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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
37/59

1021-1050

1021『 本の虫 』

「ねこ姉さま消えちゃうの?」

「あーうん、言い方が悪かった。レディがひとりに戻るだけ、かな」

「兄さんズもひとりになるのよね」

「さみしい?」

「ねこ姉さまに関しては素直にさみしいですと言えるけど、兄さんズは正直とっても複雑だわ」

「シオンが二人は、まあ、ね」

「兄弟は色々あるモンだからな」




1022『 なんて面倒臭い生き物なんだ 』

「あら、おじーちゃんとおっさんも色々あるの?」

「なあ嬢ちゃん、俺がじいさんでアイツがおっさんな理由は何なんだ?」

「おじーちゃんが兄で、おっさんが弟」

「双子だぞ?」

「でも兄と弟でしょ?」

「一日も離れてねぇぞ?」

「でも兄と弟でしょ?」

「半日でおっさんはジジイになるか? ならんだろ?」




1023『 泣き叫んだあの日 』

「何にでも必ず境界線ともいうべき場所は存在してると信じる事からすべては始まったり終わったりするのよ!」

「意味分からん上に終わってんぞオイ」

「勢いで煙に巻けばたいていの事は何とかなるって」

「吉祥さんか?」

「父さんが」

「マジでか。あのクソ慎重な軍神が?」

「父さんわりと即断即決だけど」




1024『 星降る夜に 』

「そうなんだよなぁ。話を聞くとそうなんだが、ギルドで見かけるあのヒトは大体即決とは対極の事ばっかやってて子供心に不思議でな」

「えっ!?」

「何だどうした」

「ラン?」

「いや、あっちに隕石が確認できたから」

「墜ちたか?」

「全員無事?」

「確認できたから、砕いたって」

「はぁ?」

「ホントだ」




1025『 0:00 』

「何か降ってきてる」

「砕いたって、このレベル!?」

「キラキラしてキレー」

「砕石、いやここまで細けぇと砕砂か?」

「名称なんてどうでもいいよ。マオ」

「なぁに、ラン」

「仔猫は?」

「え、ちゃんと抱っこして……あれ? 居ない」

「そっか」

「ラン?」

「レディに訊いてもらった。歪みが消えたって」




1026『 どろりとした感情 』

「それはつまり、ねこ姉さまはもう居ないって事?」

「そうなるね」

「兄さんズも兄さんオンリーになってるの?」

「多分ね」

「そう」

「マオ」

「そっかあ」

「マオ」

「もとに戻ったんなら喜ぶべきよね! 兄さんもおかしな事にならないで済んだわけだし!」

「マオ!」

「何よラン、さっきからしつこいわよ」




1027『 静かに響くこの鼓動 』

「おいで」

「なぁに?」

「泣きたい時にはちゃんと泣かないと」

「なんにも悲しくないのに?」

「うん、淋しいね」

「兄さんとお姉さまは無事なのに?」

「仔猫、好きだったね」

「もふもふだもの」

「ん」

「とっても抱き心地良くてね」

「ん」

「ラン、聞いてる?」

「ん」

「お前ら、俺の存在を忘れてねぇか?」




1028『 大好きな君へ。 』

「悪いけどガーディ、暫く空気やっといて」

「……貸しひとつな」

「ん。ほら、マオ」

「……あのね、ラン」

「うん」

「今のやりとりを聞いた後で、おとなしく抱き付いていられるヒトはあんまりいないと思うの」

「大丈夫大丈夫、マオは少数派って事で」

「何も大丈夫じゃないし人前で恥ずかしいでしょ!?」




1029『 一緒には歩けない 』

「問題ない問題ない。あれはほら、そんな感じの石像だと思って」

「石像は呆れきった態度でヒトを見たりしません!」

「呆れてるとは限らないよ?」

「見なくても分かるわよ! 気配が! 呆れてるの!」

「マオ」

「何よ」

「被害妄想って知ってる?」

「今この時だけはそれじゃないと全力で言いきれるわ!」




1030『 裏切り者には制裁を 』

「ところで兄さんとお姉さまは、今どこにいるの?」

「森のどこか?」

「ランは連絡取れるのよね?」

「そんな事より、マオ」

「そんな事じゃないわよ」

「同じく森のどこかには、愉快犯予備軍の鳳凰種が二桁居ます」

