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小猫と親鳥  作者: かすみづき
LONG 手紙から始まる話
23/59

601-630

601【 どこにもいない 】

「睦まやかなのは結構だか、当方が不在の時に頼めんだろうか。今宵であるとかな」

「むつなんとかっていうのが何の事だかよく分からないけど、からかわれている気がするわ」

「別に揶揄っては居らんが」

「ホントに?」

「今から仮眠を取るが、何かあれば遠慮無く起こしてくれ。では」

「あ、また逃げた!」




602【 やっと会えたね 】

「もう。ユンちゃんの部屋にねこ姉さま放り込もうかしら」

「止めてあげて」

『それは八つ当たりというものよ』

「レディは今まで静かだったね?」

『そのワタシとリンクできないか試していたんだけれど』

「結果は?」

『精霊をナメない事ね、鳳の』

「え、繋がったの?」

『マサカ』

「調子が戻ってきたね!」




603【 新しい服を着た日には 】

「ランとお姉さまが仲良い」

『アラ、妬いてるの? 可愛い子』

「はい」

『素直ね?』

「あたしのお姉さまなのに」

「……うん、分かってたよ」

『めげずに頑張りなさい、鳳の』

「ラン?」

「何でもない。僕はちょっと汗を流してくるから、マオはレディから離れないでね」

「どっちのお姉さま?」

「どっちも」




604【 あとすこしの命 】

「訊いても良いですか、お姉さま」

『何かしら』

「兄さんを助けられたら、こねこのお姉さまはどうなるんですか?」

『溶け消えるわね』

「溶ける!?」

『比喩よ。ワタシとシオンが分離しない時間軸を固定化すれば、そうなるわ』

「居なくなっちゃうんですね」

『戻るだけよ。ワタシが一体の精霊に戻るだけ』




605【 偶然じゃないよね 】

「さみしいです」

 なぁん

「あ! ねこ姉さまが初めて鳴きましたよ、お姉さま!」

『嬉しいのね、ワタシを惜しんでくれて』

「お姉さま好きですもん!」

『ありがとう』

「せっかく鳥と猫の二形態あって二倍可愛いのに、もったいないです」

『そうくるのね』

「え?」

『さすがはシオンの妹で、鳳のの相棒だわ』




606【 どうでもいい、そんな日々 】

「よく言われます」

『アラ、そうなの?』

「いえ、初めて言われましたけど。なんかよく分からないところで、よく分からない感心をよくされてます」

『ああ、何となく分かるわ』

「それです。誰に訊いてもなんかそんな感じで、あー分かるー、みたいな反応なんです。その上、説明は誰もしてくれないんです」




607【 生涯、忘れえぬ人 】

「昔はやっぱりシオンの妹だねとか、あの二人の娘だけあるわとか。最近だとランが相棒にするわけだ、みたいな事言うヒトもちらほら出て来てて。なんかよく分かんないなりに、貶されてるわけじゃなくて認められてるっぽいのは分かるんですけど、言うなら責任持ってきっちり理由まで説明しなさいよって」




