第二十二話 X
零とはじめは廊下を進み、
作戦指令室へ辿り着いた。
部屋の奥に、腰に刀を帯刀した地区長が
立っていた。
地区長
「……辿り着いたか、零よ……」
零
「地区長、来たわよ!」
はじめ
「母さん!」
地区長
「……ここのモニターからお前達を見ていたぞ。
地下で騒ぎを起こし、警備を手薄にして
上まで来るとは。知恵を使ったな。
ここに辿り着いたと言う事は、あの執行員も
退けて来たのだろう……
いいだろう、零よ、お前を約束通り
我々の新たなる仲間として迎え入れよう」
はじめ
「?……仲間?おい、何の事だ?」
零
「ありがとう。それで、全部話してくれるの?」
地区長
「ああ、全て話そう……我が娘、はじめよ。
お前もよく聞いておくが良い。
ようやくお前に真実を伝える時が来たようだ。
その時、意識を取り戻した強制執行員が
負傷した体を引きずるように作戦指令室に
入って来た。
強制執行員
「……ま、待て……私は……まだやれる……」
地区長
「……無様だな、執行員よ。もうよい
お前の負けだ。零に手を出すな。
大人しくここで私の護衛を続けろ」
強制執行員
「……クッ……」
地区長
「さて零よ、何が聞きたい?」
零
「どうやって女性同士で妊娠してるのか教えて」
地区長
「よかろう。零よ、『人工精子』と言うものを
聞いた事はあるか?」
零
「人工精子?……いえ、聞いた事ないわ」
地区長
「元々は不妊治療の為の技術だった物だ。
人の細胞、髪の毛からでも作れるのだ。
髪の毛から細胞を回収し、それを
どんな細胞にも変われるiPS細胞に変え、
そこから精子へと成長させる。
そして女性の体から摘出した卵子と
体外受精させ、受精卵にしてから
女性の子宮に戻し、着床させる事で
妊娠が可能になるわけだ。
無精子症のオスなど、医学的事情で
精子を作れない者達の為の技術だったらしい。
我々はこの技術を積極的に取り入れ
研究を重ね、外の世界よりも早くに
実用化したのだ。理由はわかるか?」
零
「それって……まさか……」
地区長
「うむ、多分そのまさかだ。
良いか?髪の毛さえあれば人工精子は
作れる。ならば、女性の髪の毛から
人工精子を作り、卵子と受精させれば、
どうなると思う?」
零
「……女性同士で、妊娠?本当に?」
地区長
「そういう事だ。
女性はXX染色体を持ち、
オスはXY染色体を持つ。
卵子がX。精子はXとYの両方が混ざっている。
卵子とX精子かY精子のどちらが受精するかで
産まれる性別が女性かオスか決まる。
卵子XとX精子が受精すれば女性、
卵子XとY精子が受精すれば、
あの汚らわしいオスが産まれてしまうのだ。
だが、女性の髪の毛から作った人工精子なら
元の細胞がXXなのだから、そこから作られた
精子も必ずXだけになる。Y精子は存在しない。
なら受精卵は必ずXXになり、
必ず女性が産まれるのだ。
この技術のお陰で我々は真に女性だけの
世界を作り上げたのだ。
もう汚らわしいY染色体など我々には、
いや、最終的には世界に必要なくなるだろう。
お前は赤ちゃんがオスだったら中絶してるのかと
聞いていたな?それは違う。
ここでは今話した技術で、そもそもオスが、
Y染色体の存在が最初から
産まれないようになっているのだよ。
謎は解けたか?零よ……」
零
「……女性の髪の毛から人工精子を作って、
体外受精で、女性同士で妊娠していた。
そして、女性の髪の毛から作った精子だから
Y染色体が存在しないから、男の子の
赤ちゃんは産まれて来ない……そういう事?」
地区長
「その通りだ。理解したようだな」
はじめ
「……待ってくれ母さん!今の説明だけじゃ
納得いかない事がある!
私はどうやって産まれたんだ?
母さんは一人で私を産んだんだろ?
パートナーの人工精子も無いのに、
どうやって私を産んだんだ?」
地区長
「……うむ、いいだろう。
この地区ではパートナーが居なくても、
一人でも妊娠出来る。
その理由が知りたいのだな?
我が娘、はじめよ……お前に全てを話そう」
つづく




