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1ー4

 僕の言葉を聞いたキャロルは、僕を突っぱねた。


「駄目よ、ゼロス。わたしにはフィアンセがいるの」

「それがどうしたって言うんだい? 僕はきみのことが好きだ。もし困っていることがあるのなら、話を聞くよ?」

「その言葉がわたしを困らせているの。……もうすぐ夕飯の時間よ。今すぐコタロウを連れて帰って。そうじゃなきゃ、あなたが撃たれても文句が言えない」


 その時僕は、キャロルのためなら撃たれてもかまわないと思った。だけど、そうなればキャロルが悲しむ。


 ほんのわずかな再会の喜びも、コタロウの命も無駄にしてしまうかもしれない。


「わかったよ、キャロル。どうか元気で」


 そう言ってコタロウを抱き上げたその時。


「姫様。キャロル様? お夕飯の支度ができましたよ?」

「マリリンだわ。隠れて」


 急き立てるようにキャロルは僕を衣装ダンスの中に隠した。


「今開けるわ、マリリン」


 キャロルの声と一緒に、部屋の鍵が開く気配が伝わってくる。


「どうしたのですか? キャロル様。お部屋に鍵までかけて」

「絵を描いていたのよ。集中したくて。それだけ」

「本当ですか?」

「ええ。本当。わたしがあなたに嘘をついてどうなるの?」

「……それもそうですわね。お着替えなさいますか?」

「いいえ、このまま行くわ」


 そんな会話の後、キャロルが部屋から出て行った雰囲気が流れてきて、用心深くタンスから出た。


「よし、コタロウ。うちに帰ったらシチューを食べさせてあげるからね。さぁ、帰ろう」


 口ではそう言ったけれど、本当はキャロルが恋しくてたまらなかった。


 まだこの部屋に居たい。キャロルの存在を感じていたい。


 だけど、それはできない。


 なぜならキャロルは次期女王陛下になる存在だからだ。


 後ろ髪引かれる思いで、用心深く木を降りていく。


 プールサイドでモヨコも拾い上げて、もう一度だけバルコニーを仰ぎ見た。


 そこにキャロルはいないけれど、なんとなく彼女を感じた。


「……さようなら、キャロル」


 小声で別れを告げると、そうっと森に入り、家路を急いだ。


     つづく

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