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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
25/59

661-690

661【 左手の薬指 】

「ニーサン?」

「それは僕も知らない人だなぁ」

「ランったら、知らないヒトの事をいきなり和鯛に出さないでよ」

「マオも知らない魚をいきなり出さないで欲しいかな」

「さかな?」

「こっちの話。ほら、マオの左側に居るのがシオン」

「ああ、兄さんならそう行ってよ」

「言ったよ、どこにも行かないけど」




662【 あふれた涙 】

「ところで、マオ?」

「なに、ラン」

「シオンがとても構って欲しそうにしてるんだけど」

「成人女性の腰やら腕やらにくっついて離れないような成人男性とは、お話したくありません」

「眠たいマオとは思えないしっかりした発言」

「わるい?」

「いや悪くはないけど、シオンが泣いてるよ?」

「しりません」




663【 誰もいない保健室 】

「そろそろ中天かな」

「てんちゅー?」

「もしマオが言いたいのが天誅だとしたら、違うからね」

「違うの?」

「違います。そもそも誰が誰に下すの」

「あたしが兄さんに」

「何したのシオン……そんなぶんぶん首振って否定しても、日頃の行いから信憑性薄いんだけど」

「ジゴロの占い?」

「うん、違うから」




664【 授業が終わったあとの教室 】

「うちの父さん、よく当ててたけど」

「マオのお父さんって、ギルドの登録者じゃなかった?」

「そう。この依頼は何か出くわす気がするって言いながら薬草祭主ばっかり請けてて、実際に討伐大将とよく遭遇したって」

「それは占いというよりもはや予言か何かの域だと思うけど。あと正しくは採取に対象ね」




665【 最初のキス 】

「ちなみに母さんとの出会いもそれです」

「それ?」

「薬草最終に行った帰りにね、レッドランクの討伐大賞を短気駆けで追っかけてる母さんと出くわしたって」

「だから採集……待ってマオ、単騎? もしかしてレッド相手に単騎なの!?」

「そう。その依頼が終わる頃には将来を地階あったって」

「誓いね」




666【 とまどいはかくせないもの 】

「ラン?」

「大丈夫、分かってた。マオとシオンを育て上げた二人が逸材じゃない筈がなかったんだ」

「ラン大丈夫? 兄さん抱っこする?」

「断固断る」

「そう?」

「むしろその提案に僕が頷くと思われてたんだとしたら、心外極まりないんだけど」

「だって、よくそれで回復してたもの」

「誰が」

「母さん」




667【 もっと知りたい 】

「それは自分の子供だからだよ。僕は同じ男を抱えても癒されないどころか、荒む」

「じゃああたしは?」

「うん、マオがもう頭が働いてないくらいに眠いんだって事は理解したけど、これだけは訊かせてもらうね大体想像つくけど。誰が?」

「父さんとか」

「とか!?」

「あと母さんのファン」

「ファン!?」




668【 真っ赤なウソ 】

「マオのお母さんてファンが、いや、そういえばそんなような事を言ってたようなそうでもないような……ねぇマオ」

「なに?」

「前に、マオはお父さん似だって聞いたような気がするんだけど」

「例え自分似でも、娘は可愛いみたい」

「いや、普通自分似だから可愛いんじゃあ」

「うちの父さん、自分嫌いで」




669【 ゆびきりげんまん 】

「なるほど」

「ランもちょっとそんなトコあるわよね」

「何が?」

「自分ぎらい」

「あー、うん」

「あたしは好きよ」

「それはどうも」

「おねーさまもゆんちゃんも、にいさんだって」

「シオンが最後なんだ」

「だからね、ラン」

「ん?」

「ひとりでどっか行っちゃわないでね」

「ん」

「やくそくね?」

「うん」




670【 知りたくない 】

「マオ」

「にゅ」

「……寝なさい」

「にゃー」

「ただの猫になってるから。ユンとレディには、僕がむりやり寝かせたって伝えておくから」

「にぃ」

「分かんないからね」

「にゃん」

