えた君 』

「というわけだ」

「そんなベタなボケをこの状況で聞くとは思わなかったわ」

「ふむ、これで説明を省けると聞いたのだが」

「誰に聞いたのよ、そんなテキトーな事」

「やはり法螺か。まあ良い。時にセイランよ、当方の弟子がそちらに向かった筈だが」

「知らない」

「大丈夫よユンちゃん、死んではいないわ」




1089『 生き物の死体 』

「死んだ方がましな目に合っとりそうな言い回しだな」

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「あたしの目の前でいきなり惨殺死体作ったりはしないわよね?」

「まず、アレは生き物なのかどうかって論議から始めようか」

「さっきからこんな感じでかなり怒ってるから、ユンちゃん弟子を叱っといてあげて」

「心得た」




1090『 紡いだ言の葉 』

「で、ほんとにどうしたのさ、ユン」

「何がだ」

「シオンとレディはどうした?」

「ちとあってな。いっそ二人きりにした方が色々と巧く行くのではなかろうかと当方の第七、八感辺りが囁くので置いて来た」

「ユンちゃん」

「何だ、娘御」

「ユンちゃんの感覚器は何個あるの?」

「其処なのか」

「他にある?」




1091『 「お前...まさか...っ!」 』

「別に何感でも良いけどさ。まだ完全に解決したと言い切れる状態じゃないのに、あの二人だけで行動させるのは拙くないか?」

「何人たりとも干渉させねば良いのだろう?」

「……ユン」

「何だ、セイランよ」

「お前、少し前に位相界域作ってたよな。あれ、どうした」

「未だ在るな。今は客人を迎えとるが」




1092『 ぼくがいたばしょ 』

「あのな、ユン。そういうのは監禁したって言うんだよ!」

「奇怪な事を」

「そっちがね!」

「鳳凰種の界域程度で精霊を捕らえておけると、そこもとは本気で思うとるのか」

「それは、」

『そうね、ムリだわ』

「なるほど、あれはそういう場所だったのかい」

「何だ、早かったな」

「可愛い妹に会いたくてね」




1093『 巡り巡って 』

「ユィン・チィ殿」

「何だ、兄御殿」

「助かったよ。お陰で早々にボクの愛しい妹と合流できた」

「ああ、成程。そんな使い方が」

「ラン、どういう事?」

「ユンの作った空間を経由する事で、精霊狩りの集団に見つかるリスクを無くしたんだ。ちゃんと考えてたんだな、悪かったよ」

「はてさて、何の事やら」




1094『 甘えることを覚えよう 』

「白を切るならそれでも良いけど、それと二人を位相界域に放り込んだ事とは別件だからね?」

「む」

「そもそも生命体を招き入れるならその対象に合わせた空間作りが不可欠だって僕に教えてくれたのは誰だっけ?」

「精霊とその契約者ならば空間を己に合わせる事くらい造作無い事だと」

「言い訳しない!」




1095『 これが噂の壁ドンとやらで 』

「否、言い訳などではなくてだな。純然たる事実として、精霊と契約者が対象だからこそ取った手段であって、当方とて例えばそこもとと娘御相手ならばまず使わん手立てではあったぞ」

