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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
27/59

721-750

721【 知らんぷり 】

「レディに?」

「そう。名指しだったわ」

「それは……確定かな」

「謎のヒトが兄さんだって事?」

「うーん。いや、でもなあ」

「何か、ランにしては煮え切らない反応ね」

「僕はもともと、即断即決からは遠いタイプだよ」

「そうだったかしら」

「おい、何でも良いけどよ」

「何だよガーディ、今取り込み中」




722【 臆病 】

「お前ら、ここがどこだか分かってたんじゃねぇのかよ」

「異変は感じられないけど」

「あたしも」

「いや、異変がねぇとかもうおかしいだろうが」

「そんなの気にしてたら、死なずの森で生きてけないわよ」

「死なずの森で生きてく気なんぞあるか。そうじゃなくて、成りかけは成ったヤツより厄介なんだよ」




723【 ホントは大好き 】

「それはまあ、分かるけど」

「分かるってんならもうちっと焦れや。お前ら、その軽装だぞ?」

「死なずの森で重装備っていうのもイヤだけど」

「嬢ちゃんは混ぜっ返すんじゃねえよ」

「ガージィが恐い」

「おいちょっと待て、なんか名前みたいにジジイ呼ばわりするんじゃねぇ。定着させる気かよ、嬢ちゃん」




724【 パートナー 】

「はいはい、マオとガーディが仲良しなのは分かったから」

「誰がなかよしなのよ」

「誰がなかよしだって?」

「息ぴったりだね、僕を差し置いて」

「何だラン、拗ねてんのか?」

「拗ねるランとか何それレア!」

「ガーディ」

「あん?」

「ここが死なずの森より厄介だって言ったのは誰だったかな」

「俺だな」




725【 似て非なる 】

「成りかけがどう厄介かっつうとだな、法則が混ざるの一言に尽きるんだわ」

「死なずの森と通常の森、どっちのルールも適用されるって事?」

「惜しいな嬢ちゃん、半分正解」

「どちらの法則が適用されてるのか分からないとか?」

「ランは八割方正解だな」

「という事は、法則の選定法からして不明なのか」




726【 どうしようもないくらい 】

「昨日の朝は、日が昇って傾きだすまで俺達に馴染みのあるルールで活動可能だった。それが昨夜、月が中天を通過した頃にゃあ、走れば止まるって例のルールが適用されてたな。今朝にはまた戻ったが。ちなみに朝だの夜だのは俺の体内時計判断だからな、お二人さんと一致してるとは限らんとだけ言っとく」




