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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
33/59

901-930

901『 一生敵わない 』

「つまり、ユンちゃんの知り合い?」

「何でそうなったの」

「ユンちゃんってギルドの伝説なんでしょ?」

「あのね、マオ」

「何、ラン」

「伝説はひとつじゃないから、必ずしも繋がりがあるってわけじゃないんだよ?」

「そうなの?」

「そうだよ?」

「ユンちゃん?」

「顔見知りではあるが」

「まじか」

「応」




902『 横たわる君に 』

「実在の精霊だったんだ」

「ラン?」

「マオは精霊王って知ってる?」

「精霊女王なら知ってる」

「あ、そっちなんだ」

「そっち?」

「地域によって王だったり女王だったりするんだよ。で、その精霊女王の事をいつ知ったか覚えてる?」

「気付いたら知ってたから、小さい頃に誰かに聞いたんじゃないかしら」




903『 交差点で出会う君 』

「そう」

「それがどうかしたの?」

「つまり、誰か身近な大人から聞いてたって事だよね?」

「そうね?」

「そういうのって、おとぎ話だよね?」

「でも精霊の存在って、最初はそんな感じで教わるものでしょ? ウチの近所は大体そうだったけど」

「うん。でも精霊を統べるモノは存在しないとされてるんだ」




904『 セクハラよっっ!! 』

「存在しない?」

「そう。精霊って自由気儘でしょ?」

「そうね」

「契約者の事情や立ち位置によっては、精霊同士で対立する事だってありえる」

「そうね」

「そこに絶対王者が居たら、そんな対立が起こるかな」

「ウチの近所だと、自分の契約者が最優先だって言い始めた精霊を女王と呼ぶって言ってたけど」




905『 想い溢れて 』

「そのパターンは初めて聞いたなあ」

「そうなの?」

「うん」

「じゃあ、ランの言う精霊王ってどんな存在?」

「さっき言った通りだよ。精霊を統べるモノ、総ての精霊が従わずにはいられない、偉大で強大な存在」

「そんなの居たら大変でしょうね、色々と」

「こんなの居たらっていう空想上の存在だからね」




906『 切な恋しい 』

「結局、うん良いねと精霊王がどう繋がるの?」

「ウンディーネ、ね。なんかもの凄く遠回りしちゃったけど、要するにそんな絶対強者の許に集った精霊界の四強のひとりがウンディーネだって言われてるんだ」

「ユンちゃん、雲泥の差ってそんなにスゴイの?」

「ウンディーネ」

「生んで良いね?」

「なにを」




907『 僕は元気です 』

「娘御の言葉遊びは置いておくとして」

「別に遊んでないわよ」

「話が進まんからその辺りの審議も置いておくとして」

「それもそうね」

「理解が得られて何よりだ。ウンディーネは強いぞ。王やら女王やらは知らんが、あやつに限って言えば四強の呼び名は誇張ではないかも知れんと思わせる程度には強大だ」




908『 ふたりごと 』

「それじゃあ、他の四強も実在するの?」

「さてな。当方も四強全てに会うた事がある訳ではないからして、詳しくはよく分からん」

「ふーん」

「というかだな」

「何、ユンちゃん」

「其処に当の精霊殿が居るのだから訊けば良いのではないかと当方思うのだが」

「ダメよ、兄さんと二人の世界に入ってるもの」




909『 未来と過去と、苦しい今と 』

『ごめんなさいね、シオン』

「どうしてチェズが謝るんだい?」

『ワタシがシオンを契約者に選ばなければ、今回の事は起こっていなかったかも知れないもの』

「そうだね。けれど、それは全てに言えることだよ。そもそもキミと出会っていなければ、ボクは今もあの森に在って彷徨っているような気がするよ」




910『 大丈夫だよ 』

「ボクはキミと出会えて良かったよ、チェズ。キミはどうだい? ボクと契約しなければ良かったと思ってる?」

