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22 畑づくりに挑戦

 りんごの美味しい季節ですね。

【大陸歴1415年5月7日 昼過ぎ頃】


〈十四郎視点〉


 太陽を見ると、ほとんど傾きが変わっていなかった。本当にあっという間に建築してしまったので、時間はほとんど経っていない。


 眠っているユーリィたちもまだ起きる気配はない。正直、めちゃめちゃ暇である。他にできることはないだろうか?


 畑の上をふわふわと漂いながら、ユーリィたちのためにできることを考える。やっぱり、畑作りを手伝うのが良いだろう。


 さっき一応試してはみたが、建築アイコンでは、流石に畑を作ることはできないようだった。まあ、そりゃそうだよな。


 そうなると、手でやるしかないけど、残念なことに俺には手がない。スナハンドはいるけどね。


 畑作りに使えそうなのは、やはりスナマンだろうか。それにユーリィ達のための道具も必要だ。


 俺はメニューを開き、アイテムを作り出すアイコンに意識を向けた。欲しいのは農具だ。アイコンに向かってそう念じると、すぐにナビさんの声が聞こえてきた。


『一般道具〈鍬〉の生成には鉄素材と木材、5DPが必要です。生成してよろしいですか?』


 俺の返事に応じて展開した魔法陣から、鉄の刃がついた真新しい鍬が出現した。


 俺は再びスナマンを呼び出すと、できたばかりの鍬を持たせて、畑を耕すように命じた。


 スナマンは俺の命令に応え、鍬を振りかざす。だけど、これがなかなかうまくいかなかった。


 スナマンは恐ろしく不器用だったのだ。


 操り人形のようにクネクネとした動きしかできないため、耕す場所が定まらない。俺は早々に耕すことを諦めてしまった。


 できないものは、仕方がない。代わりに畑に水でも撒いておくか。


 一応、地中には少しずつ、暗渠から水が染み出している。上からも撒けば、やがて地面に染み込んで、少しは作物を育てやすくなるだろう。


 俺はスナマンに瓶をもたせ、水汲みに行かせることにした。


 しかし、スナマンは水に触れた途端、グズグズに崩れてその場に広がってしまった。スナマンは水に弱かったようだ。


 崩れたスナマンを地面に潜らせ、泉から離れさせた。全然役に立たないな、こいつ。


 しかしすぐに、いやそうじゃないだろう、と思い直す。


 俺はスナマンのことをよく分かっていない。だから、俺の使い方に問題があるのかもしれない。


 とりあえず、スナマンを畑につれていくことにした。何事もいろいろとチャレンジしてみることが大切だよな。


 崩れたスナマンは、地面から顔だけ出した状態で俺のあとをついてくる。


 砂の中なら完全に隠れられるスナマンも、畑の硬い土では勝手が違うようだ。それとも、身体が水で濡れたせいで、隠れる能力が発揮できないのかもしれない。


 うまく隠れられていないせいか、スナマンが移動した部分の地面がもこもこと動いている。






 待てよ。この動きを利用すれば、地面を耕したり、均したりすることができるんじゃないのか?


 俺は早速、スナマンを畑の表面で動き回らせてみた。スナマンの動きに合わせて、地面がうねうねと波打っていく。


 波打った地面は、固まった土が崩れて、うまい具合にフカフカになっていた。これはいいぞ!


 俺はスナマンを動き回らせて、畑をどんどん耕していった。ところが、畑を半分ほど耕し終えたところで、突然、スナマンが動きを止めた。


 同時に、頭の中にナビさんの声が響いた。


『魔法生物を構成する素材の組成が変化し、〈砂人形サンドパペット〉が〈土人形クレイドール〉への進化条件を満たしました。〈土人形〉の召喚が可能になりました。』


 一体何が起こったのかと、戸惑う俺の前で、畑に潜っていたスナマンがその場に起き上がった。


 ただ、その見た目は、これまでのスナマンとは大きく異なっていた。


 ツルンとしたマネキンのような外観はスナマンと同じだが、乾いた砂ではなく、湿った土で出来ている。それに、常にくねくねと動いていたスナマンと違い、二本の足を大地に踏ん張って立っていた。


