1ー3
「ゼロスはコタロウをたすけてくれたのよ? 銃をしまいなさい、セバスチャン」
多くの執事の名前がそうであるように、彼女は執事のセバスチャンに銃をしまうよう命令した。
「ですが。この者たちはキャルロス家の敷地に侵入しているのです。せめて警察を呼びませんと」
「その必要もないわ。私有地であっても、管理ができていなければ無法地帯みたいなものだもの。ゼロス、あらためてお礼を言うわ。ありがとう。それから、久しぶり」
ああ、僕は今、これまで一度も信じたことのないカミサマとやらに感謝したくなってきたよ。
だってそうだろ?
下手すりゃこのまま撃ち殺されてもおかしくなかったんだ。
それなのに、お礼を言われるなんて。
「僕たちの方こそ、勝手に敷地に入ってしまってごめんなさい。もうしませんからゆるしてくれますか?」
あらたまった態度の僕に、驚きの表情を浮かべたキャロルが、そりゃゆるすけど、と言葉を継いだ。
「ねぇ、ゼロスとタケルって森の手入れに詳しかったりしない? わたくしたちでは、この森を整備することがむずかしいのよ」
なんと、お仕事までもらえる可能性が出てきた。
「それは、子供の頃からこの森でひそかに遊ばせてもらっているからそれなりに詳しいですよ。野放図になっているのなら、僕たちでお手入れしましょうか?」
「そうしてくれるとたすかるわ。一日の仕事が終わったら、お城に来てちょうだい。お茶くらいならごちそうするわよ」
おお、まさに天使!!
「ぜひ、やらせてもらいます。いいよな、タケル?」
タケルはキョトンとした表情をしてから、えっと耳を澄ませた。
いい耳を持ってるんだから、ちゃんと話を聞きなさいよ。
「そういうことなので、これからよろしくお願いします、キャロル様」
「あらやだ。堅苦しい言葉なんて使って欲しくないけど……」
そう言うと、キャロルは執事のセバスチャンの表情をうかがう。
その顔は、それだけはゆずってはならないと語っている。
「まぁ、いいわ。今日はこれから川に行くのでしょう? 仕事は明日からお願いするわ。ちょっとより道する時間あるかしら? 一旦お城まで案内したいの」
「そういうことでしたら、よろこんでおうかがいします」
こうして、僕は、十年前に感じた淡い恋心をくすぐられて、お城に行くだけというのに緊張してむずがゆい感じがした。
つづく




