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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
31/59

841-870

841『 もう二度と 』

「そうか。動かさないよう言われたから、万にひとつも動かす事態にならないように探っているのか」

「この近くを通りがかる奴は運がねぇな。たまたまだろうが近寄って来たが最後、消されるかもな」

「過激だね」

「しないよ」

「お?」

「うん?」

「ヒトが黙っていればいくらでも好き勝手言うね、二人とも」




842『 もういいよって 』

「で、セイラン。ボクの愛しいシャオはどうなんだい? 無事目覚めそうかい?」

「いや、キミが拐ってユンが迎えに行ったわけだから、危害を加えられる要素がないでしょ。無事は間違いないと思うよ」

「オマエあんだけ不安そうにしといて、よく言えるな」

「理屈と感情が同調してくれるとは限らないよね」




843『 無意識に伸びた手 』

「にぃ、さ」

「シャオ!?」

「……の、ぁ」

「なんだいシャオ、ボクはここに居るよ!」

「っの、バカ兄ぃいいいー!」

「あうちっ!」

「ぶふっ」

「笑うな、ガーディ」

「ムチャ言うなラン。兄妹で頭突きしてアニキが負けてるとか、笑わずにいられるかよ。しかもさっきまで結構なシリアスだったのにだぞ?」




844『 僕は元気です 』

「シリアスだったかなぁ」

「だったんじゃねーの? 幻種が揃ってオロオロしてたじゃねえか」

「その括りだとガーディも入るよね?」

「俺は心配するほど状況が飲み込めてなかったっつーか、未だによく分かってねぇ」

「まあ、それもそうか。誰も説明してなかったもんね」

「嬢ちゃんが起きた途端余裕だな」




845『 壊れ物に触れるかのように 』

「僕が説明しても良いんだけど」

「けど?」

「ガーディさ、今仕事中だよね」

「おう」

「ギルドに報告上げるよね」

「まあそりゃあな。何だ、マズいのか?」

「いや、うーん。どうなんだろ」

「ランにしちゃあ煮え切らねぇな」

「まだ解決してないからね。後々どうするのが正解なのか、よく分かってないんだ」




846『 電話越しの君 』

「そう深く考えずとも問題なかろうと当方は思うのだが」

「ユン、もう動いて良いの?」

「是」

「そっか。ありがとう、ユン」

「うむ」

「それで、今のはどういう意味?」

「何だ、忘れたのかセイランよ。いずれ此処で祭が開かれるだろう」

「あ」

「鳳凰種のバカ騒ぎの前には、些末な事象などどうとでもなる」




847『 ちょっとうるさい。 』

「些末?」

「幻種や精霊が関わっておるだけで、根本は兄妹喧嘩だろう。新たな死なずの森の誕生や鳳凰種が集い騒ぐ事態に比べれば、ギルドが取り沙汰するほどの事ではあるまい。なあ、突風殿」

「ほお、そうくるか」

「ついでだ、面倒の苦情は銃師まで持って来いと伝えてくれ。それで大方は黙るだろうて」




848『 ああ、どうか 』

「ちょっと待て」

「銃師って、なんか凄いとしか情報がなくて昔のギルドが作り上げた架空人物だと思われてる、あの銃師?」

「実在してたどころか現役だとか、まじか」

「でも、いや、そっかぁ。そういえばユン、レディに古株扱いされるような年齢だったね。なら本物の可能性は充分あるか。術杖アレだし」




849『 忙しなく動く君 』

「ちょっと待て」

「ガーディ実は混乱してるだろ、その科白二回目だよ」

「いやいやいや、何しれっととんでもねぇ情報開示してくれちゃってんの? 何、この兄さんホントに鳳凰種か?」

「あーしまったついうっかりー」

「見事な棒読みだなセイランよ。まあ構わんが」

「ユンが自分から言い出したんでしょ」




850『 「参ったなぁ」 』

「おい、そこの鳳凰種ども」

「ひどい一絡げの仕方もあったもんだね」

「んなこたぁどうでもいい。お前ら、結局ギルドに情報を流したいのか流したくねぇのかはっきりしやがれ。こちとらそういう駆け引きがメンドーで前線トップはってんだからな」

