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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
32/59

871-900

871『 焦った顔 』

「嬢ちゃん、知ってるか。ギルドの二つ名ってのはな、くれって言ってはいどうぞって貰えるもんじゃねぇんだよ」

「それは知ってるわ。だから、要らないって言っても無かった事にはならないのよね」

「そうだ。例え本人から猛抗議されて支部が立て直しの憂き目に会おうが、なかった事にはならねぇんだよ」




872『 終わらない復讐 』

「そこまで支部を壊したランの実力を褒めるべきかしら、利用者と職員の素早い避難を褒めるべきかしら」

「避難成功が前提か」

「あら、死傷者が出たの?」

「あー、建物崩落じゃ出てねぇから居ない、のか?」

「煮え切らないわね」

「訂正なんぞ受け付けねぇと啖呵を切った、当時の支部長がボコられてだな」




873『 0:00 』

「え、死んだの?」

「ヤってたらランは今頃ここにいねぇなぁ。さては嬢ちゃん、前の支部長を知らねぇな?」

「うん、知らない」

「それでか。あのな、ディアンの前支部長ってのは殺しても死なない事で有名だったおひとでな」

「変態?」

「なんでだよ。前支部長は」

『はぁ~い、そこまで~』

「え、誰!?」




874『 言の葉 』

『念話で失礼しまぁ~す。こちら暫定リーダーは誰だ大会開催中の~、噂の助っ人軍団でぇ~す』

「え、誰? え!?」

「マオ、落ち着いて」

「その態とらしい間延びした声色は、ユピだな」

『オンナノコにわざわざそんな事言っちゃう超朴念仁はぁ~、ュンさんですねぇ~?』

「え、ゆ、ゅ?」

「器用だよね」




875『 のんびり屋さん 』

『あ、なんか可愛い女の子がいる気配がしますね』

「いきなり普通に喋った!」

『戸惑ってるそこの貴女!』

「あたし!?」

『そうですあぁんやっぱり可愛い気配がしますねわたくしとめくるめきませんか?』

「何かよく分かんないけどイヤです!」

『振られましたぁ~』

「また伸びた! ラン何このヒト!?」




876『 オシロイバナ(恋を疑う) 』

『白姫そこにいるんです!?』

「いません」

『そのドライなお声はまさしく姫! あぁん野郎はお断りのわたくしですけど貴女は別です白姫』

「ラ、ラン?」

「いい、マオ。こういう変なのに絡まれた時はね、反応したら負けだから」

「さっきラン、いませんって」

「負けだからね?」

「わ、分かった」

「うん」




877『 瞳の奥には 』

「ねえ、ユンちゃん」

「何だ、娘御よ」

「この念話? のヒトって一体」

「そうだな、娘御は知らぬか。念話とは鳳凰種が使う生活の知恵の一つでな」

「なんかやたら便利そうな術なのに、生活の知恵扱いなのね」

「正式には、あると暮らしがちょっと便利だよねシリーズ、と言う」

「正式名称がそれなの!?」




878『 交差点で出会う君 』

『ふざけないで、二人とも』

「当方、断じて巫山戯ておらぬが」

「ユンに同じく」

「あ!」

「マオ?」

「なんか聞き覚えっていうか違和感があると思ったら。この念話って、お姉さまの声と聞こえ方がそっくりなのね」

『おねぇさま? わたくし以外にすでにおねぇさまが居たのですかそちらの可愛いお嬢さん』




879『 「起きて、朝だよ」 』

「お姉さまはお姉さまだもの」

『わたくしは?』

「現時点だと、関わったら面倒そうな変なヒトとしか」

『ちっ』

「舌打ちした!?」

『そんな可愛くない事~、ユノはしませんよぉ~?』

「ユノ?」

『はい~、わたくしユノって言うんです~。気軽にユノねぇさまって呼んでくださいね~』

「ユピじゃないの?」




880『 「起きて、朝だよ」 』

『ィンチさんの言った事なんて忘れてくれちゃっていいんですよ可愛らしいお嬢さん!』

「変なトコで切った!」

「成程、ユインチイだから」

「当方の名はユィン・チィだ、セイランよ」

「だから言いにくいんだって、その名前」

「キミ達余裕だね」

「そうよ、星が落ちてくる前にねこ姉さまを見つけなきゃ!」




881『 君が思うほど優しくないよ 』

