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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
38/59

1051-1080

1051『 泣き叫んだあの日 』

「高額報酬依頼って、小さな村くらいなら買収できるレベルの金額が動いたような」

「達成の為の道具系の出費が凄かったらしくて」

「あー、高レベル帯って、支出も出費ももう別世界だからね」

「だからうちの父さん畑仕事に走ったんだって」

「ん?」

「畑さえ守れば収入があるのは素晴らしいって」

「あー」




1052『 お願い離して 』

「でもその畑、大丈夫?」

「何が?」

「竜巻が唐突に発生したり魔物のスタンピードが突然押し寄せたり、は……さすがに無いか」

「何で分かるの?」

「あるの!?」

「竜巻は昔一度あったっきりらしいけど、魔物の方はもう毎年の風物詩ね。いつも母さんが素材が来たわーって狩り尽くすけど」

「さすが吉祥」




1053『 力強く抱きしめて 』

「毎年スタンピードが来る立地で暮らしてたの?」

「家と畑はわりと離れてたから。小さい頃は、父さんが農業やってるなんて知らなかったくらいだし」

「ちなみに、知ったのは?」

「スタンピードが畑じゃなくて家に来た年かしら」

「え」

「キレた両親が物理的に絞めてたわ」

「魔物を、物理的に?」

「うん」




1054『 微笑む三日月 』

「お前らな、ヒトの部屋の前で延々ダベんなよ」

「あら、ここの宿代払ってるのはこっちよ?」

「払えってんなら払うけどよ」

「別に良いよ、貸しって事で」

「なら今の盗み聞きでチャラだな」

「そう来る?」

「そりゃあ、手があるなら使うだろ。で、紫雷達は戻ったか?」

「まだ。夜までに戻ってくるかしら」




1055『 喧嘩になった 』

「そもそも宿屋に来いって連絡したのか?」

「してない」

「なんでそれで来ると思うんだよ」

「だって来るもの」

「ココは精霊の姐さんにゃあちとヤベー場所だぞ。とっとと退散してる可能性も頭に入れといた方が」

「おじーちゃんはうちの兄の変態をよく知らないからそんな事が言えるのよ」

「おい待て待て」




1056『 ユーキャンドゥーイット 』

「仮にもアニキを変態呼ばわりはどーよ」

「間違えたわ」

「そりゃ良かった」

「おじーちゃんは兄の変態的な不屈の精神を知らないからそう言えるのよ」

「おいラン、あんまり変わってねぇぞ」

「……マオによく会いに来るんだって」

「まぁ、そうだろうな」

「でも居場所を教えた事はないんだって」

「あん?」




1057『 頼むから 』

「精霊の姐さんが協力してんのか?」

「そんな手が……!」

「嬢ちゃん驚きすぎ」

「家出てからずっと疑問だったらしいから」

「それよ!」

「どれよ」

「お姉さまじゃないわ。だって子供の頃からだもの」

「あん?」

「おつかいで隣町に行った時も黙って入り込んだ廃鉱で迷子になった時も来たもの」

「マジ?」




1058『 大丈夫だよ 』

「子どもって、ダメって言われる事こそやったりしない?」

「まぁそうだね」

「特にうちは、どこに行くなとかあれに触るなとか滅多に言わない親だったから、たまに禁止されるとついウキウキして破っちゃってたのよね」

「それ、本当に危険なやつだったんじゃない?」

「それが、親の手のひらの上だったわ」




1059『 ふと訪れる静けさ 』

「掌の上?」

「そう。自分達の子供ならダメと言ってもむしろ喜んでやらかすに違いないけど、だからこそ敢えて禁止して痛いめ見てもらって反省と危機意識を促そうって」

「えー」

「おかげで近所のダンジョン化した古代遺跡の存在を知ったのなんて、家を出るひと月前だったわ」

「近所に」

「ダンジョン?」




1060『 この気持ちは言っちゃダメ 』

「思い返せば、季節ごとに両親揃って何日か出かける時が必ずあったのよ。あれ多分魔物を減らしに行ってたのね」

「その間、家には子供だけなの?」

「ううん。両親が不在の時に限って尋ねてくるタイミングの悪いヒトが居て、二人が戻るまでうちに泊まってたから」

「それは」

「ね、手のひらの上でしょ?」




1061『 どうかわらって 』