「そんな理由なの、いやすごく納得できるけど」

「うっせ」




851『 甘えることを覚えよう 』

「情報を流すも何も、上の者は当方の事を知っておる筈だが」

「支部長程度じゃ話にならねぇってか」

「突風殿は支部長だったか」

「ちげーよ」

「だが、支部長が知る情報は己も知っていると言わんばかりだったが」

「兄弟がやってんだよ」

「兄君か?」

「いや、兄は俺」

「なんと」

「オイコラどういう意味だ」




852『 貴方の元に響いてますか 』

「行くわよバカ兄!」

「愛しい妹に誘われればボクに否やは無いが、せめてどこに行くのか説明してはもらえないだろうか」

「なんか言い回しがユンちゃんっぽいんだけど、貴方兄さんよね?」

「無論! ボクこそがキミの兄でありキミこそがボクの愛しい」

「うん、兄さんなのは分かったからちょっと黙って」




853『 星降る夜に 』

「それでシャオ、本当にどこに行こうと言うんだい?」

「ねこ姉さまを迎えに行くの!」

「ほう。娘御よ、何処に居るか分かったのか?」

「分からないし、知らないわ」

「ねえ、マオ」

「何、ラン」

「マオはどこに行こうとしているの?」

「星が落ちてくるの」

「へ?」

「そこに行けば、ねこ姉さまに会えるの」




854『 全てを悟ったこの瞬間 』

「星が、落ちて?」

「そう」

「どこに」

「知らない」

「具体的な場所じゃなくていい、目印になりそうな建物とか落ちてくる時刻とか」

「多分、この森のどこかだと思うわ。だから何時頃かっていうのは」

「分からない?」

「うん。ただ、明るかったから、今この場所ではない筈よ」

「どうだろうな」

「ユン?」




855『 好きって言えたらなあ 』

「落ちてくる星なら隕石の可能性が高い、それが落ちたなら辺り一面照らしだす程度の光量はある。既に落下済みならば、単に一帯を火の海にしておるのかも知れん」

「マオ、どっち!?」

「えっと、周りじゃなくて、空がすっごく明るかった!」

「なら前者だね!」

「やっぱ知らせるべきなんだろうな、コレ」




856『 涙に代わる 』

「ガーディ、ギルドに連絡とかそういうのは後で良いから!」

「そうだよな、今やれる事をやるべきだよな。これは事後報告になってもしゃあない事態だよな!」

「とりあえずお前がディアンに今は連絡したくないって事は分かった。理由は聞かないし黙っといてやるから、手を貸してくれ」

「よっしゃ任せろ」




857『 終わらない復讐 』

 どうしてわたしは、あんな愚かな選択をしてしまったのかしら。

 何度そう思い返しただろう、何度同じ後悔をしただろう。それでも何度でも、わたしは同じ選択をしてしまう。何度やり直そうが変わらない。

 わたしはどうすればいいのかしら、誰なら裁いてくれるのかしら。

 ああ誰か、あの日のわたしに断罪を。




858『 未来と過去と、苦しい今と 』

「多分、この事態がシオンとレディがおかしな事になった、きっかけの筈だ」

「成程。今将に死なずの森に成ろうとしておる土地の力を利用して、精霊が時の流れに干渉でもしたか。有り得ん話では無いな」

「つまり、兄さんとお姉さまに何か起こるの?」

「起こったんだろうね、レディにとって最悪の何かが」




859『 その壁壊してやるよ 』

「それ、逆じゃねぇか?」

「ガーディ、逆って?」

「いや、精霊の姐さんが何かやったって意見は俺も賛成なんだけどよ」

「けど?」

「隕石が落っこちてくるんだろ?」

「つまり、利用したのは隕石の力で、死なずの森誕生はその副産物ではないかと言いたい訳か」

「そう、さすがはランのお師匠、話が早いな」




860『 大切だった人 』

「まあ、個人的な願望も含まれてんだけどな」

「そっか。ガーディの説だと、シオンとレディの問題さえ解決すれば、連鎖的に新たな死なずの森が消滅する可能性が高いんだ」

「そういうこった。だからあんまり盲信してくれるなよ?」

「盲信されるほどのカリスマ性を持ってから言うべきだね」

「違いねえ!」




861『 もしもし、声が聴きたくなっただけ 』

『ねえ、シオン』