「へー、そう。じゃあ訊くけど、そこら辺を二人にちゃんと説明した? 本人達に自分の意思で足を踏み出してもらった?」




1096『虹の麓』

「ねえ、ラン」

「マオご免、今ちょっと忙しいから」

「何がそんなに不安なの?」

「え?」

「ねえ、何?」

「……僕、そんなに不安そう?」

「迷子の子供みたいよ」

「そっか」

「チェズ、彼は不安そうに見えたかい?」

『イイエ、ワタシには見えないわ』

「だよね」

『愛かしらね』

「愛!?」

「兄さんうるさい」




1097『黄昏時に掴んだもの』

「ちょっと過敏になりすぎたかも。ご免ねマオ」

「あたしじゃなくて」

「ん。ユン、さすがに少し言い過ぎたよ、少し」

「あまり悪かったと思うとらんな?」

「言い過ぎたのは認めるけど、ユンの行動に問題があったって意見は撤回する気ないから」

「分かった。事前確認をせなんだのは怠慢だったと認めよう」




1098『障子紙に映る影』

「一段落したところで、ねえ皆」

「何だい、ボクの可愛い可愛い妹よ」

「兄さん、可愛いが増えてる」

「良いじゃないか」

「減らして」

「連れない事を言わないでおくれ、ボクの可愛い可愛い可愛い妹よ」

「減・ら・し・て」

「分かったよ。ああ、分かっているよ。ボクの可愛い妹を不安にさせたりはしないさ」




1099『涙の痕』

「そこのキミ、出てこないと色々保障しかねるのだけれど」

「隠れてた訳じゃないんです~」

「また自称ユノちゃんになってる」

「自称は余計ですよ~可愛いお嬢さん」

「泣いてたの?」

「あ、これはですね~。お師匠がお説教されてたのが愉快すぎて、つい見守ってしまいました~」

「泣くほど笑わなくても」




1100『夜這い』

「さて、それじゃあメンバーが揃ったわけだけど。どうしようか?」

「突風のは別行動かい?」

「ああ。一網打尽にされたらこわいからね」

「成程ね」

「それで通じるのね」

「ギルドで仕事を請けてると、色々とね」

「ふぅん」

「夜にできる事といえば」

「夜這いですね~?」

「夜襲が良い!」

「どっちも却下」




1101『この手をどけて』

「でも夜這いの方がダメよね?」

「夜襲もダメです」

「夜這いの方がダメよね?」

「マオ、随分拘るね?」

「だってランが、夜這いはダメって」

「ああ、うん。確かに言ったけどね」

「キミはボクの愛しい妹と何て会話をしてるんだい!?」

「こういう何か誤解するヒトが出るから、人前でその話は控えようか」




1102『風の音』

「兄さんはどんな誤解してるの?」

「それは僕には分からないなー」

「ボクは誤解しているのかい?」

「それあたしが訊いてるんだけど」

「セイラン、ちょっと二人で話をしようか」

「えー」

「男同士で話そうじゃないか」

「はいはい」

「わざわざ結界張るほど聞かれたくない話?」

「娘御よ、気にしてやるな」




1103『この手をどけて』

「で?」

「何が」

「とぼけないでもらおうか。キミはボクの愛しい妹から夜這いを受けたのかい?」

「受ける訳ないだろ。夜襲の意味で夜這いをかけるとか言い出したから、訂正しただけだよ」

「で?」

「シオン、何が訊きたいわけ?」

「あのこの事だ、夜這いと夜襲の違いを問いただされたろう?」

「さてね」




1104『あなたでよかった』

「あ、思い出した」

「セイラン、話を逸らさないでくれ。ボクはキミ達の仲を裂こうというわけではないんだ。むしろキミはボクの愛しい妹を任せられる数少ない男だと思っている。ただ婚姻を結ぶまでは節度ある付き合いを」

「シオン、お前その場に居たぞ」

「何?」

「ほら、レディとユンが出てた時にだよ」




1105『君を探す』

「そうだっただろうか?」

「マオにスルーされてめげたり、僕がお前に読唇術使ってみたりしてただろ」

「ああ!」

「思い出せた?」

「言われてみればそんな事があったような、無かったような」

「思い出したっぽい反応しておいて、全然思い出せてないじゃないか」

「細かい事は気にするな」

「細かくないよ」




1106『桜舞う、桜散る、降り注ぐ』

『鳳の。シオンを独り占めするのはそろそろ終わりにしてくれないかしら』

「さすが精霊。鳳凰種の防音結界を物ともしないんだね」

『ふざけてないで、返答をちょうだい』

「すぐ解くよ」

『そう』

「あ、すごい。花びらが舞ってるみたい。ランがやったの?」

「結界を解除したってすぐ分かって良いかなって」




1107『涙の痕』

「お帰りなさいませ~、しらひ」

「ただいま、チェズ」

『お帰りなさい、シオン』

「やだお姉さまったらスルースキル高い」

「兄御も高いだろう」

「昔からよ。自分に関係ない事はあんまり気を向けないの」

「そこもとは如何する?」

「ランだもの、殺しはしないと思うわ」

「皆さんヒドくないですかぁ~!?」




1108『私はここにいる』

「ランが嫌がる事をしつこく続けるからよ。殺されはしないと思うわ」

「今まさに頭に血がのぼって死にそうですよ~?」

「鳳凰種は逆さ吊り一分で死にはしない」

「もう十分は経ってる気がしますぅ~」

「体感錯誤だ、まだ五分も経ってない」

「ラン、五分経ったら下ろしてあげてね」

「……マオが言うなら」




1109『基本なんでもお見通し』

「死ぬかと思いましたぁ~」

「この程度で死んだ鳳凰種はいない」

「わたくしが第一号になってしまうところだったって事ですね~」

「してやろうか」

「遠慮しておきます~」

「ねえユンちゃん」

「何だ、娘御」

「ひょっとして自称ユノちゃん、ランで遊んでない?」

「その可能性は否定出来んな」

「やっぱり」




1110『薬湯なんて嫌い』

「ねえユンちゃん、自称ユノちゃん何とかならない?」

「ふむ。今まで放っておったのに、どうにかしてやろうと思うた訳は?」

「じゃれあいに水をさすのもどうかと思って。でもそろそろ度が過ぎてるわ」

「成程。では問題児には当方特製疲労回復薬を飲ませてこよう。ちと味の調整に心残りがある一品だが」

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