727【 風になびくような 】

「走れば止まるって?」

「マオは聞いた事なかった? 移動してたのにしてなくて、立ってただけなのに移動してたって話」

「え、ガー爺それ体験しちゃったの?」

「おうよ、したともさ。そして切り抜けたぜ何せ若いからな!」

「それで体内時計狂ってないとか、スゴいわね」

「聞けや嬢ちゃん」

「自由だね」




728【 耳をふさいで 】

「ねえラン、あたし達が本場の森に飛ばされた時は、そんな体験しなかったわよね?」

「それが死なずの森の事なら、そうだね」

「この森は新しい死なずの森でしょ? なら昔からある死なずの森は、本場の森じゃない」

「いやまあ、マオが良いなら良いけどね」

「お前ら、どうしても俺を放置したいらしいな」




729【 そばにおいでよ 】

「ガーディ、お前の主観で良い。今はどっちだ?」

「さてな」

「……まじか」

「おう、大マジだ」

「勘弁してくれよ」

「同感だな」

「ちょっと、二人だけで納得しないでよ」

「あ、ごめんマオ。説明するけど、その前に手でも繋いでおこうかとりあえず」

「えっ?」

「おう、そうしとけ。はぐれたら終わりだぞ」




730【 重ねた手のひら 】

「つまり、今この森は外の法則と死なずの森の法則が混在中みたいなんだ」

「それも時間帯で変わるのか場所で変わるのかもよく分からんときた」

「どれだけ厄介な事態かは、マオも分かるよね?」

「あ、あああのねラン」

「何?」

「て、ててて」

「て?」

「手をねっ、あんまりにぎにぎしないでくれるっ!?」




731『 秘密の場所 』

「あ、ごめん。マオの手、触り心地が良いからつい」

「ついであたしの心臓止めに来るのは止めてくれないかしら」

「ん、ごめん。でも、手を離すわけにはいかないからね」

「はぐれなようによね?」

「ん」

「やたらと握らないでくれれば良いわよ」

「ん」

「で、お前らどう動く気だ? 紫雷を捜してんだろ?」




732『 涙に代わる 』

「兄さんとお姉さまとねこ姉さまと」

「待った」

「何よ」

「何だネコネエサマってのは」

「ねこのお姉さま」

「さっぱり分からんが、とりあえず紫雷の契約精霊絡みの猫って理解で良いのか?」

「カンペキよ」

「分からん」

「えーと、後は」

「まだ居んのかよ」

「後ひとりよ、ガー爺」

「だからそれはヤメロと」




733『 「ワンモアプリーズ」 』

「あとはユンちゃんね」

「あん? ナニモンだそいつは」

「ユンちゃんは、ランのお友達?」

「疑問形だな?」

「あたしがどこまで言って良いのか分かんないし」

「僕の同胞で、師匠みたいなヒトかな」

「ほぉ、ランの師匠とはまたロクでもねぇな。しかしお前ら、つまり白虎種と精霊と鳳凰種を探してんのか」




734『 君を思い出すと弱くなる 』

「そう言われるとすごく無謀な捜索をしている気になるわね」

「さらに死なずの森モドキの中でっつー舞台オプションも付いてんな」

「客観的に捉えたら、見つかる気がしない条件ね」

「でも、多分問題無いんだよね」

「あん?」

「シオンはマオを捜してる筈だから」

「紫雷のあの溺愛っぷりならそうだろうな」




735『 僕の世界の中心が君 』

「ああシャオ、ボクの愛しい愛しい妹、シャオマオは無事だろうか。あんな寝起きのろくに装備も持たない状態でこんな森の中へと放り出されてしまうだなんて、世界はあの子に何という試練を課しているんだ」

『シオン』

「変われるものなら、ボクが喜んで身代りになるのに」

『大丈夫よ、鳳のが一緒だもの』




736『 なんて面倒臭い生き物なんだ 』

「分かっているよ、チェズ。けれどそれでも心配なんだ。ボクが愛しい妹の心配をしてしまうのは、もうどうしようもない事なんだ。『そうね、シオン。だからこそ、一刻も早く合流をするべきだと思わない?』そうだね、その通りだよ。――みたいな会話をしている気がする」