「なんだい、チェズ」

『いいえ、なんでもないわ』

「珍しいね、キミが言葉を飲み込むなんて」

『アラ、本当になんでもないのよ。そうね、ただ』

「ただ?」

『シオンにワタシを呼んで欲しかったの』

「ボクの大事な相棒チェズ。キミが望むなら、いつでも何度でも名を呼ぶよ」

『ありがとう』




862『 私が何をしたという 』

「おいそこの当事者ども、何イチャついてんだ」

「それはもしかして、ボクとチェズの事かな?」

「もしかしなくてもお前さんらだよ」

「当事者は分かるけれど、いちゃついた覚えはないのだけれど」

「ガーディ、流してやって」

「あん?」

「それで精霊が落ち着いてくれるなら、安いじゃないか」

「なるほど」




863『 お天道様は微笑んだ 』

「じゃあ精霊の姐さんの為っつー事で契約コンビは放置として。なあ、嬢ちゃん」

「何よ」

「さっきまで寝てた嬢ちゃんが、隕石なんぞの情報をいつ知ったんだ?」

「その寝てる間よ」

「あん?」

「まあ、それしかなかろうな。もう一人の兄御殿の記憶を垣間見たのだろうて」

「なるほど分からん」

「だろうな」




864『 お元気ですか 』

「まあ、端から分かるとも思っちゃいねぇしな」

「じゃあ何で訊いたのよ」

「報告を上げる為だな」

「分かってないのに報告できるの?」

「聞いたまま伝えりゃあ、ギルドの誰かが分かるだろ」

「そんな適当で良いの?」

「良いんだよ。適材適所ってヤツだな」

「ラン、良いの?」

「良いんじゃない?」

「そう」




865『 もう容赦はしない 』

「さて、話が纏まった所で問題がある」

「人手が足りない」

「是。それも圧倒的にな」

「手伝ってもらえないの?」

「集落には頼めないよ。あそこは精霊狩りの文化があるから」

「違うわよ。集まってきてるんでしょ?」

「マオ?」

「昨日言ってたじゃない、十数人はもう来てるって」

「ユン、通達!」

「了!」




866『 苦し紛れのI Love You 』

「喜ぶべきか残念がるべきか非常に微妙な報告があります」

「増えたのね?」

「マオって時々、びっくりするくらい勘が良いよね」

「話の流れで分かるわよ」

「で、手は増えそうか?」

「今ユンが交渉してる」

「面白がって手伝ってくれると思ったけど」

「説明端折ったら、何か隠してるだろって勘繰られてて」




867『 泣いてばかりだ 』

「意外だわ」

「マオ、意外って?」

「説明に不備があったら食い付かない。ギルドの依頼の見極めの基本だけど」

「だけど?」

「敢えて不備がありそうな依頼に食い付いて、面倒事を更に引っかき回して遊ぶのが好きそうなイメージがあるのよね、鳳凰種って」

「そういうのも居るね」

「あ、やっぱり居るのね」




868『 切な恋しい 』

「今やりとりしてるのは、もうちょっとマシなタイプかな」

「リスクを気にしてるわけじゃないのね」

「面白そうってだけでここまで来る連中だから」

「言い出したあたしが言うのも何だけど、そのヒト達に手伝ってもらって大丈夫なのかしら」

「実力は確かだよ、実力だけは」

「ある意味一番不安なタイプね」




869『 心臓を撃ちぬいた 』

「ちょっ」

「ラン?」

「話がついたぞ」

「手伝ってくれるの?」

「うむ。彼の白姫の救援依頼を受ける機会があろうとは、と皆やたら喜んどるぞ」

「ユン!」

「しらひめ?」

「ああぁもう」

「ラン、大丈夫?」

「あんまり大丈夫じゃない」

「懐かしいなおい、ランの二つ名じゃねぇか」

「ガーディ後で覚えてろ」




870『 こんなにも嘘がつらいなんて 』

「そういえばあたし、ランの二つ名って聞いた事なかったわ」

「マオ、元だからね、元!」

「そういやラン、二つ名のクレームかけた面子の中で、一番過激だったのお前だったな」

「大の男が姫呼ばわりされて流せるか!」

「ねえ、ラン」

「なに、マオ」

「今の二つ名は何て言うの?」

「そ、れは」

「それは?」

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