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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
24/59

631-660

631【困ってる顔がすき】

「鳳凰種って空気操作が得意なの?」

「ヒトによるかな。猫族だって、全員がシオンみたいに雷術使いじゃないでしょ」

「あたしは魔法全般使えないから、よく分かんないのよね」

「体術の方が得意だもんね」

「ユンちゃんは何が得意なの?」

「うーん。設置型なら大抵こなすけど、敢えて言うなら結界かなあ」




632【とまどいはかくせないもの】

「苦手なものってあるの?」

「敢えて言うなら接近戦かな。獲物が槍だから、小回り利き難いんだよね」

「あたし、ランに勝てた事ないけど」

「それは、今まである程度広さのある空間で昼間に手合わせしてたからであって、屋内で夜戦とかなら、僕なんて瞬殺できると思うよ」

「ゲリラ戦に持ち込めって事ね」




633【きっとだいじょうぶ】

「試しに今度夜這いかけても良い?」

「マオ、言い方。言い方選んで」

「何かまずかった?」

「思いきり。せめて奇襲とか夜襲とかにしよう」

「ランがそう言うなら、次からそうする」

「ん、よろしく」

「じゃあ今度、夜に襲いに行くわね!」

「言い方!」

「夜襲って言えって言ったじゃない」

「そうだけど!」




634【 恋人のつもりで 】

「夜襲は良いのに、夜に襲うのはダメなの?」

「ダメです」

「理由は何?」

「言って良いなら言うけど」

「けど?」

「マオが怒る気がする」

「あたしが怒るような理由で、ダメって言ったの?」

「いや、怒りはしないか。マオ、前に夫婦を演じた事覚えてる?」

「う、うん」

「多分、そんな感じになる」

「えっ」




635【 届かない距離にいて 】

「む」

『どうかした、古株の』

「是は勘だが、宿にて何やら愉快な事が起こっておるような気がする」

『アラ』

「この距離では流石に間に合わんのが無念だ」

『言葉の割に、あまり残念そうに見えないけれど』

「うむ。一度見逃した所で、娘御ならば二度三度と愉快な事を起こしてくれるだろうと期待しておる」




636【 それ、半分ちょうだい 】

「マオ、そろそろ落ち着いた?」

「もうぜったいやしゅうっていう」

「そ、そう」

「うん」

「えーと、お疲れ?」

「誰のせいよ、誰の」

「結構遠回しに伝えたつもりだったんだけど」

「ダイレクトアタックを受けた気分だわ」

「お疲れのところに悪いけど」

「な、何?」

「シオンが萎れてるから、構ってやって」




637【 左手の薬指 】

「『僕の愛しいシャオマオが、僕の愛しい妹が取られる取られてしまうっいや待て、セイランは母の言う所のゆうりょうぶっけんというやつでは』」

「兄さんが何言ってるか分かるの!?」

「読唇術」

「最初からやってよ!」

「僕もさっき思い出したんだよ。所でマオ」

「何よ」

「ゆうりょうぶっけん、て何?」




638【 止めないで 】

「『おや、知らないのかいセイラン。良いかい、ゆうりょうぶっけんとは』……マオ、見えない」

「見なくて良いの!」

「見ないとシオンが何言ってるか分からないんだけど」

「分からなくていいの!」

「つまり僕に知られると困るんだ?」

「こ、困らないわよ!?」

「まあいいや。マオが嫌なら追究しないよ」




639【 天使か、悪魔か 】

「『やれやれ、僕の愛しい妹はとてもシャイだね。まあそんなところも当然キミの魅力のひとつなわけだけれど』……だからマオ、見えないって」

「そ、そういうのは言わなくて良いの!」

「でも」

「良いから!」

「分かった」

「ホントに?」

「うん、もう言わない。だから目隠しは止めてくれると助かるかな」




640【 胸騒ぎ 】

「むむ」

『どうかした、古株の』

「やはり勘だが、宿にてまたもや愉快な事が起こっておるような気がする」

『アラアラ』

「一度戻って観覧したい気になってきたのだが、いかんだろうか」

