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17 人助けイベント

やっと街作りがはじまります。(ゆっくりとですが)

【大陸歴1415年5月5日 夜】


〈十四郎視点〉


 俺たちが桟橋のある集落の外壁から、中央部に戻ったとき、女性たちは建物ではなく、井戸のある広場のあたりに集まっていた。


 どうやら、別の建物にいた子どもたちを救出して、介抱してくれているようだ。


 広場に明かりはないが、二つの月が優しい光を投げかけてくれる。そのため、思ったよりも明るい。


 彼女たちはその下で、ぐったりした子どもたちに、水を飲ませたり、食べ物を与えたりしていた。


「ユーリィ!!」


 小さな井戸から水を汲んでいた女性が、ユーリィに駆け寄る。ユーリィによく似たあの女性だ。


 見た目からして、きっと彼女は、ユーリィのお姉さんだろう。お母さんにしては、若すぎるもんな。


 美幼女ユーリィの姉ちゃんだけあって、彼女もかなりの美女だ。


 月明かりに照らされた二人は、古典的な西洋絵画のように美しい。文字通り絵になるってやつだな。


 俺の呑気な思いをよそに、二人は真剣な表情で何事か話し合った後、急に走り出して、井戸の直ぐ側にいる若い女性のもとに向かった。


 その女性は泣きながら、胸に抱いた小さな男の子の口に、吸口の着いた袋のようなものを押し付けていた。


 袋の中身は水のようだが、男の子は完全に意識を失っているらしく、飲み込めずにいる。空中にいる俺の目から見てもわかるほど、ひどく衰弱していた。


 ユーリィたちも協力してなんとか男の子に水を飲ませようと悪戦苦闘しているが、状況は思わしくない。脱力した男の子の呼吸はみるみる弱く細くなっていく。


 男の子を抱く若い女性は半狂乱になって「トゥンジャイ! トゥンジャイ!」と何度も男の子の体を揺すった。


 もしかして、トゥンジャイっていうのが、この子の名前なのだろうか?


 女性の余りの悲痛な叫びに、いたたまれない気持ちになる。ていうか、これも何かのイベントなのかな?


 とりあえず何か手伝えることはないかと、メニューを開こうとした途端、若い女性が俺の姿に気づいた。


 彼女は男の子を抱えて俺のところへやってくると、血を吐くような声で何かを叫んだ。


「御使い様、どうかこの子をお救いください! もしこの子の命を救っていただけるなら、あたしはシャーレ様にこの身を捧げます! どうか、お願いします!!」


 女性は男の子をしっかりと抱きしめたまま平伏し、冷たい砂に額をつけた。


 言葉は分かんない。けど、多分助けてくれって言ってるんだろうというのは、何となく伝わる。


 ゲーム的なメタ読みになるけど、やっぱりこれが、この村で起こる最初のイベントなんだろうな、多分。


 さっきの戦闘後に、いろんな機能が開放されたみたいだし、それを使ってイベントをクリアしろってことなのかもしれない。いわゆるチュートリアルイベントってやつだ。






 俺は早速メニューを開いて、新しく使えるようになった機能を試してみることにした。


 魔物を呼び出すメニューには、いくつか新しいアイコンが増えていた。さっきの戦闘に勝利したことで、新たな魔物を召喚できるようだ。


 でも、今は戦闘する必要はないので、これは一旦スルーする。


 その次にあるのは、左から3番目。二つの円が横向きにくっついたように見える絵が描かれているアイコンだ。


 このゲームを始めてすぐのときは、全く反応しなかったアイコンだけど、今は薄い光を放っている。


 流れ的に考えて、明らかにこれを使えってことだよな。


 アイコンに意識を向けると、薄緑色のウインドウが開いた。ウインドウの中にあるのは大きな丸が二つだけ。


 俺はその丸に意識を向けてみた。すると、今度は、小さい丸いアイコンがたくさん並んだウインドウが重なるように現れた。


 アイコンの殆どはグレーアウトしている。が、左から2つのアイコンだけは薄く光っていた。


 アイコンに描かれているのは、どちらもスナハンドだった。何かを知らせるかのように、2つとも点滅を繰り返している。


 スナハンド? なんで魔獣? これ、本当にこのイベントに関係あるのか?


