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47 食糧事情と拠点防衛

 おせちに飽きてきたので、今日はピザを焼きました。ピザソース作りすぎました。

【大陸歴1415年7月6日 早朝】


〈十四郎視点〉


 土ゴーレム騒動が一段落したところで、ユーリィたちはいつものように屋外の作業を始めた。


 俺は土ゴーレムを畑の側に待機させた後、みんなの作業を見守った。


 やがて、陽の光が指し始めた頃、彼女たちは休憩を兼ねた朝食を摂り始めた。


 今朝のメニューは、乾燥させた木の実と炙った干し肉、そして葉野菜と赤い穀物の粉を溶き入れた薄いスープだ。


 日本の基準で見ると、とんでもなく乏しい栄養状態。でも、少し前に比べたら、これでも多少マシになったほうだ。






 この拠点を手に入れた直後から、ユーリィたちは慢性的な食糧不足に直面している。


 何しろ、ここは長年放置されていた廃オアシス。


 まともに食べられるものなどほとんど無く、あの船長たちが蓄えていた僅かな食糧を分け合うしかない状態だったからだ。


 ユーリィは少しでも食糧を確保しようと、罠で小動物などを捕まえている。


 けど、全員の腹を満たすような量が、安定的に捕れるわけじゃない。


 3回の食事を2回に減らし、さらに量を切り詰めるなどせざる得ないほど、食糧問題は本当に深刻な状態だったのだ。






 ただ、1か月前の襲撃を乗り切ったことで、それがほんの少しだけ改善した。


 というのも、生き残った大イカが沈めた唯一の船の積荷に、樽や木箱に入った保存食が大量に含まれていたからだ。


 それに加えて、この一ヶ月で、ユーリィたちが育てていた葉物野菜が食べられるようになった事も大きい。


 現在はその保存食と野菜、それに拠点内のあちこちにまばらに生えているヤシみたいな樹木の果実で、飢えをしのいでいる。


 ただ、それも今の備蓄が尽きてしまえば、おしまいだ。


 根本的な解決のためには、やはり主食の栽培が不可欠なのだ。


 ユーリィの話では、主食である赤いトウモロコシみたいな作物が育つのは、あと3〜4カ月程も先のことらしい。


 いざとなれば、俺がmpを使って食糧を準備しなくてはならなくなるかもしれない。


 ただ、一人一食分の食事を準備するだけでも、結構な量のmpを消費してしまう。


 全員が満足できるほどの食糧をmpで賄い続けるのは、到底無理そうだ。


 