「……僕を呼ぼうとしたのか、それともただの鳴き声なのか……どっちにしろアレだから聞かなかった事にしよう。な、シオン」




671【 胸騒ぎ 】

「むっ」

『またかしら。もう着くんだから良いじゃない』

「いやはや、安心せられい精霊殿。どうやらセイランが愉快極まりない事になっておる気がそこはかとなくなんともはや」

『はいはい、何言ってるか分からなくなってるわよ。少し落ち着きなさいな』

「精霊殿は先程に反して大層な落ち着きっぷりだな」




672【 もう会えないひと 】

『ワタシのシオンが無事なら、大抵の事はどうとでもするわ』

「どうでも良いでもどうとでもなるでもなく、どうとでもするか」

『それがどうかしたかしら』

「懐かしい言い回しを聞いたと思うてな」

『お父様?』

「否、母の方だ」

『精霊は父君ではなかったかしら』

「是。しかし母の方がよほど傍若無人でな」




673【 恋をするには 】

『まあ、そうよね』

「ほう、納得できるか」

『精霊が同じ時間を刻みたいと望むほどのヒトが、ありきたりな感性の主の筈がないもの』

「そういうものか」

『そういうものよ』

「これは純然たる好奇心からの問いなのだが、精霊殿は契約者殿と共に刻みたいと思うておるのか?」

『共に在りたいと思っているわ』




674【 最近変わった? 】

「ほほう。つまり、同じ時を歩めずとも良いと」

『古株ののご両親は、幸せだったのかしら』

「さてな。其は当人等しか知り得ぬ事よ」

『訊き方が悪かったみたいね。ご両親は、アナタから見て幸せだったと思う?』

「幸せなのだろうと思うておるよ。この前も我が父は楽しげに絶叫しとったからな」

『待って』




675【 おとしもの 】

「如何した、精霊殿」

『この前って言ったかしら』

「是。ここ百日以内の事だったとは思うのだが、それ以上詳細な日付をと言われると少々」

『そんな細かな事はいいわ。楽しい絶叫ってどんなもの?』

「うわぁああああーっはっはっはははははは! みたいなやつだったが」

『確かに、楽しく叫んでいるわね』




676【 口づけまで5センチ 】

「誤解だ、ユン。お前は今激しく誤解している」

「当方、未だ何も言うとらんのだが」

『大丈夫よ、鳳の』

「レディ」

『鳳のが寝込みを襲おうとしていたなんて、可愛い子には言わないでおくから』

「それが誤解だって言ってるんだよ!」

『冗談よ。シオンがそれを許す筈がないもの』

「その冗談は心臓に悪い」




677【 交わした約束 】

「安心せい。寝落ちた娘御には、手元不如意でそこもとが夜這い疑惑をかけられた事は黙しておいてやろう」

「もの凄く反論したいし反論できないのが悔しいけどそれは助かりますありがとう!」

『ヒトって複雑なのねえ』

「レディも!」

『ワタシは知らないわ』

「マオが誤解するような言い方はしないでね!」




678【 10年後に会いましょう 】

「きみは待っていてくれだなんて言わなかった。ぼくも待っているだなんて伝えなかった。それなのに、思ってしまうんだ。何故きみは来てくれないのか、ぼくがこれほど想っているのにと。きっときみが知れば、理不尽な事をと怒るだろうが、知らないきみは怒りにすら来てくれない」

 ねえ、誰を待ってるの?




679【 似たもの同士 】

「誰を? 決まっている、ぼくは彼女を待っている」

 彼女って、誰?

「彼女は彼女さ。ぼくの唯一無二の大事な存在、僕の宝を共に愛でてくれた」

 あなたの、たから?

「そう。とても大切な大切な、ああ、あの子は幸せになってくれただろうか。ぼくがいなくとも、笑ってくれているだろうか」

 あなたは、幸せ?




680【 ずっとさがしてた 】

「どうなんだろうね。ぼくはぼく自身の意思で待つ事を決めたけれど、待っている時間が幸福だとはとてもじゃないけれど言えないよ。だけれど、こうして待つ事で、待った先で彼女に会えたら、ぼくはそれだけで報われるんだろう。だから待てるんだ。きみはいつかあらわれる。だから、ぼくはそれを待つよ」




681【 さみしくなったら、きて 】

「おや、きみの相手がお呼びのようだよ」

 あたしの、相手?

