24 強敵再来 前編
題名つけるのって難しいですよね?
【大陸歴1415年5月12日 深夜】
その日の夜、ユーリィたちが眠りについた後、俺はいつものように集落の周りを見回っていた。
眠くならない俺にとって、夜の時間は長すぎる。見回りをしながら、襲ってくる雑魚敵共を始末するくらいしか、やることがないのだ。
領地が広くなったせいなのか、最近は襲いかかってくる敵の数・個体の強力さ共に、日に日に上がって来ている。
だけど、俺の魔物軍団も、それに負けないよう、増強を重ねてきた。
今、軍団の最大戦力になっているのは、大イカたちだ。彼らは砂の中を自由に動き回り、敵の背後から奇襲攻撃をすることができる。
触手による複数同時攻撃も可能なので、面制圧にも最適。実に頼りになる奴らだ。
現在、4体の大イカたちを集落の四方に配置して、守りにつかせている。唯一の弱点は、あまり目が良くないこと。
どうやら彼らは、皮膚と触手で砂の振動を感じ取ることで、周囲の様子を把握しているらしく、小さすぎる相手を捉えるのは少し苦手のようだ。
あと、皮膚が敏感という特徴のせいか、酸や火などの攻撃には極端に弱い。
その弱点を補うため、俺は主力となるアリ太郎部隊を2部隊ずつ、大イカたちと一緒に行動させている。大イカが逃がした相手は、将軍アリ率いるアリ太郎たちが確実に倒してくれるというわけだ。
大イカたちが休んでいる間の夜の主力は、大サソリたちが務めてくれている。ただ、大サソリとアリ太郎たちはあまり相性が良くない。
だから、その代わりに、スナザメたちを大サソリのフォローとして使っている。彼らは移動範囲が非常に広いため、領地周辺の哨戒もしてくれている。
ナビさんは基本的に、俺の支配領域付近にまで敵が近づかないと、俺にそれを知らせてくれない。
それをスナザメたちが周囲を警戒してくれることで、敵をいち早く発見し、対処することができるようになった。
将来的には、スナザメたちによる広域警戒網が作れたらいいなと思う。
新しく呼び出せるようになった魔物が増えた一方、今のところ、あまり使い道のない魔物たちもいる。例えば、炎を吐く赤い犬だ。
彼らは火の玉を吐いて、相手を攻撃することができる。また、炎に対する耐性もあるようだ。
ただ、集落を守るという点で考えると、アリ太郎や他の魔物に比べて、あまり使い勝手が良くない。
犬系の魔物だし、ペットみたいに集落内の警備に使えないかと考えたこともある。だけど、うろつく魔物を見た女性の一人がパニックを起こしてひっくり返ったので、早々に諦めた。
魔物に対する恐怖は、相当強いもののようだ。まあ、日本だって、街中でクマやイノシシを見かけたら、普通に怖いもんな。
というわけで残念ながら、赤い犬に関しては未だに、彼らの能力を活かせずじまいだ。
炎が弱点の魔物が出たら、大活躍できるかもしれないので、今はとりあえず、拠点の外で自由にさせている。
スケルトンみたいに、無差別に味方に襲いかかるなんてのは論外。
けど戦い以外で、魔物の能力をもっと活かせる方法を考えられたら、この世界の攻略が確実に楽になるだろう。
それが、集落の発展につながり、ユーリィたちの役に立つなら更にいい。これは今後の課題だな。
夜もかなり更け、真上に昇った青と白、二つの月がゆっくりと傾きかけた頃、俺は南側を警戒していたスナザメたちが、突然ざわめき立つのを感じ取った。
俺は、呼び出した魔物の感情をある程度、感じ取ることができる。そのとき彼らが感じていたのは、強い恐怖と混乱だった。
外壁の上でのんびりと月の光を浴びていた俺は、すぐにその場を離れて南側に向かった。と同時に、鋭い警告音と共にナビさんの声が俺の脳裏に響き渡った。
