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ねごすいやつら  作者: 安祥


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秀長大河

 マジ? マジ、マジ、マジ?

 あれっ? 信長様死んだて。信忠さまもなぜか京であわあわしとるうちに巻き添え食ったらしい。

 毛利討伐最前戦で知った訃報。

 あかんてうの官兵衛なんとかならんか。

 殿、ここで狼狽えてはなりませぬ。ここは、信長公御出馬のために用意した街道の飼葉や糧食を使い、一目散に光秀討伐に向かわなければなりませぬ。

 なるほどなあ。

 秀吉さまは、目をうろうろさせていました。さすがおれの軍師や。おれの考えを皆の前で言ってくれるし。なんかあったらこいつのせい。

 そんな表情も官兵衛は読んでいました(ねごすいやつだて。先祖誰?)。

 それはええけど、明智さまだって畿内抑えにかかるで。

 そこは秀長さまに。明智風情(ふぜい)は達筆のてまみをしたためましょう。明智の使者に速度で勝てばいいだけの話です。

 明智さまもええ加減強い(つよい)で。

 あんなもんは所詮都通(みやこつう)、学識だけの人情家です。殿様御出馬、誰よりも速いと触れ回ればラクショーかと。

 ラクショーええな。好きやで。


 楽勝でなかったのが秀長さまでした。その日は安土御城下のマン所(ねね)様の御屋敷に入り、差し入れをしたり何くれとなく相談にのったりしていましたが、安土城を明智が攻めるとの噂が耳に入ってきましたとさ。地黒の日本ザル顔にハの字眉。困ったことだな、が口癖。

 近所の茶屋に行き、冷を一杯。

 (困ったことだて。兄者ならどうするか)

 湯呑には白濁した液体、クイッと口に含む。

 そこへ現れたのが前野将三郎。

 あ、将ちゃん、あんたも飲むか。

 おらあええて(わたしはけっこうです)。京ではどえらいことになっとるてうな(なっているそうですね)

 そいだてや(そのようですね)。困ったのう。

 マン所屋敷の近所に詰めていた警固係の前野の耳にも、なんらかの政変があったのではないか?という噂が入っていました。

 将ちゃんなあ、多分、兄さが一等速く上洛する。それに備えて明智さまは畿内をまとめにかかるはず。それより早くおれらあが手を打たなならん。

 善は急げてうな。

 秀長はハの字眉をさらに曲げて優しい笑顔を作りました。

 将ちゃん、やってくれるか。兄さが毛利と手打ちして街道ばく進中だと、あんさんの手下にふれさせてちょう。あれだて、何人か使って筒井様とか御城下で噂流すだけでええ。けど細川様のとこはあんさんが(じか)に行って。

 優しい口調とは裏腹に、どこかひとを見下したような態度があって、それはつまり命令なのでした。

 そいだけど、藤吉さまはほんとに毛利と手を打って? やれるのか、そんなこと。

 あいつならやる。やらんワケもねえ。

 兄弟とはげに怖ろしいものですな。種違いという説もありますが、同じサル顔、以心伝心。


 前野は若狭へ向かう街道をひた走りました。

 ある時から、追いつ追われつで走る者に気づきました。あれは確か斎藤様のご家来衆、さては密書でも携えているか。後ろから襟首つかまえましたが敵もさるもの引っ搔くもの。つかみ合いのケンカに。へろへろになりながらも二人ながらに細川屋敷へもつれ込んだ。

 細川幽斉さまご引見。

 これが明智さまの密書でございます。

 うむ。ご苦労さんやったな。してそちは。どこぞで見た顔だが。

 前野でございます。秀吉さま毛利と手打ち、京へばく進中にございます。

 幽斉さま扇子をぱちり。

 まあ、腹も減ったろうゆえ、めしでも食っていきなされ。

 お二人さん、時々互いの顔を盗み見ながら、並んで膳をつついていたよしにございます。






この物語はフィクションであり、登場する人物は実在するひとたちとはなんの関係もありません。

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