「否定要素が何ひとつないわね」




737『 「おめでとう」 』

「おいセイラン。嬢ちゃんならともかくよ、なんでお前が紫雷に詳しいんだよ。マニアか」

「断じて違うわ殴るぞ」

「ガー爺がラン怒らせた!」

「ワリィか」

「スゴイなって感心してるの」

「あん?」

「あたしには全然怒ってくれないから」

「怒らせてぇのか?」

「僕は何もしてないヒトに怒ったりしないよ?」




738『 包んで開いた 』

「嬢ちゃんは叱られる事はあっても怒らせる事は無ぇだろ」

「何でよ」

「なんで不服そうなんだよ」

「叱られるけど怒られないとか、完全に子供扱いじゃない」

「おいラン、オンナとして見てくれってよ」

「失礼ね! あたしが男に見えるわけ!?」

「そーゆートコが、ガキ扱いされる原因だろうな」

「どこよ」




739『 君を思い出すと弱くなる 』

「オンナってのは、別に男か女かって話じゃなくてだな」

「じゃあ何?」

「これ以上はランに訊け」

「おいガーディ」

「言って良いのか? 俺から、嬢ちゃんに」

「それはちょっと」

「だろ?」

「ラン?」

「じゃあ俺は行くわ。そういや仕事中だったと思い出したんでな」

「兄さん見かけたら教えてね」

「おー」




740『 燃える手紙 』

「死なずの森モドキの中だろうと相変わらずだな、ガーディは」

「こういう仕事でマイペースが崩れないのは、間違いなく強みよね」

「まあね。対人関係では短所になりがちだけど、そこらへんはディアンがフォローしてるだろうし」

「あの二人、あたしから見たらそっくりなんだけど、そんなに性格違うの?」




741『 やめて、もう、いやなの 』

「いや、あんまり変わんないよ。ディアンもああ見えて結構乱暴だし。とりあえず殴っとけ、みたいな発想をごく自然にするし」

「ギルドの支部長がそんなで良いの?」

「良くないだろうね。だから頑張って自制してるんだよ一応。本来ディアンは、ガーディよりよっぽど脳筋な思考するから」

「そうなの!?」




742『 勘違いさせないで! 』

「改めて考えてみると、あの二人って結構違うのかな」

「ランにとってはそうなるのね」

「僕にとって?」

「そう。あたしは未だに、名乗られるかランに教えてもらうかしないと、どっちがどっちか分からないけど。ランは分かるんでしょ?」

「そういえば、名前を訂正された事はないかなあ」

「ほらやっぱり」




743『 あいしてるっていえたらなあ 』

「なあ、弟よ」

『何だ?』

「このコマンドワード、何とかならねぇか?」

『お前が普段絶対に口にしない単語だろ。間違って起動させる心配がなくて良いだろうが』

「ひとりでこのワードを口にする虚しさも考慮して欲しかったわ」

『安心しろ、俺のコマンドも同じだから』

「兄弟でお揃いとか余計キモイわ!」




744『 「好きって言えたらご褒美あげる」 』

「さて、本題に戻ろう」

「早く誰か見付かると良いけど」

「マオ、本題はそこじゃないよ。それは直近の問題ではあるけど、大元じゃない」

「それもそうね。だとしたら本題は……待って。それが分かれば苦労はないんじゃない?」

「そうとも言うね」

「ラン?」

「だから、いい加減はっきりさせないとなって」




745『 限界が直ぐそこまできてる 』

「もうひとりのシオンは、さよならって言ったんだよね」

「そうよ。お姉さまに、そう伝えてくれって」

「つまり、自分を取り戻してるか、取り戻しつつあるって事だよね」

「そうね。前は何かを待ってる、くらいしか分かってなかったぽかったもの」

「自分を完全に取り戻したら、消えてしまうかもしれない」




746『 嫌だなんて言わないで 』

「それって、兄さんが消えちゃうって事?」

「シオンは消えないよ」

「でも今、消えてしまうかもって」

「問題は、自分は本来存在しないって事を当人が理解しつつある事なんだ。それがもとでマオにどんな影響が出るかも分からない。シオンとしての自分を取り戻したなら、どうするかなんて僕でも分かるよ」




747『 きみのなまえは? 』

「でも、さっきお姉さまに伝言を残したわ。あたしじゃなくて、お姉さまに」

「そうだね。だからこそ、だ」

「え?」

「多分、彼のレディに遺したんだ。紫鳥のチェズではなく、形もあやふやな存在になってしまっている、彼の精霊に」

「ねこ姉さま?」

「レディは言ってなかった? 仔猫の彼女がどうなるか」




748『 恋愛の方法。その1、押し倒せ。 』

「そのうち消えるって、言ってた」

「そう。彼も多分、そうなるんだろうね」

「そんな」

「だから、急がないとね」

「え?」

「さよならじゃなくて、おかえりって言ってあげたくない?」

「できるの!?」

「マオが望むなら」

「望むわよ! どれだけバカだって兄さんだもの! 兄に消えて欲しいわけないわ!」




749『 切り離された運命 』

「だってさ、シオン?」

「え?」

「いやはや、参ったな。いつから気付いていたんだい?」

「さてね」

「え!?」

「やあ、ボクの愛しい妹よ。息災かな?」

「兄さん、お姉さまは?」

『ココに居るわ』

「後はユンちゃんね!」

「ボクの愛しい妹がボクの心配をしてくれない」

「バカ兄うるさい」

「照れ隠しだね」




750『 泣き叫んだあの日 』

 会いに行かなくちゃ。他の誰でもないワタシが。

 ワタシのあのヒトに、会いに行かなくちゃ。

 あの日のワタシは一度諦めてしまったけれど、結局諦められなくて、その結果がこれだもの。

 謝るとか償うとか、そんなかわいらしい事態ではなくなってしまったけれど。それでもワタシは何度でも、この道を選ぶわ。

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