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ゼロスが城から去ってから三日。お父様の具合は日々悪くなるばかり。
森の整地を頼んだトーマスとジェイクとも、滅多なことでは会う機会もなかった。
わたしはセバスチャンや次女のマリリンなんかしかいないつまらない視界の中で淀んでいった。
このまま、退屈な日常しかなかったらどうしよう?
不安に思っているわたしは、オオカミの赤ちゃんであるコタロウをかまうことが増えていった。
そうしているうちに、婚約者が訪ねてくることになった。
名前はヘイト・ヘイター・ヘイティスト、十八歳。
彼は資産家の長男で、幼い頃から顔合わせしているけど、その独善的なたいどがどうしても好きになれないでいる。
「やぁ、キャロル!」
テラスでお茶を飲んでいたタイミングでヘイトが近づいてきた。
「ごきげんよう、ヘイト」
ヘイトはわたしの右手を取って、指に軽く口づけした。
「ライオンの子を保護したって?」
「ええ。コタロウよ」
「ギャオー!!」
コタロウは、ヘイトの指を噛んだ。
「痛っ!!」
「こら、コタロウ」
コタロウはふんというように鼻を鳴らした。
「ごめんなさい、ヘイト。まだしつけをしていないの」
「そのようだね。でも僕は、あなたを先にしつけなければならないようだ」
「それって、どういうこと?」
「どうもこうも。ライオンを僕にけしかけておいてしつけなんて関係ないだろう?」
「ちょっ、なにを言っているの?」
知らないとでも思っているのか? と、ヘイトの声がテラスに響いた。
それから、ボリュームを落として。
「オオカミ人間を囲うつもりだったんだって? ライオンの次はオオカミかよ」
「囲うですって? 人聞きのわるいことを言わないで。そんなつもりじゃなかったのに」
「これ以上、僕に隠れて好き勝手されるとヘイティスト家への冒涜に値する。少しはわきまえてもらいたいものだなっ」
言うだけ言うと、ヘイトは去って行った。
これからお父様とお母様のご機嫌取りに伺うつもりなのだろう。
まったく。頭が痛くなる。
「ヘイト様のことを受け入れることは難しいですか?」
「嫌なことを聞くのね、セバスチャン。ええ、わたしはヘイトが苦手なのよ。こればっかりはしょうがないの。それよりコタロウ、よくやってくれたわね」
わたしは膝の上でちょこんとかしこまっているコタロウをよしよしとなでた。コタロウは、まんざらでもなさそうな顔をしている。
もし、コタロウが噛まなかったら。それでもわたしとヘイトの会話が交わることはないのだろうな。
つづく




