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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
30/59

811-840

811『 涙に代わる 』

「どんな情報だったのか大変興味があるけれど、今はそれどころじゃないからね。今度是非聞かせて欲しい」

「おう、良いぜ。当人達も交えて語ろうじゃねぇか」

「では、次はこちらの番だね。どう話せば良いのやら」

「とりあえず、嬢ちゃんは何だっていきなり倒れたんだ?」

「ボクが怒らせてしまったんだ」




812『 記憶の彼方 』

「怒りのあまり意識がふっ飛んだって事か?」

「いいや、もうひとりのボクが諦め気味だったから、シビレを切らさせてしまったというか」

「あん?」

「突風の、その返事はガラが悪いよ」

「兄妹揃って同じ事言うなよ」

「おや、それは嬉しいね。愛しい妹と同じ感性だなんて」

「まあ、育ちが同じわけだしな」




813『 甘すぎ 』

「育ちが関係あるのかい?」

「あるだろ」

「意外だね。キミはそういう事を気にしないタイプかと思っていたけれど」

「は?」

『シオン、それとは違う意図だと思うわ』

「ああ、なるほど。確かにそっちはどうでもいいわ。俺が言ってんのはまんま育った環境の事だよ。同じ親に育てられてんだろ?」

「ああ!」




814『 「しあわせみつけたよ」 』

「すまない突風の、ボクはキミを誤解するところだった」

「別にいいけどよ、俺の言動見てよくそんな誤解できたな」

「そういうタイプに食傷気味だったもので、ついね」

「そういやお前さん幻種か」

「キミもだろう?」

「上司も後輩も幻種でな、そういう苦労はそっち任せだ」

「良い職場のようだね」

「おう」




815『 交差点で出会う君 』

「アニキの苦労見てたから、ああいう性格なのかね」

「シャオの事かい? だったら違うよ。可愛い妹に、そんな情けないところは見せられないからね、兄として!」

「ああそーかい」

「キミも兄になれば分かるさ」

「もう兄貴だけど分かんねーよ」

「おや、キミにも妹がいるのかい!?」

「いや弟だ、双子の」




816『 しとしとと降る雨 』

「セイランよ、少しは落ち着け。邪魔だ」

「ご、めん。頭じゃ分かっているんだけど」

「ふむ、ならば娘御の手でも握っていてやれ」

「良いのか?」

「その程度で精度の落ちるような未熟者ではないつもりだ。それに」

「それに?」

「そこもとの気持ちも、まあ分からんでもないしな。添うつもりなのだろう?」




817『 俺の利益を言ってみろ 』

「おい、そこの鳳凰種共」

「今手が離せんのだが」

「口が話せりゃ充分だ。ちっと事情を聞かせろや」

「やれやれ。兄御殿に話を聞くのではなかったのか?」

「そうしたかったんだがな。このザマだ」

「このざまとは」

「突風の、キミも兄なら分かるだろう、弟妹とは愛いものだと」

「紫雷はもう黙れ」

「成程」




818『 突然突き放された 』

「端的に言えば、そうだな、迷子の兄を迎えに行ったのだ」

「嬢ちゃんがか?」

「うむ」

「紫雷以外にもアニキが居たのか」

「否、迎えに行ったのも兄御殿、そこもとの言う所の紫雷だな」

「あん?」

「死なずの森に中てられたんだとでも思うてくれ」

「あー、ソレが絡んでくんのか」

「うむ」

「なるほどなぁ」




819『 変人 』

「死なずの森がヒトを分裂させるとは初耳だわ」

「ひとでなしも分裂させるようだぞ」

「ヒトでなしってーと、まさか精霊か?」

「察しが良いな」

「おいおいおい、そりゃあ一大事じゃねぇか?」

「そうかも知れんし、そうでもないかも知れん」

「あん?」

「此度災難に会うたのは、契約者と契約精霊だからな」




820『 必ず戻ってくる 』

「己が契約者が絡むと何をするか予測不可能なのが精霊という存在故な。契約者が分裂したならば己もと考えても、当方は別段驚かん」

「やろうとしてできるもんか、それ」

「出来るのが精霊だ。当方としてはそうであって欲しいものだが」

「何でだ?」

「契約者さえ何とかすれば、勝手に戻ってくれるからだ」




821『 「忘れたなんて言わせない」 』

「随分とデタラメなんだな、精霊ってぇのは」

「世界の一部故な」

「あん?」

「何だ、知らんのか。精霊とは世界の末端だ」

「完全に隔絶しても存在できるのが、精霊だろ?」

「まあ、それも間違ってはおらんが。単体でどうとでもなり、世界と一つにもなれる。それが精霊だ」

「なるほど分からん」

「そうか」




822『 もう大丈夫だと呟いた 』

「ぼくなんて放っておいてくれ、嫌だ忘れないで、あの子が幸せならそれで良い、嘘だ、あの子の幸せを見届けたい、彼女はどうしただろう、ぼくはもう果たせない、彼女との約束を果たせない、いつか来る時が今だっただけ、少し早まっただけだ。ぼくだってしあわせになりたい」