『猫ちゃんを捜すのですか~? わたくし隕石の落下地点予測を依頼されたのだと思っておりました~』

「どちらでも良い。星墜つる処に歪み有りだ」

『なるほどなるほど』

「こちらは歪みを探る」

『ではわたくし共は落下地点の指定を』

「出来るか?」

『わたくしが誰に師事したと思っているのです、お師匠』




882『 こんなにも嘘がつらいなんて 』

「そういう訳だ。こちらも行くぞ」

「どういうわけよ!?」

「何だ、娘御よ。聞いとらんかったのか?」

「聞いてたわよ! 聞いてたけど、今のヒトが多分協力者でキャラも名前もぶれっぶれなユンちゃんの弟子だって事くらいしか分かんなかったの!」

「それだけ解っとれば充分だ」

「あたしは不充分なの!」




883『 逝っちゃった? 』

「では、何が知りたい」

「えっ、えーとね、えーっと……ごめん、ユンちゃん」

「何故謝る」

「改めて考えてみたら、とりあえず協力者だって事が分かってれば充分だったわ、確かに」

「そうか」

「あ、でもね」

「何だ?」

「後でじっくり腰を据えて話を聞いてみたくはあるから、全部終わったら付き合ってね」




884『 必ず戻ってくる 』

『お師匠と不吉なフラグなんか建てずとも、わたくしに直接訊いてくださいな可愛らしいお嬢さん』

「それはヤダ」

『なにゆえに!?』

「何だかすごく疲れそうだから」

『えっ、まさか初対面で!? いえモチロン嫌だなんて事はちっともありませんけれど! むしろ喜んで受けて立ちますわ!』

「何の話!?」




885『 ああ、そうか 』

『ふつつか者ですが、末永く宜しくお願い致します』

「よく分かんないけど何かこわいお願いされた気がする!」

『まぁまぁ、そんな』

「なあ、ユン」

「何だ、セイランよ」

「あの念話相手、どこまで本気なんだ?」

「さてな。当方にもユピの考えとる事はよく分からん」

「師匠なんだろ、しっかりしてくれよ」




886『 君が思うほど優しくないよ 』

「ユンの弟子なら、悪いヒトではないんだろうけど」

「ふ」

「ユン?」

「いや何、信頼とは面映ゆいものだと思うてな」

「何の話?」

「気にするな」

「ふぅん?」

「さて、ユピよ」

『ユノです』

「そうか。そちらは作業に入っておるとみて問題ないのだな?」

『はい。もう少しすれば起動に入れます』

「そうか」




887『 もう二度と 』

「兄御殿に聖霊殿」

「何かな、ユィン・チィ殿」

『聞いているわ、古株の』

「そこもとらは、とにかくひたすら徹底して互いに離れない事だけを考えて行動してくれ。こちらも一連の行動にそこもとらを戦力換算せずに動く故」

『勿論よ、分かっているわ』

「それで良いのならそうするけれど、少し心苦しいな」




888『 つらい報告 』

「心苦しいなどと考える必要は無い。これはそこもとらを救う為だけの行動では最早ない」

「どういう事かな、ユィン・チィ殿」

「兄御殿なら気付いておるかと思うたが。時間が捻れておるのも死なずの森が生まれるのも、そしておそらく星が墜ちてくる事さえも、そこもとらを軸にして発生した事象だからだ」




889『 決められた運命なんて 』

「待ってくれ。ではユィン・チィ殿は、隕石の落下が原因でボクとチェズに何かが起こったわけではないと?」

「そうだ」

「では、何がきっかけだったと言うんだい」

「さてな。初めは確かに何事かの事象があったのだろうが、今となっては捻れ過ぎていて最早分からん」

『一度ではないと言いたいのね』

「是」




890『 「ワンモアプリーズ」 』

「それは、どういう」

「言葉通りの意味だ。精霊が契約者を守ろうとするのは本能に近い。それが今回は災厄と成っただけの事」

「ボクが助かる事は、災厄を招くと?」

「何故そうなる」

「ボクは一体どうすれば……!」

「精霊殿と逸れてくれるな。其が悪い次を防ぐ最大の手だ」

『お師匠は言葉が足りません』




891『 両片思い 』

『黙って聞いていれば、ベラベラと喋っているわりに大切な事がすぽんと抜け落ちているではないですか。いいですか、お前が原因だと言わんばかりの言い回しをするから誤解をされるのです、改めた方が宜しいとわたくし何度となく進言申し上げておりましたのに、まだ治っていなかったとは呆れたものです』




