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僕の姿を見たキャロルの顔はかなり引きつっていた。
「ゼロス? どうして?」
「話は後だ。森の入り口でコタロウを見つけた。かなり弱っているんだ。きみの魔法でたすけてくれないか?」
「そんな……。コタロウ」
キャロルはモヨコの倍の大きさのコタロウを重そうに抱き上げた。
瞬間、コタロウのあばら骨があらわになって、食べていなかったのだとわかる。
「誰にも見られていないわよね?」
確認するようにキャロルが言うから、僕はこくりと頷いた。
「おろすわね。ゼロスお願い、ドアに鍵をかけて。それから、カーテンを閉めて欲しいの。わたしが魔法を使っているところを見られたくないから、周囲に注意していて」
キャロルはコタロウをふかふかのベッドの上におろすと、集中してドレスの裾をはたいた。
それから、コタロウにやさしい光が集まりはじめた。
魔法だ。
キャロルがヒールの力でコタロウを癒してくれている。
「なんて綺麗なんだ……」
場違いな言葉だと思ったが、口に出さずにはいられなかった。
だってキャロルから温かい光がコタロウに向かって彼を癒している。これを美しいと言わずになんと言うのだろう?
「回復してる。テーブルにパンとミルクがあるから持ってきて」
僕は、言われた通りパンをつかみ上げてぎょっとした。
「きみ、絵を描くの?」
その硬めのパンは、絵画の道具だったけれど、パンのにおいを嗅いだら、腐ってはいないようだった。
「ええ。でも今は関係ないわ。ごめんね、ハムでもあればよかったんでしょうけど」
キャロルの光が弱まっていく頃には、コタロウが首をもたせあげられるようになっていた。
「ミルクをお皿に」
僕は、ティーカップの皿の上にミルクを注いだ。コタロウは目の色を変えて飲み干してしまった。
もっと、というように見上げてくる。
「かわいそうに。なにも食べていなかったのね」
「一体どうしてコタロウがこんなことに? キャロル、きみがコタロウを粗末にするのなら、僕が彼を引き取るけど?」
強めの口調で訴えると、キャロルはびくっと体をすくませてから、ええ、そうしてくれると力なく答えた。
「わたしは無力なのよ、ゼロス。お父様の命令には逆らえない。コタロウはわたしのフィアンセを噛んでしまったの。そのせいで森に捨てられてしまって」
そこでキャロルがぽろぽろと涙をこぼした。
「ごめんなさい、コタロウ。あなたのことが大好きよ。ゼロス、あなたのこともね。だけどわたし、自分の人生を自分で決める権利がどこにもないの」
そうして花びらが散るように涙をこぼすキャロルをそっと抱きしめ、金色の輪を持つ頭頂部にキスをした。
「いいんだよ、キャロル。きみは悪くなかったんだ。僕は今、それを知った。だから泣かないで。僕の特別な人」
そうしてすらりと口から出てきてしまった言葉に、僕自身が驚いていた。
つづく