 それを最初に言いなさいよ。




823『 静かに響くこの鼓動 』

「む」

「何だ?」

「ユン?」

「ユィン・チィ殿?」

『動きがあったのね、古株の』

「うむ。どうやら娘御はあちらの兄御殿と無事に話をつけられたらしい」

「じゃあ!」

「後は迷子にならんよう呼び戻してやれば良い」

『あちらは』

「どうだろうな、娘御と何を話したかにもよるが。まあ、恐らく問題無かろう」




824『 まだやれる 』

「セイランよ。分かっておるだろうが、娘御が目覚めるまで気を抜くのは早いという事を忘れるな」

「分かってる。頼りにしてるよ、ユン」

「ふ」

「ユン?」

「そこもとが当方を頼るなぞ、久方ぶりの事だと思うてな」

「そう?」

「そうだとも。何、同胞にして可愛い弟子の期待を裏切るような真似はせんとも」




825『 忘れてくれないか 』

「すまんが、暫く話しかけられても応えられん。それと娘御が目覚めるか当方が良しと言うまで、当方と娘御を動かさんようにしてくれるか」

「分かった」

「精霊殿」

『何かしら、古株の』

「今から言う事を最優先に遵守してくれ」

『……何かしら』

「そこもとの契約者殿と離れるな、絶対にだ」

『分かったわ』




826『 「ああ、うん、それで?」 』

「シオン、聞いてたな」

「ああ」

「ユンがわざわざ釘を刺したんだ。絶っ対にレディと離れるな」

『ワタシの助力は期待しないでね』

「分かってる」

『何か気になってる顔ね、鳳の』

「どうしてユンは、シオンにも同じ忠告をしなかったのかな」

『アラ、簡単な事よ。ヒトより精霊の方が、できる事は多いもの』




827『 静かに響くこの鼓動 』

『そもそも精霊との契約というのは、お互いの合意が必要なものではないのよ』

「精霊の同意なしに契約が結べるなんて、聞いた事ないけど」

『ええ、その通りよ』

「え、あ。あー」

『分かったかしら』

「そういう事? うわー、知らなかった」

『精霊に契約を持ちかけられて拒むヒトなんてそう居ないものね』




828『 時を刻む 』

「成長したなぁ、ラン」

「いきなりどうした突風の。爺くさいよ」

「俺はまだ二十八だ」

「そうなのかい!?」

「おい」

「歴戦っぷりからしててっきり壮年かと」

「お前ら兄妹はホント揃いも揃いやがってな」

「仕方ないだろ。そこまで種族特徴が出ている鳥族の年齢なんて、猫族のボクらに分かるわけがない」




829『 逝っちゃった? 』

「俺はお前らのトシくらい見りゃあ分かるぞ」

「ボクらは造作にはそこまで種族特徴が出ていないからね」

「嬢ちゃんが耳で紫雷は尾っぽか」

「キミはむしろ種族性の塊だよね。白い……ワシかな」

「ガルーダだよ」

「ああ、呑み込む翼の」

「ヤメロ」

「おや、お嫌いかい」

「意味分かんねぇし、何よりダセェ」




830『 思い出して 』

「お前なかなかやるな」

「何がだい?」

「今の状況で平静を保てるのは、その年にしては大したモンだ」

「そういう事を言うから老けて見られるんだと思うよ」

「うっせーほっとけ」

「それに、そういうわけでもないしね」

「あん?」

「心臓が鳴りすぎて止まりそうだ」

「表に出さねぇで居られるなら上々だろ」




831『 隣にいないかつての恋人 』

「ランも変わったモンだなぁ」

「そうなのかい?」

「嬢ちゃんと会う前は、もっと分かり易く短気だったぞ?」

「以前少し仕事で組んだ事があるけれど、気は長い方だと感じたよ?」

「ほう、そりゃまた何でだ」

「ボクの可愛い可愛いシャオの話を、黙って聞いてくれていたから」

「それ絶対聞き流されてるぞ」