 ちなみに、以前、ユーリィと一緒に食糧問題について話していた時、俺が呼び出せる赤い毛皮の犬を食べてみたらと勧めてみたことがある。


 俺はユーリィと出会ったばかりの頃、彼女に黒い犬の肉を食べさせたことがあったからだ。


 あのとき、彼女はその肉を美味しそうに食べていた。


 ユーリィたちは、犬の他にも、ヘビやトカゲ、ネズミなど、どんな肉でも食べている。


 ならば、あの赤い毛皮の犬も食糧になるんじゃないかと思ったのだ。


 赤い犬はかなり大きいから食べごたえがあるし、俺がいくらでも呼び出せる。


 美味しく食べられるなら、食糧問題は一気に解決。そう思ったのだ。






 でも、俺の提案は、受け入れてもらえなかった。


 ユーリィによると、あの赤い毛皮の犬は「魔獣」で、人間が食べることはできないのだそうだ。


 魔獣の肉を人間が食べると必ず体調を崩すし、最悪死んでしまうこともあるらしい。


 赤い犬を食べればと勧めたとき、ユーリィはとんでもない顔をして驚いていた。


 最初はそれがなぜなのか分からなかったけど、その話を聞いてようやく分かった。






 あのときはかなり焦って、すぐに彼女に謝ったっけ。


 何しろ知らないこととは言え、俺は彼女に「毒を食べてみたら?」と勧めたことになるのだ。


 そんな俺を彼女は「御使い様は神様の使い。人間のことをよく知らないのですから、仕方ないですよ」と笑って許してくれた。


 それでも俺は、とても恐ろしくなった。


 気を付けないと、知らないうちに守るべき彼女たちを、自分の手で傷つけてしまうかもしれない。


 俺はこのことから、もっとこの世界のことをよく知る必要があると、改めて強く思った。






 ちなみに、俺はこのとき、この世界の「魔獣」という単語を初めて知った。


 そして同時に、俺が黒い犬を呼び出せない理由も、なんとなく分かってしまった。


 どうやら、ゲームの仕様上、俺がアイコンを使って呼び出せるのは、「魔獣」に限定されているようだ。


 多分、食糧無限生産みたいな卑怯技チートを防ぐためなのだろう。よく考えてるぜ、まったく。






 少しでも食糧問題を解決するため、俺は今、新たな畑の開拓に力を入れている。


 拠点内には放棄された耕作地がまだまだある。そこにツチマンたちを投入して、畑を作っているのだ。


 俺には農業の経験も知識もない。ユーリィたちがやっているのを見様見真似でやっているだけだ。


 それでも、結構上手くいっていると自分では思っている。これはひとえに、ツチマンたちの優秀さのおかげだ。


 何しろ彼らは、四六時中畑に潜んでいて、除草から鳥害対策まで、勝手にやってくれる。


 おまけに、近くに引いてある地下水路から、自分の体を使ってどんどん水を吸い出し、畑全体へと広げてくれるのだ。


 水の運搬・誘導がすべて地下で行えるので、確実に植物の根に水が行き渡る上に、地上から人の手で撒くよりも、遥かに効率がいい。


 何しろ、強い日差しで蒸発することがないからな。


 彼らは、ユーリィたちが作っている畑でも活躍している。


 おかげで彼女たちの農作業の負担は遥かに軽くなった。


 その分の時間を使って、彼女たちは今、集落で放置されていた道具類(糸車や機織り機らしい)を修理できないかと頑張っている。






 ちなみに、俺が作った新しい畑では保存食の中にあった種を使って、芋や豆類、それに亜麻を育てている。


 でも、準備できた畑の大きさに比べたら、育てている作物はちょっぴりだけだ。


 本当はもっと大々的にやりたいところだけど、あいにく元になる種や苗がもうない。


 ユーリィの話によると、交易船がやって来れば、物々交換でそういった品々を手に入れることもできるそうだ。


 けれど、この集落は普通の航路から外れているようで、その望みはかなり薄いらしい。


 ならば船があれば、この拠点から他の拠点に行けるのかと言えば、それもムリ。


 ユーリィたちには操船技術がないそうで、仮に船があったとしても、他の村に行くことはできないらしい。


 最悪、ナビさんに船を準備してもらえばなんとかなるかも考えたこともあったが、その話を聞いて、どうにもならないことが分かった。


 完全に無人島漂着状態である。 


 ただ、簡単に諦めてしまうわけにはいかない。


 ゲームクリアのためにはもちろんだが、ユーリィたちが飢え死にするところなんか見たくないからな。






 食糧問題については、解決までにかなり時間がかかる。


 これについては、俺にできることはこれ以上なさそうだ。ユーリィやツチマンたちにがんばってもらうしかない。


 俺にできること。それはなんといっても、街の防衛だろう。


 あの船長たちが襲ってくる強制イベントは、絶対にまた起こるはず。


 前回、俺は正直、完全に油断していた。


 最初の奇襲で、簡単に船長たちをやっつけられたこともあり、魔獣の強さを過信していたのだ。






 魔獣と人間を単純に比べれば、魔獣のほうが圧倒的にスペックが高い。


 普通に戦えば、魔物側の圧勝だろう。もちろん、ユーリィやあの船長みたいな特別なキャラクターは別としての話だ。


