第十九話 ヘッポコな奴
その日隆志は非番をとりびっくり屋で昼食をとっていた。そこへサラリーマン風の四人組が入ってきた。テーブルに着くなり、上司らしき男性が発した。
「へっぽこー、おまえヤバかったよなぁ、俺が助け舟出してやって助かっただろー?」
「はい、ありがとうございました」ずんぐりむっくりな体系のノー天気風なおじさんが答えた。
「おまえはなー、会社でいつもネットサーフィンばかりやってるからだよー」と上司が続けた。
「だってー、それは私の趣味というか・・・」、「あっ違います、いろいろリサーチしてるんです」
ヘッポコが頭をボリボリかきながら気まずそうに答えた。
「そんなんだから、一つ質問が出ただけでしどろもどろになるんだよ」
と周りの同僚らしき男性が畳みかけた。
「おまえ、在宅勤務だと、家でテレビばっか観てるだろー?」上司がまた突っ込んだ。
「もう、ワイドショーとか詳しいですよ・・・」、「あっ、違います提案に役立つネタ集めに活用してるんです」またアチャーという顔をしながら、ヘッポコが弁明している。
「へい、らっしゃーい」とはぁ~爺がお冷を運んできた。
グラスへ手をのばしたヘッポコが、「あっ」と言いながらグラスを倒してしまい、テーブルの上が水浸しになってしまった。
「おいおいヘッポコ、いい加減にしろよな」上司が苦言を呈す。
「すみません、まださっきまでの緊張が残ってて、手が震えてるんですよ」
ヘッポコが釈明した。
「おやっさーん、注文いいかー」と同僚がはぁ~爺に声を掛けた。
「はぁ~」と毎度の調子ではぁ~爺がテーブルへやってきた。
「俺、ランチ定食、ライス大盛りー」と同僚が勢いよく告げた。
「俺もー同じく」もう一人の同僚も続いた。
「じゃ、私もランチ大盛り」と上司も続く。
最後になって「えー、みんな大盛りなんだぁ」とヘッポコが困った顔をしている。
「よっしゃ、俺も大盛りだー」と勢いで言ってしまったヘッポコであった。
「おっまちー」とはぁ~爺が、次から次へとランチ定食を運んできた。
そのランチは、肉野菜炒めと味噌汁、そして丼に山盛りのごはんであった。
うまそーにがっつく三人、その中で一人ボソボソと食べるヘッポコが対照的な印象である。
「ふー、食った食った」と同僚が満足気に言うと、「食べごたえがあったな」と上司が続けた。
かたやヘッポコの丼には半分以上のごはんが残っている。
「おなかがいっぱいですよー」と情けない声を出すヘッポコ。
それを聞きつけたはぁ~爺が近づいてきて
「おい、ヘッポコさんよ、うちはサービスで大盛りを出してるんじゃ」、「残すんじゃないぞえ」
「えーーー、だってーーー」ヘッポコは丼の飯を箸でつまみあげて、困り果てた顔をしている。
「たーべーろ、ヘッポコ」、「たーべーろ、ヘッポコ」とテーブルの三人に加え、はぁ~爺までが合唱を始めてしまった。
「よし、頑張る」ヘッポコが、飯を口へ運んだ。
「そして最後の手段だ」と言いながら味噌汁を丼にぶっかけ食べ続けている。
だが、さすがに気が小さく、胃も小さいヘッポコは
「もー食べられないよー」と箸を投げた。
それを見かねたはぁ~爺が、「しゃーないなぁ、じゃ罰金200円で勘弁してやろー」と告げた。
ヘッポコは、泣きべそをかきながら、うなづくのであった。
その一連の光景を見ていた隆志は思った。うちの会社にも無能で無気力なヘッポコな人はいるけど、ここまでヘッポコな奴は始めてだなぁ。しかも皆から『ヘッポコ』って呼ばれているし、日本一のヘッポコであるのは間違いない。




