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56 黒い戦士

 いつの間にかブックマークを10件いただいていました。皆さんに読んでいただけて、本当にうれしいです。拙いお話ですが、最後まで書きますのでよろしくお願いいたします。

【大陸歴1415年8月20日 深夜】


〈十四郎視点〉


 濃い胞子の霧が晴れたとき、俺達は巨大なキノコの化物によって、周囲を取り囲まれていた。


「主様、これはキノコの変異種です。私の陰に隠れていてください。」


 案内役のパトラがそう言うと同時に、紫色の不気味は傘を持つキノコの化物は、胴体にある巨大な口から、毒々しい色の霧を吐き出した。


 霧は空気よりも重いらしく、俺達のところまでは届かなかった。


 しかし、霧を浴びた金色のキノコは、あっという間に黒く変色して、溶け崩れてしまった。


 あの霧は、強力な毒物を含んでいるようだ。まともに浴びたら、俺もどうなってしまうか分からない。


 ここは天井が低いから、飛んで逃げることもできない。俺は素直に案内役のパトラの陰に隠れた。






 霧が届かないと悟った化けキノコたちは、その短い足を動かして俺達に迫っていた。


 しかし、その突進は、パトラの振るった槍の一撃によって止められた。


 彼女が横ざまに大きく振るった槍の穂先は、一体の化けキノコの傘の付け根を正確に切り裂いた。


 傘を切り落とされた化けキノコが、紫の胞子を撒き散らしながら、たちまちその場に崩れ落ちる。


 それを恐れたのか、他の化けキノコたちは、たたらを踏んでその場に留まった。


 パトラはその一瞬を逃さなかった。


 彼女は俺を素早く抱え上げると、崩れ落ちた一体を飛び越えて、畑の出口に向かって走り出す。


 化けキノコたちはすぐに俺達を追いかけて走り始めた。


 巨大な口を開き、短い腕を振りかざして追いかけてくるその姿は、出来の悪いホラー映画に出てくる怪物そのものだ。






 まもなく出口にたどり着く。


 俺がそう思ったとき、パトラが突然地面に倒れた。


 俺は彼女の腕に抱えられたまま、彼女と一緒に地面の上に転がった。


 もしや、焦って足をもつれさせたのか!?