『一度見逃した所で構わないんじゃなかったのかしら』

「そのつもりだったのだが、こうも立て続けに起こると欲が出る」




641【 包んであげる 】

「ねえマオ。これ、退けてくれると助かるかなあとか思うんだけど」

「これだなんて、ねこ姉さまに失礼よ」

「うん、それはご免。でもね、マオ」

「何よ」

「僕の頭に仔猫を置かれるととても動きが制限されるし、前足が絶妙に視界を奪う体勢だから、結局目隠しされてるんだけど」

「可愛いからいーじゃない」




642【 ときめきは誰のせい 】

「ぐてっとしたねこ姉さまを頭に乗せてると、ランも可愛いわよ?」

「あのね、マオ」

「何、ラン」

「これ前にも言った気がするんだけど、可愛いって言われて嬉しい男はあんまり居ないんだよ?」

「大丈夫よ。ラン単体なら、可愛いっていうよりキレイだから」

「マオ、綺麗でも一緒だから。嬉しくないから」




643【 理由なんてないけど 】

「そもそも何で僕は頭に仔猫を乗せられてるのかな」

「何でかしら?」

「マオが乗せたんでしょ」

「えーっと。そうそう、ランがバカ兄のバカ発言を口に出して言うからよ」

「マオ、言われ慣れてるんじゃないの?」

「バカ兄からはね。他のヒトに言われたら、何か、すっごい恥ずかしいのよ」

「そう」

「うん」




644【 可愛いひと 】

「可愛いね」

「ねこ姉さまが?」

「マオが」

「あたしっ!?」

「そう。可愛いね?」

「う、うううううろたえさせようったってそうは行かないんだから!」

「ものすごい狼狽えてるけど」

「気のせいよ!」

「へー」

「そうよ!」

「マオ、可愛い」

「きゃああああ!」

「こらこら、どこへ行くの」

「はなしてよ!」




645【 もしもし、だぁれ 】

「分かった、ご免。もう言わない」

「ほんと?」

「うん。だから逃げないでくれると嬉しいな」

「ランがもう言わないなら、あたしももう逃げない」

「ん」

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「兄さんが部屋の隅っこで丸くなってるんだけど」

「拗ねちゃったか」

「もう、子供なんだから」

「マオが言うんだ」

「何よ」




646【 うしろ姿 】

「良く言えば哀愁漂う背中だね」

「悪く言えば?」

「きのことか生えてきそうな、ジットリ感の漂う背中」

「なるほど」

「とりあえず、構ってあげたら?」

「でも、ねこ姉さまが」

「そのまま抱いてても良いんじゃない?」

「兄さんの抱き着き癖を考えたら、小さなねこ姉さまを抱いては近付けないわ」

「あー」




647【 休日 】

「僕が抱いておくか、シオンが抱き付いてきたら僕が阻止するかかな」

「ぜひ阻止して!」

「でもそれじゃあ、また拗ねるんじゃない?」

「良いのよ。何度も何度も何回も何回も人前で抱き付かないでって言ってるのに懲りない兄さんが悪いんだから」

「マオ」

「何、ラン」

「シオンが涙目でこっち見てるけど」




648【 胸騒ぎ 】

「ダメよ、ラン。兄さんの涙ごときに負けてたら勝てないわよ」

「何と戦ってるの、マオは」

「兄さんの抱き付き癖とか暴走癖とか、色々よ」

「だってさ、シオン。頑張れ」

「ちょっとラン、兄さんを焚き付けないで!」

「いや、僕としてはマオに好かれてる事に気付かないシオンが可哀想だなって……おっと」




649【 はだしになったら 】

「あたし、ランに兄さんが好きなんて言ったかしら」

「言動が語ってるよ?」

「お姉さま……は、居ないんだったわ。いえ、居るんだけど、ねこ姉さまとは話せないから相談できないし」

「マオ」

「何よ、ラン」

「シオンがとてつもなくマオに抱き付きたそうにしてるんだけど」

「ぜひそのまま押さえて置いて」




650【 触っちゃダメ 】

「だってさ、シオン。諦めておとなしく座ってるなら、その結界解くけど」

「っ、ラン! 解いて!」

「マオ?」

「早く!」

「分かった」

 なぁん

「今のはアウトかしら」

「マオ?」