『イイエ。違うのよ、シオン。ワタシがさっき謝ったのはね、例え今回のコトを先に知っていたとしても、ワタシはシオンと契約することを選んでいたと分かるからよ』

「ならボクらは両思いだね」




911『 酔った勢いで押し倒せ 』

「契約者とその精霊ってのは、大体ああなのか?」

「ああ?」

「あんなバカップルみたいな会話が基本なのかって事だよ」

「僕も他の契約者にまだ会った事ないからなあ。ユンは?」

「知らん訳ではないが、当方の知る者らは参考にならんと思うぞ」

「どうして?」

「当方が知るのは正真正銘の夫婦者だからな」




912『 これで終わり? 』

「精霊と夫婦になったヒトの話なんぞ聞いた事ねぇぞ」

「古い話だからな」

「なぁおい、セイランよ」

「何だよガーディ、改まって」

「コイツは鳳凰種としちゃ平凡なのか? それともお前の師匠が規格外なのか?」

「どっちも、かな。顔の広さはユン独自だけど」

「けど?」

「同胞に変人が多いのも事実だし」




913『 「親友だよね?」 』

「何気無くヒトを変人扱いとは、酷い弟子もおったものだなと当方なぞは思うのだが、どう思う娘御よ」

「さりげなくはないと思う」

『ちょーっと待ってくださいな。白姫はお師匠の弟子なのですか?』

「のようなもの、をユンが付け忘れただけだから。あとソレで呼ばないで」

『とってもお似合いですのに~』




914『 想い溢れて 』

『白いお髪に白い肌、巫女のような白装束と白白尽くしの麗しの少女! そんな存在を姫と呼ぶのはもはやヒトの本能なのですよ~?』

「確かに色々と白いけど、麗しくないしそれより何より僕は少女じゃない」

『そうですわね、今となっては麗しの美女で』

「男だっつってんだろ」

「お、久々にランがキレた」




915『 つかれたよ。 』

「いい加減にしろよ。目の前にいなけりゃ何もできないと思ってんなら大きな間違いだからな。今すぐ逆探してやろうかこの変態野郎」

「ランが怒るとこうなるのね」

「いや、まだセーブしてんな」

「そうなの?」

「おう。アイツがガチギレしたらもっと口汚ねぇよ。嬢ちゃんが居るから無意識に堪えてんだな」




916『 泣きたそうな君 』

「別に気にしないのに」

「どんなランでも気にしないって?」

「ていうか、見慣れてるのよね、ガラ悪いヒト」

「ギルドでか」

「それもあるけど。うち両親がギルド員だったから」

「ほぉ?」

「よく家に来てたのよ、アニキーとか、おねーさまーとか叫ぶヒト達」

「ランとそこらは一緒にしてやらん方が良いぞ」




917『 頭の芯がぼうっとするんだ 』

「なんで?」

「なんでも何も、引退して子育てやってる先達の生活を邪魔するのはアウトだろ」

「なんで分かるの?」

「命がけやら長期不在やらが当たり前な職場だからな。ガキが居るなら辞めるだろ」

「うちの母さんは、父さんとイチャイチャする時間が取れないから辞めたって言ってたけど」

「マジかおい」




918『 崩れ落ちた秩序 』

「パパはお仕事中だとアタシに構ってくれないものぉ」

「おいそれまさか」

「母さんの真似。結構似てると身内で評判です」

「うわー、マジかぁー」

「何か予想外なリアクションなんだけど、どうしたのおじーちゃん」

「おじーちゃんじゃねぇわ。嬢ちゃんよ」

「何よ」

「お前さん、吉祥と軍神の娘か」

「え?」




919『 ああ、どうか 』

「さあ?」

「おい」

「だってそれ二つ名でしょ? とっくに引退したヒトの二つ名なんて知るわけないじゃない」

「両親に会いに来てた連中から聞いたりしなかったのか?」

「聞いてないわね。助けられたエピソードとか、こんなトコに惚れたとかはよく話してくれたけど」

「なるほど、至極真っ当な判断だな」




920『 僕の世界の中心が君 』

「それがウチの親の二つ名だったとして、なんでガー爺が知ってるのよ」

「だからジジイじゃねえっての。そりゃ、吉祥も軍神も有名人だったからな」

「ウチの親が引退したの、二十年前なんだけど。実はホントにおじーちゃんなの?」

「んなワケねぇだろ。俺ら兄弟の遊び場だったんだよ、ギルドの支部はな」




