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53 地下実験室 後編

 前話に魔獣の説明を追加しました。昨日今日は急いで書いたので、後で手直しするかもしれません。

【大陸歴1415年8月20日 夜】


〈十四郎視点〉


 俺の当面の目標は、拠点内の防衛強化だ。


 今のところ、拠点外の防御は完璧と言って良い。


 俺の領土、つまり立方体を配置した場所ではアリ太郎軍団が、それ以外の場所ではパトラたちが、出現した魔獣たちを次々と狩ってくれている。


 たまに数が多いときもあるけれど、それもニートトカゲが出ていけば、あっという間に決着がついてしまう。


 ただ、頼りになるアリ太郎たちやニートトカゲも、拠点内では活躍させられない。


 彼らは良くも悪くも、強力過ぎる能力を持っている。


 そのため、拠点内の女性たちや子どもたちに被害が及ぶ可能性があるからだ。






 現在拠点内に配置している魔獣は、畑を守るスナマン・ツチマンたちを除けば、数体の土ゴーレムと街灯代わりの火の拳たちしかいない。


 ただ、土ゴーレムや火の拳たちでは、あの船長たちに、あっという間にやられてしまうだろう。


 一応、俺とユーリィもいるけど、はっきり言って俺は戦力にならないし、ユーリィ一人に任せるのは危険すぎる。


 外側を守る軍団に比べたら、拠点内はかなり手薄だ。侵入されたら、それこそひとたまりもない。


 罠などで対策してるけど、人間相手だから回避されることも想定しておかなきゃいけないからな。


 と言うわけで、まずは拠点内での防衛力を上げられるような、強力かつ危険度の少ない魔獣を作り出したい。






 とりあえず、強化する候補としては土ゴーレムか。陶製マネキンのどちらかだ。


 戦闘力では圧倒的に土ゴーレムが優位。ただし、移動速度が遅いという弱点がある。


 しかも、かなり身体がでかいので、狭い拠点内での戦闘には向いていない。


 盛り土に擬態して、不意を突くなどすれば、侵入者を効果的に撃退できる可能性もある。


 でも、使い所はかなり限定されるだろう。






 陶製マネキンは、見た目通り、ほぼ人間と同じ動きができる。ただ、力はさほど強くなく、一般的な成人女性と同程度だ。


 しかも、身体が陶器なので衝撃にも弱い。戦闘力では、土ゴーレムとまったく比べものにならない。


 利点としては、攻撃魔法による遠距離攻撃ができること。


 それに、味方を認識して簡単な命令を聞きわけ、ある程度自発的に行動する知能を持っていることかな。


 近接戦闘ができないが、人型なので、拠点内に潜伏して戦闘するのにも向いている。


 土ゴーレムと陶製マネキン。どちらも一長一短だ。


 いずれは両方とも強化するつもりだけど、強化に使用できるhpは限られている。


 まずはどちらを先に強化するべきだろう?






「ユーリィは、どっちがいいと思う?」


 少し悩んだあと、ユーリィは俺の問いかけに答えた。


「ゴーレムさんは、今でも十分強いので、白いお人形さんのほうがいいと思います。」


 なるほど、弱い方から強くしようってことだな。確かにそれは一理ある。


 よし、せっかくユーリィが考えてくれたのだから、まずはマネキンの方を強化してみよう!






「この魔獣の合成には、10000DPが必要です。よろしいですか?」


 融合アイコンを操作した俺に、ナビさんが話しかけてきた。


 聞き取れたのは数字だけだけど、コスト10000というのはなんとか分かった。


 ニートトカゲがもう一体召喚できるくらいのコストがかかるらしい。


 これで外れ引いたら、かなりの痛手だぞ。


 でも、一度やると決めたからには、やってみるのが男ってもんだ。俺はナビさんに「YES」と伝えた。






 実験室が白い光に包まれる。それをユーリィは、目をまんまるにして見つめていた。


 普段はしっかりしていて大人びて見える彼女だが、こういうところはやっぱり年相応なんだなと思う。


 愛らしい表情を見て、俺は友里のことを思い出し、無いはずの胸の奥が痛くなるのを感じた。


 2体の陶製人形が重なり合って、新たな魔獣が出現する。


 白い光の中から現れた人型の魔獣を見て、ユーリィはちょっと困ったように目をそらした。






「ちょっと、えっと、その、少し・・jinuosioですね。」


 ユーリィの言ったjinuosioっていう単語の意味は分からない。


 けど、顔を赤くしている様子から予想して、多分エッチとか、やらしいという意味なんじゃないかな?


