第十八話 過去
地区長
「いいだろう。気高き女性、美しき女性
零よ、話してもらおう。
お前の過去、お前の傷を……
何故自傷行為に走ったのだ?」
零
「……わ……私には、彼が居たわ。
大好きだった……彼が」
地区長
「……どんなオスだった?」
零
「……とても真面目で、優しい人……
本当に素敵な人だったの……
ずっとこの人と一緒に居たいって……
本当にそう思ってたわ」
地区長
「それは素晴らしい事だ。それなのに
何故自傷行為をしたんだ?」
零
「……別れたいって……突然言われたのよ」
地区長
「何と酷い事を。こんなにも美しい女性を。
そのオスは理由は何と言っていた?」
零
「……き、君の事が……
重たいって、言われたのよ……
わ、私、周りの友達や……
テレビの別れ話とかを聞いて、
こんな風になっちゃいけないって…思って…
彼に愛されようと、色々頑張ったわ……
ちゃんと男性の意見を尊重して、彼に合わせたし
自分の悪い所も直したのよ、頑張って……
彼に喜んでもらえるように、
彼に相応しい女になるように、努力したわ。
……それなのに……それなのに……
そうしたら今度は重たいって言われたのよ!!
酷いじゃない!!彼の為にやった事なのに!!
何でも彼に合わせてあげたのに!!
彼に合わせてあげて、彼に振られたのよー!!
どうしろっていうのよーーー!!」
地区長
「……酷い話だな。そのオスはろくでもない
オスだったのだろう」
零
「……いいえ、違うの……
私、彼が浮気してるんじゃないかと思って
探ったんだけど……本当に浮気も何も
してなかったのよ……あの人は本当に
立派な人だったのよ。彼は悪くなかったのよ。
彼のせいに出来ないんなら、
私のせいになるじゃない。そうなるじゃない。
あんなに彼に合わせたのに、
それでも振られたんなら、
もう、どうしたらいいかわからなかったの。
……それで、自分が嫌になって、
自分なんて恋も出来ないんだって思って……
自分に罰を与えたいって……思って……
カッターナイフで、自分の左腕を切ったのよ」
地区長
「そんな事があったのか。
さぞや苦しかっただろう」
零
「……苦しかったの。
自分なんて消えればいいって思ってたの。
私がいつも黒い手袋をつけてるのは、
その時の傷跡を隠す為、見ない為なのよ」
地区長
「そうだったのか……
いいだろう、亜里素、零の拘束を解いてやれ」
亜里素
「よろしいのですか?」
地区長
「この状態なら大丈夫だろう。やれ」
亜里素は零の両手の拘束を解いてやった。
地区長
「辛かったであろう……」
零
「それから、私、もうこんなに辛いんなら
もう恋なんてしたくないって……そう思って、
それからずっと、男を遠ざけた来たのよ」
地区長
「よくぞ打ち明けてくれたな、零よ。
お前に敬意を払おう。
零よ、お前は決して悪くはないぞ」
零
「……え?」
地区長
「その恋人の事を良く考えてみろ。
お前がオスに合わせて、それでお前を
捨てるのなら、
それはオスが矛盾してるという事であろう?」
零
「……そ、そうなのかなあ?」
地区長
「そうだとも。オスは誰でも女を平気で捨てる。
オスとはそういう生き物なのだよ」
零
「そうだったの?」
地区長
「ああ、お前を苦しめて来た正体は
オスだったのだよ。今までずっとオスを
遠ざけてきたのなら、それは
オスによってお前の行動が制限されていた、
そうは思わないか?」
零
「……そうね、そうだわ……
私、オスに制限されてたんだわ!」
地区長
「零よ、お前はここで生まれ変わるが良い。
オスの居ないこの地区で自由になるのだ。
ここならもう、
お前の邪魔をするオスは居ないのだから。
お前を政府役員として向かえてやるぞ」
零
「ほ、本当に?……いいの?」
地区長
「……亜里素、どう思う?」
亜里素
「完全に洗脳されてると思います。
ですが、念の為、立場を逆転させる
必要があるかと……」
地区長
「そうだな、だがその前に……」
地区長はポケットから白いフィルムケースを
取り出した。
地区長
「我々地区の住人にとっては遺伝子こそが全て。
優秀な人材の遺伝子の保存が、
地区の繁栄に繋がるのだ。
零よ、お前の綺麗な髪を一本もらうぞ」
プツッ
地区長は零の髪を一本抜き、
白いフィルムケースに入れ亜里素に渡した。
地区長
「亜里素、それをラボに持って行け」
亜里素
「はい、了解しました」
タッタッタ……
亜里素は立ち去って行った。
地区長
「零よ、今日から我々の仲間と言いたい所だが、
真に我々と肩を並べる程の人材が確かめる為に
試練を受けてもらう」
零
「試練?」
地区長
「あの親不孝娘、はじめを連れて私の所に来い。
天使の塔33階、作戦指令室に私は居る。
我々の警備を退けて私の所まで来れば
真の仲間として認めてやろう。
そして、お前が知りたがっていた
妊娠出産の謎、この地区の真実、
全てを話してやろう」
零
「わかったわ。必ず会いに行くから」
地区長
「期待しているぞ。今日は疲れただろう
もう帰るが良い。警備員を呼んで
外まで案内させてやろう」
零は警備員に案内され部屋を出た。
地区長
「……お前の腕の見せ所だな、執行員よ」
強制執行員
「・・・・・」
その夜
零
「私ったら何をムキになってたのかしら。
ずっとここに住めばいいだけじゃない。
そうよ、ずっとここで生きていくとして
何の不都合があるって言うの?
もうオス達と顔を合わせる事も無いわ。
もうバカなオス共とはおさらばだわ。
……はじめをつれて行かなくちゃ。
はじめは地区を潰そうとしてるから
いずれは天使の塔に攻め込もうと
してるだろうから、好都合だわ。
一緒に天使の塔に攻め込んで
地区長に会ってから、
はじめを止めればいいのよ。
大丈夫、きっとうまく行くわ。
……はー、それにしても
私ってホントにバカだったわ。
地区長のお陰で目が覚めたわ。
そうよね、私は悪くないのよ。
悪いのは全部オスなのよね」
つづく
亜里素
「フフフ…高評価、ブクマしなければ
お前も催眠にかけてやるぞ……」