「……兄さんとお姉さまは無事なのね?」

「ん」

「よしまずは逃げましょう」

「さすがマオ」




1031『 頼むから 』

「とりあえず宿屋に戻りましょうか。そのうち兄さん達も戻るでしょ」

「そうだね。ガーディはどうする?」

「何だ、もう空気役は良いのか?」

「残念ながらね」

「何が残念よ」

「せっかくマオを甘やかすチャンスだったのになあって」

「大人はそう簡単に甘えたりしません!」

「甘えられるのが真の大人だよ」




1032『 苦し紛れのI Love You 』

「甘えてばかりじゃ成長できないわ」

「頑張るだけだと疲れちゃうよ?」

「どうしろって言うのよ」

「頑張りの合間に誰かに甘えられるのが一番良いよね」

「じゃあ、ランも誰かに甘えてるの?」

「ぶっは!」

「ガーディ煩い。えーとそれは」

「自分ができない事は言わない方が」

「マオが甘えさせてくれる?」




1033『 「おめでとう」 』

「思いきったなランよ」

「ガーディ」

「へいへい、空気役な」

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「何をすれば甘えさせた事になるの?」

「えーと、良いの?」

「何が?」

「僕がマオに甘えても良いの?」

「具体的な事がさっぱりだから何とも言えないわ」

「そっか」

「でも、ランが他の誰かに甘えるのはヤだなって」




1034『 類は友を呼ぶ 』

「そっか」

「そうなのよ」

「そっかあ」

「ランったら、さっきからそればっかり」

「そう?」

「そうよ」

「そっか」

「ほらまた!」

「ご免ご免」

「悪いとは言ってないわ」

「そっか」

「そうよ。じゃあさっさと移動しましょ、ランのお仲間が来る前に」

「なんか語弊を感じる言い回しだなあ」

「気のせいでしょ」




1035『 君に何が分かるんだい? 』

「ボクの愛しい妹と旧友が、仲を深めている気がしてならない」

「気のせいだろう」

「ばっさり切らないでくれないかな!?」

「しかし仮にそこもとの予感が正しかったとて、何か問題があるか? それこそ遅かれ早かれの話だろう」

「分かってますよ! だがボクはまだ妹離れをする覚悟など出来ていない!」




1036『 無意識だった 』

「する気があるだけ良かろう」

「どういう事です?」

「世には娘離れが出来ないばかりに娘の婚姻を疎外する父が存在するという話だ」

「それではボクは愛しい妹から嫌われるでしょう」

「其れが分からん者が居るのだ。所で兄御殿」

「何でしょう」

「そろそろ其れを止めて欲しいのだが」

「それ?」

「敬語だ」




1037『 紡いだ言の葉 』

「しかし、先達には敬意を払うべきでしょう。ユィン・チィ殿は先達の宝庫ですし」

「先達の宝庫」

「ええ、宝庫です」

「そのような表現は初めてされたが」

「気分を害したなら」

「否、むしろ当方は現在大変愉快だ」

「それはそれで少々変わった感性と言わざるを得ないですよね」

「なかなか言うな、兄御殿」




1038『 「起きて、朝だよ」 』

 あのひとに言えるかもしれない。もう一度、が叶うかもしれない。

 わかっているわ、わたしにそんな資格などないことは。

 それでも、あのひとが必要とするのなら。あのひとが語りかけてくれるのならば。

 わたしはワタシの罪を断罪するよりも、あのひとの笑顔を守りぬいていきましょう。

「おはよう、シオン」




1039『 頭の芯がぼうっとするんだ 』

「チェズ?」

『どうしたの、シオン』

「今、何か言わなかったかい?」

『イイエ、何も言っていないわ』

「なら良いんだ。ごめんね、おかしな事を訊いて」

『問題ないわ』

「ありがとう」

『こちらこそ。ありがとう、シオン』

「ボクは何かしたかな?」

『ワタシと契約してくれたわ』

「本当にどうしたんだい?」




1040『 お化けなんていないさ!!! 』

「時に、精霊殿に契約者殿」

『何かしら、古株の』

「ユィン・チィ殿、その呼び方は止めてくれとお願いした筈ですが」

「契約者殿こそ、敬語をやめてくれと当方は告げた筈だが」

「それは無理ですとお答えしましたよね?」