608【 もっと知りたい 】

『説明したくない訳じゃないと思うわ。何て言ったら良いのか、分からないんじゃないかしら。ホラ、感覚がモノを言う感覚って言うのかしら』

「よく分からない言い回しになってますけど、言いたい事は分かりました」

『ソレよ』

「それ?」

『今分かった事を、誰かに説明できる?』

「……なるほど」

『ね?』




609【 そろそろおでかけ 】

「ユン、起きろ。もうどっぷり日が暮れたぞ」

「ユンちゃん、この部屋で寝るって言ってたの?」

「気配がここだから」

「随分精密な気配探知ね?」

「同族の気配は、他とはちょっと違うんだ」

「そうなの?」

「鳳凰種特有の感覚みたいだけど」

「幻種特有って事はないの?」

「シオンは言ってた?」

「そっか」




610【 ひとめぼれ 】

「ユンとレディは出掛けたし。僕らもできる事をやっておこう」

「依頼でもクリアする? あと数日なら、受取人を探してたで誤魔化せるけど」

「向こうからやって来る可能性もあるよ。こういう場所だと、部外者の情報の回りは早いものだし」

「気になるヒトを見たってユンちゃんが言ってたけど」

「へえ?」




611【 いたばさみ 】

「受取人らしいヒト?」

「というか、鳳凰種らしいヒトを見たらしいわ。あたしは見てないんだけど。まあ、見ても分からなかったでしょうけど」

「ユンが言うならほぼ確実だな」

「問題は、手紙と鳳凰種がさっぱり関係なかった場合よね。鳳凰種イコール受取人だって確証はまだないもの」

「そうなんだよね」




612【 みつめていたい 】

「連絡があった第一陣勢って事は」

「低いと思うわ。見たのはあたしとユンちゃんが宿で留守番状態の時だもの。来たって事を黙っていたなら別だけど」

「さすがにそれは無いと思うよ。ややこしい事になって、祭りに参加できないのが一番避けたい事態だろうし」

「傍観目的の鳳凰種とか」

「それは有り得る」




613【 独占したい 】

「通達って便利だと思ったけど、むしろ不便な気がしてきたわ」

「そうかもね。それが分かってくれないヒトが、結構多かったりするんだけど」

「そうなの?」

「そうだよ。通達技術で氏族の優位性を保持したいんだろうと言って来たりとかね」

「あきれた。その程度の技術で得た優位性に何の意味があるのよ」




614【 迷子になったら 】

「一応、最先端っぽい技術だよ?」

「鳳凰種的には?」

「カビが生えそうなくらい古い技術」

「でも使ってるのね」

「まあ、それだけ昔からあるのに未だに使ってるのは、やっぱり便利だからだろうし」

「ちなみに、一番利用されるのってどんな場合?」

「自分の現在地が良く分からなくなった時」「それって」




615【 おしえてあげる 】

「鳥族なんだから飛べば良いのに」

「集落の位置が分からないから、体力を消耗するだけで終わるんだよ」

「ドジってレベルじゃないわね」

「飢え死に寸前のヤツとかたまに居るし」

「誰かが助けに行ってあげるの?」

「いや、道を教えてあげる。通達で」

「保つの?」

「意外と死なないもんだよ、生き物って」




616【 一緒に住もう 】

「鳳凰種って、あちこちふらふらしてるのが大半だって前に言ってたわよね?」

「迷子になる顔触れは、大体決まってるんだ」

「同じヒトが、何度も死ぬ寸前まで迷子になるの?」

「極地が大好きなヤツが居てね、通達が来るとまたお前かって言われてる」

「懲りないのね」

「僕達が懲りると思う?」

「無理ね」




617【 世界が変わった 】

「即答で否定されると傷付くなあ」

「だって、懲りるユンちゃんとか想像付かない」

「何でそこでユンなのさ」

「あたしが知ってる鳳凰種はランとユンちゃんだけだもの」

「僕は?」

「そもそも懲りなきゃいけないようなミスをするのかしらって」

「うーん、褒められたと思っておくよ」

「ただの事実よ」

「ん」




618【 新しい服を着た日には 】

「明日は、ユンが言ってた人物に会いに行ってみようか」

「尾行してないわよ」

「ユンがわざわざマオにも知らせてるんだ。チェックはしてある筈だよ」

「ツーカーね」

「また拗ねてる?」

「すねてないわよ。でも、鳳凰種ならチェックされた事に気付いてるんじゃない?」

「そこも含めて見極めポイントかな」




619【 声がかれるまで 】

「じゃあ、今晩は特に何もしないの?」

「夜に出歩いたら悪目立ちするから」

「ユンちゃんとお姉さまは良いの?」

「誰の目にも触れないように行動してる筈だよ」

「見付からないから目立ちようがないって事ね」

