第十七話 未来永劫
地区長は冷徹な表情で語り始めた。
地区長
「15世紀から17世紀の頃、
キリスト教徒達は多くの女性達を
拷問にかける魔女狩りを行った。
オスに比べ女性達は精神的にも信仰的にも
未熟故に悪魔にそそのかされ易いと、
当時の社会では判断されたようだ。
推定では3万人以上の女性達が
火あぶりや絞首刑で殺されたようだ。
かつて東洋の大国の一部地域では
幼い少女の足を強く縛り、小さくなるように
無理矢理変形させる習慣があったのだ。
女性を家の中に留める為、働けなくする為に。
一生まともに歩く事も出来ない体に
させられていたのだ。
少女達は足の痛みと苦痛に苦しみながら
母親から布を足にまかれ縛り付けられ、
その苦痛は生涯続いたらしい。
ヒンドゥー教の社会ではな、
夫が死んだ時、遺体を火葬する時に
妻を生きたまま共に焼き殺していたのだ。
その社会では未亡人は不吉な存在とされ
再婚も出来ず財産も奪われ
酷い差別を受けたらしい。
焼け死んだ方がマシな程にな。
オスにとって女性は人間ではなく
所有物のような物だったのだろうな。
イスラム圏のある国では
女性が小学校より上の学校に通う事を
法律で禁じた。女性が社会進出する事を
防ぐ為に。女性を家庭内に留めたいのだろう。
いつの時代も、どの国でも、
オスは女性が賢くなる事を嫌うのだ。
自分達を脅かす存在になるからな。
人類が文明や宗教を作ったその時から、
この世界は我々女性を差別、支配するように
デザインされていたのだよ。
そして今現在ではどうだ?
お前がこの地区にバスに乗って来た時も
他に入居希望者が居たのではないか?」
零
「・・・・・」
地区長
「外の世界で男女平等が実現してるのなら、
女性が生きやすい社会になってるなら
新規入居希望者はここに来ないだろう。
それはつまり、外の世界ではまだ
女性差別が続いてると言う事だ」
零
「……何が言いたいの?」
地区長
「……人類が文明を築いてもう五千年以上か、
その頃から女性への差別は生まれ、
そして今も続いてる。
銀髪。おまえもとっくに気付いてるだろう。
これから先、未来永劫、
女性差別は無くならない。
外に女性の幸せは無い。
この地区、ウーマン地区こそが
女性達に残された最後の砦なのだよ。
お前もここに来て安心した瞬間がなかったか?
オスが居なくてホッとした時がなかったか?」
零
「……うるさいわね」
地区長
「難しく考える必要は無い……
これからお前はここで暮らせば、
それで良いのだよ」
零
「……私は公安よ!必ず東京に戻るわ!」
地区長
「……ふむ、意思の固い奴だ」
亜里素
「フフ……十零よ、強がるのもそこまでにしろ」
零
「?何で私の名前知ってるの?……ああ!」
アリス
「……ねえ、お姉ちゃんの名前は?」
零
「ああ、私は十零っていうのよ」
零
「……あの時……クソ!」
亜里素
「私の前で名前を言ったのが間違いだったな。
あの後お前の名前から個人情報を調べたら
いい事が分かったんだよ。
……地区長」
地区長
「どうした?」
亜里素
「この女、十零の通院履歴を調べたら
興味深い事が分かりました。
この女、過去に自傷行為を起こして
病院に運ばれた過去がありますね」
零
「!……な、何言ってんの?デタラメよ!」
地区長
「それが私をここに呼んだ理由か、亜里素よ」
亜里素
「はい、この女は利用できる可能性があります」
零
「何言ってんの?バカじゃないの?」
地区長
「……いいだろう。始めろ」
零
「!?何をするの?」
亜里素
「さあ、今から楽にしてやる……
零よ、私の目を見ろ」
零
「!!?」
零
「!!!!!
・・・・・・・・あ・・・ああ・・・」
地区長
「どうだ?成功したか?」
亜里素
「はい。完全に成功しました。
……フフ、零よ、私の技能は催眠なんだよ。
女性脳外科医達を催眠にかけて
ここに来させるように、
お前一人催眠にかける事など
私には造作もない事なんだよ フッフッフ」
零
「・・・・・・・・・・」
地区長
「いいだろう。気高き女性、美しき女性
零よ、話してもらおう。
お前の過去、お前の傷を……」
つづく