832『 ハチャメチャな君 』

「そうかな。そんな事はなかったと思うのだけれど」

「あーうん、そうだね、そっかー」

「ん?」

「この辺りを連発してる時のランは、なんも聞いてねぇぞ」

「そうなのかい?」

「で、どうよ」

「あー、いや」

「あん?」

「実は、自分の語りに夢中になり過ぎて、よく覚えていないんだ」

「お前さんも大概だな」




833『 振り向かないで 』

「いやぁ、往々にしてボクの話は半ばで遮られてしまう事が多かったから、ものすごく適当な相槌だったとしても、長々と語らせてくれただけで、ボクの中でのセイランの株はとても高かったんだよ。ちなみにボクの愛しい妹のどんな話をしたかっていうと」

「長い、クドい」

「うん、大体皆そんな反応なんだ」




834『 きみのなまえは? 』

「そうだ、突風の。訊いても良いかな」

「何をだ?」

「割と今更なんだけれど、キミの名前は何なのかな」

「あん?」

「いや、愛しいシャオはガージィと呼んでいるけれど、セイランはガーディと呼ぶだろう? だから、正しい名は一体どちらだろうと思ってね」

「あー、そういやまともに名乗ってなかったか」




835『 俺のせいだ 』

「俺の名前はガーディだ。ガージィってのは紫雷の聞き違いだな。ありゃあガーディ爺さんを略した嬢ちゃんのイヤガラセだ。俺は断じてジジイじゃねぇがな」

「ボクの可愛い妹がいやがらせ……」

「ウソは言ってねえぞ。なんか嬢ちゃんの地雷を踏んづけたらしくてな。俺としては褒めたつもりだったんだが」




836『 もしも、もしもね 』

「突風のの言葉を疑ったわけではないよ。ボクの愛しい妹は、随分とキミに懐いているんだなと思ってね」

「懐かれてるってんなら、俺よりランだろ」

「彼は別格だよ、兄としては淋しいけれど。ボクの愛しい妹は、本来とても警戒心が強いんだ。ギルドで名の知れた両親と、幻種の兄を持ってしまったからね」




837『 雨降る夜に 』

「それは必要な警戒心だろ」

「そうだね。だから今まで無事だったのかも知れない。だけど幻種じゃない妹は、本来しなくていい警戒なんだ」

「それ嬢ちゃん本人に言ってみな」

「叱られてしまうよ」

「それが分かってんのに突き放すのか。嬢ちゃんも可哀想になぁ」

「え?」

「好いたアニキに距離を取られて」




838『 自由気ままに 』

「距離を、ボクが?」

「何だ、兄妹揃って自覚ナシか」

「兄妹揃って? ボクの愛しい妹は、何を自覚していないと?」

「自力で考えろ。部外者に教わるモンじゃねぇ」

「意地悪だな」

「いやそもそもだな、何で俺がお前ら兄妹の仲を取り持ってやる必要があるんだよ。仲人が欲しけりゃ、そこのランでも頼め」




839『 喧嘩になった 』

「そこはむしろボクが、愛しい妹とセイランの仲人を務めなければならないところなんだけどまだその覚悟はないね!」

「覚悟が必要か?」

「必要だよとてつもなく必要だとも!」

『二人とも』

「チェズ?」

「俺もか?」

『その辺にしておいた方が良いんじゃないかしら。鳳のも聞いてるのよ?』

「あ」

「やべ」




840『 僕は元気です 』

「しかし、セイランはどうしてずっと静かなのかな。ボクなんて黙っていたら不安に押し潰されそうでとても黙っていられないのだけれど」

「師匠を信頼してんじゃねぇの?」

「果たしてそれだけだろうか」

「あん?」

「ただじっとしているわけではないような」

『ずっと術式を展開してるわね』

「あぁ、索敵」

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