 身長も160cmほどでスナマンよりもやや大きく、体つきもしっかりしている。試しに鍬を振らせてみたら、スナマンよりもずっと上手に畑を耕すことが出来た。


 どうやらこいつはスナマンの上位互換のようだ。畑を耕したことで、スナマンが進化したのだろう。さしずめ、ツチマンといったところだろうか。


 試しに召喚アイコンを確認してみると、スナマンの隣に、ツチマンの召喚アイコンが増えていた。俺は早速、ツチマンを呼び出してみることにした。






『〈土人形〉12体の召喚には600DPが必要です。よろしいですか?』


 ナビさんの声に返事をすると同時に、魔法陣から12体のツチマンが出現した。俺はツチマンたちを畑の中に潜り込ませると、さっきまでと同じように、畑の表面で動き回らせた。


 スナマンは砂の中を移動するとき、全く気配を感じさせなかったが、ツチマンたちは動いている姿がはっきりと分かる。


 地面から半身をのぞかせて動き回る様子は、まるでプールで泳ぎ回る人間のように見えた。


 ツチマンたちは力強い分、スナマンに比べると、隠密行動が得意ではないようだ。


 スナマンみたいな死角からの一撃奇襲みたいな使い方は出来そうにない。魔物によって、一長一短があるということなのだろう。


 ただ、動きが大きいので、畑はあっという間に耕されていった。


 頑張ったツチマンたちに「ご苦労さん」と声をかけて、彼らを畑の土に潜ませる。


 ツチマンたちのいるところは少し盛り上がっていて、一目で見ただけでも分かる。やはり、隠れるのは苦手らしい。


 隠れさせたのはもちろん、昨日のスケルトンみたいに、ユーリィたちを驚かせないようにするためだ。


 でも、明らかに怪しいから、事前に説明しておいた方がよさそうだ。そして、彼らにはこのまま、畑を守ってもらうことにしよう。


 俺は、耕し終えた畑を見渡した。こうやって見ると、結構広い。


 本当は肥料とかも作りたいところだけど、生憎俺には農業知識がないので、何を作ればいいのかも分からない。


 今後、ゲーム攻略が進めば、そういう機能も解放されるんだろうか?


