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ラスティ ~霧の中で~  作者: しんねむ
霧の中へ
13/21

13(仮) 大岡裁き

以前投稿したもの、11話までと繋がってない

――「ねぇ、お二人さん。私に隠れて何をやっているのかなぁ?ん?」


「!?」真下からの声に少し驚いた。

物理的に(・・・・)隠れているのはシェリスのほうなんだけれど、

いつの間にベンチの下に潜り込んだんだ。忍者かよ…

「え?なに?」

突然の声に周りを見渡すイズミ、シェリスには気づいていないみたいだ。


「どうやら近くにネズミが一匹、紛れ込んでいるようですね」

「え、ネズミ?」

「にゃーん」

…この世界のネズミはそう鳴くのだろうか?

「誰がネズミやねん!」

突っ込みを返しつつ、ベンチの下から出てくるシェリス。

「シェリス?、もう…そんなところから出てくるんだもの、驚くじゃない」

まぁ、ベンチの下から現れる人はそうそういないだろう。

「そんな些細な事はどうだっていいのよ、いつの間にそんな仲になったのかって、聞いているの」

何を言い出すんだろうこの子は…ちょっと理不尽。


「え?あ、ああ…違うの勘違いだから」


「なら、さっさと私の(・・)ラスティから離れなさいよ。このドロボーネコッ」

おいおい…さっきから何を言っているんだ。

「ねぇシェリス…私の事、泥棒猫って言った?」

イズミの様子がなんかおかしいような。

「それが何か?」、「私は…私は泥棒猫なんかじゃない!ラスティは私の物(・・・)なんだからっ!」

ベンチの前に立ち上がり戦闘態勢を取るイズミ。

「ほう…言うじゃないの」

負けじと戦闘態勢を取るシェリス、何をやっているんだこの二人は…

「ちょとストップ!」とりあえず二人の間に入る。


――「私の腕を持って引き合い、勝ったほうを私の所有者とします」

そう言った瞬間、自分の両腕をがっしりと掴まれる感触を感じた。

二人の顔を見ると、気のせいか目がギラついて見える。


「レディ?」

自分から言い出した事だけど、なんだこれ…。

「GO!」

「!?、うおおっ」

両側から思いっきり腕を引っ張られて痛い…でも、有りだな。


「ねぇシェリス、離してくれたらトロースの食事代、サービスしてあげてもいいんだけど?」

「食事代ごときで、親友を売るシェリスさんじゃないのよっ、見くびらないで」

「じゃあ、トロースの出入り禁止!」

「横暴!ミカサさんがそんなの許す訳ないでしょ!」

とか、言い合いを続けているが、流石に身体が痛いんだが…というか痛いってレベルじゃないかも。


シェリスはいつも背中に剣を担いでいるし、戦闘職だろう。力が強いのは分かる。

だが、イズミの引っ張る力もおかしい。ウェイトレスにしては尋常ではない力だ。

このままだと…マジで身体が持たない。


「ぐぬぬ…これっ、痛がる子を気遣って!離したほうが勝ちっていう!そういうルールだから!!」

今言ったルールーは『大岡裁き』といって、簡単に言うと声に出して言った通りだったかと思う。


――力が弱まる様子が微塵もない。なんでだよ?

「ちょ、二人とも聞いてる…の、かなっ?」

「………」

「ふぎぎ、いだいいだい(痛い痛い)、ギブギブ、マジ離して!」

ああ…意識が飛び、そうだ…「あっ、」不意に片側の力が抜ける。

その拍子に引っ張られたままのほうに倒れこんだ。


「あいたた…」シェリスの声が間近に聞こえる。

どうやら同時に倒れた時に、シェリスの上にのしかかった格好になったみたいだ。

顔に何か柔らかい物が当たっているが、今は気にしないでおこう。


「休憩の時間過ぎちゃう。戻らないと」

先に腕を放したのはイズミだった。


「ん、」倒れている自分にイズミが手を差し出してくる。手を掴むと引き起こしてくれた。

イズミはシェリスの手も引いて、起こすのを助けている。さっきまでの争いはなんだったんだ。


「いやー、途中まではいい戦いだったのに」

シェリスが言った。

「そうね。でも休憩時間過ぎちゃうし仕方がないわ。まぁ勝ったのは私だし(・・・・・・・・・・)

「ええ、なんで?勝ったのは私じゃない?」

勝ち誇った表情のイズミ、腑に落ちない様子のシェリス。

「まぁ、トロースの食事代3倍で、引き分けにしてあげてもいいけど?」

「ええーそんな…もう、それでいいから」

しぶしぶ条件に乗ろうとするシェリス。

「冗談。ふふっ、冗談だってば」

晴れやかな表情で小さく笑うイズミ。

「冗談はラスティだけにしておいてよね」

え、俺に振るなよ…。


「私そろそろ戻るわ。じゃあね」

「ほい、またトロースにも寄るよ。バイバイ」

「さよなら」


去る間際に耳元で「大岡裁きでしょ?知ってた」と言いトロースへ戻っていくイズミ。

知ってた…じゃあなんで手を離さなかったんだ…。


「あの子があんな表情をするなんて…初めて見た」

「そうなの?」

「そりゃ、トロースのお客さんや私にも笑顔は見せてたわよ?」

「でもね、見せ掛けだけの笑顔っていう感じだったもの」

異世界人だろうし…色々と抱え込んでいる物があるんだろう。


「ところでさ。離してって言ったのに、シェリスは何で離してくれなかったの?」

そう、最後まで離してくれなかったなこの子。

「だってさ、どうしても離したくなかったんだもん」

もん、じゃないよ…

「離しちゃいけないって…」

何か小さく呟いたけれど、聞き取れない…何を言ったんだろう?

「詳しく」

「だーめ、それじゃシェリスさんも去るとしますか。バイバーイ」

「バイ…」

少し様子がおかしいような気がした。様子が可笑しいのはいつもの事なんだけれど、何か違う感じ。


「私もそろそろ帰ろう…」声に出しながら家路へと向かう。


――帰り道、広場での事を考えていた。


大事な事を忘れかけている気がする。

この世界に慣れかけている?それがこの世界の仕組み?

まだ違う世界から来たという事は覚えてはいるが…


もしも、元の記憶を完全に忘れてしまう…という事になってしまうのなら、

その前にどうにかしないと、俺は俺ではなくなってしまうんじゃないのか?

もしそうなったらこの身体(ラスティ)は、どうなるのだろう…俺でもなく、ラスティでもなくなる? 


それって……結局、誰なんだよ…

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