「つーかよ、ダンジョンの発見者にはギルドへの通報義務があんだろーが。ンな人里近くのダンジョンなら尚更だ」

「人里近くないわよ」

「あん? 嬢ちゃんの実家の近くだろ?」

「そもそもうちが人里離れてたから」

「ねえ、マオ」

「何、ラン」

「毎年来るスタンピードの発生元って、まさか」

「うん、そう」




1062『 この記憶、どこから 』

「ご近所さんがダンジョンなら納得だわな」

「それから、うちの両親はちゃんと報告義務は果たしてる筈よ。聞いた事ない? ファチュエ遺跡」

「最古参組じゃねーか!」

「そうなの?」

「遺跡がダンジョン化する事が立証されてから、まだ二十年くらいだから。十五年以上前に確認されてたら古参と言えるね」




1063『 苦し紛れのI Love You 』

「今はダンジョン化した遺跡って呼ばれ方をしてるけど、ファチュエ遺跡はもともとダンジョンだったんだ。当時の定説ではダンジョンとは魔物の巣が広がったもので、文明のある所に魔物は巣を作らないとされていた。だから当時は相当騒がれたらしいよ」

「詳しいわね、ラン」

「証明したのうちの親だから」




1064『 照れくさそう 』

「へー、そうなんだ」

「うん」

「待てやオイ」

「おじーちゃん?」

「ジジイじゃねぇとかどうでも良いわ。今のマジか」

「そんな嘘言って何になるのさ」

「つまりガチ情報だな」

「ほんとにどうしたの?」

「ランの親って事は鳳凰種だ。遺跡調査なんて根気のいる作業をやる鳳凰種が存在した事に驚いてんだよ」




1065『 銃声が鳴り響く 』

「それを言ったら、ガルーダ種に脳筋がいる事もびっくりだよね」

「そうなの?」

「そっか、マオは知らないんだっけ。あのね、ガルーダ種はすべてを飲み込」

「分かった俺が悪うごさいましたよ! だからその話題は勘弁してくれ」

「どうしよっか、マオ」

「そうね」

「おい嬢ちゃんに預けんのか……何だ?」




1066『 決められた運命なんて 』

「銃声よね、ユンちゃんかしら」

「……マオ、今すぐ荷物まとめて」

「分かった」

「ん」

「さすが、物分かりが良いねぇお前の相棒は」

「マオには後で説明するけど、レディが住人に見られたみたいなんだ」

「精霊狩りにか」

「現時点で僕らと繋げて考えるヒトは居ないだろうけど、どう転ぶか分からないから」




1067『 関わらないでくれ 』

「で、さっきの銃声は?」

「ガーディにしては鈍いね。向こうには誰が居る?」

「誰ってそりゃあ契約者コンビとランのおししょ……そうか銃師か」

「そう。でもユンのそれは術杖だから、なんで撃ったのかは不明だけど」

「んじゃまあ、俺はずらかっとくわ」

「頼んだ」

「頼まれない方が良いけどな」

「同感」




1068『 終わらない復讐 』

「ラン、いつでも出られるけど」

「ん、ありがとマオ。でもまだ待機かな」

「そう。おじーちゃんは?」

「一足先に出てもらった。ガーディはまだここの住人に会ってないからね」

「どういうこと?」

「レディが見られたらしい。詳細不明だから何とも言えないけど、状況次第では僕らの方が危険かも知れない」




1069『 僕は元気です 』

「ここが相手の本拠地だから?」

「それもあるけど、むしろ純粋な戦力の問題かな」

「あたしは戦力外?」

「そうじゃなくて、向こうがね」

「向こう?」

「ユンが居るってだけで反則技なのに、精霊とその契約者まで揃ってるとか。オーバーキル待ったなしだよ」

「そこら辺に愉快犯もいるわよ」

「そうだった」




1070『 お元気ですか 』

「向こうがどうあがいても危なくないのは分かったけど、それとおじーちゃんが別行動取るのとどう関わってくるの?」

「簡単に言うと、保険かな」

「複雑に言うと?」

「そう来たか」

「言えないなら別に良いけど」

「そんなに複雑じゃないから。相手が知らないカードがあるからそのまま伏せとこうかなって」




1071『 オシロイバナ(恋を疑う) 』

「伏せといてどうするの?」

「もしもの時に、完全な第三者のフリしてしれっと味方してもらう」

「セコイ」

「こういった閉鎖的な集落では完全なる部外者に内部を知られる事を極端に厭う習いがあるものです。よって第三者が居れば事態は停滞せざるを得ない為、ひとまず最悪は避けられます」

