80 防衛戦力増強
週末は大雪になりそうです。皆様、お気をつけください。
【大陸歴1415年9月14日 夜】
〈十四郎視点〉
「パトラ、ついに時は満ちた! 今こそ新たな力を手に入れるときだ!」
「はい、主様!」
拠点で火の精霊たちを呼び出した翌日。
俺とパトラは、ミニピラミッドの女神像の前にやってきていた。
その目的は、新たな魔獣を生み出すこと。そして、拠点の防御力を引き上げることだ。
ここ数日間、火薬騒動に没頭していたせいで、魔獣の融合実験を行うことができなかった。
でも、そのおかげで、かなりのmpが溜まっている。
今日の昼に、新たな石化蜥蜴を召喚したが、それでもまだ、50000以上残っているのだ。
これだけあれば、きっとすごい魔獣を生み出すことが出来るはず!
テンション爆上がりである。
「主様、まずはどんな魔獣を生み出すおつもりですか?」
「そうだなー。拠点の防御力を上げるのが目的だし、やっぱり土ゴーレムの上位種かな。」
防御といえば、なんとなくゴーレムって気がする。それに、ゴーレム系に関しては、結果が予想しやすい。
「未知の魔獣なのに、予想がついていらっしゃるのですか?」
「うん。何となくね。」
土の上位種なんだから、多分石のゴーレムになる気がする。
よし、決めた。まずは安牌から攻めていくとするか。
俺は魔獣融合アイコンを起動した。
『この魔獣の合成には、12000DPが必要です。よろしいですか?』
消費mpは12000か。融合に必要なmpは召喚コストの10倍。
現在、拠点内防衛の主力である自動人形の召喚コストが1000。
だから、魔法攻撃が出来る彼女たちと同等以上の強さということになる。
これは期待できそうだぞ。
「でも主様、ここで召喚してしまったら、魔獣が外に出られなくなるのではありませんか?」
なるほど、パトラの言う通りだ。本当によく気がつくなあ。
なんだか、最近、パトラの成長が著しい気がする。
「そんな。すべては主様の御力が増したおかげです。」
なんかちょっと照れた気配が伝わってくる。触覚も震えてるし。
もし、人間の女の子だったら、顔を赤らめて謙遜してる感じなんだろうな。
「私が先にいって、召喚に最適な場所を確かめてまいります。」
パトラはそう言うと、風のように祭壇の広間から出ていった。
と思ったら、またすぐに戻ってきた。
「召喚場所の安全確認ができました。巨大な魔獣が出現しても、問題のない場所です。主様、参りましょう。」
えっ、パトラさん、有能過ぎ?
これ、完全に俺の秘書じゃん。
俺は彼女の案内に従って、ミニピラミッドから少し離れたところに移動した。
そこで、改めてアイコンを起動する。
俺の「YES」に応えて、魔法陣が地面に現れ、中から巨大な影が盛り上がるように出現した。
「なにこれ、でっか!!」
現れたのは巨大な石像だった。
石像はちょっとずんぐりした、筋骨たくましい半裸の男性の姿をしている。
身長はミニピラミッドより少し小さいくらい。確実に4m以上はある。
何かに似てるなと思ったら、あれだ。日本史の教科書で見た運慶快慶のあれ。
うーん、なんて名前だったっけ?
まあ、それはともかく。
パトラが召喚場所を選んでおいてくれて、本当に助かった。
確実に、ミニピラミッドを壊さなきゃいけなくなるところだったよ。
「すごく大きくて強そうですね。」
「確かにな。でも、俺が欲しかったのとはちょっと違うかなー。」
俺が想定していたのは、拠点内でパトラや自動人形たちと連携して戦える魔獣だ。
拠点内で使うには、こいつさすがにデカすぎる。
外壁の外側で門番的な使い方をするならいいかもしれないけどね。
「とりあえず次行ってみようか。」
残りのmpはおよそ40000。あと、1〜2体なら、融合できそうだ。
次の候補としては、自動人形の上位種なんだけど・・・。
『この魔獣の合成には、20000DPが必要です。よろしいですか?』
自動人形を融合しようと、アイコンを起動するとナビさんはそう応えた。
コスト20000は結構でかい。自動人形20体分に相当する量だ。
それなら自動人形を増やしたほうがいい。
一点豪華主義もロマンがあるけど、防衛戦となれば、やはりある程度の物量が必要。
これは、前回のバグラの襲撃で痛感させられたことだ。
「守り手の数が必要でしたら、私の分身体たちもお使いくださってよいのですよ?」
「ありがとう。パトラのことはすごく頼りにしてる。でも頼りっぱなしってわけにもいかないだろ? それに、パトラの本体を危ない目に合わせるのは嫌なんだ。」
「主様・・・!」
今、一瞬パトラの後ろにハートが見えた気がした?
