第十三話 はじめの過去
はじめ
「私はな、地区長の娘として
充分な学問や知識や教養を学んだんだ。
子供のころに。そして、
知識を得る程に、この地区に疑問を持つように
なって行ったんだ……」
はじめ 幼少期
はじめちゃん
「ねえママー、ママー」
地区長
「どうしたの?はじめちゃん」
はじめちゃん
「ねえ猫ちゃんやワンちゃんは
オスとメスがいるのに
どうして私達ヒトはメスだけなの?」
地区長
「ああ……もっと大きくなったら
教えてあげるわね。
ほら、お勉強しましょうね」
はじめちゃん
「この前もそう言ってた。
わたし今知りたいのー!」
地区長
「大きくなったらわかるわ……」
はじめ 高校生時代
はじめ
「母さん……私は、本当に母さんの
子供なの?」
地区長
「どうしたの?はじめ。らしくないわね。
勿論貴方は私の子よ。安心なさい」
はじめ
「だったら私のもう一人のお母さんは何処?
私もう一人のお母さんに会いたい」
地区長
「はじめ……いいわ。話しておきましょう。
はじめ、貴方はお母さんが一人で産んだのよ」
はじめ
「え?……そうなの?」
地区長
「この地区では天子様のお陰で
一人でも子供を授かれる。
貴方も知ってるでしょ?学校で習ったでしょ?」
はじめ
「そうだけど、やっぱりこんなのおかしいよ!
私本当は母さんの子じゃないんでしょ?」
地区長
「やめなさい、はじめ、そんな事無いわ。
貴方は正真正銘、母さんがお腹を痛めて産んだ、
特別な子よ。
“貴方は、この世界でたった一人の、
特別な存在なのよ はじめ……”
わかった?」
はじめ
「……ねえ母さん、いつも言ってたよね?
地区長の娘として立派な女性になりなさいって。
その為に沢山お勉強して、
知識を身につけなさいって言ってたよね?」
地区長
「ええ、いつも言ってるわね」
はじめ
「学校の図書室とか図書館で知識を増やしたの。
生物学の図鑑を見るとね、猫や犬だけじゃなくて
爬虫類も、昆虫も、オスとメスが居て
遺伝子を掛け合わせて
子供を作るって書いてるの。
動物だけじゃないわ。植物にも
おしべ、めしべっていうのがあって
受粉して種が出来るって書いてるのよ。
……ねえ、母さん何か隠してない?
この地区やっぱりおかしいよ!
メスだけで子供が出来るなんて、不自然だよ!」
地区長
「はじめ、私達は医学や技術の力で
それを実現化したのよ。不自然じゃないのよ。
天子様を信じれば我々は幸せへと導かれるの」
はじめ
「天使天使って、
困った時はいつもそれじゃない!それに
医学や技術の力でメスだけで妊娠出来るように
なったのなら、天使の話が出てくるのも
矛盾してるじゃない!
ねえ……私、
もう一人のお母さんも居ないんでしょ?
本当の事教えて。
私、一体どうやって産まれたの?」
地区長
「やめなさい。はじめ、この地区では
天子様を疑ってはいけません。」
はじめ
「…………もう!母さんなんか知らない!」
地区長
「はじめ!待ちなさい!!」
はじめ
「結局どれだけ聞いても母さん、地区長は
何も教えてくれなかったんだ」
零
「…………それで反発してレジスタンスに?」
はじめ
「ああそうだ。あの時から私の気持ちにあるのは
この地区はおかしいって事。だからこの地区を
ぶっ潰したいんだよ。それと、天子様とか言う
妊娠出産の秘密も暴いてやりたいんだ」
零
「……そうだったのね……。
そこまで話してくれて、ありがとう、はじめ。
私うれしいわ」
はじめ
「いいんだ。私もスッキリしたよ」
零
「ねえ、はじめ。あなたの事と今の話、
ちゃんと理解しておきたいから聞くんだけど」
はじめ
「……どうした?言ってみろ」
零
「今の話からすると、あなたがこの地区の
妊娠出産の秘密に関心があるのは、
この地区の闇や不正を暴くという目的も
あるだろうけど、それよりも……
自分自身の、出生の経緯を知りたい、
そういう事なのかしら?」
はじめ
「……お前には全部お見通しだな……」
零
「……ゴメンなさい、デリケートな話に
口出ししちゃって。でもあなたの事
ちゃんと知っておきたかったのよ。
話してくれてありがとう、はじめ」
はじめ
「私こそ。お前に話せて気持ちの整理が
出来た気がするよ。有難う」
零
「……うん!私やるわ!皆で協力して
この地区の秘密を暴きましょう!」
つづく
零
「はじめの事、応援してあげたいって
思ったら、高評価とか、ブクマとかしてあげて。
はじめも喜ぶと思うわ」




