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25 強敵再来 中編

 6000字越えちゃったので、2つに分けました。読みにくくてすみません。

【大陸歴1415年5月12日 深夜】


〈十四郎視点〉


 石化光線をまともに浴びた俺は、声にならない悲鳴を上げた。


 ああ、ついにゲームオーバーか。でも、この死に方なら痛みもなさそうだし、ある意味良かったのかもしれない。


 これでやっと、俺は現実に戻ることができるのだ。ただ、この世界ゲームに取り残されるユーリィたちのことを思うと、少しだけ胸が痛んだ。


 俺は白い光の中、そんなことを考えていた。だが、俺のそんな安らかな思いは、トカゲの怒りに満ちた威嚇音によって、破られてしまった。


 俺は咄嗟に後退して、その場を離れた。


 あれ、なんともないぞ?


 俺の眼の前では、相変わらずトカゲとサソリたちが激しく交戦している。光線を浴びた数瞬前と全く何も変わっていない。


 どうなってるんだと首をひねる俺の脳裏に、ナビさんの落ち着いた声が響いてきた。


『敵性魔獣の発した光線攻撃の解析が終了しました。これにより、スキル〈完全石化耐性〉を獲得しました。魂接続ソウルリンクにより、守護者専用装備にスキル〈石化無効化〉が付与されました。』


 よくわからないが、俺には石化光線の効果がなかったようだ。


 確かに落ち着いて考えてみれば、今の俺はただの光の球。石化する体がなかったわ。






 そうこうしているうちに、遠くの方から赤い毛皮の犬たちがこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。


 犬たちは後退した俺の前に飛び出すと、トカゲに向かって威嚇するような声を唸り声を立て始めた。  


 犬たちの毛皮が赤熱した金属のような光を放つ。次の瞬間、大きく口を開いた彼らの喉の奥から、ソフトボールくらいの大きさの火球が一斉に吐き出された。


 吐き出された火球は、トカゲの硬い鱗にぶつかると、バッと炎を上げて燃え上がった。


 直接見たことはないけど、まるで火炎瓶を投げつけたような感じに見える。


 炎はそれ以上燃え広がることなく、すぐに消えてしまった。けれど、トカゲは少し怯んだような様子を見せ、直後、鋭い威嚇音を出した。


 炎が当たった鱗が変色している。アリ太郎たちの酸攻撃ではびくともしなかったトカゲの鱗も、無敵ではないようだ。


 俺はアリ太郎とサソリたちに、変色した鱗めがけて攻撃を集中するように命じた。


 変色した鱗があっけなく砕け、トカゲの血が吹き出す。これはいいぞ!


 チャンスと見た俺は、犬たちに炎を吐くように命じた。


 けれど、彼らは戸惑った表情をして俺を見上げるばかりだ。毛皮も輝いていない。どうやら、炎を吐ける回数や間隔には、制限があるようだ。






 傷を負ったトカゲが怒り任せに、長い尾を振り回す。サソリたちは体を低くしてそれを回避したが、逃げ遅れたアリ太郎たちに大きな被害がでた。


 しかし、彼らは仲間の死にも一向に恐れた様子を見せず、間髪入れず反撃を開始した。


 トカゲはぐるりと頭を回すと、アリ太郎たちに向かって目を見開いた。もう、何度も見ているから分かる。石化光線の予備動作だ。


 赤い犬たちはさっと散開して、光線を躱したものの、動きの遅いアリ太郎たちと大サソリが一匹、犠牲になってしまった。


 たった一回の石化攻撃で、こちらの残存戦力の4分の1程を持っていかれてしまった。やはり、この光線はかなり厄介だ。


 生き残ったアリ太郎たちや犬たちもも、トカゲの毒で次々と動きが鈍くなっている。


 これ以上、時間をかけるわけにはいかない。何か決め手はないか?






御使いトーシュローさま!!」


 夜の砂漠に響いた声にハッとして辺りを見回す。


 ちょうどトカゲを挟んだ反対側、夜露で湿った砂の上を、こちらへ向かって全力疾走してくるユーリィの姿が見えた。


 どうしてあの子がここに!?