 化けキノコたちはすぐ後ろまで迫っている。


 パトラは俺をかばうように、硬い胸に俺をぎゅっと抱き寄せた。






 だが、次の瞬間、地面に伏した俺達の頭上を、すごい速さで何かが横切っていった。


「もう大丈夫です。」


 パトラはそう言っておもむろに身体を起こした。


 驚いて後ろを見ると、化けキノコたちは無数の槍に貫かれ、身体を地面に縫い付けられて絶命していた。






 化けキノコに槍を放ったのは、案内役のパトラよりも一回り大きい蟻人たちだった。


 四本の腕を持つ彼女たちは、俺達の脇を通って化けキノコたちに近づくと、先端が鋭い剣のようになった腹部の副腕を器用に使って、化けキノコの傘を切り取っていった。


「なあ、パトラ。この人たちって、さっき言ってた女王を守る特別な戦士ってやつか?」


「いいえ、この分身体は、畑を守る戦士です。この案内役の分身体よりも、ちょっとだけ力があります。」


 身体の大きさや腕の多さを見ても、『ちょっとだけ』には思えないんだけど。


 これでちょっとなら、女王を守っているのは、どんなすごいやつなんだろうか。






 そんなことを考えながら眺めていたら、四本腕の戦士たちは切り取ったキノコの傘を、肩から生えた左の主腕に装着し始めた。


 まるで丸盾を持っているみたいだ。


 化けキノコが死んだことで黒く変色した傘を装備した彼らは、頭部に生えた一本角も相まって、黒い全身甲冑を着込んだ騎士そのものだ。


 暗黒騎士みたいで、かなりかっこいい。


 はるか昔に忘れ去ったはずの、俺の厨二心がわくわくしてしまう。






「褒めていただいて光栄です。主様さえよければ、案内役をこの戦士に変えましょうか?」


「ぜひ、お願いします!」


 思わず食い気味に返事してしまった。いや、だって、マジでカッコいいんだもの。


 それに、ちょうど拠点を守る戦力増強を考えてたところだし。


 より強い戦士が来てくれるのはマジでありがたい。


 決して、単純に見た目だけで決めたわけじゃないそ、うん。






 戦士たちの一体が俺達に近づいてきた。


 それと入れ替わるように、今まで案内役をしてくれていたパトラは、他の戦士たちとともに畑を出ていった。


「では、改めてよろしくお願いいたします、主様。」


「見た目が変わっても、声や喋り方はそのままなんだな。」


 俺がそう言うと、パトラは面白がるように、短い触覚をフルフルと震わせた。


「それはそうですよ。見た目は変わっても、中身は全部『私』なんですから。」






 新しい案内役になったパトラは、身長190cmくらい。


 右の主腕に槍、左の主碗に丸盾を装備している。


 腹部にも先が剣みたいになった副腕があるけれど、今は折りたたんで体にピッタリとくっつけられているので、殆ど目立たない。


「なんか、今までと少し見た目が変わったなあ。ちょっとスリムになったというか、女性っぽいというか・・・。」


「そうですか? 私にはよく分かりません。けれど、この姿のほうが素早く動けるので、これまで以上に主様をお守りできると思います。」


 彼女はそう言って、その場でくるりと一回転してみせた。すごく軽やかな動きだ。


 それに、フォルムがほっそりとして女性っぽくなった分、若干の優美さも感じる。


 以前の案内役は、まんま直立したアリだったけど、かなり人間のシルエットに近づいたように思う。


 離れて見たら、甲冑を着た女騎士にしか見えない。






「ところでパトラ、畑を守るって言ってたけど、あの化けキノコはよく出るのか?」


 俺がそう尋ねると、彼女は小さく頷いてみせた。


 その仕草も、すごく人間の女っぽかった。


「金色のキノコは強い魔力を持っています。それが高まり過ぎると、あの変異種が生まれることがあります。ただ、あんなに一度に変異したのは初めてだったので、ちょっとだけ慌ててしまいました。」


「それって、もしかしなくても、俺のせいかな・・・?」


「そうですね。主様の魔力はこの地すべてに、強い影響を及ぼしていますから。」


 そりゃそうか。このゲーム的にも、俺がいる場所に敵が集まるようになってるんだもんな。






「悪い事しちゃったな、ごめんパトラ。」


「いいえ。むしろ助かりました。変異種はより栄養のある餌になりますから。それに、この傘も役に立ちます。」


 彼女はそう言って、左腕の盾を槍の穂先でツンと突いてみせた。


 途端に、金属同士がぶつかったような済んだ音が響く。


「この傘は元々、私の槍を弾くほど硬いのですが、変異種が死ぬと更に硬化するんです。分身体を守る盾にちょうどいいんですよ。」


 彼女たちは元々、発生した変異体を狩り、素材や食糧として利用していたのだそうだ。


 弱点である傘の付け根を狙うノウハウも確立しているらしい。


 今回の襲撃もむしろ、一度に大量の盾が手に入ったと、とても喜んでいた。


「主様にお願いするのは気が引けますが、よかったら、危険のない範囲で時々畑に来ていただけると助かります。」


 こんなことで喜んでもらえるなら、お安い御用だ。


 俺はこの畑を自由に移動できるようにするため、未配置だった残りの緑の立方体を並べていった。





蟻人アントノイド:ファイター】

種族:人型魔獣族

属性:土属性

召喚コスト:1000DP

保有スキル:〈熱耐性〉〈酸耐性〉〈昆虫種魅了〉〈槍術〉〈双剣術〉〈殴打被ダメージ増加〉

戦士階級のアントノイド。ソルジャーの上位種である。身長は190〜200cm程。武器使用に特化した結果、より人間に近い姿へと進化した。その姿は全身甲冑を着用した人間に酷似している。肩から生えた2本の主腕の他、腹部には先端が剣状に変化した2本の副腕を持つ。4本の腕を巧みに駆使して戦い、中〜近距離での戦闘力はかなり高い。ソルジャーよりも素早く動ける反面、外骨格の強度が低くなっており、殴打攻撃が弱点である。そのため、ほとんどの個体が、盾で身を守るなどの対策をしている。



狂乱の真菌クレイジーファンガス

種族:植物魔獣族

属性:土属性

召喚コスト:600DP

保有スキル:〈毒の息〉〈病気付与〉〈炎被ダメージ増加〉

短い手足を持つ人型キノコ魔獣。土の魔力が強い場所で育った菌類が、稀に突然変異して出現する。腹部に巨大な口のように見える胞子噴出孔を持っており、迂闊に近づいてきた犠牲者に対して、猛烈な勢いで胞子を吹きかけてくる。この胞子は一部の哺乳類・鳥類に対して有毒であり、強烈なかゆみ、皮膚や粘膜の炎症、呼吸器官内出血による呼吸困難、急な発熱などの症状を引き起こす。この症状は、放置すると次第に重篤化し、やがて茸人病という病を発症するに至る。彼らの傘は刃による攻撃を弾くほどに硬い。しかし、重たい傘を頭部に乗せているせいで、非常に身体のバランスが悪い。また、傘以外の部位は柔らかく、容易に切り裂くことができる。そのため、直接戦闘力は低く、毒の息を除けば、比較的脅威は小さいと言える。多くの植物魔獣と同様に火を恐れるため、火の存在を感知すると、たちまち逃げ出してしまう。



茸人ファンガシアン

種族:植物魔獣族

属性:土属性

召喚コスト:召喚不可

保有スキル:〈病気付与〉〈恐怖付与(強)〉〈炎被ダメージ増加〉

茸人病を発症して死亡した人間が魔獣化した存在。長年、不死系魔獣アンデッドであると考えられていたが、神学者マイコニスによって、不死の呪いに冒されていないことが証明され、植物系魔獣であることが判明した。全身を胞子が詰まった瘤で覆われたおぞましい姿をしており、見た者に対して、強い恐怖による恐慌状態を引き起こす。犠牲者は脳を胞子に支配されているため、生前の意思に関係なく同族を襲い、胞子を増殖させようと行動する。茸人の身体能力は、宿主の生前の能力に依存しているため、宿主次第でその脅威度は大きく変わる。ただ、胞子が徐々に、全身の器官を食い尽くしてしまうため、死亡後数日で自壊し、胞子の塊に変わってしまう。

お読みいただき、ありがとうございました。

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