2ー1
「セバスチャン、トーマスとジェイクを呼び出して」
城内に入ると、キャロルはセバスチャンに二人の名前を出した。
おそらく彼らが仲間となるのだろう。
「マリリン、二人の分もお茶の用意をしてちょうだい」
「承知しました」
マリリンと呼ばれた若い侍女は、短く返事を返すと踵を返した。
「それで、どこから話せばいいのかしら?」
え? 僕がキャロルのことを好きなのがバレた? それともキャロルも十年前から僕のことを気にかけてくれていたってこと?
返事もできず、もじもじしていると、キャロルに椅子を勧められた。
僕たちが腰掛けるなり、キャロルは魅力的な翡翠色の瞳をパチパチとまばたきした。
「森が荒れた理由、知りたいわよね?」
そっち、と思ったけど顔には出さないように気をつけた。そのつもりでいる。
「十年前はあんなに荒れてなかったでしょう? 国民が川に行く道もして解放してあるけど、立派な国土よ。あんなに荒れてていいわけないわ」
そう言われてみたら。キャロルとはじめて会ったよはあの森だったのか。
あの頃はもっと草も低くて、子供でも遊び場になっていたものな。今は、花も咲いていないから、おなじ場所だと気づかなかったよ。
「うん。いいの。ゼロスには指摘しにくいわよね。前王、つまりわたしのお祖父様からお父様に王位の引き継ぎがされてから、ほとんど手付かずなのよね。荒れ始めたのはここ数年かしら。お父様の具合があまりよくないのよ」
だから今日も、コタロウが逃げ出さなければ森に行かなかったわ、とつづける。
「コタロウもいったいどこから迷い込んできたのか、それすらもわからないの。こんなに小さいのに、かわいそうだわ」
キャロルは愛おしそうにコタロウに口づけする。
ライオンの赤ちゃんが迷い込むような要素はほとんどなさそうだけど。
そもそもこの国に野生のライオンがいるなんて信じられない。
猛獣は国外にいるものという認識しかないから。
「では、僕たちはそこいら辺のところも調べてみますよ」
「本当!? ありがとう、ゼロス。でも、このことはわたしたちだけの秘密にしてちょうだい。この城のどこかに裏切り者がいるかもしれないなんて、とても思いたくないもの」
もしかしたら、お父様のご病気も、城の者の仕業かもしれないから、なんて悲しいことをささやいた。
「そうだとすると、キャロル様のお命も狙われているのではないですか?」
「そうかもしれない。だから、自分がヒーラーだってことは、両親のほかは知っている人がいないの。もちろんこれも秘密ね」
こうして自分の秘密を次々と暴いてしまうキャロルを守りたいって、本気で心からそう思った。
つづく