『強力な敵性魔獣が迷宮領域内に侵入しました。迷宮核の退避を強く推奨します。』
警告音を聞きながら、俺は全速力で宙を駆けた。
小さな砂の丘を越えて、南側を見た俺の目に飛び込んできたのは、追いすがるアリ太郎たちをものともせず、まっすぐにこちらへ突進してくる巨大な八本足の大トカゲの姿だった。
「あいつか!!」
ついに来るべき時が来た。俺がこのゲーム内で出会った最強の化け物。
手も足も出せずに、死の寸前まで追い詰められた、苦い記憶が蘇る。
すごい勢いで前進してきたトカゲは、一瞬動きを止め、大きく頭を持ち上げた。
奴を見つめる俺と目が合ったと思った瞬間、奴は体を大きく震わせながら、シューっという鋭い威嚇音を出した。
俺を見つめる奴の目が赤く輝く。確実に俺を殺る気のようだ。
集落に立て籠もれば、奴をやり過ごせるかもしれない。一瞬、そう躊躇したが、俺はすぐに奴の方へ向かって行った。
このまま集落に戻るわけにはいかない。そんなことをすれば、ユーリィたちを巻き込んでしまう。
いくらゲームのキャラだといえ、眼の前で子どもたちがこいつに食われるの見るのは、まっぴらごめんだ。
俺は砂の中に潜んでいる自軍の魔物たちをその場に呼び寄せた。奴は俺へまっすぐに向かってくる。
周囲を警戒する様子は全く見られない。それだけ自分の強さに自信があるのだろう。
恐れを知らないアリ太郎たちを前面に待機させつつ、側面と背面の砂の中にイカとサソリたちを潜ませる。
いつものように、俺自身を囮にし、伏兵の中に追い込んでから、一斉攻撃をかける作戦だ。
俺の必勝パターンだが、圧倒的な力を持つこのトカゲにそれがどこまで通用するかは、全くの未知数。
でも、今は強くなった軍団の力を信じるしかない。
目を真っ赤に輝かせたトカゲは、眼の前に並んだ将軍アリたちすら、全く気にかけていないようだ。
体長10m以上のトカゲに比べれば、巨大な将軍アリも大人と子ども以上の体格差があるのだから、仕方がない。
以前見たときよりも一回り大きく感じるのは、俺の恐怖心のせいだろうか。
俺は体の内側をジリジリと焦がすような思いに耐え、奴をギリギリまで引き寄せた。
将軍アリまであと数mと迫ったとき、奴は突然動きを止め、大きく体を旋回させた。長い尾を使って、並んだアリたちを一気に薙ぎ払うつもりのようだ。
勢いをつけて突進され、戦列を突破されたらヤバいと警戒していたが、これは千載一遇のチャンス!
「行け!!」
俺の号令に合わせて、砂の中から一斉に太い触手が飛び出す。全身を触手に絡み取られ、動きを止めたトカゲは、怒りに任せて鋭い警戒音を立てた。
それを合図に、アリ太郎軍団、大サソリ、スナザメたちが一気に攻撃を仕掛けた。
アリ太郎たちの酸は、残念ながら奴の硬いウロコにすべて弾かれてしまい、全く効果がなかった。
だが、大サソリたちのハサミと尻尾による攻撃は、小さいながらも確実にダメージを与えたようだ。
砕けたウロコから紫色の血が吹き出す。
トカゲは痛みと怒りで激しく体を震わせたが、絡みついた触手が動きを封じているため、反撃もままならない。
よし、このまま行けるぞ!
ところが俺がそう思った次の瞬間、奴はイカたちの触手を力任せに引きちぎってしまった。
驚いてよく見てみると、奴の体に巻き付いていたイカたちの触手は紫色に変色し、ドロドロに溶け崩れてしまっている。
更に、奴に牙を突き立てていたアリ太郎やスナザメたちも、ピクピクと体を震わせて、次々倒れていった。
こいつ、もしかしてヤバい毒でも持っているのか!?
