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びっくり屋本舗  作者: 百済 夜斗
22/23

番外編   はぁ~爺の初夢

 夢の中のはぁ~爺・・・

『お魚くわえた、のらネコ~、追いかけてー・・・』、テレビから『サザエさん』のオープニングソングが流れている。

「おっ、サザエさんの時間じゃな」テレビの前にしゃがみこむはぁ~爺。

 すると、ナレーションが流れてきた。

「今日は皆さんに残念なお知らせがあります。長らく視聴して頂きましたサザエさんは本日をもって終了となります」

「な、な、なんじゃと、寂しくなるのう、今日は見逃せないのぉ」


 サザエさん一家は船に乗り込んで沖へ向かっている。波平、ふね、ますお、サザエ、かつお、わかめ、たらちゃん、そしてタマである。舵を取るのは、もちろん主の波平であった。今日はなんとも凛々しい顔つきをしている。甲板にいる他の家族達も楽しげに会話を弾ませているようであるが、どことなく寂しげにも見える。それは、旅立ちの日であり、お別れの日であることを漂わせていた。

 船はまっすぐに進み続けていた。その時、「そろそろこの辺でいいじゃろ」と舵をとっていた波平が呟いた。そして、船のエンジンを止めた。ふねが波平のところへやってきて、何かささやいている。

「おとうさん、いよいよですねぇ」

「あぁ」波平の目には涙が浮かんでいる。

 甲板へ出ると波平が言った。「さぁ着いたぞ、ここが新しい門出の場所になるのじゃ」甲板にいたますお、サザエ、かつお、わかめ、たらちゃんが一斉にないみへいの方を見た。なんのことやら判っていないタマだけがキョトンとした顔をしている。そして、家族みんな、波平の周りへ歩み寄ると、手を差し出し熱い握手をした。

「誰から行くかの?」と波平が言うと、元気な声で「僕から行きます」とますおが申し出た。横からサザエが見つめている。「わかった、お行きなさい」と波平が海へ向かって指差した。

 次の瞬間、ますおは海へ飛び込んでいった。甲板からじっと海の中を見つめていると、ますおの体がマスになっていくのがわかる。とても気持ちよさげに泳いでいる。一度、船の方を振り向いたが、また向きを変えて泳いで行ってしまった。船上から見つめている家族の眼からは涙が溢れている。

 と、気付いた時には、「パパ~」と叫びながらたらちゃんが飛び込もうとしているではないか。慌ててサザエがたらちゃんを抱きかかえ、そして泣き崩れた。

「次は僕が行くよ」とかつおが言った。「お兄ちゃん、私も行く」とわかめがかつおの隣に立った。

「うん、二人とも達者でな」と波平が別れを告げる。かつおとわかめは手を取り合って、海へ飛び込んだ。わかめの体がしなやかにくねりだし波に揺れている。ワカメになっている。そしてカツオも勢いよく泳いでいる。ワカメの周りをグルグルと二周まわったかと思うと、そのままマスが行った方向とは反対の方角へ泳いでいってしまった。ワカメも波に流され、徐々に船の上に残された家族からは見えなくなっていく。

「ママー」とたらちゃんが、サザエに抱きつく。ふねもそこへ寄り添い、サザエの肩を抱き込んだ。その時、波平が言った。「わしは皆を見届けてから最後に行く」「かあさんや、先に行っとくれ」

「はい、わかりましたよ」とふねは心を決めた。ふねは立ち上がると、甲板の淵へ立ち、そのまま海へドボンと落ちていった。たらちゃんが走って駆け寄り、海を覗き込むと、そこには小さな船が揺れていた。

 波平は、目が真っ赤になりながら言った。「さぁ、たらちゃん、自然へ戻るんだよ」、「サザエも一緒にお行き」

 サザエは一瞬ためらったが、たらちゃんを抱きかかえ、海へ飛び込んだ。

 たらちゃんはタラに、サザエはサザエになっていく。サザエはそのまま海の底へ沈んでいった。それを追いかけるように、タラが泳いでいく。船上から海を覗き込んでいた波平からは、だんだん見えなくいく。

 しばらく海を見つめていたが、「かあさんや、今行くよ」と波平が叫ぶ。そして、海へ飛び込み、そのまま船の下へ潜り込んだ。波平の体が波に変わっていく。船を大切に包み込むような波に。

 船上にはタマがいた。後は誰もいない。みんな海へ帰っていったのだ。

 タマは甲板の端まで歩いていった。そして向きを変えると、走り出し勢いよくジャンプした。そして、きれいな円弧を描きながら、マストへ飛び移って海の彼方を眺めるのであった。


 その後、テレビの画面いっぱいに『おわり』の文字が浮かび上がった。


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