第五話 楽園
……なんで?どうして?……
……私の何がいけなかったの?……
…ちゃんと悪い所直したじゃない!…
ねえ、なんとか言ってよ!……
…………何言ってるの?…冗談でしょ?…
……噓でしょ?…ねえ嘘だって言ってよ!……
……私のせい……
……私のせい?……
…何を間違えたんだろう……
……何処で間違えたのかな……
……もう私にはわからない…
…もう…どうしたらいいかわからないの……
(……また……あの夢…………)
ウーマン地区中央警察署
零はウーマン地区内で
警察官として勤務する事になった。
皆に挨拶を済ませ、早速仕事を与えられた。
以前から地区への反乱活動を続けている
レジスタンス達の潜伏場所を絞り込めてるから
そのエリア付近で、地区に馴染むのも兼ねて
レジスタンス達の聞き込みをして来いという
指令だった。
(狙い通り。これで聞き込みしながら
天使の塔の事とか聞けるわ)
零はそう思いながら早速街に出た。
エリア内を巡回してると、確かに子連れの
親子をチラホラ見かける。
零は女の子を連れた母親に
レジスタンス達に関する
聞き込みをして、ついでに妊娠出産について
探りを入れて行った。
零
「そうですか。不審な人物は見かけませんか。
あの、実は私、昨日ここに来たばかりなんで
教えて欲しい事があるんですが、
宜しいでしょうか?」
母親
「ええ、いいですよ。何でも聞いて下さいね」
零
「ここでの暮らしはどうですか?」
母親
「まるで楽園ですね。女性だけで、
オスに怯える事も無く差別されることも無く
安心して生きていけます。
酒に酔って子供を殴るオスも居ませんから
安心して子育ても出来ますよ」
零
「そうですか。あの、失礼かもしれませんが、
男…じゃなくてオスが居ないのに
どうやって女性同士で妊娠してるんですか?」
母親
「天使の塔に行くんですよ」
零
「その天使の塔に行って、
その後どうするんですか?」
母親
「ああ、そっか
来たばかりだからそれも知らないんですね。
あの塔は地区が管理してる
大きな出産センターなんですよ。
地区の区民は皆あそこで妊娠出産するんです」
零
「つまり、産婦人科病院と言う事ですか?」
母親
「ええ、それの凄くおっきい物ですね」
零
「その施設に行ってその後どうするんですか?」
母親
「私の時は、パートナーと一緒に
天使の塔に行って、書類にサインしたら
部屋に案内されて全身麻酔を受けたんです。
それで目が覚めたら妊娠してました。
ここでは皆そうしてますよ」
零
「……全身麻酔を受けて、
その間何をされたんですか?」
母親
「あはは、もう何言ってんの?
全身麻酔されてるんだから
何も覚えてないに決まってるじゃない」
零
「そ、そうですよね……
あの、この地区では皆その方法で
妊娠してるんですよね?」
母親
「そうですよ?」
零
「では、皆全身麻酔を受けてる間に
何をされてるか知らないと言う事ですか?」
母親
「そうなりますね。だって全身麻酔で
寝てるんですから」
零
「ええっと…誰も眠らされてる間に
何をされてるのか知りたいとか、
教えて欲しいとかその天使の塔の施設側に
聞いたりしないんですかね?」
母親
「ええ、いませんよ。あなた、
まだ来たばっかりだから分かってないんですね。
そんな事考える必要は無いんですよ、
この地区では。
全ては天使のおかげなんです。
私達が妊娠できるのも、
天子様のお力なんですよ。きっと。
あなたもそんな事考えるのはもうやめて
素直に天子様を信じた方がいいですよ」
零
「……そ、そうですか」
母親
「そうですよ。もういいですか?」
零
「あ、はい、ご協力有難うございました」
母親
「では……ねえ、あなた……」
零
「はい?」
母親
「あなた、そんな風に天子様の事を疑うような
事ばかり言ってたら、
天子様に叱られちゃうわよ?気をつけなさい」
零
「……え?……」
母親
「では、ごきげんよう」
親子は去って行った。
零は今まで経験した事のない種類の恐怖に
動けずにいた。
零
(……何よあれ?……
取り敢えず情報を整理するか。
天使の塔は大規模な出産センターって事。
全身麻酔を受けて目が覚めたら妊娠してる。
それと、さっきの話でわかったのは、
妊娠してから出産センターに行くんじゃ無く
出産センターに行って妊娠するって事。
外の世界とは順番が逆って事。
それと、あの母親の口ぶりでわかったわ。
この地区では、妊娠出産の方法を
詮索する事が、タブー視されてる!
あの人は私に警告してたのね。
どうしよう。街全体がこんな感じじゃ
誰も教えてくれないかも知れないわ。
この地区、想像よりずっと
闇が深いかも知れないわね)
つづく
零
「高評価とか……ブックマークとか…
してくれないと……ムリかも」