「そう。今のきみはとてもあやふやで、不安定だ。きみを呼ぶ声に意識を向けてごらん。そうして、その声に応える事だけを考えるんだ。そうすればきみは目覚めるよ。ありがとう、久しぶりに会話をしたよ」

 また、呼んで。

「その想いだけで充分だ」




682【 夜にしか会えない 】

「マオ、朝だよ」

「……おはよう、ラン」

「どうしたの? なんだか機嫌悪そうだね」

「また見たわ」

「見たって、例の夢?」

「そう。今度は会話できちゃった」

「話したの?」

「少しだけだけど。ねえ、ラン」

「何、マオ」

「あのヒト、あたしを待ってるんじゃないと思う」

「そう思った理由は?」

「あのね」




683【 この雨がやんだら 】

「レディだよね、それ」

「あたし達の知らない兄さんのお嫁さん候補とかかなって気も」

「それだとレディが猫化してる理由が宙ぶらりんにならない?」

「そうなのよね」

「とりあえず、レディにも話してみよう」

「今日は出かけないの?」

「この天気なら、今日は宿に居ると思うよ」

「天気?」

「鳥だからね」




684【 可愛いひと 】

「あ」

「ん?」

「やあおはよう、ボクの愛しい妹よ」

「おはよう兄さん、ノドはもう良いの?」

「うん、一晩寝たらすっかりだよ。心配してくれたんだね、ありがとう兄は嬉しいよ。おっと、セイランもおはよう」

「ついで感ハンパないね。いっそ忘れてくれてても良かった気がしてくるけど。お早う、シオン」




685【 頭をなでて 】

「兄さん、お姉さまは?」

「チェズなら」

『ワタシはここよ』

「おはようございますお姉さま! 昨日はお出迎えできなくてごめんなさい!」

『アラ、いいのよ。可愛い子が健やかである事の方が、よっぽど大事だわ』

「お姉さま!」

『何かしら』

「あれは良いのか?」

「ユン、居たのか」

「うむ、居ったとも」




686【 間違い電話 】

「ユン、ちょっと」

「何事だ」

「マオ、先に二人と食事しててくれる?」

「良いけど、どうしたの?」

「僕とユンの共通点は?」

「分かった、後でね」

「ん」

「行きましょ、兄さん」

「もう一度問うが。何事だ、セイランよ」

「当事者に言うべきか否か、どうせなら専門家の意見を先に聞いておこうかと思って」




687【 サプライズ! 】

「シャオ、セイランはどうしたんだい?」

「なんか鳳凰種同士で話があるみたい。通達絡みじゃないかしら、痴話夫婦がまた何か言ってるとか」

「ち、ちわ夫婦?」

「あ、痴話喧嘩夫婦だったわ」

「なるほどね」

「兄さんこそ、何かあったの?」

「おや、どうしてだい?」

「だって、会話がスムーズなんだもの」




688【 寄り添いあい 】

「ボクとスムーズに会話できてはいけないのかい!?」

「いや全然そんな事はないけど」

「けど?」

「何の前触れだろうって思えちゃって」

「いや何、昨日チェズに言われたんだ」

「お姉さま?」

『シオンの装飾語を減らしたら、シオンの愛しい妹の言葉をその分だけ聞けるんじゃないかしら、と言っただけよ』




689【 いたばさみ 】

「成程、把握した」

「で、ユンはどう思った?」

「うむ、何とも言えん」

「おい専門家」

「否、当方は確かに解放系が得手の一つではあるがな。これは違うのではと思うた次第だ」

「違う?」

「これは心療の領域だ。生き物の心は、当方寧ろ不得手だと自認しておるくらいでな」

「あー、そういう解釈か」

「是」




690【 独占したい 】

「ときに、ボクの愛しい妹よ」

「何か人生初めて兄さんとスムーズに会話できてたと思ってたのに。それは言っちゃうんだ」

「こればかりはどうしようもないよ。ボクがキミを愛しいと思う事とキミがボクの妹であるという事を端的に表現した優秀な単語だと思っているくらいだ」

「会話が進むだけマシかしら」

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