 まあ、ともかく、ここが作物でいっぱいになるのが、今から楽しみだ。ユーリィたちが喜んでくれるといいな。


 そうだ、長い間、手入れされてなくて、崩れかけてる外壁があったっけ。


 直すついでに、外壁や門も丈夫にしておこう。建築アイコンの練習にもなりそうだしな。


 その後、集落の周りで戦っている魔物たちを眺めながら、俺はのんびりと外壁と門の修理をしていった。


 やがて太陽がだいぶ傾いた頃、ユーリィたちは目を覚ました。俺は、作業を中断し、彼女たちの様子を見るためにその場を離れたのだった。





【大陸歴1415年5月7日 夕刻】


〈ユーリィ視点〉


 安らかな微睡みの中で揺蕩っていたユーリィは、悲鳴のような甲高い叫び声を耳にして、一気に意識を覚醒させた。


 腰につけた短剣を手に建物を飛び出す。穏やかな夕闇とひんやりとした外気が、彼女の頰に優しく触れた。


 程なく悲鳴の主と思われる女性が、広場へ続く路地の真ん中で、へたり込んでいるのに出くわした。


「ムニラおねえちゃん、一体何が・・・!」


 そう言って女性に駆け寄ったユーリィは、目の前に広がる光景に言葉をなくし、女性と同じく、その場で凍りついたように動きを止めた。


 二人の声を聞いて、後から集まって来た他の女性たちも、同じように立ちすくんだ。その横を、小さな子どもたちが駆け抜けていく。






「すっげー! 魔法の泉が神殿になってる! 俺、まだ夢見てんのかな?」


「畑がきれいになってる! ねえ、何が起こったの、お母さん?」


「泉の真ん中にいらっしゃるのって、シャーレ様? すっごくきれい!」


 小さな子どもたちは楽しそうに、泉の周りを駆け回る。しかし、白く磨かれた石造りの建築物を前にして、大人たちは一歩も動けないままだった。


 そんな中、いち早く動き出したのは、シャーレ神の使徒となったフーリアだった。彼女はユーリィの横を通り抜けると、動けずにいる大人たちに呼びかけた。


「シャーレ様に祈りを捧げましょう。」


 歓喜に満ちた表情でそう言った彼女の両目からは、熱い涙が止まること無く溢れ出している。


 彼女はその場に両膝をつき、泉の中央にある女神像に向けて、祈りを捧げ始めた。


 彼女の姿を見た大人たち、そして大人たちの様子を見た子どもたちも、同じように祈りの姿勢をとる。


 やがて、静かな祈りの言葉と夜気が泉を包んだ頃、昇り始めた月の光の中をふわふわと漂いながら、一つの光球が彼らの下へとやってきた。


「御使い(トーシュロー)様!」


 ユーリィの言葉にその場の全員がハッと顔を上げ、シャーレ神の御使いに目を向ける。


 彼らは光球に向けて深く頭を下げ、口々に感謝と祈りを捧げている。無邪気な様子の子どもたちとは対象的に、女性たちの目には皆、涙が溢れていた。


 ここにいる女性たちは皆、砂賊の襲撃によって、夫や家族を殺されている。


 砂賊から開放され安心するにつれ、彼女たちは、家族を奪われた無念と、自分だけが生き残ってしまったという罪悪感に苛まれていた。


 けれど、御使い様が起こしてくださったこの奇跡を目の当たりにしたことで、彼女たちは少しだけ、その気持ちから救われた。


 砂漠の民の守り神であるシャーレ様が、殺された家族の魂を、死後の平安へと導いてくださったと確信できたからだ。


 もちろん完全に彼女たちが救われ、強い気持ちを持てるまでには、長い時間がかかるだろう。


 しかし、そのきっかけとなるには、この奇跡は十分すぎるほどのものだ。ユーリィには、それが痛いほど理解できた。


 ユーリィは熱い気持ちで、自分に神聖な使命ミシオを授けてくださった御使いを、見上げた。


 けれど、彼女たちの視線を受けた当の御使い自身は、まるで臆病な砂漠ネズミのように、ビクリとその丸い体を震わせた。


 涙ながらに感謝と家族の冥福を祈る言葉を繰り返す人たちを前にして、御使いはオロオロとその場を行き来している。


 言葉は通じないものの、ユーリィの心には、御使いの戸惑いや焦りが手に取るように伝わってきた。


 その様子を見たユーリィは立ち上がり、周囲の人達に語りかけた。


「みんな、聞いて! 御使い様はあたしたちが泣くことなんかお望みじゃない。そうでしょう?」


 彼女の言葉に、女性たちが顔を上げる。ユーリィに続いて立ち上がったフーリアが、流れ落ちる涙を拭いながら言った。


「ユーリィの言う通りね。私たちはシャーレ様の御心にお応えしなくては。」


 フーリアは傍らに跪いていた弟のトゥンジャイを立たせると、ぎゅっと強く抱きしめ、二人で農具とタカキビの種を取りに建物へと戻っていった。


 他の女性達も、同じように動き始める。明るい二つの月の光の下、彼女たちは懸命に農作業に打ち込んだ。


 作業も終わりに差し掛かった頃、ユーリィはふと手を止め、御使いの姿を探した。


 御使いは、畑の側に置かれた真新しい日干しレンガの上に、まるで腰掛けるようにちょこんと乗っていた。


 それを見た彼女は、胸に温かいものが広がるような、なんとも言えない気持ちになり、我知らず笑みをこぼした。それに気付いた彼女の母は、同じように彼女に笑いかけた。


 死んでしまった父さんや村の人達。みんなの分まで生きて、母さんたちを守らなくちゃ。


 ユーリィは、使命を受けたときの決意を改めて胸に刻み込んだ。そんな彼女の思いを後押しするかのように、青白い月の光は、彼女を優しく照らし出していた。



種族:迷宮核ダンジョンコア

名前:澤部十四郎

迷宮レベル:6


総DP:5783

獲得DP/日:7010

消費DP/日:3223



種族:迷宮守護者

名前:ユーリィ

職業レベル:3(ガーディアン)

強打L2 突撃L3 短剣術L3 

暗視L1 反射音探知L1 締め付けL1

操船L1 登攀L1 騎乗L1 詐術L1

 

装備:守護者の剣

 (自動回復L1)

   守護者の鎧

 (斬撃被ダメージ軽減L1 酸耐性L1

  熱耐性L1 炎耐性L1 毒耐性L1)



種族:人間

名前:フーリア

職業レベル:2(デザートシャーマン)

危機感知L1 自然の祝福L1

不死者払いL2



土人形クレイドール

種族:魔法生物

属性:土属性

召喚コスト:50DP

維持コスト:10DP/日

保有スキル:〈土中移動〉

土を素材とした人型魔法生物。身長は160〜180cm。召喚者の命令に従い、単純作業をすることが可能。平均的な成人男性と同程度の力を持つが、動きはやや緩慢であり、俊敏な動きは苦手である。

お読みいただき、ありがとうございました。

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