「おそらく、その意味で合っています。私には理解できない感情ですが。」


 俺の思考を読み取ったパトラが、すぐにそう補足してくれた。


 確かに、虫である彼女には、今の俺とユーリィの気まずさは理解できないだろう。






 目の前にいる魔獣は、全裸の女性そのものだ。しかも、かなり肉感的な美女である。


 有り体に言うと、かなりエロい。


 もしも、娘に隠してるエロ本を見つかったら、こんな気持ちになるのだろうか。


 めちゃめちゃ気まずいぞ、これ。






 融合元になった陶製マネキンは、ギリ女性的な体つきだなと分かる程度だったし、髪の毛も生えていなかった。


 目鼻の造形も簡素で、手足も人形みたいな球体関節だったので、人間らしさは皆無だったのだ。


 でも、新しく出現した魔獣は、長めの茶髪で、しっかりした目鼻の造形がある。


 ただし首から上にしか体毛は無いし、乳首やヘソなども無い。


 肌は硬質な感じで病的なほど白く、光沢を帯びている。だから一見して人形と分かる。


 ただ、人間の女性とかなり近く、服を着させずに歩き回らせるには、躊躇してしまう造形だ。


 どうなってんだ、これ。まさか、見た目の方が進化するとは思わなかったよ。


 ちゃんと、強くなっているんだろうな?






 あまりにも気まずいので、俺はすぐにアイテム創造アイコンを起動し、女性用の衣服を作った。


 ユミナさんたちが着ているような、砂色のゆったりしたワンピースだ。


 身につけるよう指示すると、新たな魔獣は、床の上の衣服を拾い上げ、器用な手つきでさっと身につけた。


 陶製マネキンに比べると、その動きはかなり洗練されている。だいぶ器用そうだぞ、こいつ。


 ただ、表情の動きや瞬きなどが一切ないので、かなり不気味な感じがする。


 動くと人形っぽさがより際立って見えるなー。


 よし、こいつは生き人形って呼ぶことにしよう!






 呼び名が決まったので、まずは、性能テストからだ。


「生き人形! ゴーレムと戦え! ゴーレム、生き人形を迎え撃て!」


 俺の命令に従って、二体の魔獣が動き出した。


 ゴーレムがゆっくりした動きで間合いを詰め、大きく腕を振りかぶる。


 その間に、生き人形は魔法を発動させた。


 頭上に魔法陣が出現し、そこから射出された白い光の槍がゴーレムの左足を貫いた。


 左足を失ったゴーレムは、大きくバランスを崩した。しかし、ゴーレムの長い腕は、生き人形をその間合いに捉えていた。


 振りかぶった腕を生き人形めがけて振り下ろす。


 魔法を撃った直後だったせいで、生き人形はそれを回避することができない。


 生き人形は、両腕を掲げて頭を守った。


 ずしんという轟音が響き、ゴーレムの渾身の一撃が、生き人形を直撃した。


 しかし、生き人形はその攻撃を耐えきった。


 腕にヒビが入ったものの、そのままゴーレムの腕を跳ね上げた。


 その直後、生き人形のきれいな回し蹴りが、ゴーレムの胴体に突き刺さった。


 それからは一方的だった。


 生き人形の激しいラッシュ攻撃の前に、ゴーレムはあっという間に土塊に戻ってしまった。






 こいつ、見た目だけじゃなく、めちゃめちゃ強いぞ!


 激しい攻撃をしたせいで、腕のヒビが少し大きくなっているものの、大きく壊れているところはない。


 それに、しばらくすると、そのヒビも自動的に修復された。


 小さな傷が勝手に治る(直る?)のは、ゴーレム系統の魔獣に共通しているようだ。





 

「すごく強くて、びっくりしました。でも、ちょっと顔が怖いですね。」


 感想を尋ねられたユーリィは、俺にそう答えた。無表情のまま、ひたすらゴーレムを攻撃する様子が怖かったらしい。


 彼女の言うように、俺もちょっと不気味だなと思った。


 たしか、こんな殺人人形が出てくるホラー映画があったような気がする。うろ覚えだけど。


 うーん、拠点内に複数配置して、みんなを守らせるつもりだったけど、これじゃあ、小さい子どもたちを怯えさせてしまいそうだ。






 俺がユーリィにそう相談すると、彼女は「ashulamusを付けたらどうでしょう?」と言ってくれた。


 ashulamusというのは、女性が顔を隠すために使う布のことらしい。


 日除けや砂埃避けに使うものだそうで、ユーリィたちの暮らしていた村では、年配の女性たちがよく付けていたそうだ。


 確かに顔の表情を隠してしまえば、だいぶ不気味さは薄れる気がする。


 人間の中に混じって潜伏させるときにも役立ちそうだ。ユーリィ、ナイスアイデア!


 ただ残念ながら、言葉の説明とジェスチャーだけでは、はっきりしたイメージが掴めない。


 これじゃあ、俺がアイテム創造アイコンで作るのは難しい。どうしたもんかなー。


 すると、俺が悩んでいるのをユーリィが察して「あたしが試しに作ってみます」と言ってくれた。


 それはすごく助かる。やっぱりユーリィに相談してよかったよ。ここは彼女に甘えて、任せてしまおう。






 ここまでの実験その他で、残りのhpは11530になった。


 生き人形の召喚コストは1000だから、数体は呼び出しても問題なさそうだ。


 今見た感じだと、結構器用そうだし、もしかしたら武器や道具も扱えるかもしれない。


 女性たちが受け入れてくれれば、お手伝いロボみたいな使い方もできるかも?


