2ー4
一旦外に出た僕たちは、僕を先に立たせてくれた。
僕は、家のある方角に向かって遠吠えを試みる。
二度、三度と繰り返していくうちに、お母さんからの返事が聞こえた。
「お城に泊まる許可を取りました。与えられた仕事もしてもいいそうです」
「それはよかった。だけど、その……」
キャロルはそう言うと、もじもじと顔を赤らめる。
「すごいのね、遠吠えってはじめて見たわ。すごく綺麗だった」
「き、綺麗!? 遠吠えがてすか?」
「そう。そういう儀式って、とても神聖なものであろうに、見てしまってごめんなさい。見せてくれてありがとう」
神聖な儀式ってほどじゃないけど、悪い気はしない。
これでもしキャロルに好きになってもらえたら、なんて考えが頭をよぎるけど、そんな都合のいいことは起きないよね。
「さぁ、城内に戻りましょう。今ごろ厨房で、ゼロスたちのための料理を作ってくれているはずだから。そうよね、セバスチャン」
「はい、キャロル様」
料理って、どんなだろう? お肉がたくさん食べられたらうれしいな。
「もちろん、トーマスとジェイクも一緒にどうぞ。あなたたちって、普段は衛兵なのよね?」
「はい、そうです」
トーマスはキャロルの質問に秒で答えた。早い。
「俺は火炎魔法を、ジェイクは水魔法を使います。と、言いましても。森を全部焼き払うような失態は犯しませんのでご安心ください」
そっか、火炎魔法に水魔法なら完璧だよね。僕は地道に整地をするために桑を振るうことになるんだろうな。
「それじゃ、お食事に行きましょう」
キャロルはセバスチャンを先頭に立たせて城内に戻って行く。
僕の遠吠えは、タケルにも届いただろうな。
あいつ、なんで今日にかぎってがんこなんだ? いつもは温厚で、なにを言ってもにこにこしてるくせに。
そんなに魚釣りがしたかったのかよ。
でも、ウサギって魚は食べないんだよな?
僕と違って、タケルは両親がしっかりウサギ族だから、食べるのは野菜ばっかりなんだよな。
それなのに、どうして?
ま、いいか。そのうち森で再会するかもしれないし。
でも、その考えがいかに浅はかだったかを、明日の朝早くに知れることになる。
早朝。それはセバスチャンによって知らされた。
「起きてください、ゼロス。昨夜遅く、ウサギ族のタケルが、川で溺れて亡くなっているところを発見されました。
その言葉によって、ぼくの眠気は綺麗さっぱり覚まされた。
つづく