・・いや、気のせいだな、多分。
「もうちょっと数を揃えてからのほうがいいと思う。別のやつから試してみよう。」
ゴーレム系と自動人形系を除けば、今、拠点内で運用しているのは、街灯代わりにしてる火の拳と、空飛ぶハニワ頭くらいだ。
「ここは・・やっぱ、ハニワか?」
召喚アイコンを使って、ハニワ頭を呼び出す。
逆さにしたバケツみたいな頭に、ぽっかり空いた目と口。
どう見ても戦闘用には思えない、のほほんとした外見だ。
でも、こいつら、女性や子どもたちに妙に人気があるんだよな。
普段、拠点内を浮遊させて巡回させてると、子どもたちが大喜びしながら後を追っかけている姿を見かける。
やっぱ、見た目の雰囲気って大事なのかもしれない。
「主様、このハニワを融合させるおつもりなのですね?」
「ああ、これもなんとなく結果が予想出来るからな。」
今は頭だけだけど、融合させたら身体が出来るんじゃないかと思っている。
それに武器を持たせたら、兵士として使えそうじゃないか?
白兵戦の出来るハニワ。いいね。
なんか、ちょっと、古代のロマンを感じる。
俺は魔獣融合アイコンを起動した。
『この魔獣の合成には、5000DPが必要です。よろしいですか?』
うん、コストもお手頃。
召喚コスト500なら、スナザメよりちょっと強いくらい。数を揃えるにも、ちょうどいい感じだ。
魔法陣が広がり、2体のハニワ頭が光に包まれる。
やがて光の中から現れたのは、ある意味、予想通りの魔獣だった。
身長は150cmほど。
兜を被った頭に点のような目。
簡素な鎧に覆われた胴体。短い手足。
まるで古墳からそのまま歩き出してきたようなゆるい雰囲気。
たしか昔どこかで、こんなゆるキャラを見たことがある気がする。
「予想通りだけど、思ってたよりだいぶかわいいな。」
子どもたちが見たら大喜びしそうだけど、戦闘キャラとしては微妙かも?
「とても個性的で、よいと思います。」
パトラが真面目な声でうなずく。
見た目はコミカルだが、体つきは意外とがっしりしている。腰にはちゃんと石造りの剣も装備してるし。
まあ、成功・・・なのかな?
「主様、この魔獣に戦わせてみますか?」
「そうだな。まずは性能を確かめよう。」
俺はハニワ戦士に命令を出した。
「まずは剣の素振り!」
ぶんっ!
風がうなり、砂が舞い上がる。
見た目からは想像できないほどの鋭い一振りだ。
「おおっ、結構やるじゃないか!」
「動きに無駄がありません。戦闘向きの個体のようです。」
パトラも感心している。
召喚の準備から、戦闘解説まで本当に的確だ。
マジ頼りになるな、パトラ。
「よし、模擬戦をさせてみよう! ハニワ戦士、石ゴーレムを攻撃しろ! 石ゴーレム、手加減して迎え撃ってやれ!」
まっすぐ突っ込んで来るハニワ戦士に対し、石ゴーレムは両手を前に組んで防御の構えを取った。
ちゃんと俺の命令を理解しているようだ。偉いぞ、石ゴーレム。
石ゴーレムの間合いに入る直前、ハニワ戦士が急に立ち止まる。
どうした? やっぱ、デカい相手に怖気づいたのか?
そう思った瞬間、ハニワ戦士の空洞の目がキラリと光った。
ごおおおおっ!