 にも関わらず、前回は相手にしっかり対策されたせいで、こちらの戦力は完全に封じられてしまった。


 この世界ゲームの人間敵キャラには知恵がある。


 しかも、どんな高性能のAIだよと思うほど、柔軟にこちらの動きに対応してくる。


 やはり人間相手の戦いは油断ならない。前回の戦いで、俺はそう思い知らされた。






 そうなれば、こちらも人間相手の戦いを想定して、対策する必要がある。


 相手の策を無効化し、こちらの戦力で効率的に、敵を撃退するのだ。


 そのために俺が最初に着手したのは、拠点を守る防壁の改修だ。






 積極的な攻撃手段ではないから、所詮は時間稼ぎにしかならないかもしれない。


 しかし、相手が攻略に時間をかけてくれれば、こちらの戦術が組み立てやすくなるのは間違いない。


 そう考えた俺は、建設アイコンを使って、崩れやすい砂レンガの壁を丈夫な石の壁に作り替えた。


 厚さ5m、高さ10mの石の壁が、アイコンの操作だけであっという間に出来上がる。


 こういうところは、やはりゲームっぽい。


 それなのに、作物の育成にはどうしてあんなに時間がかかるんだか。


 まあ、そのへんはこのゲームの仕様ってことで、飲み込むしかないのだろう。






 本当は敵の侵入を防ぐため、完全に防壁の出入り口を無くしてしまいたかった。だけど、それはどうやってもできなかった。


 しようとすると、ナビさんの警告メッセージとともに、建築アイコンが反応しなくなってしまうのだ。


 どうやら、これもゲームの仕様らしい。


 プレイヤーがあまり有利になるような完全防御チートはできないってことなのだろう。


 だから、申し訳程度の小さな出入り口を作り、丈夫な金属製の扉を取り付けておいた。


 大人一人が何とか通り抜けられるくらいの扉だ。ほとんど、完全に塞いでいるのと変わらない状態。


 ただ、一応これでも出入り口の扱いになるらしく、ナビさんには何にも言われなかった。


 ゲームの仕様の裏をかいているようで、ちょっと裏技チックな気もする。


 でも、ユーリィたちを守るために、できることは全部やっておきたいからな。


 どうせならと思って、外壁には致死性の高い罠をガッツリ仕込んである。


 まあ、そのせいで、現在のmp不足に陥ってしまっているんだけどね。






 ゲームクリアを目指すなら、やはり防御だけでは心もとない。


 来たるべき戦いイベントに向けて、戦力を充実させ、戦略を練ることが欠かせないだろう。


 今、俺が保有している戦力は、将軍アリ率いる部隊と大サソリ、それにイカたち。


 主力である彼らは、あの船長の襲撃前と変わらず、拠点の四方を守ってくれている。


 それに加えて、哨戒と奇襲を担当するスナザメ部隊、赤い毛皮の犬の遊撃部隊。


 小回りの利く彼らは、罠にかかった荒くれたちにとどめを刺すときに大活躍してくれた。


 あと、ニートトカゲもいるな。でも、今のところは活躍の場がない。


 今後は拠点内の防衛用に、火の拳や土ゴーレムを増やしつつ、新たな魔獣を生み出していきたい。


 ただ現在は深刻なmp不足のため、これ以上の戦力増強が望めない状況だ。


 やはり、mpを増やすために、パトラに少し魔獣を融通してもらったほうがいいかもしれない。






「そういうことでしたら、構いませんよ。子どもたちの数も安定してきました。これからはされほど多くの魔獣エサは必要ありませんから。」


 俺が頭でそう考えた途端、パトラが返答してくれた。話が早くて助かるな。


 けど、脳内の独り言に急に返答されると、かなりビビるから止めてほしい。


 すると、パトラは俺の方をじっと見つめたあと、時間を置いてこう応えてくれた。


「わかりました。これからは主様が私に意識を向けたときだけ、返事をするようにいたします。」


 パトラさん、マジ有能。ほんと、彼女が人間だったらなー。


 俺は彼女に礼を言った。


 そして、朝食の後の作業をするユーリィたちの様子を、彼女とともに見守ったのだった。




種族:迷宮核ダンジョンコア

名前:澤部十四郎

迷宮レベル:9


総DP:444

獲得DP/日:14740

消費DP/日:13983



種族:迷宮守護者

名前:ユーリィ

職業レベル:6(ガーディアン)

強打L3 突撃L3 短剣術L6 

暗視L1 反射音探知L1 締め付けL1

操船L2 登攀L3 騎乗L3 詐術L2

 

装備:守護者の剣

 (自動回復L3)

   守護者の鎧

 (斬撃被ダメージ軽減L2 酸耐性L2

  熱耐性L1 炎耐性L1 毒耐性L2

  土魔法耐性L1)

   水鏡の円盾

 (光線攻撃反射L5 石化耐性L5

  魔法耐性L3)



種族:人間

名前:フーリア

職業レベル:3(デザートシャーマン)

危機感知L1 自然の祝福L1

不死者払いL2 浄化L1 小治癒L1

お読みいただき、ありがとうございました。

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