921『 物好き 』

「二十年前のおじーちゃん……おじさん?」

「ジイサンよりおっさん扱いの方がクるなおい」

「じゃあおっさんって呼ぶね!」

「楽しげに残酷な事を言いやがって」

「ガーディおじさん」

「ヤメテクダサイマジデ」

「おじーちゃんたらわがままなんだから。ところで、なんで八歳児がギルドに入り浸ってるの?」




922『 2人で1つ 』

「嬢ちゃんに俺の歳言った事あったか?」

「聞いた事あるから知ってるんでしょ」

「そりゃそうか」

「で?」

「あん?」

「良いわよ、もう。言いたくないなら」

「いや、別に言ってマズイ話でもないんだが」

「ガーディの意思だけじゃ話せないって事?」

「察しが良いな嬢ちゃん。さすがランが見込んだオンナ」




923『 こんなにも嘘がつらいなんて 』

「訊いてみる?」

「あん?」

「冗談よ。ランと話してたのちゃんと聞いてたもの。おっさんと連絡取れとは言わないわよ」

「そういやディアンのヤツ、嬢ちゃんにおっさん呼ばわりされてたな」

「自業自得よ、兄弟揃って」

「嬢ちゃん見てぺったんこだなとは言えんだろ」

「そもそも着眼するんじゃないわよ!」




924『 過去に囚われ 』

「他にどこを見ろってんだよ」

「色々あるでしょ、顔とか服装とか装備とか!」

「いや、嬢ちゃんだとどうしてもなぁ」

「言っとくけど、男のバレないチラ見はバレバレだからね」

「安心しな、嬢ちゃん」

「何がよ」

「お前さん、乳はデカいが色気がなさすぎて口説く気にはならんから。ランもおっかねぇしな」




925『 両片思い 』

「そう……分かったわ」

「嬢ちゃん?」

「そんなに死に急ぎたいなら、お望み通り今ここで息の根止めてあげる!」

「おっとぉ」

「何で避けるの!」

「当たったら痛ぇだろうが」

「じっとしててくれたら痛いと思う間もないわよ!」

「ヤなこった」

「動かないでよ!」

「おい保護者共、この嬢ちゃん止めてくれ」




926『 大好きだって、信じてた 』

「突風の」

「何だよ、っと」

「諦めろ」

「諦めたら死ぬだろうが。わざわざ声かけてまで言う事かそれ」

「契約精霊と二人の世界に入り込んどる兄御殿と、当方の弟子に食って掛かっとるセイランではそんな余裕は無かろうと思うてな」

「会話するなら止まりなさい!」

「嬢ちゃんは止まったらヤる気だろうが」




927『 靡く髪 』

「ユンちゃん!」

「何だ、娘御よ」

「あのお弟子さんとの口論、あたしの代わりに止めてきて」

「お前さんが止めれば良いだろうが。俺を襲う暇があるなら」

「暇潰しで斬りかかってるわけないで、っしょ!」

「っと。地味に追い込みが巧くなってんなオイ」

「全部避けてるヒトに褒められても嬉しくないわね」




928『 うそつき。 』

「娘御よ」

「今っ、取り込み中なんだけ、どっ」

「惜しい、あと半歩踏み込むべきだったな」

「余裕で採点されとるようだし、そろそろ止める気は無いか?」

「余裕で採点されてるからっ、ますます、腹がっ、立つの、よ!」

「しかしだな、セイランと兄御殿の意識を引き戻せるのはそこもとしか居らんのだが」




929『 思い出して 』

「あーもう、疲れた。全っ然当たんないし」

「お疲れ、嬢ちゃん」

「全部避けきった相手に労われるほど屈辱的な事ってそうないわよ」

「では終わった所で娘御よ、二人を引き戻してくれ」

「どっちもそのうち戻ってくるでしょ」

「其れが待てれば当方とて待つのは吝かではないが、何分今は少々時間が惜しい」




930『 嫌だなんて言わないで 』

「こんだけ悠長にしといて今更って気もするがな」

「時間?」

「おいおい嬢ちゃん、まさか忘れたとか言わねぇよな?」

「おじーちゃんへの恨みは忘れてないわよ?」

「ちげーよ」

「冗談よ」

「恨みとやらは?」

「忘れてないわよ」

「コエーなおい」

「猫の恨みは深いのよ」

「俺は鳥頭だからよく分からんなあ」

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