 混乱した頭で一瞬そう考えたが、彼女の後ろからゆっくりした動きでこちらにやってくるツチマンたちを見て合点がいった。


 おそらく急に動き出したツチマンたちを不審に思って、ここまでやってきたのだろう。


 だが、これはかなりマズい!!


「ユーリィ! 来るな! 来るんじゃない!!」


 俺は思わず、日本語で彼女にそう叫んでしまった。もちろん、声は出せないから脳内で、だ。


 当然、彼女に日本語は通じない。だが、俺の焦りや意図は伝わったようだ。彼女は弾かれたようにその場に立ち止まった。


 しかし、これは最悪のタイミングだった。


 トカゲはユーリィの姿を目にすると、すぐに彼女に向かってその巨体を進めたのだ。


 アリ太郎たちは、俺を守るように隊列を組んでいたため、彼女のいる方は全くの無防備状態だ。


 俺は魔物たちに、彼女を守るように命令を出した。しかし、トカゲの動きのほうがずっと速かった。


 トカゲの動きを見たユーリィはツチマンたちのいるところまで後退した。


 ツチマンたちはユーリィを守るように彼女の前に立ち並んだが、トカゲの爪の一撃によって、あっけなく全員が土塊に戻ってしまった。


 ツチマン弱えええ!


 身を守るものがなくなったユーリィに、トカゲはカッと目を見開いた。マズい! 石化光線だ!


「ユーリィ、逃げろ!」


 俺は日本語で叫んだ。だが、彼女には伝わらない。俺の意図と裏腹に、彼女は短剣を横様に構え、トカゲと向き合った。


 あの石化光線の有効範囲がかなり広いことは、これまでの経験からよく分かっている。


 最初のタイミングで彼女が逃げていても、果たして避けられたかどうか、ギリギリのところだったのだ。


 しかし、こうなった以上、彼女が光線を避ける手段はもうない。


 俺は全速力で彼女に向かって飛び急ぎながら、トカゲの目が赤く輝くのを絶望的な気持ちで見つめた。






 だが、ユーリィの短剣が月明かりをキラリと反射した途端、トカゲは何かを恐れるように急に頭を反らせ、一瞬硬直したかのように動かなくなった。


 一体、何が起きたんだ!?


「御使い様!」


 トカゲの隙をついて彼女のもとにたどり着いた俺に、ユーリィが駆け寄ってくる。


 俺は、月の光を映す彼女の短剣に目を向けた。薄い光を放つ短剣の表面は、磨き上げられた鏡のように、周囲の風景の中に浮かぶ俺の姿を映していた。


 鏡…! もしかしてコイツの弱点は!?


 一瞬の後、トカゲが再び動き出す。奴は真っ赤に染まった瞳をこちらに向け、怒りに満ちた鳴き声を上げた。


「コッチ!!」


 俺は覚えたての現地語でユーリィに呼びかけ、トカゲから距離を取るため後退した。


 すかさずトカゲが俺たちを追ってきたが、俺を守るために集まって来たアリ太郎たちが、奴の行く手を阻んでくれた。


 俺はすぐに脳内のナビさんに向かって叫んだ。


「ナビさん、ユーリィが身を守れるくらいで、手に持てる大きさの鏡を作ってくれ!!」


『迷宮宝物庫機能を使用し、一般財宝を素材として、守護者専用装備を生成します。10000DPが必要です。よろしいですか?』


 流石はナビさん、仕事が早い。爆速でレスが返ってきた。


 彼女の確認メッセージに俺が力強く「YES!」と念じると、小さいけれど強い輝かを放つ銀色の魔法陣が、ユーリィの足元に出現した。


 その中から湧き出すように出現したものを、ユーリィは目をまん丸にして見つめていた。


 よし、これで勝てる!


 俺はアリ太郎たちが時間を稼いでくれている間に、短い言葉でユーリィに自分の作戦を説明した。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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