第六話 楽園 其の二
零は気を取り直して聞き込みを再開した。
また別の女の子連れの母親に声をかけ、
レジスタンスの情報の聞き込みをしてから
少しずつ話題を変えて行った。
零
「所で、ここでの暮らしはどうですか?
住みやすいですか?私、最近来たばっかりで」
母親
「ここはまさに女性の理想郷ですよ。
あなたもここに来て正解よ」
零
「有難うございます。あの、私来たばかりで
まだよく知らないのですが、
貴方も天使の塔でお子さんを
妊娠されたのですか?」
母親
「ええ、もちろんよ」
零
「あの、失礼ですが、パートナーと
天使の塔に行った後に、妊娠したという事で
間違いないでしょうか?
ここではそれが当たり前になってるんですか?」
母親
「いえ、私はパートナーは居ませんよ。
一人で妊娠したんです」
零
「え?……ど、どういう事でしょうか?」
母親
「まあ無理も無いわね。来たばかりなら。
この地区では女性一人でも妊娠できるんです。
それに、女性のペア二人で天使の塔に行って
二人とも妊娠する事だって出来るんですよ。
自由に選べるんです。
すべて天使の塔のお陰でね」
零
「・・・・・・・・」
母親
「どうかしました?」
零
「えっと、一人で妊娠したのですか?」
母親
「ええ。それでこの娘を授かったんですよ。
ほら、かわいいでしょ?」
零
「ひ、一人でどうやって妊娠したのですか?」
母親
「天子様のお力ですよ。私達はそれを
深く考える必要はもうないんです。
天子様を信じる事がこの地区の繁栄に
繋がるんですから」
零は呆気に取られていた。
母親が押すベビーカーには
確かに元気そうな小さい女の子が居た。
女の子と目を合わせてる時、零は気付いた。
さっきの母親が連れてたのも女の子。
思い返せば街中で見かける子供は
皆女の子だった。
零
「……あの、もう少しよろしいですか?」
母親
「ええ、なんでも聞いて下さい」
零
「この地区には、大人の男、オスだけでなく、
子供の男の子も居ないのですか?」
母親
「勿論よ、ここはウーマン地区なんですから。
例え子供であっても、ここにオスは
存在してはいけないんです。安心して」
零
「赤ちゃんが男の子か女の子かは
赤ちゃんが大きくならないとわからないと
思うんですが、何故女の子ばかり
産まれるか、ご存じですか?」
母親
「それも天使のお陰なのよ。
天子様が女の子だけを私達に
授けてくれてるのよ。
あなたもここで暮らせば直ぐにわかるわ。
ここで暮らすなら、もうそんな難しい事は
考えなくていいの。私達はただ
天子様を信じればいいのよ」
零はこれ以上情報は聞き出せないと判断した。
零
「……ご協力有難うございました」
零が警察署に戻ると、
他の警察達の聞き込み調査で得た情報から
レジスタンスの潜伏先が特定出来たので
近日中に行う突入作戦に零も参加するよう
命じられ、その日の勤務は終わった。
その夜
零
「一体どうなってるの?この地区は。
聞き込みで話を聞けば聞く程
ここの異常さが見えて来たわ。
えっと、分かったのは
天使の塔って言うのは
大規模出産センターって事。それと
そこで妊娠してるって事。
出産センターに行ってから妊娠してる事。
それと、何だったかしら……
そう、一人でも妊娠できるって事ね。
あと、女性のペア二人とも妊娠する事も
自由に選べるって事。
あと気になったのは、街中で見かける子供も
女の子ばかりって事ね。
今の所考えられるのは、あの天使の塔の中に
本当は男が居るのかも知れない。
そう考えるのが一番単純でシンプルね。
だとすれば、全身麻酔で眠らされてる間に……
考えたくない事ね。それにその推測が
当たってたとしても、生まれてくる
赤ちゃんが女の子ばかりなのが説明つかないわ。
!まさか、お腹の中で男の子って判ったら
……中絶?……いや、まだ推測の域だわ。
……考えるのが怖くなって来た。
女同士で妊娠出来る筈無いし、いや、
何らかの方法で女同士で妊娠してるのかなあ?
それとも……本当に天使の力なの?
ああもう、分からない事だらけ。街の人達も
妊娠出産の事はタブー視されてるみたいで
なんにも話してくれないし。
その事に疑問や不満を持つ人達が少しは居ても
おかしくないんだけどなあ……
!!!……レジスタンス……
そうよ!レジスタンスだわ!!
この地区に反抗活動をしてるって事は、
この地区の闇や秘密を、
何か知ってるって事じゃ無い?
そうよ、それにもうすぐ、
潜伏先への突入作戦があるじゃない!
いい事思いついたわ。
レジスタンスの潜伏先への突入作戦の時に、
そいつらにわざと捕まってやるのよ。
そしてそいつらから情報を聞き出す。
私なら出来るわ。これで捜査が進むかも
しれないわね」
零
「・・・」
零
「・・・・・」
零
「・・・・・・・」
零
「・・・・・・・・・」
つづく




