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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
28/59

751-780

751『 大好きだって、信じてた 』

「ボクの愛しい妹よ、照れる事など何も無いさ。妹が兄を想うのは至極当然な事なのだから。兄であるボクが愛しい愛しい妹であるシャオマオを愛しいと言う事がごく自然なようにね!」

「それがイヤだって言ってるのよ!」

「あぁ照れているんだね、ボクの愛しい妹よ。照れるシャオも可愛いよ」

「もうやだ」




752『 勢い余ってちゅーしちゃう 』

「ボクは今、かつてそうそうなかったほどに感動しているよ! こんなに心がうち震えたのは、産まれたばかりの愛しい妹と初めて対面した時以来かも知れない! 思い出すなあ……あの時は慶びのあまり、幼いシャオにくちづけを落としたんだよ」

「何してんの兄さん!?」

「安心したまえ、ほっぺただから」




753『 まだやれる 』

「ほっぺたとかそういう問題じゃないのよ、本人が意思表示もできないうちに何してんのって言ってるの!」

「しかしシャオ、それを言うならボクらのファーストキスなど、とうの昔に母さんに奪われているんだよ?」

「そうなの!? いえ、待って。母さんならギリノーカンよ」

「父さんなら?」

「アウトね」




754『 心臓を撃ちぬいた 』

「またそんな、父さんが泣いてしまうよ?」

「あたしがこれっくらい言ったところで、あの父さんが泣くと思う?」

「全く以て想像できないね」

「でしょう? まあ、母さんが言ったらヤバイけど」

「それは危険だね。ボクが愛しい妹から、近付くな顔も見たくない、と言われてしまうくらいショックな事だよ」




755『 変人 』

「あたしそんなヒドい事言ってないわよ!?」

「もちろんだともボクの愛しい妹よ! それくらいショックだろうという、あくまでも例え話だからね!」

「だから、言ってないんだから泣かないでよ!」

「これはすまない。愛しいシャオからそんな事を言われたらと想像しただけで、既に泣けてきてしまってね」




756『 物好き 』

「例え話で想像して泣かないでよ。それもう、あたしにもどうしようもないじゃない」

「すまないね」

「マオが、兄さんだいすき、とか言えばひっこむ涙だと思うんだけど。レディはどう思う?」

『全力で同意するわ』

「何言ってんのそこ!?」

「言ってくれるのかい?」

「兄さんは期待してわくわくしない!」




757『 この記憶、どこから 』

「ボクが愛しい妹から大好きだなんて言われた記憶は、もはやかなり遡らなければならないほど昔のものになってしまっているから」

「から、何よ?」

「ここら辺で記憶の更新をしておきたいものなんだけれどね!」

「ヤダ」

「あ、更に泣き出した」

「あたしが意地悪してるみたいな空気にしないでくれる!?」




758『 君が思うほど優しくないよ 』

「まあ良いさ。言葉になどされずとも、ボクは妹から愛されているから。多分、きっと、おそらく!」

「どんどん自信がなくなっていってるけど」

「だって、にーちゃすきー、が最後なんだよ!?」

「いつの話!?」

「父さんが、おとうさま、と教え込んでいた頃かな」

「言葉の意味も分かってない頃じゃない」




759『 駆け引きゲーム、勝者は 』

「まあ何でも良いけどさ」

「よくない!」

「そうだ、よくないともセイランよ!」

「いや、どっちも傍から見てると割と分かり切った事でケンカしてるから」

「何が!?」

「どれが!?」

「二人とも、お前ら仲良いな、とか言われた事ない?」

「よく分かったね?」

「なんでだか地元の友達によく言われてたわ」




760『 私が何をしたという 』

「ダンジョン入口で帰れなくなりかけるっていうバカ兄のバカ行動に巻き込まれたメンバーから、すごく生あったかい目をして言われたわ」

「我が友人達にはボクの愛しい妹の愛らしさをこれでもかと語っているからね。お前それでよく嫌われねーな、とはよく言われたものだけれど」