892『 振り向かないで 』

「あのヒト、全然黙ってなかったけど」

「マオ、しー」

『そこな契約者!』

「は、はい!」

「あ、凄い。兄さんが姿勢を正した」

「マオ」

「黙ります」

『貴方も貴方です。これだけ心を砕かれておきながらそれに全く気付かないとは、同じヒトとして情けない!』

「あのヒト、鳳凰種よね?」

「マオ?」

「はい」




893『 うそつき。 』

「ねぇ、ラン」

「何、マオ」

「あの念話のヒト、ランは知り合い?」

「いや、ユンが弟子を取ってるなんて初めて知ったよ」

「ランは弟子じゃなかったの?」

「弟子を名乗れるほど、しっかり教わったわけじゃないから」

「じゃあ、ランにとってユンちゃんって何なの?」

「何だろ。親戚のお兄さんとかかな?」




894『 疑似的恋愛 』

「同族の年上なんだから、まさに親戚のお兄さんじゃないの?」

「なるほど、猫族はそうなんだね」

「鳥族は違うの?」

「鳥族は、結構ピンキリというか」

「ピンキリ?」

「猫族は、基本的に気ままな狩人気質だと言えるよね?」

「まあ、そうね」

「鳥族って、そういう全体に通用する性質が特に無いんだよね」




895『 大好きな君へ。 』

「飛べる事でしょ?」

「いや、飛ばない連中もわりと多くて」

「種族特徴が薄いのかしら」

「そうじゃなくて、種族的に飛べないんだよ」

「鳥族なのに?」

「鳥族なのに」

「不便そうね」

「そうでもないみたいだよ。代わりにやたら健脚だったり泳ぎが達者すぎたりしてるから」

「鳥族なのに?」

「鳥族なのに」




896『 悔やんで悔やんでついに 』

『要するに! お師匠はもっと素直かつ端的に仰ってくださいと申し上げているのです!』

「あのヒトの話も充分長いわよね、師匠譲りかしら」

「有り得るね」

『んもうっ、白姫に可愛いお嬢さん! お二方の会話はぜ~んぶ聞こえてますからね! わたくしも後でまぜてくださいなこのお説教が終わったら!』




897『 躓いたって 』

「何かしら、ユンちゃんに怒ってたときは正論だったのに、あたしたちへの苦情はものすごくポイントがズレてる気がするんだけど」

「僕もそう思う」

「仲間外れがイヤっていうのは分かるけど、会った事もないたった今初めて話したヒトとランを同じに扱えと言われても」

「う、ん」

「ラン?」

「何でもない」




898『 ふと訪れる静けさ 』

「なぁ、おい」

「居たのか、ガーディ」

「おう、居るとも。むしろなんで居ないと思ったよ」

「なんか静かだったから、いつものごとく単独行動に出たのかと」

「そうしたいのは山々だがな。情報が足りなさすぎてムリだわ」

「そっか。ガーディからしたら、捜索対象も協力者もアンノウンデータだらけなのか」




899『 ないてわらってまたないて 』

「あんのう芋?」

「何それ?」

「ランが言ったんじゃない」

「違うよ、アンノウンデータ」

「あの腕のびた?」

「アンノウンデータ」

「アンのウンディーネ」

「ウンディーネを使役するとは、アンとやらは遣り手の召喚師と見た」

「待て待て、契約者かも知れんだろう」

「ああ、めんどくさい大人が食い付いた」




900『 背伸びして 』

『そんな事をしている場合ですかお師匠』

「そこもとの報告待ちの間の言葉遊びだ、そう目くじらを立てるな」

「何だ、動かねぇと思ったらそうだったのか」

「ガーディ、今の会話本気だったの?」

「んなワケあるか」

「なら良いけど」

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「ウンディーネって?」

「伝説上の精霊だよ」

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