 疑問は感じるものの、今は他に思い当たるものもないので、とりあえず試してみることにする。


 俺がスナハンドのアイコンに意識を向けると、大きな丸のウインドウに、二匹(?)のスナハンドたちの姿が浮かび上がった。


『この魔獣の合成には、200DPが必要です。よろしいですか?』


 いつもどおりの確認メッセージが脳内に響く。俺が「YES」と念じると同時に、俺の足元に2つの魔法陣が浮かび上がり、その中にスナハンドたちが現れた。


 2つの魔法陣が互いに引き寄せ合うように重なっていく。


 すると、スナハンドたちの姿が光に溶けるように消え去り、同時に新たな光の球体が、重なった魔法陣の上に現れた。


 周囲にいた女性たちが、慄くような表情で俺の方を見た。俺と女性たちは固唾を飲んで、ことの成り行きを見つめた。






 球体は、目が眩むほどの強い光を放った後、ゆっくりと消えていった。そして、その光の中から現れたのは、身長150cmくらいの砂の人形だった。


『〈砂人形サンドパペット〉の合成に成功しました。』


 細い体に目鼻のないのっぺりとした顔。見た目は、美術の授業などで使うポーズ人形そっくりだ。スナハンドがスナマンに進化したって感じかな。


 スナマンは片足立ちしたまま、その場でくるくると楽しそうに踊っている。


 スナマンに意識を向けると、彼(?)は動きを止め、俺の方に身体を向けた。


 スナハンドと一緒で、このスナマンも俺の思ったとおりに動かすことができるようだ。


 腕だけのスナハンドから、人型になった分、できることが、ぐっと多くなりそうだ。これは、すごい!


 すごいけど、ただ・・・うん、これ、今は全然関係ないやつだ。


 ユーリィも女性たちも、戸惑いの表情で、珍妙な動きをするスナマンと俺を交互に見つめている。


 なんだか無性に恥ずかしくなった俺は、すぐにスナマンを砂の中に潜り込ませた。


 このスナマンも、スナハンドと同じように砂の中を自由に移動できるらしい。今は全然必要ない情報だけど。






 急に姿を消したスナマンに、ユーリィたちはなんとも言えないような表情をして、俺を見ていた。


 やめて!そんな目で俺を見ないで!


 焦った俺は自分でなんとかするのを早々に諦め、ナビさんの力を借りることにした。


「ナビさん、この子を回復させるために、何か作れるものはないか?」


 俺が脳内でそう語りかけると、すぐにナビさんから返答があった。


『領域内の水源を活用し、迷宮施設【回復の泉】を作成しますか?』


 ナビさんは何かを確認しているようだが、もちろん俺に分かるわけがない。有能な彼女を信じてすべてを丸投げすべく、闇雲に「YES」と念じてみた。


『【回復の泉】の作成には、50000DPが必要です。よろしいですか?』


 もちろん俺の返事は「YES」一択だ。その途端、俺の体の中から大きな何かがごっそりとなくなる感覚があり、同時に目の前にあった小さな井戸を中心に、かなり大きな魔法陣が出現した。


 次の瞬間、小さな井戸から金色に輝く水が滾々と溢れ出し始めた。溢れ出した水が、井戸の直ぐ側にいた若い女性の足元に広がる。


 女性は何かを悟ったように表情を変えると、胸に抱きかかえていた小さな男の子を、湧き出す水の中にそっと横たえた。男の子の半身が水にひたり、金色の光が男の子の体を包む。