「何してんの兄さん!?」




761『 一緒には歩けない 』

「僕から言わせれば、シオンの友人達はよくシオンの友人をやってられるよねって思う」

「何を言うセイラン、キミもボクの大事な友人だよ」

「ああうん、ありがとう。でも妹スイッチ入ったシオンとはあんまり関わりたくないかな」

「不思議だね。ボクの友人達は皆一様にそう言うんだ」

「当たり前だと思う」




762『 もうすぐ死ぬって言ったらどうする? 』

「それはそれとして、マオに大好きって言わせるのは諦めた方が良いと思う」

『アラ、自分から言い出しておいて?』

「うん、そうなんだけどね。気付いたんだ」

「ラン?」

「もしマオから兄さん大好きなんて言われたその時は、シオン、息してないんじゃないかなって」

「それは、否定できないね」

『そうね』



763『 俺の記憶が消えた君 』

「どうして兄さんがまっさきに同意してるのよ」

「想像してみてごらん。愛してやまない愛しい愛しい妹から、大好きだと言われる気持ちを」

「全っ然分かんないわ」

「だろうね」

「何故だい!?」

「大好きどころか愛しいを連発する兄が居るからだよ」

「ボクの存在がボクの愛を伝える障害になろうとは!?」




764『 たすけて 』

「しかしボクの愛はボクが存在するから在るのであって、ボクを抹消してしまうとボクの妹が愛しいという想いも無かった事になるのではないかと」

「何言ってるのか分かんない」

「大丈夫だよ、マオ。僕も分からないし、分からなくても多分問題ないから」

『アラ、ワタシは分かるわ』

「マジですかお姉さま」




765『 泣いていませんか 』

『可愛い子が可愛いって話でしょう?』

「その通りだよチェズ! さすがはボクの相棒だね!」

『フフ、ありがとう』

「こちらこそだよ」

「ねえ、ラン」

「何、マオ。いや、何となく用件は分かるけど」

「じゃあ、お願い」

「ちょっと荷が重いかなー」

「あたしには荷の重さも分からないわ」

「頑張ろう、マオ」




766『 君の為なら法をも犯す 』

「お姉さまが兄さんの同類だったなんて」

「波長が合わない相手とは契約なんてしないよ、精霊はね」

「へぇ」

「だからマオ、気を付けてね」

「え?」

「レディも、マオの為に暴走する可能性があるから」

「え!?」

「正確には、マオの為に暴走するシオンの為に暴走するかも知れない、かな」

「ややこしい!」




767『 物好き 』

「まぁ良いわ。兄さんと同類って事は、社会的に狩られるタイプのアレじゃないって事だもの」

「アレ?」

「ソレでも良いけど」

「いや、アレが差すものについて訊いたんだけど」

「やだラン、卑猥よ」

「は!?」

「わ、ホントだ」

「何が!?」

「こう返せば、大抵の男はそれどころじゃなくなるって母さんが」




768『 霞む視界 』

「マオのお母さんに対する認識を改めなければならないかもしれない」

「そうなの?」

「いや、うん。分かった。そうだよな、シオンの母でもあるんだった」

「ラン、大丈夫?」

「うん。改めるまでもなかった事に気付けたから、大丈夫」

「ホント?」

「ん」

「なんだかとっても不安しかないわ」

「大丈夫だよ」




769『 大切だった人 』

「さてはて、娘御の親御は愉快な気配がするからして、何時か会うてみたいものだと我輩思うのだが」

「ちょっと今どこから湧いて出たの!?」

「随分な物言いだな」

「まっとうなクレームよ」

「レディ」

『分かっているわ、鳳の』

「何だ?」

『シオン』

「何だい、チェズ」

「マオ、こっちにおいで」

「ラン?」




770『 ぼくがいたばしょ 』

「よもや自分の顔を客観的に見る機会が鏡以外にあろうとは。長生きはしてみるものだな」

「ユンちゃん!」

「レディ!?」

『正解よ!』

「さて。当方の姿をして何をしたかったのか、篤と聞かせてもらおうか」

「おや、我輩ではなく当方かい。これはうっかり」

「その姿でその口調は気持ち悪い!」

「酷いな」




771『 交差点で出会う君 』