 せっかくコストをかけたのだから、有効な使い道をしっかり考えたいところだ。


 早速、拠点内に配置して、性能をテストしてみよう。





 

 実験が終わったので、俺はユーリィと一緒に地上へ戻った。


 頭上にはまだ明るい2つの月が輝き、砂の街を青く照らし出している。


 ひゅうという音を立てて冷たい風がその場を過ぎると、ユーリィは寒そうに自分の身体を抱えた。


「では、御使い様。あたしはこれで失礼します。」


「うん、付き合ってくれてありがとう。ゆっくり休んで。おやすみ、ユーリィ。」


「おやすみなさい、御使い様。」


 彼女がしっかり休めるようにと祈りながら、ぺこりと頭を下げて寝床に帰っていく小さな背中を見送った。


 ゲームのキャラクターに対して、こんな感情を持つのは、正直おかしい気もする。


 けど、やっぱり子どもには、少しでも健やかに過ごしてほしいと願わずにはいられない。






「さて、俺は朝まで何をしようかな?」


 眠ることができない今の俺にとって、いつだって夜は長すぎる。


 早くこのゲームから脱出して、家族三人いっしょに、ゆっくりと眠りたいものだ。


 俺は呼び出した生き人形たちを連れて、拠点内の巡回をすることにした。


 特に何かあるわけではない。


 けれど、何か見ていれば少しは気が紛れると思ったのだ。


「私もお側におります。」


「・・・ありがとうパトラ。」


 パトラの何気ない言葉が、とても温かく感じた。


 移動し始めた俺の後ろを、パトラと生き人形たちがついてくる。


 寝静まった拠点に、彼女たちが砂を踏むサクサクという音だけがこだまする。


 眠ることも、食べることも、泣くことすらできない今の俺。


 それなのに、ふと見上げた月の光は、なぜか少しだけ、潤んでいるように見えた。



種族:迷宮核ダンジョンコア

名前:澤部十四郎

迷宮レベル:9


総DP:4330

獲得DP/日:14740

消費DP/日:14583



種族:迷宮守護者

名前:ユーリィ

職業レベル:6(ガーディアン)

強打L3 突撃L3 短剣術L6

暗視L1 反射音探知L1 締め付けL1

操船L2 登攀L3 騎乗L3 詐術L2

 

装備:守護者の剣

 (自動回復L3)

   守護者の鎧

 (斬撃被ダメージ軽減L2 酸耐性L2

  熱耐性L1 炎耐性L1 毒耐性L2

  土魔法耐性L1)

   水鏡の円盾

 (光線攻撃反射L5 石化耐性L5

  魔法耐性L3)



種族:人間

名前:フーリア

職業レベル:3(デザートシャーマン)

危機感知L1 自然の祝福L1

不死者払いL2 浄化L1 小治癒L1



偽生の魔人形リビングビスク

種族:魔法生物

属性:無属性

召喚コスト:1000DP

維持コスト:100DP/日

保有スキル:〈魔法の槍〉〈恐怖付与(弱)〉〈自動修復(弱)〉〈打撃被ダメージ増加〉

陶製の女性人形型魔法生物。陶製魔導人形の上位種。身長は150〜160cm。頭部には頭髪があり、美しい女性に似せた面容を持つ。関節も人間の見た目と非常に似ており、自然な動きをすることができる。しかし、硬質で光沢のある肌をしているため、一見しただけで人間でないことが判別できる。創造者・使役者の簡単な命令に従い、その遂行のため、ある程度自律的な行動をすることができる。また、単純な道具を使うことも可能である。一般的な成人男性数人分に匹敵する力を持ち、敏捷性も平均的な人間よりもやや高い。また、1時間に5回だけ無属性魔法〈魔法の短槍マジックジャベリン〉を使用することができる。人間に似ているにも関わらず、一切表情のない様子は不気味でもあり、見る者に恐慌状態を引き起こすことがある。



【魔法生物の視覚・聴覚・嗅覚・味覚について】

魔法生物の中には、人間や動物と似た感覚器(目・耳・鼻・口)を持っている者がいるが、多くの場合、それらは見せかけであり、実際には機能していないことがほとんどである。基本的に、魔法生物は周囲の魔素マナの動きを感知して行動しているため、暗闇で視覚を失うような状態にはならない。そのため、感覚妨害系の精神魔法(〈盲目化ブラインドネス〉や〈消音サイレンス〉等)は、多くの場合無効である。しかし、魔素の動きを阻害・遮断する魔法(〈魔素除外リムーブ・マナエッセンス〉)等で攻撃されてしまうと、行動が大きく制限されたり、行動不能に陥ったりしてしまう。

お読みいただき、ありがとうございました。

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