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タケルの両親は噂通りの生粋のウサギ族だった。
元から赤いその瞳を腫らして泣きじゃくるおばさんは、僕に小さなさば毛の子猫を抱かせた。
「この子の名前はモヨコって言うの。ゼロスちゃん、あなた、この子を飼ってくださらない? わたし、モヨコを見るたびにタケルのことを思い出して泣けてくるの」
一方的にそう決めつけられてしまったけれど、悪い気はしなかった。その件に関して、キャロルもセバスチャンも誰も反対しなかったからだ。
死亡原因がはっきりしないため、タケルの葬儀は極秘理に行われた。そのおかげで、キャロルも参列できた。
みんな泣いていた。
葬儀場の隅っこで戯れるモヨコとコタロウを見ているうちに、葬儀は終わってしまった。
僕だけが涙が出なかった。
キャロルはくっと唇を噛み締めていたけれど、時折僕の手を握って助けを求めてきた。
もし、タケルが殺されたのだとしたら。それはきっと、キャロルの秘密を知ってしまったからだろう。
あんなに陽気なやつだったのに、あの日にかぎって釣りに執着していたのはモヨコのためだった。
モヨコに新鮮な魚を食べさせたかったのだとか。
なんでも保護してからしばらく、子猫はかなり衰弱していたのだという。だから、栄養をつけてあげたかったのだとか。
あの日、僕を釣りに誘ったのは、モヨコのことを僕に話す予定だったからだとか。
なんだよ。
そうだと知っていたら、僕だって一緒に釣りに行ったのに。
だけど、それはキャロルの申し出を断っていたかもしれないという可能性を秘めている。
初恋の人の頼みを無視して、タケルとのことを優先させただろうか。
……まったく。
どうして僕は泣くことすらできないんだろう。
「ゼロス。やっぱりお城に泊まるのは危険かもしれないわ」
今さらな事実をキャロルが言い出した。
「ですが、それだと森はどうするつもりです?」
「トーマスとジェイクに任せるわ」
「でも、あの森をなんとかしたいと言ったのはキャロル様なんですよ?」
なんでこんな、タケルの葬儀中に言い合いしなくちゃいけないのだろう。
「……ごめんなさい。でもわたし、ゼロスまで失いたくないのよ」
それは、聞き方によってはうれしい言葉なのかもしれない。
だけど、今はとても不謹慎に感じた。
「僕だけ生かすつもりなんですか? なんのために?」
「ゼロス。わたし、今とてもつらいの。あの時、あなたたちを見つけた時。二人がわたしの友だちになってくれるかもしれないなんて思ってしまったのよ。だから……。あなたまで失いたくない」
そりゃまたご都合主義だな。そんな言葉は言えなくて。
葬儀が終わったら、僕は荷物をまとめてモヨコと一緒に家に帰った。
つづく




