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僕の言葉を聞いたキャロルは、僕を突っぱねた。
「駄目よ、ゼロス。わたしにはフィアンセがいるの」
「それがどうしたって言うんだい? 僕はきみのことが好きだ。もし困っていることがあるのなら、話を聞くよ?」
「その言葉がわたしを困らせているの。……もうすぐ夕飯の時間よ。今すぐコタロウを連れて帰って。そうじゃなきゃ、あなたが撃たれても文句が言えない」
その時僕は、キャロルのためなら撃たれてもかまわないと思った。だけど、そうなればキャロルが悲しむ。
ほんのわずかな再会の喜びも、コタロウの命も無駄にしてしまうかもしれない。
「わかったよ、キャロル。どうか元気で」
そう言ってコタロウを抱き上げたその時。
「姫様。キャロル様? お夕飯の支度ができましたよ?」
「マリリンだわ。隠れて」
急き立てるようにキャロルは僕を衣装ダンスの中に隠した。
「今開けるわ、マリリン」
キャロルの声と一緒に、部屋の鍵が開く気配が伝わってくる。
「どうしたのですか? キャロル様。お部屋に鍵までかけて」
「絵を描いていたのよ。集中したくて。それだけ」
「本当ですか?」
「ええ。本当。わたしがあなたに嘘をついてどうなるの?」
「……それもそうですわね。お着替えなさいますか?」
「いいえ、このまま行くわ」
そんな会話の後、キャロルが部屋から出て行った雰囲気が流れてきて、用心深くタンスから出た。
「よし、コタロウ。うちに帰ったらシチューを食べさせてあげるからね。さぁ、帰ろう」
口ではそう言ったけれど、本当はキャロルが恋しくてたまらなかった。
まだこの部屋に居たい。キャロルの存在を感じていたい。
だけど、それはできない。
なぜならキャロルは次期女王陛下になる存在だからだ。
後ろ髪引かれる思いで、用心深く木を降りていく。
プールサイドでモヨコも拾い上げて、もう一度だけバルコニーを仰ぎ見た。
そこにキャロルはいないけれど、なんとなく彼女を感じた。
「……さようなら、キャロル」
小声で別れを告げると、そうっと森に入り、家路を急いだ。
つづく