口から勢いよく噴き出した炎が、ゴーレムの身体を覆い尽くす。
ハニワ頭も持っていた炎のブレス攻撃を、戦士も使えるらしい。
「主様、これはかなり強力です。」
「だな。生身で食らったら、ひとたまりもなさそうだ。」
石ゴーレムはダメージを受けていないようだ。
だが、炎を浴びた体の表面は白く変色していた。
続いて、ハニワ戦士が素早く踏み込んだ。
石ゴーレムの繰り出した反撃の拳を、小気味よい動きで躱し、デカい相手の足元を的確に斬りつける。
そこにゴーレムの蹴り。
しかし、それを華麗なバックステップで交わすハニワ。
距離が開いたら、すかさず火炎ブレス。
「おおおっ、いいぞハニワ!」
「見かけよりも遥かに素早いですね。剣の腕も中々のものです。」
ここまで、ハニワ戦士は期待以上の動きを見せている。
ただ、最後に、どうしても確かめておかなければならないことがあった。
「ゴーレム、本気で迎え撃て!」
俺の命令を受けて、ゴーレムが攻めに転じた。
「すこし離れて見守ろう。」
「承知しました、主様。」
10mほど距離を取って、戦いを見守る。
次々と繰り出される拳と蹴り。
石とは思えないほどの鋭い一撃。
ハニワはそれを必死に躱す。
しかし、体格の差はいかんともしがたく。
ゴーレムの重たい蹴りが、ハニワの身体を捉えた。
その瞬間、粉々に砕け散るハニワ。
「・・・爆発しなかったな。」
「よかったですね、主様。」
そう。ハニワ戦士を使う上での一番の懸念点。
それはハニワ頭が持っている「自爆機能」だった。
融合後もあの能力が引き継がれていたら、拠点内での運用を考え直さなくてはならなかった。
でも、自爆機能は失われたようだ。きっと、融合によって機能が再構成されたのだろう。
これで安心して、ユーリィたちの側に置いておくことが出来る。
「防御力は今一つですが、攻撃力はかなり期待できますね。」
まさにパトラの言う通り。
ハニワ戦士は、格上の石ゴーレム相手に、多彩な攻撃で善戦していた。
これなら、普通の魔獣や人間相手なら、十分な脅威になりうる。
「はい、拠点の防衛戦力として、とても優秀かと思われます。」
「だな。とりあえず今回はこんなところか。」
夜もだいぶ更けてきた。
俺たちは石ゴーレムを連れて、ユーリィたちのいる拠点に戻った。
石ゴーレムはかなり移動速度が遅かったので、およそ1km移動するのに30分ほどかかってしまった。
拠点に着いたところで、もう一体、石ゴーレムを召喚する。
俺は2体のゴーレムを、外壁の入口の両側に立たせた。
「主様、なぜ、2体をこの配置に?」
「いや、なんとなく。この方が収まりがいい気がして。守り神的な?」
「なるほど。門番というわけですね。流石です、主様。」
深い意味がないから、素直に褒められると逆にちょっと恥ずかしい。
俺は「まあね」と答えて、そそくさと拠点の中に入った。
「よし、ハニワ戦士たちを呼び出すぞ!」
ずらっと並んだハニワ戦士軍団。
その数40体。1体あたりの召喚コスト500だから、これだけの数が揃えられた。
一体一体は可愛らしいけど、こうして見ると結構壮観だ。
整列させてみたら、一糸乱れぬ可愛い動きで、ちょっとほっこりさせられる。
見た目はゆるキャラ。でもその実、超実戦派。
相手を油断させるトラップとしても使えそうだな。
「よし、お前たち。今日からしっかり拠点を守ってくれよ。名付けてハニワ防衛隊だ!」
俺がそう言った途端、ハニワ防衛隊は一斉に、ぺこりとやけに愛嬌のあるお辞儀をした。
「・・こいつら、かわいいな。」
「はい。とても愛らしいと思います。」
こうして俺は、頼もしい戦力を手に入れた。
「パトラ、mpが貯まったら、もっといろんな組み合わせを試してみよう!」
「はい主様。どこまでもお供いたします。」
新しい可能性に胸が躍る。
夜空に浮かぶ青い月は、俺とパトラ、そして新たな仲間たちを優しく照らしていた。
種族:迷宮核
名前:澤部十四郎
迷宮レベル:11
総DP:17730
獲得DP/日:25830
消費DP/日:22200
【生ける石像】
種族:魔法生物
属性:土属性
召喚コスト:1200DP
維持コスト:100DP/日
保有スキル:〈斬撃被ダメージ減少(大)〉〈熱耐性(大)〉〈状態異常無効〉
土造魔道巨人の上位種。文字通りの動く石像。ゴーレムの一種であるため、体内の魔導核を破壊されると、すぐに崩壊してしまうという弱点を持つ。見た目に反して知能は高く、創造者の命令を遂行するため、ある程度自律的な行動をすることが可能。また、簡単な道具を扱う作業や武器を用いての戦闘もこなせる。本体はあくまで魔導核であるため、依代となる石像は、創造者が形や大きさを自由に変えることが出来る。
【ハニワ兵士】
種族:魔法生物
属性:火属性
召喚コスト:500DP
維持コスト:50DP/日
保有スキル:〈火炎の息〉〈斬撃被ダメージ減少(小)〉〈殴打被ダメージ増大(中)〉〈熱耐性(極)〉〈状態異常無効〉
鎧を着たハニワ型の兵士。体高は150cmほど。装備している石の剣を使った近接戦闘のほか、火炎の息による中距離攻撃も可能。ゆるい見た目に反して高い攻撃力と運動性能を持つ。しかし、その体の特性ゆえ防御力は低く、打撃攻撃に対して非常に弱いという弱点を持つ。創造者の命令を理解し、それを忠実に実行する程度の知能はあるが、自律的な行動や臨機応変な対応はできない。
お読みいただき、ありがとうございました。




