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びっくり屋本舗  作者: 百済 夜斗
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第二十話  日本一まずいラーメン屋

 隆志は噂話で「日本一まずいラーメン屋」というのがあることを知った。早速ネットで調べてみると『彦助』という店名で都内にあるらしい。テレビのバラエティー番組でも過去に紹介されているようで、店の看板に『日本一まずいラーメン屋』と書かれており店主自ら日本一まずいことを誇示しているらしい。

 びっくり屋も変わった店だけど、世の中には随分と変わった店もあるもんだなぁと隆志は感心するのであった。『まずいと言われる物』に目のない隆志は、ますます興味を持ち、店への行き方を調べたのであった。


 ある日の会社帰り隆志はワクワクしながら『彦助』へ向かった。店の前に着くや、まず目に飛び込んできたのはネットで見たとの同じ『日本一まずいラーメン屋』の看板であった。店の外観は古びた建物の一階で、一応ラーメン屋だということはわかる程度である。

 どんな店主なんだろうとドキドキしながら店の中へ入って行った。カウンター席が8席程ある普通のラーメン屋だが、入口横に鳥籠が置いてあり、なんだかへんてこりんな印象を受けた。厨房に店主らしき男がいるが無言のままで不安が募ってきた。隆志が「こんにちは」と声を掛けると、「はいよ」と言いながらお冷が目の前に置かれた。なんか不機嫌な感じのする五十台後半に見える店主である。

 壁にメニューが貼ってあるが、ラーメンとギョーザ、そしてビールとしか書いてない。なんともシンプルなものである。

「まずはビールとギョーザを下さい」と店主に注文した。

「はいよ」とビールとグラスが目の前に出された。

 隆志は、もしかしてビールもまずいのかなぁと興味津々に一口飲んでみた。普通のビールだった。ただ、グラスはなんとなく汚れた感じがして、味は同じでもまずい印象がした。

 折角の訪問なんで、少し店主と話がしたくなり、

「おやっさん、この店テレビでも紹介されてるよね?、それで興味を持って来たんだよ」と声を掛けてみた。すると、店主は少し自慢げに

「おっ、あんた知ってるんだね。そーなんだよテレビに出たんだよなぁ」

「お客の評判はどーなんですか?」と質問をぶつけてみた。

「そりゃ、『日本一まずいラーメン屋』って看板でやってるんで、それを理解してる客が来るよ」

「でもな、この前だけど貴婦人の二人組がノコノコやってきてラーメンを注文したんだよ」

「でな、一口食べるなり、まずい、私の口に合いませんわ、なんてほざくんだよ」

「それで、おいらは言ってあげたさ、店の前に『まずい』って書いてあるだろ?、わざわざまずいなんて言うな ってね」

「へー、そんなお客さんも来るですねー」と隆志は返答を返したが、内心は変に正直なおやっさんで面白いなと思ったのであった。


「へい、おまちー」とギョーザが目の前に出てきた。

 皿の上には、なんとも黒焦げでビチャビチャなギョーザが五個並んでいる。見るからにまずそうなギョーザだ。隆志は一個を口へ運んだ。うーむ、これはスーパーで売ってるギョーザを家で焼いたのよりまずいと感じた。まぁしゃーないか日本一まずい店なんだからと思いつつ、ビールで飲み流した。

ギョーザを食べながら「おやっさん、ラーメン追加」と注文を出す。

「あいよ」となんだか調子の良くなった店主が応じた。


 しばらくすると、「はい、おまち」の声がし、目の前にラーメンが出された。

わーーー、見るからに、まずそーと隆志は思った。なんといっても色が黒く醤油その物のようなスープなのである。トッピングのチャーシューも乱雑に切られており、まずそーな印象を強めている。

 おそるおそる麺を挟んで口へ運んでみた。わわわ、やっぱまずい、想定通りだと思った。ダシがまったく効いておらず、醤油を薄めたような味なのだ。でも食べられないほどまずいわけではないではないか。

「おやっさん、細麺だねー」と声を掛けると、

「そーよ、その麺はなー、ここら辺では有名な麺屋から仕入れてるからなー」と得意げになっている。

 ふむふむ、同じ麺でも調理人によってここまでまずくできるのか と隆志は感心した。

 そして、スープを飲んでみたところ、見た目通りの醤油を薄めただけの味がして、けっしてうまいとは言えない。まぁ、俺もまずい物には目がないわけだし、頑張って食べようと思い箸を進めていく。

 すると店主が「来年で店を閉めるんだよ」と語ってきた。

「えーーー、もったいないなぁ」と心にもない返事を返す隆志。

「跡継ぎなんていないし、わしももう歳なんでなぁ」

「そーなんですかぁ、今日来て良かったですよ」

 この店が無くなっても世間はなにも困らないが、ある意味貴重な店でもあるので残念な気がした隆志であった。


 頑張ってラーメンを完食し「ごちそーさま」と店主へ告げた。

「ほう、食べちゃったねぇ」と笑顔な店主。

 そして、代金を払い店を出た。

 なんともへんてこな店だったなぁ、びっくり屋といい勝負だと思いながら帰路につく隆志であった。


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