自由になったトカゲは、ぐるりと頭を回転させ、俺を守っているアリ太郎たちに目を向けた。
赤く染まった奴の瞳が輝き、フラッシュライトのような強い光が発せられる。
光をまともに浴びたアリ太郎たちは、たちまち、灰色の石に変わって絶命した。以前戦った時と同じだ。こいつの光線には触れたものを石化させる能力がある。
いくらなんでも、強すぎだろ!
「下がれ!」
俺はアリ太郎たちと共に後退し、戦列を整えた。恐れを知らないアリ太郎たちは、仲間の死を意に介す様子も見せず、再びトカゲの前に整列した。
トカゲは素早い動きで俺に迫って来た。奴の大きな前足が、石塊と化したアリ太郎たちの死骸を踏み砕く。
迫るトカゲに対し、将軍アリたちは長い角や牙を振り立てて応戦した。
突進を止められたトカゲに、アリ太郎たちが食らいつく。助走が短かったおかげで、突進力が弱まっていたのも幸いした。
俺は石化光線を警戒していたが、奴は撃ってこなかった。どうやら連続で光線を撃つことは出来ないようだ。
アリ太郎たちは数に任せて攻撃を続け、着実に傷を負わせている。
だが、いかんせん体格差があり過ぎるため、決め手になるような打撃にはなっていない。
しかも、奴の毒で、攻撃したアリ太郎たちは次々と倒れていく。このままでは確実にジリ貧だ。
何か弱点はないかと、俺はトカゲの全身を観察した。だが、硬く厚い鱗に覆われた体には、弱点らしいものは見つけられなかった。
せめて飛び道具でもあれば、あの目を狙えそうだけど、そんなものはないし、そもそも扱える人間がいない。
俺は減った戦力を補うため、集落を守るために周辺に待機させておいた赤犬と、畑に隠れさせておいたツチマンたちをその場に呼び寄せた。
ただ、彼らがここに来るまでには、もう少し時間がかかる。それまで、アリ太郎たちが持ってくれるのいいのだが・・・。
今、トカゲへの攻撃の主力となっているのは、4匹の大サソリたちだ。彼らはトカゲの毒に耐性があるらしく、全く弱った様子がない。
トカゲの尾が届かない場所からヒットアンドアウェイを繰り返して着実に打撃を与えている。
俺は何か少しでも攻略のヒントはないかと、トカゲの頭の上に移動することにした。
この位置なら、尻尾や牙、前足の爪の攻撃も届かないと判断したからだ。
だが、俺のその考えはかなり甘かった。
俺が奴の頭の真後ろに移動した途端、奴は突然、頭を180°回転させ、俺の方に目を向けた。
俺は慌ててその場を離れようとしたが、すでに遅かった。赤い瞳が俺を捉えた瞬間、奴の目から強烈な光が発せられた。
どうすることも出来なかった。石化光線を正面から浴びた俺の視界が、真っ白に染まっていく。
たまらず上げた、俺の声にならない悲鳴が、夜の砂漠に響き渡った。
種族:迷宮核
名前:澤部十四郎
迷宮レベル:6
総DP:12849
獲得DP/日:7240
消費DP/日:3223
種族:迷宮守護者
名前:ユーリィ
職業レベル:3(ガーディアン)
強打L2 突撃L3 短剣術L3
暗視L1 反射音探知L1 締め付けL1
操船L1 登攀L1 騎乗L1 詐術L1
装備:守護者の剣
(自動回復L1)
守護者の鎧
(斬撃被ダメージ軽減L1 酸耐性L1
熱耐性L1 炎耐性L1 毒耐性L1)
種族:人間
名前:フーリア
職業レベル:2(デザートシャーマン)
危機感知L1 自然の祝福L1
不死者払いL2
お読みいただいて、ありがとうございました。