「そういう事。ところでマオ」

「言わないでラン、分かってるから」

「そう」

「兄さんでしょ?」




620【ごつん】

「延々愛しの妹リサイタルを開かれても困るけど、そうやって黙ってひたすらマオにくっついてるのも、嵐の前の静けさ的な感じで不気味だよね」

「そのリサイタルで喉がやられたか、お姉さまに置いていかれてすねてるかのどちらかでしょうね」

「あー」

「どっちなの、兄さん」

「前者なら答えられないけど」




621【嘘じゃないよね?】

「声が出ないならあたしから離れる、声が出るなら弁明しなさい」

「……横に首振ってるけど」

「両方って事かしら」

「あ、頷いた。よく分かったね、マオ」

「とりあえず離れてくれないかしら。顔が見えないと話もできないわ」

「そんな不安げに僕を見上げられても」

「逃げないから、あたしの腰から離れて」




622【はんぶんこ】

「マオ、よく分かるね」

「ずっと兄さんの妹やってるもの」

「あ、何か嬉しそう」

「だから、離れなさい!」

「首振ってる」

「兄さん、いい加減にしなさい。成人女性の腰に抱き着くなんて、立派な犯罪行為よ」

「固まったね」

「自覚なかったの?」

「でも離れない、と」

「分かったわ、手を繋いであげるから」




623【背伸びをして】

「マオ」

「言わないで、ラン」

「マオが良いなら良いけど、それ腕を組むって言わない?」

「言わないでって言ったのに」

「ごめん」

「さっきの状態よりはマシだと思えば、まあ」

「寝るまでにシオンが落ち着くと良いね」

「落ち着かなかったら、ランも道連れだからね」

「え?」

「三人並んでザコ寝よザコ寝」




624【想いの果て】

「野営でもないのに、それはちょっと」

「他の男と二人きりで寝ろって言うのね」

「ちょっと待った」

「何よ」

「そんな言い回しどこで覚えてきたの」

「何か変な事言ったかしら」

「無自覚か」

「何よ」

「いや。兄妹なんだから、大丈夫でしょ」

「あたしが抱き潰されても良いっていうのね」

「だから言い方!」




625【どこにもいない】

「小さい頃にね」

「ん?」

「兄さんと一緒にお昼寝したんだけど、その時兄さんたらあたしを抱き枕にした挙句、無意識にぎりぎり締め上げてきたの。様子を覗きに来た父さんに助けられたけど、子供心に死ぬかと思ったわ」

「なるほど、抱き潰し」

「それ以来、兄さんと二人だけの時は寝ないようになったの」




626【よみがえる記憶】

「何か、シオンが愕然とした顔してるんだけど」

「知らなかったんじゃないかしら」

「寝てたから覚えてないって事?」

「多分ね。あたしも細かい事は覚えてないけど。そんなわけで、兄さんと二人だけだと寝る気になれないのよ」

「うーん、そういう事ならしようがないかな。今回だけだからね」

「ありがと」




627【アイスクリームが溶ける前に】

「ユンちゃんとお姉さま、いつ頃戻ってくるのかしら」

「夜が明ける事はないだろうけど。起きてるつもり?」

「月が真上に来るくらいまでなら良いけど。それ以上は明日に響きそうだからどうしようかと」

「明日の朝、マオを起こすだけなら一発だけど」

「何で?」

「今日、アイスを仕込みました」

「一発ね」




628【ごはんができたよ】

「勿論、ご飯を食べてからね」

「ランって時々おかーさんよね」

「それは僕が女性に見えるという事かな?」

「保護者っぽいなってだけで、他意はないわよ」

「僕が保護者は嫌なんじゃなかったの?」

「イヤよ」

「横のシオンが何かすっごい自己主張してるけど」

「まず妹の腕から離れた後で主張するべきよね」




629【今だけ恋人】

「それにしてもラン、アイスなんてどうやって作るの?」

「空間から空気を抜いて、他にもまあ色々と」

「どうやって、は訊くだけムダなのよね」

「あーうん、そうかも」

「空気のない空間に空気が入り込まないのかなって思ったけど、やっぱりそれも訊くだけムダなんだろうなって言ってる途中で気付いたわ」




630【痛みの理由】

「ねえ、ラン」

「何、マオ」

「わざわざ空気をどうこうするより、凍らせちゃえば一発なんじゃないかしら」

「あー」

「ラン?」

「それはそうなんだけど」

「だけど?」

「大気を操作した方が楽なんだ」

「氷結の方が難易度低かった気がするんだけど」

「僕には大気操作が一番簡単なんだよ」

「ヒトそれぞれね」

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