 すると、あんなに弱々しかった男の子の呼吸がみるみる安定しはじめた。カサカサだった皮膚もたちまち艶を取り戻していく。


 やがて、男の子は薄く目を開くと、目の前の若い女性の顔を見て、小さく何かを呟いた。


「おねえ・・ちゃん・・・?」


「トゥンジャイ!」


 その声を聞いた女性は、男の子を強く抱きしめるとそのまま、おいおいと声をあげて泣き始めた。


 ふう、良かった。どうやらうまくいったようだ。






 やっぱり自分でなんとかしようと思わず、ナビさんに頼って正解だった。


 ていうか、最初からナビさんにお願いすれば、余計な恥をかかずに済んだのだ。次困ったら、またナビさんにお願いしてみよう。


 彼女は俺より有能だし、俺の希望に沿うような結果を出してくれている。ただ、何が起きるか予想が出来ないのだけが唯一の欠点だ。


 でも、今のところうまく行ってるしね。きっと、次もうまくいくだろう。


 こんなことばっかしてたら、美南には「トシってホント、楽天的だよね」って笑われそうだ。けど、それも俺の長所の一つだからな。


 それにしても、最初にスナマンが出てきたときは、正直どうしようかって思ったよ。まじで、冷汗かいた。身体ないけど。


 今後、知らないメニューアイコンを試すときには、ユーリィたちの見ていないところで、こっそりやることにしよう。






 そんな愚にもつかないことを考えていたら、ユーリィたちが動く気配があった。目を向けると、彼女たちはみんな俺に向かって、砂の上に平伏していた。


「御使い様、トゥンジャイの命を救ってくださり、本当にありがとうございました。」


 ユーリィがキラキラした目で俺を見上げて何かを言っている。多分、お礼を言われているのだろう。まあ、俺の手柄じゃなくて、全部ナビさんのおかげなんだけどね。俺、スナマン出しただけだったし。


 その後、金色の水で回復した女性と子どもたちは、近くの建物内を捜索し、簡単な寝床をこしらえると、そのまま眠りについた。


 もちろん、ユーリィも、あのきれいなお姉ちゃんと一緒に眠っている。疲れと安心が一気に来たのだろう。みんな、泥のように深く眠っている。


 色々あったし、ぐっすり眠って元気になってくれれば、それが一番だよな。


 俺としては一刻も早く、彼女たちから情報を得て、このゲームから脱出ログアウトする方法を見つけたいところだ。でも、今はとりあえず待つしか無いだろう。


 眠ることのできない俺は、一人、外壁に向かった。


 そして、外壁の周りに配置した魔物たちを使って、集落に近づいてくるザコ敵を狩りながら、朝になるのをひたすらに待ち続けたのだった。





種族:迷宮核ダンジョンコア

名前:澤部十四郎

迷宮レベル:6


総DP:6721

獲得DP/日:5000

消費DP/日:3008



種族:迷宮守護者

名前:ユーリィ

職業レベル:3(ガーディアン)

強打L2 突撃L3 短剣術L3 

暗視L1 反射音探知L1 締め付けL1

操船L1 登攀L1 騎乗L1 詐術L1

 

装備:守護者の剣

 (自動回復L1)

   守護者の鎧

 (斬撃被ダメージ軽減L1 酸耐性L1

  熱耐性L1 炎耐性L1 毒耐性L1)



砂人形サンドパペット

種族:魔法生物

属性:土属性

召喚コスト:20DP

維持コスト:5DP/日

保有スキル:〈強打〉〈砂投げ〉〈砂隠れ〉〈砂中移動〉〈斬撃無効〉〈刺突無効〉〈殴打被ダメージ増加〉〈水攻撃被ダメージ増加〉

迷宮の魔力によって生み出された魔法生物。迷宮核及び守護者の命令に従って行動するが、精密な動作は得意ではない。一般的な成人男性と同程度の力があり、荷物の運搬などの単純作業を行うことが可能。砂でできた体は、砂を詰め込んだ麻袋程度の強度であり、殴打による強い衝撃を受けると、魔力が拡散して、ただの砂に戻ってしまう。また、水に触れると魔力が流れ出して、体の形を維持できなくなるという弱点を持つ。


【回復の泉について】

維持コスト:3000DP/日

迷宮の魔力を消費することで、迷宮内の任意の場所に設置することができる回復施設。常に美しい水で満たされた魔法の泉。そこから湧きだす水はあらゆる毒物を浄化し、下級回復薬ポーションと同程度の軽い傷を癒す力を有する。水を容器などに入れて持ち歩くこともできるが、その際は魔法の効能が失われ、ただの水になってしまう。設置場所に水源がある場合は、泉を作成する際の魔力を少なくできるが、設置後に場所を移動させることができなくなる。なお、泉周辺の形状は任意に設定することができる。

お読みいただいて、ありがとうございました。

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