「どちら様?」




1072『 恋をするたび胸が苦しい、病気かな。 』

「どちら様とは心外です。あんなに熱く語り合った仲ではありませんか」

「知らないわよ」

「そうでした。この姿では初めましてでしたね、可愛いお嬢さん」

「その姿でその発言はただの変質者だから、やめといた方が良いよ」

「麗しの白姫がそう仰るならば仕方ありますまい」

「あなた、自称ユノちゃん!?」




1073『 無関心な君 』

「この姿ではユピテルとお呼びくださいな、お嬢さん」

「ユピテルが本名なの?」

「そうですね、生まれた時に与えられし名という意味ではそうなりますか」

「そういう回りくどいの聞いてると、ユンちゃんの弟子だって実感するわ」

「そうでした、我が師より言伝てを預かっておりました」

「先に言ってよ!」




1074『 「ワンモアプリーズ」 』

「では言伝てを伝えます。助けてくれ」

「なんだって?」

「助けてくれ、だそうですよ?」

「あのユンが他者に助けを求めるほどの事態なのか?」

「そうですねえ。精霊の御方おんかたがこの辺り一帯を更地にしたそうにしていたので、それではありませんかね」

「大変じゃない!」

「そういう用件は真っ先に伝えろ!」




1075『 反逆行為 』

「まあ大丈夫ですよ。精霊の御方は、己の契約者を悲しませたりはしないでしょう?」

「兄さんが止めてるの?」

「いいえ。そもそも何かをしたいと思う事とそれを実行する事は違うでしょう?」

「つまり、ひたすら苛ついてる?」

「そしてその八つ当たりの矛先が我が師なのです」

「そういう助けてくれか!」




1076『 君が思うほど優しくないよ 』

「えーと、つまり?」

「レディの八つ当たりの矛先を、逸らせないまでも分散させたいんじゃないかな」

「お姉さまならそこまで理不尽な事はしないと思うけど」

「あのね、マオ」

「何よ」

「精霊というのは、その存在からして理不尽なモノだからね」

「でもお姉さまは話通じるじゃない」

「契約してるからね」




1077『 記憶喪失 』

「その理屈だと、大体の精霊は通じなくない?」

「そうだよ」

「ムチャクチャね?」

「そうだよ」

「どうして契約したら話が通じるの?」

「対話できなきゃ、自分の契約者とも話ができないからじゃないかな」

「そっか、契約者はヒトだものね」

「ヒト以外と契約する精霊も、居ないわけじゃないらしいけどね」




1078『 あいしてるっていえたらなあ 』

「精霊同士で契約?」

「いや、そこら辺の岩とか」

「そこらへんの岩!?」

「あ、いやそこら辺には無い奇岩?」

「そこら辺にはない奇岩!?」

「そう。なんか形が素晴らしいからそのままの形を保持したかったらしくて、不変の属性を付与した精霊が居たらしいよ」

「そこら辺にはない奇岩に?」

「そうそう」




1079『 なんて面倒臭い生き物なんだ 』

「それは契約というより保存でしょう。もしくは加護がせいぜいでしょうか」

「そうとも言うな。ていうか、まだ居たのか」

「おや。白姫はその麗しき口唇で、随分と惨い事を仰る」

「命を狩られるか今すぐここから退散するか、選べ」

「それは」

「はい時間切れ残念狩る」

「ランが切れやすいとか、レアだわ」




1080『 もう二度と 』

「苛々しとるな、精霊の」

『イライラだけで終わらせてあげてるんだから、感謝して欲しいくらいだわ』

「そうだな。確かに僥倖だが、生憎と当方は何処が更地になろうと別に困らん」

『ストッパーの役割を果たしてちょうだい。ワタシはシオンを困らせたくはないのだから』

「だから当方は無関係だと言うに」

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