「見た目ユンちゃんで口調が兄さんとか、気持ち悪い以外なんて表現すればいいのよ」

「ボクかい!?」

「やはりきみは聡いね」

「褒められてる気が全然しないわ」

「何を言う、この上なく褒めているよ」

「本当だ、すごいシオンっぽい」

「まあ、ぼくだからね」

「えっと、とりあえず捕獲すれば良いのかしら」




772『 未来と過去と、苦しい今と 』

「とりあえずで捕獲されたくはないかな」

「じゃあどうして出てきたのよ」

「さあ、どうしてかな」

「ねこ姉さまには伝えてないわよ。森に飛んだ時にはぐれたままなの」

「おや」

「ねえ」

「何だい?」

「あなた、誰?」

「おや、分かっていたんじゃないのかい?」

「最初の質問よ。まだ答えてはくれないの?」




773『 おやすみ、宝物 』

「最初、ね」

「違ったかしら」

「さあ、どうだろうね。もうあまり、細かい事は覚えていないんだ」

「覚えていなかった、の間違いじゃないの」

「かも知れない」

「決めなさいよ」

「え?」

「何が大事でどうしたいのか、諦めないで望んでよ。本人が諦めてたら、外野のあたし達にできる事なんてないんだから」




774『 もしもし、声が聴きたくなっただけ 』

「外野、か」

「誰だって、自分以外は外野でしょ?」

「ははっ」

「何がおかしいの」

「いや、すまない。笑ったわけじゃないんだよ」

「別に笑ってくれても良いわよ」

「いや、本当に違うんだよ。ただ嬉しくなっただけで」

「今の会話のどこに喜ぶ要素があったのかしら」

「ぼくの目は確かだったという事かな」




775『 好きっていうから許して 』

「意味分かんない」

「良いんだよ、ぼくが分かっていればそれで」

「あたしは良くないんだけど」

「愛しているよ」

「は?」

「ぼくはきっと、きみを愛しているんだな、と」

「ふぅん」

「ひどいな」

「だってそんなの、今更だもの」

「おや、きみはヒトから愛されて当然だと?」

「違うわよ。何その傲慢キャラ」




776『 泣いたって仕方ない 』

「貴方から言われるのは慣れてるってだけよ」

「ぼくはそんなに頻繁に言っていたのかい?」

「そりゃあもう。ね、ラン?」

「え、うん。そうだね、マオの冠詞かなって勢いで言ってるね」

「ほら、ランもこう言ってるわ」

「きみは彼を随分と信頼しているんだね」

「相棒だもの」

「伴侶だと!?」

「何でよ!」




777『 いつかきっと迎えに行く 』

「相棒って言ったのに何でそうなるのよ」

「つまり将来的に伴侶となる間柄だと」

「だから何でよ!?」

「相棒とはすなわちパートナー、パートナーとはつまり人生の相棒の事だろう!?」

「理屈の展開は間違ってないのに何かがおかしい!」

「あー、うん。マオ、ファイト」

「もう一人の当事者が匙投げた!」




778『 気紛れにキス 』

「あー、そこな……何だ?」

「ユンちゃん?」

「当方のなりで兄御殿の喋り口調の何者かなんぞ、形を真似られとる当事者からすれば最早違和感以外何を感じ取れという話でな」

「分かった分かった、それはこちらが悪かったが、それできみはぼくに用なのかな?」

「うむ、そこな本体とちと接触してくれ」




779『 忘れてくれないか 』

「……何故にその方法を取ったのか理由を問い詰めたいような聞きたくないような」

「ユンちゃんどんまい!」

「いけなかったかい?」

「宜しくは無い」

「あ、端的になってる」

「それはすまなかったね。ぼくが一番覚えているのは、あの子への接触方法だから」

「そういえば兄さんによくされたわデコチュー」




780『 もう大丈夫だと呟いた 』

「ちゅー」

「あ、ちょっとネズミっぽくてかわいい」

「僕もやって良い?」

「何を?」

「ちゅー」

「……そっなっなな何言」

「あー、ゴメンゴメン。冗談だから落ち着いて、ね?」

「じょうだん?」

「ん、そう」

「言って良い冗談と悪い冗談があるわ」

「ん、ご免」

『本当に冗談かしら』

「必要悪ってあるよね」

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