「お姉さま言ってたじゃない。兄さんと約束しちゃダメだって。兄さんを待たせるようなものは特にダメだって」

「成程、それか」




651【 誰もいない教室 】

「まあ、目の前に居たんだし、シオンが了承する前に解除しちゃったし、大丈夫じゃないかな」

「ホントに?」

「それよりほら、シオンが呆気に取られてるよ。マオに抱き付く事も忘れて呆けてるから、今のうちに丸め込もう」

「丸め込むって言っちゃうんだ」

「良いの。ほら、マオ」

「うん。ありがと、ラン」




652【 当たりまえ 】

「ぬぅ」

『なぁに、また愉快な事でも起こっているのかしら』

「否、むしろ洒落にならん事態が起きかけたような気が」

『戻るわ』

「したのだが、無事回避されたようで一安心だなと言いたかったのだが」

『それを早く言いなさいよ!』

「もう姿が見えん、と言おうとしたら既におるとは。距離を無視とは流石」




653【 魔法にかかった 】

「っ!?」

「ラン?」

「……ああ、なんだ。人騒がせな」

「ねえ、ラン。どうしたの、大丈夫?」

「ご免、大丈夫。ちょっと結界代わりに展開してた魔法に外部から反応があったもんだから」

「それのどこか大丈夫なのよ!?」

「ユンから連絡があったよ。ちょっと早とちりしたレディがこっちに来てたみたい」




654【 さがしもの 】

「早とちりって?」

「何か、ユンが勘で何か言ったらしい」

「ユンちゃんの勘?」

「まあ、あいつも鳳凰種だから」

「鳳凰種って勘が鋭いの?」

「しょーもない事なら、大体察知するかな」

「しょうもないの?」

「当人にとって面白そうな事に対してのみ嗅覚が凄い、とも言う」

「なんとなく分かったわ」

「ん」




◆655【 もう少し 】

「ユンちゃんにとって楽しい事があったとして、それで何でお姉さまがここに来るの?」

「シオン絡みだったんだろうね」

「ユンちゃんがそう言ってるの?」

「いや、あんまり具体的な事は言ってないよ。通達だから、鳳凰種全員が聞いてるし」

「そういえばそれ、種族全体に届くんだったわね。忘れてたけど」




656【 仕事のあとに 】

「ついでだから、そろそろ一旦戻ってこないかって言っといたよ。月が真上に来る頃には戻るんじゃないかな」

「え?」

「ん?」

「さっきお姉さまが外に居たのよね?」

「みたいだね」

「すぐ近くに居るんじゃないの?」

「いや、今は集落の外に居るみたいだよ。多分、精霊の距離感は僕らとは違うんだろうね」




657【 こっちへおいで 】

「鳳凰種が精霊のお仲間扱いされるのに、ちょっと納得しかけたわ」

「え、何で?」

「共通点、非常識」

「いや、僕らは常識を気にしないのが多いだけで、精霊みたいに常識が違うわけじゃないんだけど」

「じゃあ、鳳凰種の中で常識とされてる事は、氏族外だとどんな扱いになるのかしら」

「そう言われると」




658【 音楽室でのひととき 】

「鳳凰種にとって、自分達と精霊の間には大きな違いがあるんだけど、それが他の氏族から見たら、同じに見えちゃうって事よね?」

「多分ね。精霊から見ても、どうして鳳凰種が精霊扱いされるのか首を傾げてるんじゃないかな」

「それはぜひともお姉さまに訊いてみたいわね」

「レディも変わってるけどね」




659【 結婚しようか 】

「つまり、お姉さまがユンちゃんと結婚したら、名実共に精霊か鳳凰種かよく分かんないナニモノかが!」

「いや、それはもうユンのご両親がやってるから」

「そういえばそうね」

「ところで、マオ」

「何かしら、ラン」

「さては、眠いね?」

「去ってなくても眠いわ」

「うん、よく分かった。寝る?」

「待つ」




660【 瞬間、求めたもの 】

「こうなったマオはヒトの話を聞かないから……やっぱりか。じゃあもう、ユンとレディが早く帰ってくる事を願うくらいしか、僕らにできる事はないね……ああ、うん。分かってるよ」

「ランがひとりで会話してる……憑かれてるの?」

「憑かれてないし疲れてもないよ。あとシオンの存在忘れないであげて」

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