「あれも駄目これも駄目、しかし己の要求は通したい。そんなもの通る訳無かろうて」




1041『 勘違いさせないで! 』

『アラ、通るわよ。シオンの望みなら、ワタシが通すわ』

「契約者を甘やかすのは、精霊の悪癖だな」

『良いじゃない、誰か困るのかしら』

「さてな。そのような事、当方は知らん」

『随分と無責任なのね』

「世界に責任を持つ義務なぞ、当方持っとらんのでな」

「二人とも、ボクはそんな無茶を言わないよ?」




1042『 明るくいこう 』

『そんな事は分かっているわ。ワタシが勝手に甘やかしたいの』

「気持ちは嬉しいけれどね」

「それだ、兄御殿」

「それ?」

「相手が望まんと知ってはいるが、ついつい言い募ってしまう。覚えは無いか?」

「ボクがですか?」

「分からんか」

「さっぱりです」

「貴殿が妹御にしておる事と、全く同じだろうて」




1043『 「愛してるって言ってみて」 』

「いやいやそれはだってボクの可愛い愛しい妹ですよ? あ、シャオの事を考えてたらとても愛を伝えたくなった。ユィン・チィ殿はセイランと遠距離会話ができましたよね、ちょっとボクの愛しい妹への愛を伝言してもらえませんか」

「それはセイランにそこもとの妹御へ愛を囁かせたいという事で良いか?」




1044『 宝石なんかより価値のあるもの 』

「えぇー」

「ラン?」

「いや何でもないようん」

「あきらかに何でもある返事よね、それ」

「なんでもあるって雑貨屋さんみたいだよね」

「そうね。話の逸らし方がすごく雑だけど、ほんとに大丈夫?」

「ユンがね」

「ユンちゃんが?」

「兄から妹への愛を言付かったけどどうしようかって」

「受け取り拒否で」




1045『 いつかきっと迎えに行く 』

「受け取り拒否だそうだ」

「そんなっ!? ボクの中が愛しい妹への愛で飽和して溢れてしまうじゃないか」

「もう既に駄々漏れになっとる気がするが」

「ああダメだ、シャオに会わないとボクはダメになってしまうという訳で会いに行こう!」

「直接言いに来い、とも言付かったが。伝えるまでもなかったか」




1046『 妬けんだろ 』

「そんなワケで、なんか知らんがなんとかなった」

『それのどこが報告だ』

「そうは言ってもなあ、ぶっちゃけ俺はただの部外者なワケだしぃ? 詳しい説明はしてもらえんかったしぃ?」

『イイ年したヤローが語尾を上げるな』

「お前同い年だろーが」

『黙れ兄貴』

「こういう時だけ兄呼ばわりされてもなあ」




1047『 もしもし、声が聴きたくなっただけ 』

『それで』

「あん?」

『まさか今の報告の為だけに通話を繋げたってんじゃねーだろうな』

「カワイイ弟の声がききたいなーとか?」

『ざけんな自分と瓜二つの声聞いて何が楽しいんだお前は』

「落ち着けや、支部長さんよ」

『こちとら通常業務の合間にお前の分の調整までやってて仮眠を取る暇もねぇんだよ』




1048『 大切だった人 』

「あー、なるほど。それでお前、さっきから発言に抑揚ないのか」

『分かったなら俺の時間を無駄に消費させた償いをしてもらおうか』

「一応訊くが、ナニさせる気だよ」

『この前蹴った依頼こなしてこい』

「幻種縛りのアレか!? お前省エネモードだとナチュラルに鬼畜だよな」

『やかましい』

「へいへい」




1049『 本音を吐いてみた 』

「ねえ、ちょっとラン」

「どうしたの、マオ」

「おじーちゃんたらホントにボケちゃったのかしら。何か一人で喋ってるんだけど」

「それはディアンと話してるんだと思うよ」

「おっさん居ないけど」

「遠距離通話用の魔法具とか持って来てるんじゃない?」

「それ高いわよ?」

「あれでも支部の稼ぎ頭だから」




1050『 もしも、もしもね 』

「かせぎがしら」

「そこまで意外そうにしなくても」

「いえ、そうよね、誰かが稼いでるのよね」

「ホントにどうしたのマオ」

「あのね、うちの両親ギルドで仕事してたんだけど」

「うん」

「基本的に赤字だったらしいの」

「うん?」

「最終的には高額報酬依頼ばっかりやってたけど、それでも赤字だったって」

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