20 朝食とトイレ 後編
本日2話投稿しています。こちらは後編です。
【大陸歴1415年5月6日】
〈十四郎視点〉
ユーリィたちが深刻な顔で何かを話し合っている。
その間、俺はこのゲームから脱出するためのヒントを、何か得られないかと、部屋の中をうろうろを漂っていた。
ここは、井戸の広場に面した大きな家の一階部分だ。白っぽい砂色のレンガで作られたこの建物は、縦横の広さがおよそ20mくらい。
その中が、分厚い壁でいくつかに仕切られている。俺達がいるのは、中でも一番広い部屋で、縦横がおよそ7mくらい。天井までの高さは4m弱くらいだと思う。
女性と子どもたちが全員入っても、十分にゆとりがある広さだ。
部屋の隅には、調理をするためのかまどや鍋、水瓶などが置いてある。
この大きい水瓶に、さっきまで小さい子たちが協力して、井戸から水を汲んで運んでいた。今は、女性たちの傍に座って、神妙な顔で話を聞いている。
日本だったら保育園に通っているような小さい子でも、ちゃんと協力し合って仕事をするのを見て、俺は妙に感心してしまった。
程なく話し合いは終わり、女性たちは三々五々仕事に取り掛かり始めた。
色々見て回ったが、結局なんのヒントも見つけることができなかった。
ユーリィたちの会話の内容がわかったら、もう少しなんとかなるのかもしれない。やはり、脱出のためには、このゲーム内の言葉を学ぶ必要がありそうだ。
やがて、ユーリィたちは食事の準備を始めた。メニューは朝とほとんど同じだ。
主食は、赤いとうもろこしみたいな実の粉で作った薄焼きのパン。
女性たちは、この赤い実を粉にして水で捏ねた生地を薄く伸ばし、かまどの内側にペタペタと貼り付けて、何枚ものパンを焼き上げていた。
焼き上がりが赤褐色であることを除けば、見た目は、カレー屋で出てくるナンそのものだ。香ばしい匂いがしていて、かなり美味そう。
おかずは赤い干し柿みたいな果物と、透明なスープ。
この果物は、外壁の辺りに生えているヤシの木みたいな植物の実じゃないかと思う。
甘い香りがしているので、多分干し柿とか、干しブドウみたいな味なんじゃないかな。
小さな子どもたちは、この実をとても美味しそうにしゃぶっていた。
スープは、沸騰した湯に、石包丁を使って乾燥した肉を削り入れたものだ。
女性たちは、最後に白い石のような塊を砕き、その粉を使って調味をしていた。
あれは岩塩じゃないかと思う。岩塩を使った料理を見たのは、生まれて初めてだったので、思わず見入ってしまった。
他に野菜などはなし。日本人の俺から見たら粗末極まりない食事。だけど、女性たちも子どもたちも、特に文句や不平を言う様子もなく、笑顔で食事をしていた。
このゲーム内の女性キャラは、皆ほっそりして美形が多いと思っていたけれど、普段からこんな食事をしていたら、そりゃあ太れるわけがないよな。
ちなみに今の俺は腹がまったく減らない。何しろ、ゲーム内のアバターだからな。
けれど、美味しそうに食べるユーリィたちの様子を見ていると、どんな味がするのか、ちょっとだけでも食べてみたい気はする。
食事を終えたら、子どもたちは連れ立って、建物の外壁にそって作られた小部屋で用を足し始めた。
小部屋といっても、ドアなんか無くて、外からほんの少し隠れられる壁があるだけの、吹きさらし状態だ。
この状態で、どうやって汚物を処理するのだろうと思っていたら、子どもたちは砂を少し掘り返して小さな穴を作り、そこに用を足していた。
終わったら、穴に砂をかけて、小さな山を作る。よく見れば、4畳半ほどの小部屋のあちこちに、小さな山ができている。
用を足したあと、子どもたちは部屋のあちこちに転がっているすべすべした丸石を使って、おしりをきれいに拭き取っった。使い終わった石は、自分の作った小さな山の前に置いていく。
用を足し終えた子どもたちは最後に、小部屋の入口に置いてある、小さな瓶の所に行った。
瓶の中身は、サラサラしたきれいな砂。子どもたちはその砂を手で掬うと、まるで水で手を洗うみたいに、砂で両手をゴシゴシと擦った。
日本人の俺は、水を一切使わないトイレにかなり強い違和感を感じた。でも、よく考えてみれば、ここは砂漠のど真ん中。
貴重な水を節約するためには、きっとこっちのほうが合理的なやり方なのだろう。
それにこの気温と乾燥具合なら、汚物は半日と経たず、砂に戻ってしまうしな。
子どもたちが小部屋を出ると、今度は入れ替わりで女性たちがやってきた。
興味本位で子どもたちのトイレを眺めていたけれど、流石に女性たちのトイレを覗くのはまずい。
俺はそそくさと、その場を離れた。
『迷宮領域内に、有機物が廃棄されました。吸収しますか?』
俺がその場を離れると同時に、ナビさんが何やら話しかけてきた。
とりあえず「YES」と適当に返事を返し、俺はユーリィの様子を見に行った。
種族:迷宮核
名前:澤部十四郎
迷宮レベル:6
総DP:9452
獲得DP/日:7010
消費DP/日:5008
種族:迷宮守護者
名前:ユーリィ
職業レベル:3(ガーディアン)
強打L2 突撃L3 短剣術L3
暗視L1 反射音探知L1 締め付けL1
操船L1 登攀L1 騎乗L1 詐術L1
装備:守護者の剣
(自動回復L1)
守護者の鎧
(斬撃被ダメージ軽減L1 酸耐性L1
熱耐性L1 炎耐性L1 毒耐性L1)
種族:人間
名前:フーリア
職業レベル:2(デザートシャーマン)
危機感知L1 自然の祝福L1
不死者払いL2
【骸骨船員】
種族:不死者
属性:闇属性
召喚コスト:100DP
保有スキル:〈刺突無効〉〈殴打被ダメージ増加〉
人間の死骸を媒介して出現する呪われた霊体魔獣。攻撃方法は、触媒となった死骸の能力に影響を受ける場合が多い。ただし、脳や筋肉などの組織を持たないため、生前のスキルなどを引き継ぐことはできない。
【不死者について】
呪いにより仮初の生命を得た死骸の総称。生者に対する強い憎しみを持ち、周囲の生あるものに対して無差別に襲いかかる。基本的に知能や意思を持たないため、幻惑などの精神系魔法は一切通用しない。一部の上位不死者は、高い知能や優れた魔法技術を有する。また、幻獣などの死骸を媒介とした不死者は、生前の能力を一部引き継いでいる場合が多い。不死者には自然発生的に生まれるものと、召喚や呪文によって人為的に生み出されるものがある。人為的に生み出された不死者は、創造者の命令にある程度従う。ただし、生み出した不死者よりも創造者の能力が低い場合には、その場で襲われることになるため、呪具や呪文によって不死者の行動を制限する必要がある。
お読みいただいて、ありがとうございました。




